●目次

第1話

第2話

第3話

第4話

第5話

 

第1話「ローズゼラニウム」

 切れ込みのある葉。かわいらしいピンク色の花。そして、普通の(魚臭いような嫌な匂いがする)ゼラニウムと決定的に違っているのが、バラの香りがするということ。
 お店で一目見て、いい香りだと思って購入した。春のことだった。その時、「鉢なりに成長しますよ」と言われたけれど、園芸初心者の私は勝手に、鉢が小さければ大きくならないのだと思い込み、そのまま育てていた。
 最初は、かわいい花が咲き、葉もぐんぐん伸び、なんて育てやすい植物だろうと感心していた。育てやすいと言われるラベンダーを枯らせてしまい、自信を無くしていた私にとって救いですらあった。ところが…。
茎はどこまでも伸びていく。頂点部分を切って、芯を止めたら、ますます横に、ひょろひょろにょろにょろ、曲がりくねりながら伸びていく。
 鋏を入れると、ますます変形していく。もういいや、と思い、窓辺において10日に一度、水をやるかやらないか位のペースで、冬の間ぼうぼうに伸びているのを放っておいた。それでも、鉢植えがカラカラに乾いていても、ローズゼラニウムは、奴は、生きている。
 剪定したときに適当に鉢に挿しておいたのも、いつの間にか根がついて伸び、水に挿していた花茎からも、白い根がでていた。
 なんだか恐ろしくなってくる。最初一鉢だったのが、すでに3つに増えている。
 冬の間放っておいたうちに、鉢丈の4倍、いや5倍くらいの長さに伸び、広がり、茎は捻じ曲がり、収拾がつかない姿になっていた。
 もう、仕方がない。もしも、枯れたら、枝を挿せば増やせるのだし。そう思って、葉を一枚も残さずに、木化した根元だけを残して枝を切り落とした。そうして、様子を見ていたら…。
 一週間も経たないうちに、節々から小さな緑の葉が。
 なんて逞しい植物。…葉の伸び方が早すぎて、本当に怖い。この伸び方が、ローズゼラニウムとして普通というなら、そんなに怖くないけれど、私のところのだけが、異様に育つのだとしたら…。まあ、考えすぎないことにしよう。

 

第2話「タイム」

 今年(2000年)の春、ハーブの苗を売っているお店に行った。買ったのは、トリカラーセージ(ピンクとクリームの斑入り)、レイタータイム(匍匐性で踏みつけに強い)、オレンジタイム(オレンジの香り)、シルバークイーンタイム(葉に銀からクリーム色の縁取り)。
 レジで
「タイムがお好きなんですね」
 と、言われた。
「え…?」
 思いがけない言葉に聞こえて、焦った。
 考えてみると、タイムの苗を3つ購入したんだから、当然のセリフなのだろう。でも…。タイムが好きなんて。
 今まで、タイムにはずっと手を焼いてきたんである。まあ、簡単に言うと、今までのタイムは(苗も種から育てたものも)、みんな枯れた…ということ。それも、一度や二度じゃなく、もう何度も。
 苗を植えたらすぐに枯れること2・3回。生き残っても、成長が悪く急に枯死。
 …本を見て、土や水遣りに気をつけたつもりでも、それでも、ダメダメなんである。
 だから、「好きか」と言われても、どこか素直には頷けない。でも、何度も何度も枯れているのにタイムの苗を見ると、つい欲しくなって買ってしまうのである。
 これは、やっぱり……タイムが好きってことなのかもしれない。

 

第3話「ミント」

 ミントといえば、清涼感のあるメントール。殺菌力があると言われており、ハーブで作った植物用の虫除け散布剤にも含まれている。
 そのうえ、生命力旺盛で、地植えにするとはこびるので、土中を区切っておいた方がいいとまで言われている。
 だから、安心して、水を掛けるくらいにしていた。じっくり見ていなかった。
 ところが…。
 ある日ミントを見ると、茎にびっちりと緑色のつぶつぶが。
「ぎゃー!」と、思った。
 …アブラムシだ。
 それも、樹液をたらふく吸ったのか、大きく膨らんだ奴らが、大量に。
 ミントにアブラムシがつくなんて! 虫除け用ハーブ液の主成分なのに。
 やっぱり、普通のミント(スペアミント・ペパーミント)じゃないから虫がつきやすいのだろうか。

