Affirmative's topicality

NAFA春セミナー 3/15(土)
廣江 厚夫



目次

1. どうすれはプランがtopicalになるのか?
1.1 そもそも「プラン」とは?
1.2 「プロポに対応するものがプランにある」ということを調べるには
1.3 「各フレーズ」から「一つのフレーズ」へ
1.4 結局 topicality の議論とは
2. 「あるフレーズ」から「対応するもの」までの道のり
2.1 方法1についてのいろいろ――definition, standard, violation
2.2 方法2 の応用例
3. 勘違いアーギュメント・地に足がついてないアーギュメント
4. 辞書引き上手は topicality 上手
5. 実戦! Topicality はこうやって返す
5.1 試合前にやっておくこと
5.2 いざ実戦
5.3 理想と現実との大きなギャップ
付録('96 夏セミナーの資料を編集・再録)
A1. 各段階で心掛けること
A1.1 Phrase の取り出し方にもいろいろ
A1.2 Phraseからinterpretationを作る際のコツ
A1.3 プランが解釈にmeetするかどうかにも議論の余地が
A2. 辞書を極めた者がtopicalityを制す
A2.1 意味は系統でとらえる
A2.2 どんなコンテクストで使えるのかを確かめる
A2.2.1 文法上のコンテクスト
A2.2.2 Collocation に注目
A2.3 定義文からambiguityがなくなるまで調べる
A3. 参考になる(参考にしてほしい)文献

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補足の注(ここに掲載するにあたって追加)

当時のプロポジション(以下「プロポ」と略)は以下の通りです。
1996年後半:
Resolved: That Japan and/or the United States should terminate the Japan-US Security Treaty.
1997年前半:
Resolved: That Japan should abolish the death penalty.
このセミナーは、上の2つのプロポの間('97前半のプロポが発表された直後くらい)に行なわれました。

(この講義の主旨は、「プロポが抽象的な書き方をしている場合、 aff は自分のプランが topical であることを示すためには何をしなけ ればならないか」というものでした。でも、上記のプロポ(結構具体的 に記述されている)の下でこのような主旨のことをやるのはちょっと無理 があったかも……。)


1. どうすれはプランがtopicalになるのか?

(注意)この章では、topicality の基本に戻って考えていきます。 そのため、今までに教わってきたであろう用語 ――definition, standard, violation, better/reasonable, right to define etc.――は、 一度忘れてください。

1.1 そもそも「プラン」とは?

プラン: プロポの内容をもっと具体的にしたもの。
――だったら、プランの側にプロポに対応するものがあるはず。以下の例で考えてみよう。

プロポとプランの例

プロポ: The Japanese government should establish a law that governs biomedical research.
プラン: The Japanese government shall establish a law that regulates human experiments.

補足説明
  • このプロポは、91後半〜92前半のプロポ“The Japanese government should establish one or more new laws that govern biomedical research and /or its applications to medical practice”の簡略バージョン。
  • “establish a law”は「法律を制定する」
    c.f. “enforce a law” : 「法律を施行する」
  • “a law governs ...” というときの govern は、regulate, control と ほぼ同じ意味。
  • “biomedical research”とは、「ヘルシンキ宣言」(1964年、世界医師 会によって採択) あたりから使われだした用語。同宣言では、この“biomedical research” を人体実験(human experiments)の意味で使っている。
  • 人体実験には、治療を兼ねた実験と、治療と関係ない(にもかかわらず 「治療」と称している)実験とがある。このプランは、主に後者を規制することを 目的としている。

1.2 「プロポに対応するものがプランにある」ということを調べるには

プロポ全体
……よく分からない。

単語ごと
……以下の理由でうまく行かない。 (このような topicality を「いちごティー」(一語T)という。)

