よろずや「漂亮(ピオラン)」奇効奇談

〜桃花源春香と胡風薔薇園のこと〜

 この世のどこかにその店はあるそうです。その名は「漂亮」。よろずやです。
 店で扱う品物は、どんな願いや望みも叶えてしまうというのです。悪人、善人、区別もなく、その目的に拘らず、ありとあらゆる願いごとを。


「……ですか? それとも、死命の身となってでも叶えたいのでしょうか?」
 低い男の声が、淡々と告げた。
「私は……」
 しばらくためらった末に、女人は桃紅色の唇を開いた。
「最後のにいたしましょう」
「わかりました。では、あなたの願いどおりに」

 
 一人の娘が、人影の疎らな道を大急ぎで駆けていた。
「待て! 窃賊め」
 男の怒鳴り声が後ろから聞こえてくる。娘はちらりと横を見ると、明るい茶色の瞳を大きく見開いた。
 道に沿うように長く続く柘植の生垣。その向こうに、胡風の大きな建物がそびえている。
(美術館!)
 生垣の間にわずかな隙間を見つけると、娘はためらうこともなく、細い身体を滑りこませた。
「ちくしょう。どこへ行きやがった!?」
 怒鳴り声と共に、男が通り過ぎて行く。娘は折れた枝や葉を身体にくっつけたまま、じっと息を殺していた。
 やがて、男の足音が聞こえなくなると、娘は大きく息を吐き出した。
「はぁ……」
 途端に、むせ返るような甘い香りが娘を包みこんだ。
 藍色の空の下、うなだれるように花首を下げて、杏色の薔薇、香粉蓮がいくつも咲いている。その奥で、手毬のような形をした薄桃色の儚げな薔薇、紛粧楼が並んでいた。
 並ぶ淡い色の薔薇の向こうに、煉瓦造りの美術館があった。
 二階部分にある胡風な露台を、白い石柱が六本横に並んで支えている。その柱に、木香薔薇が巻きついて黄色い小さな花をいくつも咲かせていた。白い柱に、葉の濃い緑色と花の鮮やかな黄色が、よく映えている。
 夕刻が近いからだろうか。娘のいる胡風庭園に他の者の姿はない。美術館は既に、閉館しているのかもしれない。
 咲き乱れる薔薇をぼうっと見つめていた娘は、ため息混じりに呟いた。
「ああ、腹減った」
 両手を地面について、がっくりと肩を落とす。
 この娘、名をチュンという。物心ついた頃から町から町へ転々とし、日々の糧のために窃盗を働く暮らしを繰りかえしていた。
 チュンは長い黒髪を無造作に一つに結い上げて、まるで痩せた身体を隠すようにだぶだぶの衣を纏っている。ところが、大きすぎる衣裳は、かえって娘の手足の筋張った細さを際立たせていた。
 チュンは、交易路上にあるこの都市へ、五日前に来たばかり。人も多く物も多いこの街で、一つ金目の大物を手に入れて、窃賊流浪暮らしから手を洗うつもりだったのだ。
 娘は眉間を寄せて、自分の手を見つめた。
(だいたい、まだ何にも盗っちゃいないのに、窃賊呼ばわりしやがって)
 もちろん娘は、香味漂う蒸したての肉包子を無銭にて籠ごと頂戴するつもりだったのだが。
「あ〜あ」
(失敗、失敗)
 娘はふらりと立ち上がると、身体についた木の葉を手で叩き落した。薔薇の間を通り抜けて、建物に向かって近づいていく。
 石柱に巻きついている木香薔薇は、露台の手すりにまで巻きついて伸びていた。つるには棘がなく、しなやかだ。
 娘は、露台に続く木戸を見つめた。
(あそこの窓から入れそうだな)
 建物の中には、胡風の画がいくつも並んでいるという話。
(きっと高値で売れる)
 夕刻を告げる鐘の音が高楼から低く響いた。娘は首を縮めると、素早く辺りを見回した。
(今夜潜入しようか?)
 娘は建物に沿って、ゆっくりと歩きはじめた。なるべく、散歩しているように見えるように。薔薇の前で「好看!」と呟きながら、花へ顔を寄せて芳香をかぐふりをしながら、横目で建物の様子を窺った。
 美術館の灯りは全て消え、入り口は分厚い鋳物の扉で閉じられて閂がかけられていた。あの大きな閂を動かせば、かなり大きな音が出るだろう。それに、美術館横の建物から、管理員が駆けつけてくるに違いない。
「あ〜あ、もう閉まってるのね」
 娘は建物の入り口を見て、柄にもなくかわいらしい声でがっかりしているふりをした。そのまま何気ない足取りで、白木香薔薇の巻きつく拱門を潜って外へ出た。


