アーサーアンダーセン ビジネスコンサルティング著
1999年12月30日 東洋経済新報社 発行
要約:2001年9月19日(2002年8月16日 一部改訂)
やまだたかあき
シェアードサービスは単なる業務の集中化による効率改善ではない。 そこには顧客重視のサービス提供と、継続的な経営改善が動機づけられている。
90年代後半、日本の大企業の多くが選択した本社間接部門の分社化は必ずしも成功していない。事実、情報システム部門では2000社もの子会社 が誕生したがそのほとんどはコスト削減すらまともに達成出来ていない。 結局のところ本社をみかけだけスリムにしただけで、そこには長期の展望や顧客重視の視点が欠けていたのである。大きなくくりのまま親会社に費用を請求するやり方のままでは、従来のコストセンターと何ら変わりがない。
シェアードサービスはプロフィットセンターである。ここでの顧客重視というのは個々のサービスを提供するそれぞれの顧客を重視せよという事である。サービスそれぞれについてコストに見合う価値があるかどうか、サービスの提供側も受け手側も常時検証出来る仕組みを作ることが必須である。最終的には顧客満足がサービスの質、コスト、スピードを継続的に改善していく動機となっている。 難易度の高い顧客の要求とそれに向けた改善へのチャレンジが従業員に高いモラールと専門性を付加していく。
ある程度軌道に乗ったシェアードサービスは外販によってさらなるコスト削減と専門性の向上が図られる。
以上がおおまかな内容である。ここで出てくる改善改革のツールやアプローチとしては、ABC(Activity Based Costing)、ABM(Activity Based Management)、業績評価指標(KPI)、PDCAサイクル、ERP(Enterprise Resource Planning)、サービスレベル契約書などがある。
アーサーアンダーセンが支援してシェアードサービスを導入した企業としてGEキャピタル、GM、オムロン他、多数あると言う。間接部門の活性化とコストダウンに効果を上げているようだ。
あなたの会社ではどうだろうか? 特に情報システム系のシェアードサービス子会社は本当に成功しているのだろうか? この本を参考に今一度検証してみてはどうだろう。
その他、PDCAの改善サイクルよりもシックスシグマのDMAICが強力である。顧客満足がサービスの質、コスト、スピードを継続的に改善していく動機となっている事がシェアードサービスの本質であるならば、この改善サイクルはシックスシグマのフレームワークによくフィットする。逆に言えばシェアードサービス化はシックスシグマ等を使った業務改善に強い動機を与えるとも言える。
それからグループ各社の間接部門を全部シェアードサービス・センターに集約する事には疑問を感じる。集中化によるメリットには遠隔化のデメリットが伴う事を忘れてはいけないと思う。遠隔化は顧客との接点を疎遠にする要因である。例えば従業員が1000人程度の地方にあるグループ会社の総務部をシェアードサービスセンターに集約しても現実的に機能しないのではなかろうか。あるいは場所をそのままに組織だけシェアードサービスセンターに所属しても今度はマネジメントが機能するとは思えない。
2001年9月19日 やまだたかあき
2002年8月16日 一部改訂
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シェアードサービスとは、 ・複数の組織で実施している間接業務を1ヶ所に集中させ、 ・その組織を独立採算化させて ・顧客にサービスを提供する 企業変革の手法を言う。
単なる分社化とは異なり、顧客重視のサービス 提供と継続的な経営改善が動機づけられている。 |
第1章 迫られる本社のスリム化
第2章 シェアードサービスの組織体制
第3章 独立採算化できる分社の仕組み
第4章 固定費を変動費化する方法
第5章 シェアードサービス成功への道程とERPが果たした役割−ABC社(仮称)の事例−
◆分社化の流れ
90年代後半、日本の大企業の多くは本社の機能部分(人事、総務、経理等)を分社化する方向を選択した。
しかし本社を見かけ上スリム化するだけの分社化は一過性の効果しか上げていない。 それは継続的にコストを下げサービスの質を向上させる動機づけの仕組みがビルトインされていないからである。
組織を分けただけの分社化は一時しのぎの組織対策にしかなっておらず、目標達成に向けた将来像を描くという組織にとって極めて重要な事が欠落していると言える。
◆アウトソーシング