そこで、プロポ(=文)よりも小さく単語よりも大きなまとまりがあればよい。

⇒phrase (句)というのがある。

Phrase: 単語がいくつか集まって意味をなしているもの。 Phrase 同士が集まってさらに大きな phrase を作ることもできる。
Phrase の例
The Japanese government, a law, biomedical research,
establish a law, governs biomedical research,
a law that governs biomedical research
Topical:
プロポの各フレーズについて、対応するものがプランにある。
「プランには、the Japanese government に対応するものはあるか?――ある」
「a law に対応するものは?――ある」
「biomedical research に対応するものはあるか?――ある」
(以下略)
Nontopical:
プロポのあるフレーズには、対応するものがプランにない。
Neg:「プランの中で、biomedical research に対応するものは?」
Aff:「えーと…(答えられない)」⇒ Nontopical 確定

「対応しない」と、プランはプロポと関係ないということになり、aff はプロポについては 一言も述べなかったのと同じになる。この「Aff が一言も述べなかった」状態が neg の勝ちに なっていれば(普通はそうだ)、topicality は voter for neg となる。

Nontopical と extra-topical
要は nontopical というのはプロポに「余りフレーズ」があるということ。 一方、プランの側に「余りの部分」があることを extra-topical という。

たとえば「日米安保破棄」のプロポのときに以下のようなプランを出すと、 下線部が extra-topical になる。

プラン:日米安保条約を破棄するとともに、日本にある米軍基地を廃止する
以下のようにすると、extra-topical にはならない。
プラン:日米安保条約を破棄する。
プラン後の変化:日米安保条約を破棄すると、 日本にある米軍基地がなくなる(要証明)。
 

1.3 「各フレーズ」から「一つのフレーズ」へ

上では「各フレーズ」と書いたが、実戦ではそんなことはしない。なぜか?

それは、

プランを出した時点で、プロポの各フレーズとプランとの対応関係はほぼ明らかになる。 だったら、neg がその対応関係に反対しなければ、それでいいではないか。
という考え方が廣まっているから。だから、
プランが topical かどうかを議論するときは、neg が問題にしたフレーズについて、 対応するものがプランにあるかどうかを議論すればよい。それ以外のフレーズについては、 対応するものがあるとみなしてしまおう。
となる。

余談
  • この「対応するものがあるとみなしてしまおう」という考えを “operational definition” (操作的定義)と呼ぶ人がいるが、これは誤り。
  • 上記の考え方を更に進めると、“Plan embodies the resolution”になる。 これは早い話が「プランが出てきた時点でプロポ=プラン」とみなし てしまおうということ。 こうすると、aff のプラン以外のプラン(CP や CW example など)は 全て nontopical になる。

1.4 結局 topicality の議論とは

Topicality の議論で aff, neg がそれぞれするべきことは、 プロポの中の1フレーズについて、
Aff
Neg

2. 「あるフレーズ」から「対応するもの」までの道のり

「あるフレーズと、プランの…とが対応している/いない」を証明する方法として、 以下の2つがある。
方法1:
まず、そのフレーズの意味をもっとはっきりさせる。 次に、この「意味をはっきりさせたもの」と プランの…とが対応しているか(meet しているか)を調べる。
(例)“biomedical research”の意味をもっとはっきりさせると 「〜」となる。 プランの“human experiments”は、この「〜」に meet する/しない。
方法2:
実例を持ってくる。(Aff のみ可能)
(例)『ヘルシンキ宣言』(前述)では、“biomedical research” という用語を human experiments の意味で使っている。これを引用することで、 「human experiments は “biomedical research”になり得る」の証拠とする。
 

2.1 方法1についてのいろいろ――definition, standard, violation

Definition

この「意味をはっきりさせたもの」のことを definition (definition of the resolution または definition of a phrase in the resolution) という。Interpretation(interpretation of the resolution) とほぼ同じ意味。

“Definition”についての大きな間違い
本来、topicality の議論で出てくる“definition”とは「プロポ(またはその中の1フレーズ)の 意味をはっきりさせたもの」という意味だが、現在の日本のディベートでは 「辞書に載っている定義(定義文)」(dictionary definition)の意味で使われている。 両者を混同してしまっているために、後述のような変な議論がよく出てくる。

詳しくは『不適切な英語ディベート用語』を参照。

Definition (definition of a phrase in the resolution) を作るにはどうすればいいか?