 月明かりが柔らかく薔薇を照らす中、娘はひっそりと庭園の中にいた。木香薔薇のつるを引っ張ると、首を傾げる。
(やっぱり、これを登るのは無理か)
 娘は懐から縄梯子を取り出すと、腕まくりをして、上へ向かって投げ入れた。梯子の先端につけた鉤がうまく露台の手すりに引っかかったようだ。
 靴を脱いで薔薇の根元に隠すと、娘は縄梯子を静かによじ登って行った。
 甘い香りと共に風が吹いて、娘を乗せた縄梯子が横に揺れた。薔薇の咲き乱れる石柱に、背中がぶつかる。
(いててて)
 娘は背中をさすることもできず、顔をしかめて手足を動かした。
 やっとで露台に着くと、身を低くして素早く縄梯子を巻き上げる。軽く息を整えてから、娘はそっと木戸を押した。戸はぴったりと閉じたまま。びくともしない。
(ああ、そうか)
 娘は小刀を取り出して、戸に突き立ててぐいっと引いた。僅かに動いたな隙間に指を入れて引くと、小さな軋み音を立てて、戸が開いた。
(よしっ)
 娘ははやる気持ちを押さえて、そっと中へ入って行った。
 石造りの部屋は大きく、冷やりとしている。
 娘は音を立てないようにゆっくりと歩きながら、月明かりを頼りに、画の並ぶ壁へ近づいていった。
 薄明りの射す先に、一枚の大きな画があった。なにやら人物が描いてあるようだ。画の下に「竹林の七賢・胡風油画」とある。
(これだけ大きいと、高値だろうなぁ)
 娘はため息をついた。目の前の画は大きすぎて、独りで持ち上げることなどできそうにない。
 娘はすぐ横の、小さめの画に近づいた。薄暗い中で目を凝らすと、やはり人物画のようだ。「桃花源三女人春香・胡風油画」とある。
 娘はそっと、画を壁から外すと、月明かりに照らし出した。
 紅や薄紅色の桃の花が咲き乱れる中を、胡風の衣裳を着けた三人の女人が舞っている。三人とも美しい顔立ちで、艶々の黒髪を結い上げていた。
 中でも、一番大きく描かれている女人は、まるで生きているかのように、活き活きとした表情をしている。
(美人画だったら、きっと買いたい男人は多いよ)
 娘は「桃花源三女人春香」を床に置こうとした。その時、月光が画に当たって、女人の青い瞳が強く輝きながら、ちらりと娘を見つめた。
(あっ、見られた!)
 娘は思わず、画を取り落としていた。
 石の床に画の額が当って、高らかに音を響かせた。
 娘は蒼ざめると、慌てて袂から布を取り出して、床に落ちた画を包みはじめた。額から流れる汗を、袖で拭う。
 画を包んだ布を背負うと、娘は急いで露台へ飛び出した。縄梯子を下ろして、滑り降りるように降りていく。手足が思うように動かないのに苛立って、娘は縄を放して地面に飛び降りた。
 誰何の声も、追ってくる物音も聞こえない。けれど、娘は恐ろしくて、一目散に庭園を駆け抜けた。
 人影のない小道を通り、角をいくつも曲がって、娘は公園へたどり着いた。散策路から外れて、植えこみ陰の法国悟桐の木にもたれかかる。
 背負っていた布包みをおろすと、娘はほっと息を吐き出した。
(画の女人と目が合ったような気がしたなんて、どうかしている)
 娘は布の結び目を解いて、画を取り出した。
(あっ)
 娘は画を持ったまま、息が止まりそうになった。
 ない。どこにもない。画に描かれていたはずの、青い目の女人の姿がない。
 娘は怖々、画の面に手を滑らせた。顔料が盛り上がってでこぼこしている。だが、女人の描かれていた跡だけが、平滑だった。
(もしかして、落としたときに顔料が剥がれて……)
 娘は頭をうな垂れて、がっくりと肩を落とした。
 だが、落ちこんでばかりもいられない。画をどこかに処分しなければ足がつく。
 娘は再び画を包んで背負うと、とぼとぼと歩き出した。
(こんな傷のある画なんて、買う人がいるはずもない)
 当てもなく街を彷徨ううちに、娘はいつの間にか一軒の店の前に立っていた。
 色あせた木戸の隙間から、細く弱い光が漏れている。こんな夜更けに店を開けているようだ。
 古びた木製の看板に、焼きつけた文字で、「よろずや『漂亮』。どんな願いや望みも叶える品物あります」とあった。
 娘はごくりと喉を鳴らした。
(どんな願いも叶うなんて、まさか! ……でも)
 ちらりと、自分の肩越しに画を振り返る。
(この画を直せる品物もあるっていうこと?)
 娘は木戸に手をかけると、そっと押し開けた。


