| 書名 | 著者 | コメント | 点 | 年月 |
| 黒と茶の幻想 | 恩田陸 | 哀愁のあるミステリーツアー | ★★★★ | 01.12 |
| 妖櫻忌 | 篠田節子 | そら恐ろしい女の情念 | ★★★ | 01.12 |
| 夢の工房 | 真保裕一 | 著者の考えが分かる?エッセイ | ★★ | 01.12 |
| 今昔続百鬼 雲 | 京極夏彦 | 明るい妖怪事件 | ★★★ | 01.12 |
| ス カーレット・ウィザード外伝 | 茅田砂胡 | 外伝というより第6巻 | ★★★ | 01.12 |
| 曼荼羅道 | 板東眞砂子 | 人間の愛憎の行方は? | ★★★ | 01.12 |
| 永久帰還装置 | 神林長平 | 哲学的ハードSF | ★★★★ | 01.11 |
| ドリームバスター | 宮部みゆき | 宮部らしいファンタジックSF | ★★★ | 01.11 |
| 東京物語 | 奥田英朗 | 80年代を舞台にした青春小説 | ★★★ | 01.11 |
| ダーク・ムーン | 馳星周 | 馳星周の集大成的小説 | ★★★ | 01.11 |
| 晴 明百物語 陰陽寮外伝之一 | 冨樫倫太郎 | まとまりの薄い陰陽寮外伝連作集 | ★★ | 01.11 |
| 「私 が、答えます」 | 竹内久美子 | 動物行動学的人間相談室 | ★★★★ | 01.11 |
| 螢女 | 藤崎慎吾 | SF的解釈のホラー | ★★★ | 01.10 |
| DOOMSDAY | 津村巧 | SFっぽいアクションもの | ★ | 01.10 |
| 王妃の館 | 浅田次郎 | ベタな愛と笑いと涙の人情小説 | ★★ | 01.10 |
| サイファイ・ ムーン | 梅原克文 | 荒唐無稽なB級ホラー連作集 | ★★★ | 01.10 |
| 闇先案内人 | 大沢在昌 | 正統派ハードボイルド | ★★★★ | 01.09 |
| エール | 鈴木光司 | 正統派恋愛小説 | ★★★ | 01.09 |
| 虚貌 | 雫井脩介 | ちょっと暗めのミステリー | ★★★ | 01.09 |
| ZERO | 麻生幾 | 秘密警察を舞台にしたエスピオナージュ | ★ | 01.09 |
| R.P.G. | 宮部みゆき | 人間ドラマとも読めるミステリー | ★★★ | 01.09 |
| 13階段 | 高野和明 | 骨太ミステリー | ★★★★ | 01.09 |
| 邪悪な花鳥風月 | 岩井志麻子 | おぞましく陰湿なホラー | ★★ | 01.08 |
| 不眠症 | スティーヴン・キング | 眠気をさそうファンタジー | ★★ | 01.08 |
| かわもとの知恵 | 筒井康隆 | 子供向け裏ワザ集 | ★★★ | 01.08 |
| 天狗の落し文 | 筒井康隆 | 作者ならではの超短編集 | ★★★ | 01.08 |
| ドミノ | 恩田陸 | ドタバタコミカルエンターテイメント | ★★★★★ | 01.08 |
| 上と外 1〜6 | 恩田陸 | 一気に読みたいファンタジック冒険小説 | ★★★★ | 01.08 |
| 女郎蜘蛛 | 冨樫倫太郎 | 「陰陽寮」の面白さを期待すると残念な結果に | ★★ | 01.08 |
| ジュリエット | 伊島りすと | キング風のホラー | ★★★★ | 01.08 |
| インコは戻っ てきたか | 篠田節子 | 熟年女性の鬱屈 | ★★★ | 01.07 |
