虹と少女

 澄み渡った青空。さんさんと降り注ぐ光が、たわわに実った柿を輝かせている。
 ランドセルを背負って道を歩いていた少女は、ふと足を止めた。砂利の駐車場でコスモスが揺れている。
 少女がコスモスに手を伸ばすと、停めてある車の下から一匹の猫が飛び出した。こげ茶色の縞模様が波打ち、ふさふさの尻尾がふわりと弧を描く。
 少女は猫を捕まえようと、そっと近づいて手を伸ばした。
 猫は少女の手をするりと避けて、ブロック塀の角を曲がっていく。
 あわてて角を曲がった少女は立ち止まった。
 ブロック塀の前に、縞模様の猫が二匹いる。ぴんと尖った耳も、白い前足も、緑の瞳も一緒だ。
 少女がそっと近づくと、二匹の猫は一緒に駆け出した。電柱を回りこんで、生垣の角を曲がって行く。
 少女は二匹の消えた角を曲がると、眼を見開いた。
 同じ模様の猫が四匹に増えている。
 一匹は丸まり、二匹目は足を開いて、三匹目は首を後ろにまわし、四匹目は前足を持ち上げて、各々毛繕いをしている。
 少女が一匹に近づくと、猫たちは一斉に立ち上がって駆け出した。
 少女は必死に追いかけた。猫の後を追って、公園の柔らかい枯葉を踏みしめて、錆びた遊具の間を通って。
 再び道路に出て角を曲がる。と、少女は息を呑んだ。
 また、同じ模様の猫が増えている。
 舗装の上に四匹、側溝の上に三匹、手芸店の看板の前に一匹。全部で八匹。
 少女は手芸店へ駆けこんだ。色違いのリボンを八本買って、大急ぎで外へ飛び出す。
 猫の一匹に近寄って、首に紫のリボンを巻きつけた。続いて藍、青、緑、黄、橙、赤と次々に巻いていく。
 白いリボンを手に近づくと、最後の猫は逃げ出した。リボンを巻いた猫たちも一斉に駆け出す。
 少女は息を切らせて追いかけた。
 煙草屋の角を曲がると、少女は首をひねって辺りを見回した。
 縞模様の猫が一匹いる。
 少女がゆっくり近づくと、猫は甘え声を上げながら擦り寄った。
 猫の長い毛を掻き分けると、首に虹色のリボンが巻かれていた。

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