3 台北近郊一日游〜平渓線の旅


4/29(日)

 金門島へのフライト日程の調整で一日空いたので、この日は台湾のローカル線、平渓線へ出かけることにした。同線は1921(大正10年)に台北縣平渓郷で炭坑が開かれたことに伴い開通した全長12.9kmの盲腸線である。採掘は約20年前に終り、現在は鄙びたローカル線なのだが、炭坑跡のノスタルジックな沿線の雰囲気や、並行して走る基隆河の渓谷美もあって、日帰り観光の対象として人気があるらしい。先述の鉄道旅行ガイドブックにも筆頭に挙げられているほどである。

 朝9時過ぎの復興号列車で平渓線の実質始発駅である瑞芳(Ruifang)へ(52元)。10時過ぎに瑞芳到着後、一旦改札外へ出て切符を買い直して入場したのだが、他の人はホームにそのまま残って補票(乗越精算)している人が多かった。小一時間ホームで待つと、後続列車から家族連れの観光客がどんどん降りてきてホームが人で一杯になってしまった。

 お目当ての菁桐行列車はピカピカの気動車。件の本によれば日本製の新車で、観光路線として人気の出た台湾の各盲腸線(平渓・集集・内灣)に二年前に投入されたとのこと。空調付で快適なのだが、本に写真のある旧型気動車も味があって乗ってみたかったものである。編成はわずか3両で、あっという間に車内は大混雑になった。しかし、車内を見ていると、最初に我先にと争って席を確保してはいるものの、子ども連れだとお互いに席を譲り合っていて感心させられる。この辺り、大陸との違いを感じずにはいられない。

 本線から分岐するのはふた駅隣の三貂嶺からなのだが、そこまでは本線を逆走して恐かった。分岐後、すぐに渓谷地帯を走り出すのだが、いきなり線路を歩いている人が多くて驚かされる。というのも、この路線、渓谷に並行しているので、線路を歩いて移動するのが普通になってしまっているのである。本で紹介されている名瀑へは線路を歩いたほうが手っ取り早いという。というわけで、私も途中の大華站で下車して歩き出した。
 「禁止通行」の札の横を多くの家族連れが歩いていく様子は何とも妙である。それもそのはず、この路線は一時間に1本の運行間隔だから、時刻表をチェックしていれば問題ないのである。さすがにトンネルを歩くのは恐かったが…。こうして20分ほど歩いたところで、十分大瀑布への入口へ辿り着いた。ここは、観爆所の出入口が線路に向かってある(しかも駅はない)という面白いところである。入場料100元(本来200元らしいが何故か何も言わずに優待票を売ってくれた)を払って中に入るとありました、台湾のナイアガラと呼ばれる同滝が。規模は本家に比べればそうとうちんけだが見物である。もっとも、水の色が緑色で涼し気に欠ける。辺り一帯は公園になっており、バーベキューをしている人達が多かった。

 滝を出て、そのまま隣駅の十分站まで歩き通してしまう。途中に鉄橋を渡らなければならない箇所があるのだが、保線用の頼りない足場で、かつ制限人数が書いてあるのにどんどん歩いてくるのでおっかない。その鉄橋を渡った後は普通の道路を歩いて十分まで向かった。が、十分の駅周辺の集落部に入ったところで、今度は街と線路と駅が一体になっていて不思議な雰囲気であった。
 十分站から終点の菁桐站まで一気に乗り通す。構内には積み込みホッパーなどが残されており、更に奥のほうにはれんが造りの炭坑施設が、いい具合に侘びしく崩れつつ残されている。件の本に坑口の写真が載っているので思わず捜索、発見して喜々としてしまう。これは一種の職業病だな(笑)。

 帰り道。駅で買った切符には「鐵路之旅〜小站巡禮紀念章」というスタンプを裏に押してくれた。台北へ戻らむ、とする頃には夕立が降り出して幾分涼しくなった。駅舎の待合室で雨よけにぼおっとしていると、束の間時間が止まったかのような感じであった。

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last updated in 17th Jun. 2001
written by OHBA Makoto(dachang@xd5.so-net.ne.jp)