一方本社スリム化の手段としてのアウトソーシングは人員削減を伴わない限りコスト削減にならない。日本ではアメリカと違って簡単に人員削減が出来ない雇用環境にある故に実行の難易度は非常に高いと言える。アウトソーシング以前にやるべき事があるはず。
◆雇用の価値変化
日本の経営者は終身雇用が限界に来ている事を承知している。しかし社会的認知がもっと広がるまでグループ内転籍やグループ外転籍に向けた動きをしたくないのが本音でもある。雇用の価値変化は従業員に相応のスキルを要求する。コア事業の従業員には企画・開発・技術といったコア事業の競争優位を決定づける先端的なスキルが求められる。他方、経理・人事・情報システムなどの間接部門従業員には世間で通用する人材になる事が求められる。彼らに提供すべき事は雇用の維持ではなく、世間で通用するスキル習得の機会である。経営をとりまく環境の変化は終身雇用というぬるま湯を取り払い、顧客を重視し、株主をも重視する方向にある。
◆分社が黒字化するシェアードサービス
シェアードサービスは、今までコストセンターであった間接部門をプロフィットセンターとして独立した組織にし、顧客の視点でサービスの向上とコスト削減を実現するマネジメント手法である。しかしこれには大きな課題がある。サービスのコストをどうやって算出するのか、売価をどうやって設定するのか。シェアードサービスはこれらの課題に解を提供する事が出来る。
アーサーアンダーセンが支援してシェアードさービスを導入した主な欧米企業にはGEキャピタル、Ciba Speciality Chemicals、Mutual Group、GM 、Panasonic US-HQ等がある。シェアードサービスを導入した米国企業50社で調査したコスト削減効果は一般会計で45%、給与計算で35%、債権管理/固定資産管理で25%という結果となった。
コスト削減の第1歩は業務別にコストを明らかにする事である。日本の企業の場合このコストを算出してみると驚く程高い事が判明する。これではまともに顧客へコスト負担を請求出来なくなる筈である。ここからが工夫である。グループ全社を顧客と見なせばサービスの対象が増える分だけコストが下がる可能性がある。それにはサービスの質を高める事とサービスメニューの標準化が重要な視点となる。サービスメニューの標準化は業務の標準化にもつながる。顧客不在・明確で無駄な業務を殺ぎ落として残った業務を標準化出来れば、プロフィットセンターとして自立の道が開けてくる。成功への必須条件は「業務の標準化」「コスト削減」「顧客重視のマインド」でありシェアードサービス部門の業績評価要素でもある。従業員もこれらによって動機づけされるべきである。顧客の視点でのサービス向上とコスト削減は単なる分社化にはないシェアードサービスの重要なコンセプトである。
シェアードサービスに基づく分社化は日本では既に横河電機やオムロンなど先進的な企業で実施されている。
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業務効率化の6つの視点
この仕事は ・そもそも必要なのか? → 廃止 ・もっと簡単に出来ないか? → 簡素化 ・部下にまかせられないか? → 移管 ・機械で処理できないか? → 機械化 ・忙しい時にやらねばならないか? → 平準化 ・誰でもできるようにならないか? → 標準化 |
◆赤字体質から抜け出せない分社組織の失敗
分社化は以前からも行われてきた。 特に情報システム分野、物流分野、金融分野などの機能部門を子会社として独立させ運営している会社は多い。これらの分社化の動機には人事制度を親会社と分ける事による人件費の削減が一つにある。さらにもう一つは分社化によって本社が見かけ上スリム化された事をアピールできる事にある。これらは何れも顧客重視の視点が欠如しているし、一過性の効果はあっても継続的な改善の動機が存在しない。事実、分社された2000の社余りの情報システム子会社の大部分はコスト削減すらまともに出来ていないのが現状であり、成功しているのはほんの一握りである。分社化が本社の業績を見かけ上よくするための動機となったのには、従来の企業評価が親会社単体の企業情報を重視する傾向が強かった事にある。しかし2000年度から会計制度が国際基準にあわせるべく連結重視に改定された事によってみかけだけのごまかしは出来なくなった。そもそも長期の展望もなく見かけに走るのは経営者のとるべき戦略として恥ずべきものである。
◆顧客重視の意味が違う