| 華胥の幽夢 | 小野不由美 | 十二国記の外伝的短編集 ファン必読 | ★★★★ | 01.07 |
| 夏の滴 | 桐生祐狩 | 少年達を巻き込む恐ろしい秘密とは | ★ | 01.07 |
| ルー=ガルー | 京極夏彦 | 少女達が活躍する近未来冒険小説 | ★★ | 01.07 |
| 超・殺人事件 | 東野圭吾 | お笑いメタミステリー短編集 | ★★★★ | 01.07 |
| 続巷説百物語 | 京極夏彦 | 続編登場 | ★★ | 01.07 |
| 黄金の島 | 真保裕一 | いろんな人の逃亡劇 | ★★★ | 01.07 |
| 大魔神 | 筒井康隆 | ノスタルジックな勧善懲悪劇 | ★★★ | 01.07 |
| さんずいづくし | 別役実 | 別役実のづくしシリーズ最新作 | ★★★ | 01.05 |
| 魔女 | 樋口有介 | ハードボイルド風小説 | ★ | 01.05 |
| 睡魔 | 梁石日 | 人はマルチ商法で何を得たか | ★★★ | 01.05 |
| カリスマ | 新堂冬樹 | B級度炸裂の、カルト宗教エロチックバイオレンス | ★★ | 01.05 |
| 不 肖・宮嶋の天誅下るべし! | 宮嶋茂樹 | 軟派路線のおちゃらけルポ | ★★★★ | 01.05 |
| カレーライフ | 竹内真 | この本を読んだあと、あなたは必ずカレーを食べるだろう | ★★★★ | 01.05 |
| モザイク | 田口ランディ | 3部作完結編? | ★★ | 01.04 |
| シーズ ザ デイ | 鈴木光司 | 爽やかな海洋ミステリー | ★★★ | 01.04 |
| 黄昏の岸 暁の天 | 小野不由美 | お待ちかねの十二国記シリーズ | ★★★★ | 01.04 |
| ドリームバスター | 宮部みゆき | SFチックな設定の異世界物語り | ★★★ | 01.04 |
| 邪魔 | 奥田英朗 | 転がり落ちる人生 | ★★★ | 01.04 |
| スカーレット・ ウィザード | 茅田砂胡 | 破天荒な恋愛スペースオペラ | ★★★★ | 01.04 |
| な みだ研究所へようこそ! | 鯨統一郎 | 謎解きコミカルミステリー | ★★★ | 01.04 |
| 片想い | 東野圭吾 | 目新しいテーマのセンチメンタルミステリー | ★★★★ | 01.03 |
| 模倣犯 | 宮部みゆき | 近年稀に見る社会派ミステリーの傑作 | ★★★★★ | 01.03 |
| 妖怪馬鹿 | 京極夏彦他 | 妖怪カルト対談集 | ★★ | 01.03 |
| 天国への階段 | 白川道 | ドラマチックな復讐劇 | ★★★★★ | 01.03 |
| 玉蘭 | 桐野夏生 | 愛とは心と体 | ★★ | 01.03 |
| 灰夜 新宿鮫7 | 大沢在昌 | 新宿鮫シリーズ番外編 | ★★★ | 01.03 |
| MAZE | 恩田陸 | SFとホラーの魂を持つミステリー | ★★★★ | 01.03 |
| 黒祠の島 | 小野不由美 | 孤島を舞台にしたホラータッチの推理小説 | ★★★★ | 01.02 |
| 真夜中への鍵 | ディーン・クーンツ | 日本を舞台にしたスリルとサスペンス小説 | ★★ | 01.02 |
| 0(ゼロ) | 柴田よしき | 猟奇殺人もあるモダンホラー | ★★ | 01.02 |
