金平内視鏡外科研究所 (ELK) へようこそ                                 
ELK(エルク)は小さなきずで手術する内視鏡外科医のネットワーク・ラボです

 
内視鏡外科手術について

 お母さんの愛を伝えた内視鏡手術  左の写真は内視鏡を使って脾臓(ひぞう)を摘出した後のおなかの様子です.この子は小学生の女の子で,血小板という血液の成分が少なくなり,血が止まりにくくなる病気を患っていました(特発性血小板減少性紫斑病 <とくはつせい けっしょうばんげんしょうせい しはんびょう>).薬の効果がなく,小児科の先生は,手術で脾臓を取る必要があると判断しました.一般的な手術では,みぞおちからへそにかけて15センチくらいのきずができます.「娘のおなかに大きなきずをつけたくない」 と強く願うお母さんは,私が内視鏡手術を行っていることを聞いて,相談に来られたのです.内視鏡を使って手術を行うと,からだに残るきずが小さくて済むというメリットがあります.このため術後の痛みも少なく,日常生活に早く復帰できますし,もちろん美容的にも優れています.この女の子も,ご覧のような小さなきずで脾臓を切り取ることができました.血小板も増え,元気で退院されました.お母さんの愛は伝わりました.内視鏡手術の力がそれを可能にしたのです.

内視鏡手術の方法  内視鏡手術では,おなかに5ミリ〜2センチくらいのちいさな穴をあけ,そこから内視鏡と細い手術器具をおなかの中に入れて,病気の部分を切り取ります.内視鏡は胃カメラのようなものですが,この手術用に専用のものが作られています.内視鏡の太さは,1センチですが,用途に応じて5ミリや3ミリのものもあります.内視鏡には特別なカメラを取り付けて,その画像をテレビモニターに映し出します.内視鏡外科医は,モニターに映った患者様のおなかの中を見ながら,手術を進めます.おなかの中には二酸化炭素ガスを注入してふくらませます.これを気腹(きふく)といいます.気腹により手術に必要なスペースが確保できます.

内視鏡手術のむずかしさ  内視鏡手術には欠点もあります.まず平面的な映像を見ながら手術するという点.日常,ものを立体的にみて暮らしている私達にとって,これはむずかしいことです.次に,手術器具は,おなかの通過点を支点として,テコのように動くということ.手を左に動かせば,器具はおなかの中で右に動きます.さらに,臓器を直接手でさわれないという欠点もあります.糸を結ぶといったような複雑な操作は,内視鏡器具では熟練を要します. このように内視鏡手術は大変な努力を要します.毎日の修練と経験の積み重ねにより,困難を克服しなければなりません.  開腹移行について 内視鏡手術の途中で内視鏡手術を断念せざるを得ない場合もあります.おなかの中の炎症や癒着がひどかったり,出血が多かったりした場合です.このような場合は,安全のためにおなかを切り開き,従来の手術に切り替えます.これを開腹移行と呼んでいます.例えば胆石の手術の場合には,開腹移行の確率は4パーセント前後と言われています.

 わたしの病気は内視鏡手術で治せますか?  日本では1990年に胆のうを取る内視鏡手術が行われ始めました.いまでは内視鏡手術で行う胆のう切除は,標準的な手術になりました. このほかの内視鏡手術というと,おなかの中では,早期胃がん,大腸がん,逆流性食道炎,食道アカラジア,十二指腸潰瘍穿孔,脾臓の病気,膵臓の病気などにも行われています.ただし胆のう以外は標準的ではなく,一部の外科医が行なっているに過ぎません.このような内視鏡外科手術の専門医はまだまだ少ないのが現状です.内視鏡手術を教える指導医も,まだ数少ないことも問題です.患者様のからだに負担がかからない,よい手術法ですから,早く普及してもらいたいものですが,簡単にはいきません.器具が整備されたり,外科医が熟練するまで待たなければならないのです.安全に内視鏡手術を行うのが困難な状況で,無理に行うと,事故が起きる可能性があります.このようなことは絶対に避けなければなりません.

 さまざまな内視鏡手術とおなかのきず
    
              <胆石症>                       <S状結腸がん>         <横行結腸腺腫>       <胃切除:早期胃がん>
    
     <食道アカラジア>           <直腸がん>      <特発性血小板減少性紫斑病>    <3ミリの器具を入れたきず>

内視鏡手術の今後の展開  内視鏡手術は,近年の先端医療技術の進歩に,敏感に影響を受ける分野でもあります.ですから内視鏡手術に用いる器具も次々に新しいものが開発されたり,手術手技の変化も目を見張るものがあります.コンピュータや3Dイメージテクノロジー, さらにはロボットなどの導入が行いやすい分野と言えます.金平内視鏡外科研究所<ELK>では,このような新しい展開にも深くかかわり,情報を発信していきたいと考えています.