子会社の人の顧客は親会社だろうか? 親会社の要望をすべて実現するのは顧客重視だろうか? コストを負担している親会社の人にとってみれば自分達の要望を実現してもらうのが当たり前だと思いがちである。 その結果、現実には親会社から見て「コストをたくさん負担している割にはよいサービスを受けていない」となる。これはサービス1単位毎にその質とコストを検証する事がない故に、全体でいくら、そして全体で不満足となるだけで改善に向けた継続的な努力が生まれようもない。コストを全体でしか捉えない場合、個々のサービスに対してのコスト意識が受け手にも無い為に過剰なサービスを要求しがちになる。また提供側もコストをあまり考えずに要望を受けてしまいがちである。これは個々の担当者が悪いのではなく、組織がもっている仕組みが悪いのである。シェアードサービスで言うところの顧客重視とは親会社という大きなくくりを顧客として重視するのではなく、個々のサービスを提供するそれぞれの顧客を重視せよという事である。サービスそれぞれについてコストに見合う価値があるかどうかサービスの提供側も受けて側も常時検証出来る仕組みを作ることが重要である。全体にかかったコストを親会社に請求するやり方ではコストセンターと何ら変わりがないという理屈を経営者は知る必要がある。経営者は間接部門の分社が真のプロフィットセンターとして継続的な改善動機が働く為のシェアードサービスセンター化を決意すべきである。さもなければ請求書一枚に2万円、プログラムステップ1行当たり4千円もかかっている実態に目をつぶるか、単に全体として○%のコスト削減という実際に効果の無い掛け声をあげるしかないのである。
◆スペシャリストが育つシェアードサービス
従来、本社部門で働く従業員は、他で同様の業務を遂行するプロの人達と業務レベル
を比較された事がない為に自分達のレベルを認識できる機会が殆ど無い。シェアードサービスは今まで無風であった間接部門にマーケットメカニズムを導入する。これによってサービスを提供する人達の業務レベルは競争によって自覚が図られ、そして向上の動機と意欲を提供する事になる。
オムロンの情報システム業務は98年にIBMとの合弁で再スタートした。合弁会社にはIBMから10名強のスタッフが参加し情報システム業界の先端技術の風を入れると共に互いの強みを生かしたスキル向上の継続的な努力が図られた。これはスペシャリストが育つシェアードサービスの好例である。
◆シェアードサービスセンターの組織化
シェアードサービスセンターとして分社化すべき業務は以下の様に類別出来る。
分社化すべき業務の分類
1.経理等の日常的で大量の処理をする業務
2.法律等の専門的なスキルを要する業務
3.全社的な情報システム業務
分社化すべき代表的業務
経理・財務、人事・総務、情報システム、法務(一部を除く)
分社化すべきでない業務
経営企画、コーポレートレベルの基準策定、法務の一部
組織設計の際に重要なのは既存の組織を前提としない事である。従来組織のしがらみを組織形態に反映させるべきではない。シェアードサービスはあくまでも業務を主体に切り出すべきである。既存の組織体制を前提にすればシンプルで機能的な組織設計はだいなしになってしまう。
社員の高いモチベーションと継続的な企業活力向上を実現する為に
◆独立採算のイメージとは
コスト管理だけではモチベーションは生まれにくい。サービスの対価を貰って経営を成り立たせる事が重要である。事業化開始から数年以内に黒字化する必要がある。 将来的には外販も視野にいれてビジネス拡大の機会を増やしていく。
一般に間接部門に最も欠けているのが「顧客重視のマインド」である。 往々にしてお役所的な姿勢でユーザー部門へのサービスが行われ、変化に対して極めて消極的な場合が多いと言われる。 内部(シェアードサービス部門)から「もっとお金を貰える仕事を取ってこい」、外部(ユーザー)から「あの仕事はいらない、この仕事をこの金額でやってくれ」と常時言われていれば自ずと顧客重視に変わっていくはずである。また難しい要求にこたえる事が自らのスキルを向上させる。
独立採算化には関門がある。最初から高すぎる業務別コストを提示したのではユーザー部門の抵抗にあい、シェアードサービスがスタートを切れない可能性がある。この様な場合、ある程度リーズナブルな価格設定をして、実際のコストとの差額を本社費として赤字補填する事でスタートする。この時同時に赤字補填の内容をはっきりさせる事、数年以内に黒字化する為のコスト低減策を示す事が重要である。借りがはっきりすれば返す気持ちと改善努力が生まれて来る。そしてシェアードサービスの改善サイクル(PDCA)が回っていくことになる。 始めはコスト付け替え的な擬似独立採算であったものが、真に独立採算化できる経営の仕組みが整っていく。
