驚愕のおやかんパワーとは?

おやかんたいとる


「おやかんさま」の驚愕の能力については、上州赤城の山麓、午津にある古い寺での出来事が文献に著された最初だといわれます。

大正の代も終わり頃、「栄冠寺」と呼ばれたその寺の住職が、人から預かった大事な「茶つぼ」をどうした訳かどこかに仕舞い込んで、そのありかを忘れてしまいました。

先は代々世話になっているお得意さまの大店です。信頼して預けてくれていたとても高価な品を無くしたとあっては一大事。
住職は見習いの小坊主まで動員して、寺中の捜索にあたらせました。
しかしどんなにシラミつぶしに探してもみつかりません。

折悪く「法事」が近付き、持ち主が訪ねてくるまでにはなんとしてでも探し出さねばならなくなりました。

小心者の住職は焦りのあまり柱の角に頭をぶつけて寝込んでしまいます。
莫大なお布施がなくなってしまうかも知れないとあって寺中が大騒ぎになってしまいました。

と、ひとりの見習い小坊主がそれを見兼ねて妙なことを言い出しました。

「おやかんさまに頼んでみるべ」

小坊主はちいさな薬缶を土間の炊き場にもちこんで、火のないかまどに据えると、住職の耳もとで小さく何ごとか呟きます。
住職はそれを聞いてひどく怒りましたが、今はもう藁にも縋りたい心持ちでしたから背に腹はかえられません。寺から一番近い宿屋の女将「お花さん」のところへ、その小僧を向かわせました。

果たして、一刻あまりもたったころ、小僧さんがひらひらする長いものを持ってもどってきました。
住職や小坊主達が固唾を飲んで見守るなか、小僧は薬缶の把っ手になんだかうっとりする香りをはなつ長いひもを結わえつけます。

「おやかんさま。おやかんさま。大事な大事な預かり物がみつかりません。どうか和尚さんがどこへ仕舞い込んだのか教えてください」

そう言って、把っ手をこするようにヒモをひっぱります。
何度も何度も小僧は同じ文句を唱え続けました。

「これでええ。すぐにみつかるべ」

小僧の言葉に半信半疑の住職でしたが、他に施す手もないので、床に戻って伏せてしまいます。と、心労が祟ってか、しばらくおとなしかった「痛風」がでて、もう泣きっ面に蜂とはこのことかと涙を流しました。

呼ばれた小僧さんが、慌てて床の間にあった薬箱を持ってきました。
と、なんという事でしょう。このところ「痛風」もおさまっていて用のなかった薬箱の中に、紫紐で結わえた上品な小箱がおさまっていたのです。
探していた「なつめ」に間違いありませんでした。

住職は恥ずかしいやら嬉しいやら痛いやらで、泣き笑い。
小僧さんは薬缶に何度もお礼を言って、結んでいたヒモを外しました。

「この腰ヒモ、かえさなくていいってお花さんに言われたけんど、どうすべ?」

住職も、ほかのお坊さんも、その腰ヒモに向かって手を合わせ、ありがたい宝物として、やかんとともに、お蔵の奥に大切に仕舞い込んだという話しです。



「おやかんさま」の偉大な能力。それは「失せもの」の在り処を人に「気付かせて」くれるのです。このサイトでは、その素晴らしい力について、できる限りの検証を行っていこうと思います。

※参考文献
・牛津 歳事記
・栄冠寺 御勤帳
・「やかん」驚愕大辞典 無法社刊
・上州むかしホントのはなし 地道出版刊
・汰雲ひとり旅 タウンコーポレーシャン刊
・上毛カルタ 知られざる歴史 踏査研究会刊
・赤城下町風雲碌 テントームシブラザーズ刊


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