⇒ 何らかのエビデンスによって、「このフレーズから…という definition が作れる」ということが 示せればよい。その1つとして、辞書から定義(dictionary definition)を持ってくるという 方法がある。(詳しくは 4章と付録A2 を参照)

Definition が複数できるときはどうするか?

  1. 辞書に定義が複数載っている場合。
  2. 辞書の定義は1つでも、1つのフレーズが何通りにも解釈できる場合。
    (例)“my murder”というフレーズは次の2通りに解釈できる。
    1. The murder of me (私誰かが殺す)
    2. The murder by me (私誰かを殺す)
このように「何通りにも解釈できる」ということを ambiguity(多義性・曖昧性) があるという。

Definition によって(=フレーズをどのように解釈するかによって) 「対応するものがプランにある/ない」が変わる、 つまりプランが topical か nontopical かが変わる場合、

Aff
プランが topical になる definition(普通は aff が出す) を1つでも残せばよい。
= “Aff has right to define terms”

Neg
プランが nontopical になる definition だけ を残さなければならない。
Definition が残る/残らないを決めるための基準のことを standard という。
Definition が standard によって残らなくなる(排除される) ことを violation という。

Standard のいろいろと、 “violation”の間違い
現在の日本のディベートで“standard”というと「どの辞書のどの定義(定義 文)を使えばいいか」についてのもの(standard for dictionary definitions)がほとんどだが、本来 standard は「プロポをどのように解釈す るべきか」(standard for interpretation of the resolution) についてのものである。これ以外にも、 「フレーズの作り方についての standerd」(standard for syntax)や 「Meet しているかどうかを判断するための standard」なども考えられる。 (付録A2 を参照。)

同じく現在の日本のディベートで“violation”というと“Plan doesn't meet the definition” の意味で使われているが、これは間違い。Violation とは、 “Plan violates the standard” “Definition violates the standard” のこと。 だから例えば――

誤:“biomadical research”は「…」と解釈できるが、 プランの「人体実験」は「…」にはなり得ない。
……これは violation ではない。

正:“biomadical research”を「…」と解釈するのは、 文脈上ありえない。
……これは violation になる。すなわち、“The definition of ‘biomedical research’ violates the standard of contextuality”ということ。

こちらも詳しくは『不適切な英語ディベート用語』を参照。
(2004.12.9 修正) 上記の“Plan violates the standard”は、 “Definition violates the standard”の間違いでした。 また、ここでいう“definition”は、「辞書の定義」ではなくて “definition (=interpretaion) of a phrase in the resolution”です。 (修正おわり)

2.2 方法2 の応用例

今期のプロポで
プラン: 今後は死刑の執行はやらない。ただし、死刑制度自体は残す。
というプランを出したとする。このケースの場合、 「死刑の執行をやらない」が“abolish the death penalty”になり得るか (対応するか)が問題になる。これを証明する方法の1つとして、 「死刑の執行をやらない」を“abolish the death penalty”と表現している 実例を持ってくるというものがある。(あくまでも、「そのような実例が あれば」の話。)

3. 勘違いアーギュメント・地に足がついてないアーギュメント

現在の topicality の議論の特徴・問題点 (非常にありがちな例)
プロポ: The Japanese government should adopt a program to ...
Neg の主張
“program”=「番組のプログラム」
Standard: Narrower definition should be used.
理由: トピックが狭いとリサーチがしやすいから、 分析が深くなって議論の質が上がる。

Aff の主張
“program”=「一般的な計画」
Standard: Broader definition should be used.
理由: トピックが廣いといろんな分野をリサーチするから、 知識が増える。