◆専門性向上がやる気を引き出す
分社目的が単に作業の集中化によるコスト削減では従業員のやる気を持続出来ない。
シェアードサービスでは顧客の視点からサービスの質とコストが評価される。これによってプロとしてのサービスの提供とコスト削減へのモチベーションが働く。社外顧客までもサービスの対象とすればさらに市場においてその専門性が問われる事となる。間接部門だったときには感じられなかったサービス向上意欲とその為の専門性向上意欲がシェアードサービスには生まれて来る。
サービスには事務処理型サービスとコンサルタント型サービスの2つの型に類型化できる。事務処理型はコストとスピードを追及し、コンサルタント型はサービスレベルの極大化を追求する。
◆ミッションを具体化する業績評価基準( KPI:Key Performance Indicator)
分社した結果として「組織が分かれた事以外、何も変わらなかった」という失敗に陥らない為には継続的な改善とその状況がモニターできるPDCAの仕組みづくりが必要である。この仕組みが機能する為の重要なポイントが業績評価基準KPIの設定である。業績評価基準を設定する事により、組織の戦略や目標に対してどの程度達成出来たのかを定量的な数値として測定できるようになる。
シェアードサービスの成功要因は「コスト削減」「標準化」「顧客指向」である事は前にも述べた。これら3つの要因に対して評価基準(KPI)を設定してPDCAサイクルを回せば数年のうちに独立採算出来る目途が立つはずである。
以下に業績評価基準(KPI)の設定に当たって求められる要件を5つ示す。
1) 経営戦略/目標が定量化されている事
どれ程高レベルな提案が出来ているか? 年々向上しているのか? 他社と比べた位置づけはどうか?などについて明確なデータを把握していなくてはいけない。
2) 企業を活性化する指標である事
担当している業務機能のKPI実績が企業戦略の実現に貢献している事を定量的かつ容易に理解できることが示されているべきである。また人事評価との関連も明確にしめされている事も必要である。
3) 数値化された基準である事
KPIは測定可能でなくては意味がない。「多い少ない、良い悪い」などの漠然とした判断基準による2値判定は避けるべきである。定性的な目標であっても段階評価に置き換えれば数値が可能となる。5段階評価の顧客アンケートなどもこの例である。
4) 多面的な視点で評価できている事
業績の評価には財務的視点の指標だけではなく標準化の視点や顧客満足の視点を欠いてはいけない。
5) 組織レベル、プロセスレベル、人レベルのそれぞれで設定されている事
図表3−12
シェアードサービス・センターの業績評価基準マトリクス例
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Value |
Service |
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コスト |
品質 |
時間 |
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組織 |
売上 経常利益率 社外売上 |
顧客満足度 クレーム件数 システムダウン回数 |
平均納期 納期尊守率 |
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プロセス |
伝票入力費用 ソフト再利用率 提案書提出数 |
受注率 伝票入力ミス率 |
請求書処理時間 提案書作成時間 受注必要日数 |
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人 |
インセンティブ 教育費用 教育受講件数 |
顧客満足度 バグ発生件数 資格取得 |
納期尊守率 平均電話対応時間 社内ミーティング時間 |
上の表は業績評価基準の候補例である。 全てを同時に改善することは現実的ではない。十数個程度に絞り、KPIを明確化してPDCAを実行することが大事である。
各サービス単位のコストを算出するツールとしてABC(Activity Based Costing)が注目されている。コストの大半が人件費で占められているシェアードサービスの場合特に有効なコスト算出手法である。
まとめ
