ハイビジョン版どーもくん(その一)

 NHKが力を入れているもののひとつがハイビジョンテレビ方式。研究に基づいて画面の縦横比を従来の3:4から9:16にし(広がりのある画面として人が見やすい比率がこの比率なんだそうです)、音声や画質をこれまでより高音質・高画質化。これからの記録、放送方式として宣伝していましたが、当初はアナログ方式。年月をかけて開発しているうちに開発しているもの自体が古くなってしまうことはよくある話で(確か開発に着手し始めたのは東京オリンピックの頃)、デジタル技術の発達でデジタル方式へと軌道修正しながら現在に至っています。
 アナログで出た当初は、特に合成が必要な映画でフィルムより処理が安上がりだとよく使われていました。「ふたり」「帝都物語」「水の旅人」などがそうです。しかし元々テレビ方式ですから、やはりビデオ画像をフィルムに焼き直して上映してもよくありませんでした。実際劇場で見てみるととんでもなく絵が甘く、ああ、ここからがハイビジョン撮影だね、という感じで失望したのを覚えています。
 とはいっても現在民放5局も加わってBSデジタル放送が始まったものですから、高画質なハイビジョン方式による番組が増えてきました。従来からの地上波でもそうです。分かりやすいものとしては上下が黒い帯の様に隠された番組(映画番組は除く)がそれで、ハイビジョン方式を従来の方式に変換して放送しているのです。NHK「小さな旅」やテレビ朝日「仮面ライダーアギト」などがそうです。分かりにくいものとしては、NHKの全国ニュース、相撲放送などはハイビジョン方式のものから左右の画面を切り取って見せています。画面にのせる文字の感じ(大きさや精細感)や、画質(感)がやや従来のものとは異なっています。
 ここでちょっと考えていただきたいのは画面サイズです。ハイビジョン方式と従来方式とでは画面の縦横比が違います。ハイビジョン方式のものを従来の方式で見せるのには(1)先に書いた上下に黒い帯をつけて全体を見せるやりかたと、(2)画面の左右を切り取るやりかたがあります。逆に従来の方式のもの(もしくは従来の縦横比で撮影されたもの)をハイビジョン方式で見せるには(1)画面の左右に黒い帯をつけ画面全体を見せるやりかたと、(2)画面の上下を切り取って見せるやりかたがあります。
 どちらの場合も(1)だと画面全体を見えるのですが、(2)の場合だと切り取られる部分が出てしまうので、見ていて不自然になりがちです。特に映画の横に広い方式、シネマスコープ(縦横比約1:2.33)の作品をテレビで放映しているとき変に画面がパン(カメラを横に振る撮り方)したり、カット数が増えているのはこの不自然さを最小限に押さえるための努力です。まあ、別にどうでもいい、といってしまえばそれまでですが、映像にこっている映画監督の作品を見る場合などはこの問題が非常に大きくなります。オリジナルの作品にはないパンを加えたり、カットを増やすことは監督の狙う意図通りに作品が伝わっていないことになるからです。ハリウッドの娯楽作品などでは劇場上映後のビデオ収入も重要な収入ですから、最近では先のどちらのやりかたで従来方式(3:4サイズ)にしても不自然さのないように仕上げられているようです(ちなみにあの大ヒットした「トップガン」もシネマスコープサイズで上映されたのに、元々は3:4サイズで撮影されていたということで、劇場よりも既発売のビデオソフトよりも撮影されたままの画面に近いレーザーディスク版が発売されていましたね)。
 前置きが長くなりましたがいよいよどーもくんです。さて、ハイビジョンを推進するNHKのどーもくんは一体どちらの画面サイズで作られているのでしょうか。もし左右が切り取られているとしたらちょっぴり損をした気分になりませんか?
 次回、具体的な作品を例にして考えてみましょう。

 ちなみに下は「続々ゾクゾク」の始まりの部分。このとき既に「ハイビジョン」の文字が入ってはいます。