望遠鏡 光学メモ




1.TSA-102 のストレールレシオの試算。

100mmクラスの EDアポクロマート ※ 屈折望遠鏡の中でも優れた分解能の、タカハシ・TSA-102。良好な
ストレールレシオ (
Strehl ratio) である、99%の数値を公開していますが (オハラ・FPL−53 使用)、
その計算値について、少々シミュレーション&検証をしてみます。 (参考) 
タカハシ・欧州 

肉眼の分光感度は、明所比視感度及び暗所比視感度では、50nm程の差異が生じますので、C-g迄の5線に関して、その平均値を取っています(明暗所視平均比視感度)  
肉眼テスト

以下に、その数値を列記しています。F8の明るさなので、各色の焦点距離の許容値は、0.13〜0.20mm。
C-F線間は軸線から周辺の全ての領域で、許容値の中に100%入っています。g線はやや許容値から外に出ていますが、感度のウェイトが低いので、大きい数値にはなっていません。明所視感度・暗所視感度の、平均の
ストレール比は約 97%。眼視・写真双方においても、良好な分解能・解像度・色表現となっています。



※ アポクロマートの定量的定義 (基準) とは?

一般的には、可視光全域 (770-400nm/A'-h線)で、
ストレールレシオ 80% 以上、とされます。


102mm・3枚玉アポクロマート


※ ストレールレシオ試算表 (TSA-102 ・ 816mm F8.0)
 e線 基準


波長 λ (mm) 平均比視感度(%) レイリー値 (mm) 許容割合 ストレール比 (%)
C線・ 0.000656 10 0.204 (0.170) 1.0 10
d線・ 0.000587 25 0.183 (0.170) 1.0 25
e線・ 0.000546 30 0.170 1.0 30
F線・ 0.000486 25 0.151 (0.170) 1.0 25
g線・ 0.000435 10 0.135 (0.170) 0.5
100 97 %


レイリー値 ≒ 球面収差許容値(軸上焦点距離差の許容範囲) ≒  
2.44xλxFxFx2




2.球面収差図、対物レンズの特性

公開されている各社屈折望遠鏡の対物レンズの球面収差図を見ると、機種毎に差異があり大変興味深いです。やはりアクロマートとED・フローライトアポでは、大きな差異があります。(参考資料) 
ビクセン-marketing

アクロマートの特性としては、短焦点になるとC・F・g線が d-e線とかなり乖離することです。光量のある対象(月等)においては、C-e線間の光が拡散しピントが甘くなります。一方星野に関しては、F-g線間の光が極端に拡散し、倍率を上げると星像が暗く、かつ視野が低コントラストとなります。 

同じレンズ構成の設計の場合、口径が小さいほどストレール比 (
Strehl ratio) は向上します。

ストレールレシオの図式化 




3.ドーズ限界値・分解能の検証。

一般に分解能の基準とされているドーズの限界値は、あくまで経験則での値で、その数値は理論的エアリーディスクの半径に近似します。(レイリー値がちょうど半径の数値)、よって近接した等光二重星は、エアリーディスクが各々半分重なりあったピーナッツ形状ということになります。

しかしながら、良好な光学系(ストレールレシオが概ね80%以上)での観測では、微星において、それよりも小さな数値になることがしばしばあります。ディスクの周辺光量が、肉眼で認知可能な数値を下回り、理論値よりも小さく見える様子です。観測時の倍率は高め (口径mmの、3倍程度)が良いです。 
アイピース・光学メモ

口径 100mmクラスの望遠鏡において、理論的エアリーディスク径は約 2.4秒。但し8等級以下の場合はそれよりも小さなサイズで、約 1.2秒前後 ・・・理論値の約半分の大きさまで向上するようです。

一方、大口径においては気流や光学精度次第で、しばしばエアリーディスクと第一リングが融合し、エアリーディスクが約2倍、あるいはそれ以上に拡大しがちです。100mmの小口径と300mmの大口径のエアリーディスク半径 ≒分解能が同じになるということもしばしば起こります。本州では、気流の影響を考えると、高精度の120〜130mmクラスの屈折レンズが、ベターな対物光学系という感触です。

120mmアポクロマート ・ 130mmアポクロマート




4.ドーズ限界値・分解能の検証 (2)

分解能 1秒角は、月面においては約 2kmに相当しますが、100mmフローライト・スーパーED屈折望遠鏡で気流に恵まれれば、プラトー内部にある小4クレーター(直径 2km強)を検出することが出来ます。一方、メータークラスの大口径望遠鏡でも、近隣の1kmクラスのクレーターの検出は困難の様子です。

日本での地上観測では、口径 250mm超の望遠鏡でも大気の擾乱により、分解能 (星像)が1秒角から大きく向上することは滅多にありません。国内(本州)の天文台等の、口径 400−2000mmクラスの望遠鏡でさえ、最良条件で、250mmクラスとほぼ同じエアリーディスク直径(1秒角)となります。




5.ストレールレシオと、解像力(分解能)の検証

望遠鏡の分解能 (解像力) は、口径とストレールレシオでほぼ決定されます。基準の望遠鏡の基礎点、即ち、
無収差光学系の解像力より減算することにより求められます。

102mm基準 (70点)、口径差1.275倍で10点差。理論星像からの乖離分を、基礎点より減点する採点方法を採ると、点数の目安は、
基礎点−((100−ストレールレシオ設計値)/5)−2 となります。
 (ストレールレシオが60%以上の場合、−2は公差分とする)


(一覧表)

ストレール比 % 減算点
- -
100 −0
90 −2
80 −4
70 −6
60 −8
50 −12
40 −18
30 −28


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6.シーイング調査


シーイング(気流)の調査は、国立大学等で行われています。シーイングの定義は、肥大した星像(エアリーディスク)の半径とされます。 

比較的気流の落ち着いた、広島〜岡山においての平均的なエアリーディスク直径は、約2秒とされますので、その半径 ≒ シーイングは1秒ということになります。即ち、口径 120mmの分解能相当値です。(故に、120mmクラスの屈折望遠鏡が、
費用対効果が最も高い光学系とされている)

実際の測定値においても、平均的な数値は 1秒前後、最も安定した時は0.5秒未満になる時もあるようです。季節変化は意外に少なく、冬季においても条件に恵まれれば1秒前後が期待できるようです。

望遠鏡光学の考察



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