まず、組織目標から重点目標が計画され、その定量目標としてABCを考慮してKPIの目標値が設定される(PLAN)。そして、事業を行い(DO)、結果であるKPIの実績値を把握する(Check)。その実績値を目標値に照らし合わせて改善の手立てを打つ(Action)。これらのPDCAサイクルを通常月次のサイクルで回していくことにより、継続的な向上を図る仕組み、つまり独立採算出来る分社の業績管理制度が定着していく。
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KPIに関する参考図書: 「リエンジニアリングのための業績評価基準」 アーサーアンダーセン著 産能大学出版部 (1994-01-25出版) |
シェアードサービスセンターが有効に機能するには「顧客に提供したサービスの量に応じて対価を受け取る」仕組みが必須となる。それにはサービスの単価とサービス量を測定出来るコスト計算の仕組みを構築しなければならない。
◆業務別コストの算出が出発点
業務別コストの算出が問題解決の出発点であるが、アーサーアンダーセンはこの算出方法としてABC分析を推奨している。ABCはActivity Based Costing の略で、業務(Activity)別にコストを算出する意味である。業務別に要した時間(工数)を計測して経費(主に人件費や総務費)を割り振るのが原則である。ABC分析の結果を基にコスト削減をマネージメントしていく経営管理手法をABM(Activity
Based Management)
と言う。ABCとABMの実行により継続的な成功が達成される。
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ABC/ABM参考資料 ABCによる行政コスト分析 http://research.php.co.jp/report/01-50.html ABC関連リンク集 |
◆顧客の視点に立ったサービスレベル契約書と業績評価指標
顧客へ提供すべきサービスを定義しその売価を設定したら次にそれが顧客に受け入れられるかどうかの交渉を行う。その結果を契約の形で記載したのがサービスレベル契約書である。サービスレベル契約書の記載事項はおおむね以下の通りである。
1)
提供するサービスの内容
2)
サービス単価とその計算過程
3)
サービスのレベル
4)
問題発生時の対処方法・補償
5)
価格改定の条件と改定プロセス
6)
営業時間とサービスキャパシティ
7)
サービスレベルの検証方法
8)
有効期間
もう一つ重要なのは3章でも述べた業績評価指標(KPI)の設定である。顧客視点の業績評価指標は顧客満足に向けた「克服すべき課題とその目標」を明確にし、さらに具体的なアクションプランの作成を動機づける。
◆アメリカンエキスプレスにおける成功要因
アメリカンエキスプレスはABC/ABMを使って大きな改善効果を上げた。同社では旅行関連サービス事業部の経理部門における「支払業務」「給与振込業務」「銀行決済業務」を対象に世界で3ヶ所のシェアードサービスセンタへの集中化を行った。結果として1億ドルものコスト削減の実績を得た。
サービス売価の設定にあたっては、ABC分析を基にしたコストプラス方式を採用した。業務別実際コストを提示する事でコストの妥当性をユーザーに納得させる一方で、ABMによる業務管理制度を使って品質向上とコスト削減を続けている。
ABC分析において分析対象とする業務単位は、これが小さすぎると煩雑になりすぎて手間ばかりかかる為、問題点の明確化が出来る程度にしておく。一方ABMでは改善アクションが取れる程度の大きさで業務単位を設定する必要からサービス単価算出の目的で実施したABC分析の時より分析の単位が小さくなる。実際に業務分析を行ってみると付加価値の少ない業務に時間をかけている結果として高コストになっている事が判明する。
アメリカンエキスプレスにおけるABC/ABM導入成功のポイントは
1) 導入の目的/目標を明確にする。
2) 導入対象範囲は段階的に拡大する
最初から対象範囲を拡大すると時間が余計にかかってしまう。
3) 業務活動リスト(アクティビティリスト)を作成する
4) 導入のためのデータ収集に時間をかけすぎない
データ収集は改善アクションの為のものである事を忘れてはならない。データ収集が、目的になってしまうとこの為にむやみに膨大な手間をかけてしまいがちである。
第5章 シェアードサービス成功への道程とERPが果たした役割
−ABC社(仮称)の事例−
ABC社は精密部品の大手メーカーで、世界各国にグループ子会社を保有し従業員5000名を超える。ABC社は昨今の業績悪化を発端に間接業務のシェアードサービスセンター化を断行して、年前SSCジャパンを設立した。