この議論のマズイところ

Aff が topicality を返すときには、このような議論に付き合ったりせず に、「対応するものがプランにある」ということをまず主張すること。

なお、「どの辞書のどの定義を用いるべきか」という議論では、次の章で説明 する方法で「コンテクストに合っている」を示せば aff はまず負けない。

4. 辞書引き上手は topicality 上手

辞書を引く→1つの単語にいろんな意味が載っている→「どれにすればいいん だ!」

⇒コンテクストで ほぼ 1つに特定できる。

辞書には、定義の他に文法情報(品詞・自動詞/他動詞・単数/複数など) や接続可能な語句の特徴や例文なども載っていて、これらを見ることで 「この定義はどんなコンテクストで使えるのか」が分かるようになっている。 辞書から定義を引用するときは、これらの情報を端折らないように。

詳しくは、付録A2『自然言語処理』 の5章(「意味解析」)の「5.2 選択制限に基づく意味的曖昧性解消」な どを参照。

Aff は「コンテクストを考慮している」をいつ示せばいいか

定義を引用するとき(普通は 2AC)に、上記情報(文法情報・接続情報・ 例文)をすべて出す。もし neg が topicality を 2con してきたら、 上記情報を使って「プロポのコンテクストでもこの定義が当てはまる」 ということを示す。

5. 実戦! Topicality はこうやって返す

5.1 試合前にやっておくこと

まずケース作りと平行して、各フレーズに対応するものがあるかを考えておく。 (対応するものがどうしても思い付かなかったら、そのケースは没。)

単純にして最強の返し: Topical plan を出すこと。
場合によっては「対応している」ということを 1AC で示した方がいいこともある。
(例)92後期―93前期のプロポ “The Japanese government should adopt a program to eradicate unfair commercial practicies inside Japan carried out by private corporations or public organs”(長い…) の頃、いくつかのケースでは「このケースでは『…』が unfair commercial practices に対応する」 を説明する部分を設けていた。例えば拙作の「民間主導型のリゾート開発を禁止する+α」というケースでは、 「このケースでは、『リゾート法に基づいて民間企業がリゾートの計画を立てること』(長い) が unfair commercial practices だ」ということを説明する部分が入っていた。
「対応するもの」は、1つとはいわず複数あった方がよい。 ⇒「本命」と「捨て」

5.2 いざ実戦

(注)しつこいようですが、以下で出てくる“definition”とは“definition of a phrase in the resolution”のことであり、決して“dictionary definition” ではありません。
  1. Neg の出した definition に対応するものがプランにあるかどうか考える。 あればそれを示す。(なければ 2 へ)
  2. Aff も definition を出し、それに対応するものがプランにあることも 示す。Aff definition のエビデンスとしては、 の2つがある。
  3. (プロポに係り受けの曖昧さがあるとき→付録A1.1)
    Neg の出したフレーズ分けでは「対応するもの」が示せない場合は、 aff は別のフレーズ分けを示し、さらにそのフレーズの definition と 「対応するもの」も示す。
  4. 1〜3 で aff の出した definition やフレーズ分けなどが neg の standard によって否定されていないか考える。否定されてしまう場合は、 その standard をアタックする。
  5. (まだ余力があったら) Neg の definition やフレーズ分けなどを アタックする。

(5 の例: 「だったら初めから」攻撃)
伝統的かつセコイ topicality に、「Japanese government = 文部省」 というのがある。(Japanese を「日本語の」という意味にとり、 「日本語の政府」を「文部省」と解釈している。) この T に対して 「もしそんな意味なのなら、誤解を防ぐために“Ministry of Education” とかいう表現になっていたのでは?」と指摘する。

(注意!!!)
Aff は、definition を出していないのに neg definition をアタックしたり、 フレーズ分けをしていないのに neg のフレーズ分けをアタックしたりすると、 無意味なばかりか自滅ととられるおそれもある。(対応関係を自ら否定した ともとれるから。)