 店の中は、殺風景でやけに物が少なかった。
 部屋の中央に、茶房にあるような、籐を編みこんだ丸い卓子と、背もたれつきの籐椅子が二つある。卓子の上には、煤油灯が一つ置いてあって、辺りを飴色に照らし出していた。
 品物らしいものといえば、店の右側の棚に並べられた、さまざまな形の壷や皿のみ。奥の壁際の床に木箱が一つ置いてあるだけだ。
 娘は首を傾げた。
(これで、よろずや……?)
 店主の姿も、どこにもない。
(なんて、無用心な)
 娘はつかつかと棚に向かった。
 と、その時。後ろから風が吹き吹きこんできて、娘の後れ毛を逆立てた。仄かに甘い花の香りがする。
 娘は驚いて振り向いた。
 風に乱れ舞う花びらの中に、一人の背の高い男が立っていた。整った白い顔。まばらに垂らした長い前髪の間から、切れ長な黒い瞳が覗いている。
 娘は呆然と、男の姿を見つめていた。
 男は娘に気づくと、微笑んで口を開いた。
「お待たせしてすみません。ここはよろずや『漂亮』。私は店主のワイ・シィワンです」
 よく響く低い声で言い終えると、男は流れるような動作で頭を垂れた。
「あ、ええと。その」
 娘は、あわてて棚から離れると、早口で続けた。
「灯りが見えたので、少し覗いてみただけです。その、どんな品物があるのかと思って」
 娘はちらりと戸口を見つめた。店の雰囲気といい、品のよさそうな店主といい、なんだか自分には不釣合いな気がして、居心地が悪くなったのだ。
「そうでしたか。どうぞ、こちらでお茶でも飲みながら休んでいってください」
 店主が、椅子を示しながら言う。娘は「お茶」と聞いて、思わず自分の腹部を押さえた。
(そういえば、昨日から何も食べてない……)
 店主は娘に背を向けて、木箱から茶具を取り出している。娘は背負っていた布包みを床に下ろすと、椅子に腰掛けた。
 娘の足元にも、卓子の上にも、花びらが落ちている。娘は薄紅色の花びらを一つ、指でつまみ上げた。
(桃の花? まさか、今の季節に?)
 娘はごくりと唾を飲みこんだ。
(そういえば、さっきの風はどこから入ったんだろう?)
「お待たせしました」
 店主は竹製の茶盤に、桃の絵模様の磁器製茶具を載せて運んできた。慣れた手つきで蓋碗にころころとした形の茶葉を入れ、黒い磁器の水壷を高く持ち上げて、お湯を注ぎ入れる。
 娘はぼんやりと、店主の動作を見つめていた。
(こんな風に誰かにお茶を入れてもらうのって、生まれて初めてだ)
 店主は紅に近い水色のお茶を碗に注いで、娘に差し出した。
「どうぞ」
 娘は口の中でお礼を言って、暖かい碗を受け取った。一口飲むと、甘く、仄かに蜜のような香りがした。
 娘は碗を手に持ったまま、がらんとした店内を見回して訊ねた。
「あの。ここは開店したばかりなんですか?」
 店主は静かに微笑んで、口を開いた。
「いいえ。前からやっております」
 娘は首を傾げて、訊いた。
「ここでは、どんな物を売っているんですか?」
「願いや望みを叶える、道具や薬を扱っております」
 店主は淡々と答えると、切れ長な涼しい瞳で娘を見ながら続けた。
「何か、ご希望でもございますか?」
 娘は首をひねった。
(希望……。お腹が空きすぎて、食べ物のことしか思い浮かばない)
「あなたのお持ちの画などで、お困りではありませんか?」
 店主の静かな声が響いた。