| リセット | 北村薫 | いつか巡り逢う二人 | ★★ | 01.02 |
| そして粛 清の扉を | 黒武洋 | 予断を許さぬ学園パニック | ★★★★ | 01.02 |
| 鬼子母神 | 安東能明 | ナチュラルホラーな人物と文体 | ★★ | 01.02 |
| 陰陽寮 四,五 | 冨樫倫太郎 | 大風呂敷を広げた伝奇SF | ★★★ | 01.02 |
| エリ・エリ | 平谷美樹 | 神の存在をテーマにしたSF | ★★ | 01.02 |
| DOMESDAY | 浦浜圭一郎 | ホラーSF | ★ | 01.01 |
| 恐怖 | 筒井康隆 | メタ推理小説? | ★★★ | 01.01 |
| 症例A | 多島斗志之 | シリアスなサイコドラマ | ★★★ | 01.01 |
| 心では重すぎる | 大沢在昌 | おやじ臭い探偵小説 | ★★ | 01.01 |
| 不肖宮島の一見必撮! | 宮嶋茂樹 | お笑いルポルタージュ | ★★★ | 01.01 |
| ライオンハート | 恩田陸 | 超ロマンチック恋愛小説 | ★★★★★ | 01.01 |
| ザ・スタンド | スティーヴン・キング | いかにもキングらしい小説 | ★★★★ | 01.01 |
| 動機 | 横山秀夫 | 老練なテクニックを感じさせるミステリー短編集 | ★★★ | 01.01 |
ミステリーツアー度:★★★
自分自信の確執度:★★★★
哀愁/祭りの後の寂しさ度:★★★★★
ミステリー好きの4人の旧友が集まり、Y島へ旅をする。同じ青春時代を過ごしてきた彼等には、それぞれに明かしたくない「過去」があったが…
4章に分けられた物語は、4人の登場人物の視点で描かれる。彼等と彼等の友人達の間の隠されてきた関係が、Y島という深い森林の中で、しだいに解きあかさ
れる。
親しい友人でも、なかなかすべてを話し合えるものではないが、それをY島という非日常的なシチュエーションにおき、語らせるという設定はうまい。
日常生活の中でおきる、小さな謎。彼等のいってみれば思い出したくない過去が明らかになるという、大きな謎。その謎解きの会話が、登場人物の素顔を浮き彫
りにする。
この辺は、もうベテランの貫禄。
さらに、旧友達の変わらぬ姿、過去を共有していたからこそ生まれる連帯感。
そして、自分達がすでに青春時代を顧みる年代になっていることへの哀愁。
この小説の持ち味は、ここにある。
作者と同年代の自分には、この小説が持つ「哀愁」に、まいった。
読後、久しく味わったことのない感傷的な気分になる。
ホラー度:★★★
そら恐ろしい女の情念度:★★★★
物語を書く魂度:★★★
女流作家「大原鳳月」が不慮の事故で亡くなる。彼女の秘書的な役割をになっていた「若桑律子」が、付き合いのあった編集者「堀口」のもとに持参した
ものは…
若桑律子の不可思議な行動が、ミステリアスで良い。彼女の真意を探ろうとする若手の編集者と、若桑を通して見える女流作家大原の駆け引きも、うまい。
あえて若者対老女という構図にすることで、女性の持つどろどろした情念を、うまく浮かび上がらせている。
しかし、恐ろしい女だこと。作者が女性だけに、なお恐い。
物語の決着は、意味深。
「絡み付く2本の藤」は、別の見方をすれば、書きたいことと書かされることの葛藤。作者の書きたい小説と、読者の読みたい小説のせめぎ合い。
作者が本音で言いたかったのは、このせめぎ合いが小説を書く原動力にもなっている、ということでは?