5.3 理想と現実との大きなギャップ

とはいうものの、実際に neg が出してくる topicality には 「いちごティー」や「勘違いアーギュメント」や「ひっかけ T」なども 多い。以下はその返し方。

いちごティーだったら

よく分からない standard が出てきたら

とりあえず「コンテクストが第一」と言ってから 4章の方法を。

Neg が 2NR で T にかけてきたら

この場合 AD は残っているのだから、ケースの説明に何分もかけるのは 時間の無駄。最小限のADが残るということを数十秒で説明し、残り時間は全て topicality の返しに使う。

返さないのも1つの作戦

再び 1.2 の extra-topical について。以下のような AD, DA が出ているとき、 aff は extra-topical を認めるのと反論するのとでどちらが楽に勝てるか?
AD1: 米軍基地がなくなって初めて得られる AD。
AD2: 安保条約さえなくなれば得られる AD。
DA: 米軍基地がなくなるところから来る DA。

付録('96 夏セミナーの資料を編集・再録)

A1. 各段階で心掛けること

A1.1 Phrase の取り出し方にもいろいろ

(例)“... protect the Japanese people from foreign countries”
  1. “from 〜”は“the Japanese people”に係ると解釈すると、 “the Japanese people from foreign countries”というphraseが可能。 (「日本に帰化した人々?」)
  2. “from 〜”は“protect”に係ると解釈すると、 “protect ... from 〜”というphraseが可能。 (「外国から ... を保護する」)
上記の例について詳しくは『現代ディベート通論』を参照。

A1.2 Phraseからinterpretationを作る際のコツ

  1. Headwordから
    headword(中心語):
    Phraseの中で中心の意味をなす語。

    (演習)前回のプロポからheadwordを取り出してみよう。


    (例)“Japan--US security treaty”とは――

    (a) まずは、treaty でなければならない(treaty でないものが JUST になるわけがない)。
    (b) treaty は treaty でも、security のための treaty で、しかも 日米間のものでなければならない。

    (おまけ)形容詞の意味を決定するのは、主に headword である。 (= 形容詞と headword との間の collocation)

    (例) legal murder: 合法的殺人、 legal problem: 法的な問題、 legal age: 法定年齢

  2. 動詞は、動詞+<目的語の headword>

    (例)“legalize organ transplants from braindead donors”

    (a) “legalize”だけ……いちごティー
    (b) “legalize organ transplants from 〜”……長い!
    (c) “legalize (organ) tranplants”……ちょうどいい長さ

  3. 名詞句は、動詞を含む文や句に

    (例)

    (おまけ)“by 〜”は「〜が」、“of 〜”は「〜を」と訳すと意味がとり やすい。“government of the people, by the people, for the people” なら、「人民が、人民を、人民のために統治すること」。

  4. 似たいいまわしのちょっとした違いに注目

    (例1)

    (例2)

    (例3)

A1.3 プランが解釈にmeetするかどうかにも議論の余地が

「合法/違法」を意味する語句がプロポに入っている場合。たとえばlegalと いう語がプロポに入っていて、その定義が
legalize:
make something legal which is illegal
とする。これを“legalize organ transplants”に当てはめると、 “make organ transplants legal which are illegal”となる。ここから、 「“legalize organ transplants”になるためには、legalになる 前の organ transplants(つまり現在の organ tarnsplants)はillegalで なければならない」と解釈できる。 つまり、現在の organ transplants がillegalならばプランはtopical、 legalならnontopicalとなる。このとき、 といったことが、議論になる。

くわしくは『一歩進んだ topicality』の“2.3 Meeting”を参照。

A2. 辞書を極めた者がtopicalityを制す

Dcitionary definition = interpretationのためのエビデンス
→ Assumption(プロポのコンテクストに合っていること)が重要。

辞書から定義を持ってくる際に心掛けること

  1. 定義の文面そのものではなく、「どの系統の意味か」に注目
  2. プロポのコンテクストに当てはまるのか
    1. 意味が矛盾しない(当然)
    2. 文法的にも当てはまる
    3. Collocation
  3. 定義文中の語句からambiguityがなくなるまで調べる