 娘は驚いて、穴の開くほど店主を見つめた。それから、はっとして、自分の足元に置いた四角い布包みを見つめた。
(そっか。これを見れば、誰でも気づくか)
 娘はお茶を一気に飲み干すと、布包みを膝の上へのせた。結び目を解いて、中から画を取り出す。
 娘は、画を店主にも見えるように持ち上げて、訊ねた。
「これを直せる?」
「よい品物があります」  店主は娘に背を向けて、木箱へ手を伸ばした。手の平に小さな黒い種のようなものを取り出すと、微笑んで言った。
「これを画の欠けた部分へ埋めこむと、一年程で元の通りになりますよ」
 娘は眉を寄せた。
「一年もかかるんじゃあ、遅すぎだよ」
「そうですよね。すみません」
 店主は謝りながら、品物を素早く箱へ戻した。娘は疑わしげに、店主の背中を見つめた。
(どこか、自信のなさそうな店主だ)
「これなど如何でしょう?」
 店主は南方風の女人の描かれた薄紙を取り出した。「桃花源三女人春香」に描かれていた女人よりも恰幅が良く、浅黒い肌色をしている。
 娘はあからさまに顔をしかめて言った。
「そんなの貼り付けたら、境目だって目立つし、子供にだってすぐに筆運びが違うってばれるよ」
 店主は軽く微笑んで、口を開いた。
「この画の女人は化けるのですよ。あなたがお持ちの画に描かれていた女人とそっくりに、欠けた部分を埋めてくれることでしょう」
「化けるだって?」
 娘はまじまじと、薄紙を見つめた。
「あっ!」
 見る間に画の女人の肌の色が白く変わり、南方風の衣裳が胡風に変わった。
(すごい。法力か何かみたいだ)
「十環です」
 店主はにこやかに告げた。
(不思議な品物にしてはずいぶんと安い)
 だが、娘は一環もお金を持っていなかった。
「あの。後払いでは駄目? 今日は、その。財布を忘れてきていて……」
 娘は懐を探るふりをしながら言った。
「では、この品は、あなたのために。他の方には決して売らないようにしておきましょう」
「でも。その、困るんです!」
 娘は手を組んで、哀願するように言った。
「じつは、とってもお金に困っているんです。どんなに借金があっても、母が生前大切にしていたこの画だけは、お金に換えたくなかったのです。でも、食べるものにも困る毎日。借金はどんどん膨れるばかり。とうとう、近日中にこの画を手放すことになってしまいました」
 娘は、口からでまかせを続けた。
「ところが、不注意で画を台無しにしてしまい、直すこともできずに、お金を貸してくれる知り合いもなく、とっても困っていたんです」
「それは、大変なことです」
 店主はそう言って、棚へ歩いていくと陶磁器製の小さな壷を取った。娘の方へ歩み寄りながら、口を開く。
「では、これはどうでしょう? この薬を塗れば、すぐに画を直すことができて、一生食べ物に困らなくなります」
「でも、高いんでしょ?」
 娘が眉を寄せて訊くと、店主は口を開いた。
「いいえ。少量で済みますから、特別に無料にいたしましょう」
 娘は目を見開いて叫んだ。
「本当に? それじゃあ、その薬を頂戴!」
 店主は頷くと、壷の口から薄桃色の液体を手に取った。まず、最初に画の欠けた部分へ指で塗りつける。
 娘が、瞳を輝かせて画を見守っていると、店主は娘の鼻へ薬を塗りつけた。
「な、何?」
 娘の瞳に、奇妙に口元を歪めてニィっと笑う店主の姿が映った。あっと思った時には既に、娘は画の中へ吸いこまれていた。