エッセイ度:★
著者の考えが分かる度:★★★
本音度:★★
著者が作家になってから、あちこちに書いたエッセイをまとめたもの。プラス書き下ろしミステリー。
ちょっと長めのインタビューと、書き下ろしミステリー以外は、ほんとの短文で、ちょっとものたりない。しかし、いくつか未発表のエッセイがあり、著者の飾
らない本音が見えて面白い。
帯には「この1冊ですごさが分かる!」とあるが、まあ著者の経歴はおおよそわかる。小説にもその几帳面さがあらわれているが、きっちとした人なんだと改め
て感じる。
著者の熱烈なファン以外には、ちと辛い。
書き下ろしのミステリーも、短すぎて情緒に欠けるし。
明るい妖怪事件度:★★★
凸凹珍道中度:★★★
笑える度:★★★★
妖怪研究家の「多々良」先生と、相棒の「沼上」。彼等は各地の怪しい所を訪れ妖怪の研究に余念がない。そんな中、妖怪の仕業としか思えない?快事件
に遭遇し…
「京極堂」が主人公の物語とは180度テイストの替わった、妖怪馬鹿小説。
心身ともに妖怪にはまり込んでいる多々良先生。事件の解決に貢献しているのか、足を引っ張っているのか。その奇行や傍若無人ぶりが笑える。
「どすこい
(仮)」のユーモアには共感できなかったが、本作はいい。だいぶ作者が腕を上げたのか、それとも自分の感性が変わったのか。
最後の中編では京極堂も登場したりして、遊び心もある。
妖怪ファンには超お薦めだし、京極夏彦ファンにもお薦め。
カバー内側の写真には、大笑い。
ファンタジックSF度:★★★
それから度:★★★
懐古度:★★★★
主人公「ジャスミン」と「ケリー」のその後。外伝と言うことだが、第6巻といった趣き。
本編のようなアクションシーンやロマンチックコメディー風な描写は少なく、歳をとった主人公の懐古的な人情話が主体。
主人公達の息子の成長ぶりが描かれたり、ラー一族が物語の重要なカギを握っていたりと外伝らしい内容だが、なんか読者におもねるよう。
5巻ま
で読んでから、買うべし。
しかし、作者の後書きの意味するところは、「まだ続く」ということなのか?
粘液質の男女関係度:★★★★
愛憎の原因と逃避先度:★★★
時空を超えたドラマ度:★★
戦中マレー半島に渡った富山の薬売り「蓮太郎」。現地で情交を重ねた娘「サヤ」が、日本に引き上げていた蓮太郎を訪ねてくるが…
戦中、戦後を舞台にした連太郎とサヤの関係。連太郎の孫である「麻史」と妻の関係。時間と空間が交互に替わりながら、物語が展開する。
人間の持つ嫉妬、愛情、憎しみ、といった感情が、日本風のジメッとしたタッチで書かれていく。あわせて描写される濡れ場も、淫靡で良い。作者は、身体的な
感覚を重く見ているようだが、この淫靡な感覚的な世界は、出色。
中盤から、初期の板東作品を思わせるような、超日常的な世界に入り込むが、世界は非日常でも、作者が出そうとしている結末はいたって日常。
そう言う意味では、どこにでもある愛憎劇ともいえる。
(どうあがこうと、男と女は曼荼羅道に入り込んでしまうのね)
哲学的ハードSF度:★★★★
超越的存在度:★★★
スリルとアクションも論理的に展開度:★★★★
火星に接近してきた救難艇には「永久追跡刑事」と名乗る男が。火星連邦情報局の「ケイ・ミン」は、彼の調査に当たるが…
粗筋を振り返ってみると「異次元からの侵略者との戦い」といった風で、目新しさや奇抜さはないのだが、これが神林長平の手にかかると、とたんに形而上的な
展開になる。
普通の会話も禅問答のようになれば、ロマンチックなシーンは存在論的に、アクションシーンは無機質な論理的展開に。この辺、ファンにはたまらない所。
作者のファンは必読。おまけに、ガチガチの理屈っぽいSFが好きな偏屈者にも、超お薦め。
スタニスワフ・レム以外で、これだげSFで哲学できる人はいない。
ファンタジックSF度:★★★
ゴーストバスターズぱくり度:★★
少年少女向け冒険小説度:★★★
邪悪な犯罪者と戦う賞金稼ぎ「ドリームバスター」。彼等は人間の悪夢にの中に潜む犯罪者と戦うため、異世界からやってくる…
本文の中でも作者が言及しているように、映画色の濃いファンタジー。