◆プロジェクトのスタート
2年前、市川社長はABC社の業績悪化を受けて経費削減が急務であると判断した。前からも間接部門の業務改善の必要を痛感していた事とコンサルタントの支援がてことなり間接部門のシェアードサービス化を決意した。市川社長は早速、経営企画部の木島部長をプロジェクトリーダーに任命し経理・情報システム業務のシェアードサービス化を命じた。木島は本社・子会社の経理部、情報システム部から若手/中堅をメンバーに選出してプロジェクトを発足させた。プロジェクト発足にあたり市川社長はメンバーを集めてプロジェクトの重要性とメンバーの責任の重さを熱弁した。
◆現状分析の壁
対象業務の現状分析には現場の協力が必要となる。いきなり分析と言っても自分の仕事を否定されていると感じてしまい協力は得られない。プロジェクトリーダは変革の必要性を説かなくてはならない。「社員がもっと価値ある仕事をして、生き生きと仕事が出来る様に業務を変革する」そして「自分たちの仕事が目に目に見える形で評価できるように変えるのだ」その為の出発点としてこの業務分析があると訴えなくてはいけない。この事前説明をおろそかにすればプロジェクトは円滑に進行しない。とくにグループ会社に対しては情報システムの統合への抵抗が強い。情報システム統合で発生する新たな設備投資に見合う成果が期待できることを十分に説明しておく事が重要である。
◆業務の標準化(標準業務モデル)が成功要因
各社の間接業務を集中化するという事は、業務のやり方を標準化する事でもある。この目的で標準業務モデルを作成し、次にこれに従って運用システムを構築する。標準業務モデルは各社の業務習慣と合っていないかもしれない。しかし各社の業務習慣には意味のないものも少なくない。必要のない紙への転記、活用されていない報告資料、意味のない承認等習慣となっていた為にその意味が問われる事がなかった業務プロセスがたくさんあるはずだ。
実際、標準業務モデルの導入によって管理帳票が激減しても業務に何の支障もなかった。
標準業務モデルの作成に当たっては
1) 現状業務フローから特に顧客を含む社外との接点に焦点をあて絶対落とせない作業を明確にする
2) 絶対落とせない作業の視点は顧客重視の視点でもある
3) 最初から標準業務を緻密に決定する事より大きな流れを重視する。最初の目的は標準システムの大枠を決めていく為に標準業務を設定するからである。
◆業務の標準化に一役買ったERP(Enterprise Resource Planning)
標準業務モデルをサポートする標準(情報)システムをどう構築するかについて議論がでる。一つは自社の個別の業務にあわせて自社開発するやり方で他の一つは情報システムベンダーが提供するERPパッケージソフトを活用する方法がある。自社開発には自社の業務に合わせてシステムを構築できる反面、開発コスト・時間が多くかかりやすいしバグとりにも思いがけない時間がかかることも多い。又自社の都合に合わせられる事が返って旧来の業務モデルを温存する弊害となり易い。
ABC社では議論の末、ERPによるシステム構築の方針を決定した。市川社長はこの方針決定にあたり今までのやり方を根本的に見直す事と業界の標準を取り入れることを重視した。一番変えにくい人のマインドを変える為に。
◆驚くほど高いコストの実態
実際、ABCによる業務別コスト算出をやってみると驚くほどコストが高いことがわかった。請求書1枚の発行に2万円、伝票入力に1枚千円等。このコストをユーザにそのまま請求したのではさすがに抵抗がある。当初の2年間は赤字を承知で単価を作成することにした。その代わりABMを基本とした継続的な業務改善努力とコストダウンを計画し約束した。
◆ERPによる標準システム導入によって情報システム要員は?
1)システム保守要員(主にトラブル対応要員)が減った
2)提案型の営業要員となった
3)専門性を高める意欲が高まった
◆ABC社におけるシェアードサービスセンター(SSC)成功要因
1) 社長の強いリーダーシップ
2) 導入前からコストダウンを計画に盛り込んだ
3) 業務の標準化を図り、ERPを活用した
4) 顧客重視のマインドをプロジェクトの基本においた
5) SSC従業員の専門性を高める業績管理制度を作った
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ERP参考資料 「はじめて学ぶERP - ERPはなぜ注目されるのか -」 http://homepage2.nifty.com/mnakamura/erp/erpintro/erpindex.htm |