A2.1 意味は系統でとらえる

(例1)“construction”
――「constructの派生語」と「construeの派生語」とで2通り。 さらにそれぞれに「もの」と「こと」とがあるので、計4通り。 (「〜するということ」と「〜した結果 できたもの」)
  1. construct(建設する)から派生
    1. こと [U]: action of constructing; to construct 「建設」
    2. もの [C]: a structure; a building; a thing constructed 「建物」
  2. construe(解釈する・説明する)から派生
    1. こと [U]: ...
    2. もの [C]: ...

(例2)“legal”
――“-al”には、「〜に関係ある」と「〜に従っている」との2通り。 さらに“legal”には「法律で定められている」もあるので、計3通り。
  1. 法的な(法律に関係ある): of or relating to law
  2. 合法の(法律に従っている): according to law; allowed by law
  3. 法定の(法律で定められている): based on law
(OALDでは1と3とをまとめて“of or based on the law”としている)

A2.2 どんなコンテクストで使えるのかを確かめる

A2.2.1 文法上のコンテクスト

品詞、単数・複数、可算・不可算、自動詞・他動詞、attributice/predicative、 文型など

文法用語はある程度は英語で言えた方がよい。
Basic English Usage, A Practical English Grammar, 『日本人の英語』, 『英語の感覚』あたりが参考になる)

(演習)上の“contsruction”の意味(系統)の内で、 “stop construction of ... dams”に当てはまらないものはど れか?(ヒント:ここでの“construction”は[U]か[C]か?)

(宿題)“practice”は、[U]と[C]とで意味がどう違うか?

A2.2.2 Collocation に注目

collocation(連語):
ある語句が、どのような語句とつながっているか

1. 例文に注目する

(例) OALDによれば“legalize: make sth legal”。 では、ここでのlegalの意味は次の内のどれか?

legal adj
  1. [attrib] of or based on the law:
    my legal adviser/representative, eg a solicitor
    seek legal advice, ie sue or prosecure
    the legal age for drinking, driving, voting, etc, ie the minimum age for doing these legally.
  2. allowed or required by the law:
    Should euthanasia be made legal?
    (joc) Why shouldn't I take a holiday? It's perfectly legal.
(OALD p.712)

“legalize practices of medical euthanasia”によく似た例文が 載っているのは1, 2の内のどちらか?

(演習) 結局、“legalize practices of medical euthanasia”の意味 (interpretation)は?(自分の言葉で説明してみよう。)

2. 意味素性による選択制限

(例)

promote v
  1. (a) [esp passive: Tn, Tn・pr] 〜 sb (to sth) raise sb to a higher position or rank
(OALD p.997)

sb:
“somebody”の略。「この位置に、目的語として<人>を 表す語句がくる」ということを表している。

意味素性(semantic feature):
意味的な特徴。<人><もの><動作>など。
上の定義は“promote ... diplomatic relations”に当てはまるか?

意味素性による選択制限については、くわしくは『英語の 辞書を使いこなす』を参照。

試合のときに「collocationがいかに重要か」を示すには、 「この辞書の使い方」的なページからエビデンスを持ってくるとよい。 (「単語の意味を特定するときは、意味に矛盾がないというだけでは 不十分で、collocationまで考慮しなければならない」といった内容のもの)

Collocationは、“THE KENKYUSHA DICTIONARY OF ENGLISH COLLOCATIONS” が詳しい。

A2.3 定義文からambiguityがなくなるまで調べる

1. 定義文をよく読む

transplant n instance of transplanting (TRANSPLANT 2):