 植えていたミントは、アップルミントとオーデコロンミント。どちらもとてもいい香りで、特にアップルミントは収穫してお茶にしようと思っていた。
 それなのに…。
 株ごと水に浸す、牛乳をかける、葉の裏に霧吹く、などなど色々試してみたけれどどれも一時的に減るだけ。あとは、手作業で、ひたすらアブラムシを取り除く…。 
 そのうちに、小さな白い虫までが飛び交いはじめた。コナジラミとかいう奴らしい。
 …もうだめだ!!
 アブラムシ用の殺虫剤をかけた。…ミントティーは諦めた。去年の話である。
 今年は、アブラムシがつかないように、木酢液(炭を作る時に出来る液)で予防している。…今のところ、無事。

 

第4話「キャットミント」

 するりと伸びた花穂の先に、薄いラベンダー色の小さな花が集まって咲いている。キャットミントは、葉も花も小さくてかわいらしい。けれど、花をよく見ると、ワニが口を開けたような姿! で、ローズマリーにちょっと似ている。
 ギザギザで囲まれた小さな葉は、葉脈がしっかりついていて、少し灰色を帯びている。
 そっと指でなぞってみると、滑々としているのが判る。そして、独特の臭いが手に残る。…ネコが好むという、何ともいえない匂い。
  キャットミントの他に、ネコが好むハーブに、キャットニップがある。この2つ、本によっては一緒に載っているほど似ているけれど、葉の形や香りがちょっとだけ違う。キャットニップは、葉がとんがった三角形をしていて、ミントの臭いが強いと言われている。
 また、「どちらもネコが好む」と書いてある本もあれば、「ネコはキャットニップを好んで、キャットミントは避ける」なんて書いてある本もある。
 …そこで、キャットミントしかないけれど、とりあえず、知り合いの飼っている雌ネコで試してみることにした。
 キャットミントの枝を折って、ネコの鼻先で振ってみる。
 すると、嫌な顔をして顔を避けた。何度試しても同じだった。
 …もしかしたら、マタタビと同じで、雄ネコじゃないとあまり効果がないのかもしれない。それに、一匹で試しただけで、結論をだすわけにもいかない。…ちなみに、この雌ネコは、柑橘類の匂いが好きという、変わった好み? を持っている。
 さらに厄介なことに、ミントには交配しやすいという性質がある。もしかしたら、植えているオーデコロンミントやアップルミントと交配して、ネコの嫌いな香りが混ざってしまったのかもしれない。
 結局、キャットニップとキャットミント、ネコが好むのかどうかは謎のまま……。
 この2つのハーブについては、もう一つ、疑問に思っていることがある。
 それは、キャットニップの和名がどうしてイヌハッカなのかということ。ネコじゃなくてイヌ…? 謎である。

 

第5話「ヒソップ」

 去年植えていたヒソップの白花が、寄せ植えだからか、1年目だからか、咲かなかった。
 種から育てた唯一のハーブ、ヒソップの青花があるので、桃花の苗を購入して、3色揃えよう! という野望を抱いて、ハーブガーデンの通販に申し込んだ。
 今年の春の話である。

 しかし、注文した時期が遅かったためか、桃花ヒソップは売りきれていた。
 でも、まあ、来年にまた注文すればいいんだし。と、思っていた。

 夏になって、まず、青色から咲きはじめた。
 茎の片側にだけ花がついている。
 こういう花なんだなあと思いながら本を見ると、そんなことはどこにも書いてなくて、ただ「総状に咲く」とある。…もしかしたら、日当たりが悪いか、栄養が足りないかで、片側だけなのかもしれない
 小さな薄青の花に、黄色い花粉が目立っている。
 白花にも、小さな花芽がついてきた。
 いつ咲くだろう?
 今日は、まだ?
 と、思って見ていたら…。

 ある日、桃色の花! が咲いていた。

 白花ヒソップだったはずなのに……なぜ?
 去年買った苗の表示が間違っていただけなのか、突然変異で桃色に変わったのか。
 その後、次々に咲く花もみんな桃色なので、たぶん前者なのだろうけど。
 この桃花も、なぜか、茎の片側にだけ花がついていた。

 注文していた桃花の苗が、売りきれていて良かったなあ…と、今にして思う。
 3色揃えたつもりで、桃色が2つだったら悲しい。
 偶然に感謝している。

 来年は、白花の苗を買って、野望通りに3色のヒソップを揃えたいと思う。

 

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