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海岸動物拾い歩き記 99




ヒメゴウナ(マキギヌ、マキギヌガイ、キスガイ、ハナシクチキレ)について

2012・2・21
田中利雄

 4年前の2008年4月1日に、伊良湖岬の近くの浜でトウガタガイ科のヒメゴウナを拾い、このHPの82に書きましたが、この日、同じ和地町の浜辺で、また1個拾いました。それは前のより色が濃いものでした(写真1)。殻高は18mmで、幅は5mmでした。殻の色は、生きている時は黒いが、死ぬと段々色が褪せて白くなるというので、今回のものの方がより新鮮であったようです。

写真1 写真2

 別名が色々あるようなので、手持ちの図鑑などを調べてみました。

 1950の吉良哲明『原色日本貝類図鑑・改訂増補版』保育社では、「ヒメゴウナActaeopyramis exmia (LISCHKE)」として2個体の実物大の図(写真2、殻高と幅は18mm×5mmと、25mm×7mm)があります。そして別名「ハナシクチキレ」を載せています。この“歯無口切”の名は軸襞が無く捩じ込み状であるためだという。

 ところで、同書には別種として「マキギヌ(マキモノガイ、キスガイ)Leucotina gigantea (DUNKER)」を2個体(28mm×14mmと34mm×12mm)を載せていますが、これは、太くてやや大きく、白色で、黄褐色の薄皮を被るとあり、別種のようです。2個体の写真には違いがみられ、その記載文には、「螺塔の高い細長い型と、螺塔の低い太短い型とがみられる。あるいは雌雄型か」と書いてありますがヒメゴウナとは別物のようです。

 1967の波部忠重・小管貞男『標準原色図鑑全集 3 貝』保育社では、「ヒメゴウナ」と「マキモノガイ」(学名は上記と同じ)の2種(写真3、ヒメゴウナ18mm×5mm、マキモノガイ29mm×11mm)を載せています。なお欄外註に、「トウガタガイ科の日本産には450種があり、雌雄同体でえらや歯舌がない。寄生生活する種が多い。ヒメゴウナ(姫寄虫)。マキモノガイの別名はキスガイ」とありますが、どのように寄生するのかは書いてありません。

写真3

 1975の波部忠重『学研中高生図鑑 8 貝類 U』株式会社学習研究社では、『マキギヌガイ Actaeopyramis eximia(Lischke)](写真4)として、別名をキスガイ、ヒメゴウナとしています。黒褐色で、殻高3cm、殻径0.8cmと書いてありますが、図を測定し倍率で割ると、15mm×5mmという価になります。それで記載文は間違っていることになります。

写真4

 1978の黒田徳米・波部忠重・大山桂『生物学御研究所編 相模湾産貝類』丸善株式会社では、「ヒメゴウナ、姫寄居虫、(江戸時代の図譜・丹敷能浦裏に和名の初出がある)、Actaenomyramis eximia (Lischke,1872)](写真5)としている。記載が正確なので、これを再録します。

 殻は中小形、厚質、高塔形。螺層は約11階、螺層の膨らみは弱く、縫合は浅いかやや溝状で、殻表に8〜9条あり、体層では殻底まで含めて20条に及び、肋間は肋より狭い。黒色の薄い殻皮で覆われるが、死殻では黄褐色、殻頂の方では白色。体層は殻高の1/2より低く、殻口は卵形。軸唇は白色で少しく厚く、軸ひだは甚だ弱い。蓋は卵形(ただし、図はない)、薄質、黄色で小旋形。殻高18.2mm、殻径5.5mm。模式産地:東京湾。産地:相模湾(生貝)。分布:本州・四国・九州、潮間帯より水深10〜50mの細砂泥底。

 1993の肥後駿一・後藤芳央『日本及び周辺地域産軟体動物総目録』潟Gル貝類出版局(八尾)では、ヒメゴウナ(江戸時代の図譜・丹敷能浦裏に和名が初出)Actaepyramis eximis (LISCHKE,1872) = キスガイ(江戸時代の図譜・渚の丹敷、1803)、ハナシクチキレ(岩川、1919)、マキギヌ。分布が詳しく、房総半島以南、志摩半島、瀬戸内海、九州北西岸・男鹿半島以南、佐渡島、田島沖、山口県見島(潮〜60m、砂泥底)。これは図鑑ではないので図は無い。

写真5 写真6

 2000の奥谷喬司『日本近海産貝類図鑑』東海大学出版会では、ヒメゴウナMonotygna eximia (Lischke、1872)(写真6)とされている。その外に他書との違いは、幼貝は白色で、成殻層は褐色、軸唇に襞が1個ある。別名として、マキギヌ、キスガイ、というぐらいです。しかし、これまでの学名が新しくなっています。

 以上の如しですが、寄生性だということに関しては、具体的な叙述がありませんでした。


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