“TRANSPLANT 2”というのは――

tarnsplant v
  1. [Tn, Tn・pr] 〜 sth (from ...)(to ...); 〜 sth (in/into sth) remove (a growing plant) with its roots and replant it elsewhere:
    Transplant the seedings into peaty soil.
  2. [Tn, Tn・pr] 〜 sth (from sb/sth)(to sb/sth) take (tissue or an organ) from one person, animal or part of the body and put it into another:
    transplant a kidney from one twin to another.
  3. [Tn, Tn・pr] 〜 sb/sth (from ...)(to ...) (fig) move (a person, an animal, etc) from one place to another:
    He hated being transplanted from his home in the country to the noise and bustle of life in the city.
  4. [I, Ipr] 〜 (from ...)(to ...) be able to be transplanted:
    an old custom that does not transplant easily to the modern world.
(OALD p.1364)

(演習)上記の定義を利用して、「organ = 楽器のオルガン」という topicalityをつぶしてみよう。

2. 百科事典を利用する

(例)“diplomacy”の場合、まずOEDを引いてみると――

diplomacy
  1. The management of international relations by negotiation; the method by which these relations are adjusted and managed by ambassadors and emvoys; the business or art of the diplomatist; skill or address in the conduct of international intercourse and negotiations.
(OED p.696)

ここで世界大百科事典の「外交」を見ると、OEDの定義を利用してさらに詳 しく説明してある。

がいこう  外交  diplomacy

……
現在一般に使われている外交とは、国際関係を交渉によって 処理することである(《オックスフォード英語辞典》)。 つまりディプロマシーdiplomacyという意味での外交とは、交渉という 点に重点があり、戦争とか、宣伝とか、経済手段などと共に、 国家が対外目的を達成するために行使する手段の一つである。

(世界大百科辞典4巻 p.542)

つまり、戦争・宣伝・経済手段などは外交ではない――“diplomatic relations”にはならない。

(他の百科事典)“Kodansha Encyclopedia of Japan”……日本のことが英語 で説明してある百科事典

3. 政治思想辞書を利用する

“international”には2つの意味がある。(c.f. nation: 国・国民)

  1. 国と国との間
  2. 国民と国民
上記のOEDの定義ではどちらの意味か?

ここで“A DICTIONARY OF POLITICAL THOUGHT”を見ると――

diplomacy. The art of conducting negotiations between *states. ……
(以下、半ページ分の説明が続くけれども、ばっさり略)

(A DICTIONARY OF POLITICAL THOUGHT p.128)

→「国民と国」「地域と国」などはdiplomacyではない(CPに使える)。

4. 類義語辞典を利用する

“legal”の定義に出てくる“law”の意味はどれか?(law: きまり・法則・ 法令・法律・法学など)

ヒント程度に英和辞典を引くと――

lawfulは広く法、規則にかなった正当性に重点がある; legalは「法律(上)の」「成文法に決められた」など が中心の意味; legitimateは「摘出の」「正当な(後継者)」など 一般に「正当と認められる」の意味。

(グローバル英和辞典 p.793)

類義語辞典にも同様のことが載っている。

lawful, legal, legitimate, licit mean permitted, sanctioned or recognized by law or the law. ... Legal implies a reference to the law as it appears on the statute books or is administered in the courts; ...

(Webster's New Dictionary of Synonyms p.488)

辞書の使い方について詳しくは『英語の辞書を使いこなす』 , 『理科系のための英文作法』(第4章), 『理系のためのサバイバル英語』(第5部), 『英語の名教授』辺りを参照。