 娘が目を覚ますと、二人の女人が上から覗きこむように見ていた。どちらも、黒い髪を結い上げて、胡風の薄絹を纏った美しい女人だ。
 娘は、訳が判らずに二人を見つめた。
(何だ?)
「良かったわ。妹が居なくなって、つまらなかったの」
 一人の女人はそう言いながら、娘を助け起こした。
「これからは、あなたが、私たちの妹になってくれるわよね」
 もう一人が念を押すように言いながら、娘の結い上げた黒髪を解いた。
「な、何をする……」
 娘は言いかけて、目を大きく見開いた。目の前に、薄桃色の花びらが落ちてきたのだ。
(これは……)
 娘の胸が、ちくりと疼いた。
「これで私たち、もう寂しくないわ」
 女人は、娘の髪を梳きながら、にっこりと微笑んで言った。
(これまで、どこに居たんだっけ?)
 娘は天を仰いだ。霞がかった空の下、紅や薄紅の桃の花が咲き乱れていた。
(綺麗……)
 娘はうっとりと、周りを取り囲むように咲いている花を見つめた。
(でも、どうして桃なんだろう?)
 なぜだか判らないけれど、娘は違う花に囲まれていたことがあったような気がした。
「あら、変わったものがついているわね」
 女人は、娘の髪の間から杏色の花びらをつまみあげた。
「あら、本当。いい香り」
 もう一人が、花びらの匂いを嗅ぎながら言う。
「あ、それは……」
 娘は首を傾げた。
(何の花びらだったかな。思い出せないわ)
「はい。結い上がったわよ」
 女人は娘の髪を青い細紐で結んで、にっこりと微笑んだ。
「あら、可愛い」
 もう一人は目を細めて、手鏡を差し出した。鏡面に、青い瞳の女人が映っていた。
「誰? どこかで見たことのある顔だわ」
 娘の言葉に、二人の女人は笑いながら言った。
「何を言っているの? あなたの顔に決まっているじゃない?」
「鏡を見たことがなかったの?」
「私は、違うわ。だって、私は……」
 娘は言いかけて、口をつぐんだ。
「どうしたの? ホンラン」
 女人が心配そうに言う。娘は思わず顔をあげた。
「違うわ。私の名前はチュ……」
(私。私の名前、何だったかしら?)
「あなたはホンランよ。間違いないわ」
「そうよ。あなたは、私たちの可愛い妹妹、ホンランよ」
 娘は二人の女人を見て、にっこりと微笑んだ。
「そうね。そうよね、姐姐」


 この世のどこかにその店はあるそうです。その名は「漂亮」。よろずやです。
 店で扱う品物は、どんな願いや望みも叶えてしまうというのです。悪人、善人、人外、どんなものでも区別もなく、その目的に拘らず、ありとあらゆる願いごとを。

(了)  

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