A3. 参考になる(参考にしてほしい)文献

  1. コンピュータで翻訳する 長尾真・牧野武則 1995 共立出版
  2. 人工知能大辞典 丸善 1991
  3. 自然言語理解 田中穂積・辻井潤一 オーム社 1988
  4. 法令解釈の常識 林修三 日本評論社 1975
  5. “Basic English Usage”, Michael Swan, Oxford University Press, 1984
  6. “A Practical English Grammer”, A.J. Thomson & A.V. Martinet, Oxford Universoty Press, 1985
  7. 日本人の英語,続日本人の英語 マーク・ピーターセン 岩波新書  1988, 90
  8. 英語の感覚(上・下) 大津栄一郎 岩波新書 1993
  9. 英語の辞書を使いこなす 笠島準一 講談社現代新書 1986
  10. 理系のためのサバイバル英語 東大サバイバル英語実 行委員会 ブルーバックス 1996
  11. 理科系のための英文作法 杉原厚吉 中公新書 1994
  12. 英語の名教授 松本安弘・松本アイリン 丸善ライブラリー 1996
  13. 初心者のためのディベートQ&A 安井省侍郎 NAFA 1994
  14. “JURISDICTION AND THE EVALUATION OF TOPICALITY”, Arnie Madsen and Allan D.Louden, JAFA vol.24, FALL 1987, pp.73--83
  15. 不適切な英語ディベート用語 矢野善郎  Debate Forum Vol.X No.1, NAFA, 1994, pp.76--88 (抜粋)
  16. 一歩進んだTopicality 廣江厚夫  Debate Forum Vol.X No.3, NAFA, 1994, pp.194--208Debate Forum のページで見ることができます。)
  17. 現代ディベート通論増訂版 全日本英語討論協会 蟹池 陽一監修 1986
  18. “THE AFFIRMATIVE TOPICALITY BURDEN: ANY REASONABLE EXAMPLE OF THE RESOLUTION”, Dale A. Herbeck and John P. Katsulas, JAFA vol.21, Winter 1985, pp.133--145
  19. 自然言語処理 長尾真編 岩波講座ソフトウェア科学15


質問・いちゃもんは
ahiroe@wa2.so-net.ne.jp
まで。

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Debate Forum Vol.X No.1(NAFA出版1994年)の 『Close-Up No.17: 不適切な英語ディベート用語』(矢野善郎著) より抜粋:

“definition”と“violation”

トピカリティー(命題性)に関する議論で、“definition”と“violation” という用語は日米ともに使われております。この事は『初心者のためのディ ベートQ&A』の監修過程で議論されたのですが、それが指している内容は微妙 に異なっているようです。

日本の場合、“definition”というと、辞書に載っている定義の文言それだ けを指し、“violation”というと、その辞書の文言から外れているかどうか を意味しています。しかし、米国では“definition”というのは辞書の文言そ のものではなく、ディベート上どのように適用され解釈されるのかという実際 上の「定義(解釈)」をも意味します。また、“violation”も、辞書の文面 から外れているかではなく、その辞書をもとにした実際上の「定義(解釈)」 が、トピカリティー評価上のスタンダード(基準)、例えば文法、に「違反し ているかどうか」に関して用いられるものです。

きわめて微妙な差ですが、これが例えばトピカリティー理論の解説を読む際 などに影響してきます。例えば“any reasonable definition”や“better definition”という場合、日本の用法では「妥当な辞書の文言」や「より良い 辞書の文言」と、辞書の文言の当否や優劣に還元されてしまいます。

かなり定着しているために異論があるかもしれませんが、トピカリティーの 用語法も米国のものに合わせることが、議論の習得上、実質的に有効だと考え られます。そもそもトピカリティーの議論は、辞書の文言の当否・優劣などで 議論されるべきものではないからです。(辞書に載っている文言は、全て妥当 な意味が書いてあるはずですし、その文言に優劣が付けられるはずがあり ません。) トピカリティーの議論の中心はむしろ、コンテクスト的にどうか 等、辞書の文言そのものではなく、その文言がディベートで実際にどのように 解釈されるかなのです。だから辞書の文言に過度にこだわる日本のディベート の弊害は少しは解消されるかもしれません。

“Violation”の方は、“definition”の意味内容が変わると自然と米国で 用いられている意味内容に変わらざるをえません。付随的ではありますが、 文法的にもそちらの方が望ましいでしょう。というのも、文法的には規則や ルールに violate できても、辞書の文言に violate するというのは不適切 だからです。

(pp.85--86)