e-NOVELSで中編の一つを
読んでいたせいか、新鮮味に欠けたが、作者の持ち味が発揮されており再読に耐える。少年達の生き生きとした姿、相手を思い遣る心、こういった描写はさすが
にうまい。
清く正しい少年SFファンは、これを読んで真っ当なSFファンになって欲しい。
ラストの「D.Bたちの"穴"」では、新たな展開も伺わせ、続編が待ち遠しいところ。
1980年の青春度:★★★
ノスタルジー度:★★
若者の哀愁と願望度:★★★
名古屋から上京した浪人生「田村」。彼が東京で学生生活を送り、やがて広告代理店で働までの姿を描く、80年代を背景にした青春小説。
田舎から出てきたばかりの青年が、東京という都会で味わう哀愁や、恋愛。社会に出てからパシリとして扱われる屈辱感と、やがて人を使うようになってからの
苦悩。そんな内容が時代ごとにオムニバス形式で語られる。
癖のない作者の文体は、小説の内容ともマッチしているし、同時代に青春時代を過ごした人には共感できるところが多いだろう。
美しく楽しい情景描写が多いところに、作者の思い入れを強く感じる。
やっぱり誰もが、自分の過ごしてきた時代を一番気に入っているんだろうな。
クライムノベル度:★★★
馳星周集大成/ダークパワー炸裂度:★★★★
とち狂う奴等度:★★★
カナダのヴァンクーヴァー、中華系移民の街で起きる事件。ヘロイン、裏社会、警察を舞台に、狂気にかられる男達が狂奔する…
腐った警官、中国人街、これだけでおおよその内容が分かってしまうところが、馳星周の偏向ぶりを伺わせる。従来作に比べてもボリューム満点だし、登場する
「とち狂った」奴の多いこと。これ一冊読めば、馳星周の世界を堪能できる。
初めて読む読者には、その短いセンテンスに込められた圧倒的な描写に、強烈な印象を受けるだろう。
しかし如何せん長い。一気に読ませる力はあるが、全編山場で、物語に起伏がないところに、疲れてしまう。(それが特徴でもあるのだが)
作者の気迫が見えるような長篇だが、これだけ力が入っていると次作が気になる。この小説を期に、作者は大転換期を計っているのかもしれない。とんでもない
恋愛小説を考えてたりして。
馳星周のクライムノベルも、ちょっとワンパターンになっているから、違った分野の小説も読んでみたい気はする。
伝奇小説度:★★
陰陽寮外伝度:★★
不思議と怪奇度:★
「陰陽寮」に登場する人物達の、外伝的連作短編集。
本編のように破天荒な展開や怪しい妖術合戦のシーンは描かれず、どちらかというと、人物および人間関係の描写が主体。
本編を読んでいれば「あの人とこの人が、ああなってこうなるのか」と、それなりに興味深く読めるが、初めて読む人には辛いかも。
副題として描かれる様々な伝奇的エピソードも、もうすこし。
作者も後書きで書いているが、きっちり物語の内容を確定させない内に、流れで小説を書き上げているせいか、連作らしい妙味に欠ける。
作者はこの手の外伝を百遍書くつもりらしいが、この調子で書かれるとついていけない。
動物行動学的相談室度:★★★★
理系/明解度:★★★
ほんまかいな度:★★★★
動物行動学者の著者が、人間に関するしょうもない疑問にスパスパ解答する。
かつて著者の「そんなバカな!」に影響され、ドーキンスの「利己的な遺伝子」まで読んでしまった。ロジカルで説得力のある「生物=生存機械論」に、いたく
感心したものでる。
本書は、動物行動学者の作者が週間文春に掲載していたものをまとめたもの。
読者からくる「ペニスはなぜ曲っているのか」「女性のマスターベーションの意味は」「なぜ自殺するのか」といった、ちょっとエッチで、ちょっと深刻な疑問
に、スパスパ解答するというもの。
なるほど〜と思う反面、本当かよ?という解答もあったりして、読み物としても面白い。
世の中いろんな疑問があるが「こういう見方もある」と、視点を変えると案外単純だったりして。
でもペニスが曲っているのは、かっぽじるためといわれてもねぇ。理屈は良く分かるけど。やっぱり「返し」が有ると無いとでは相手への効果が違う、という方
が自分には説得力ある。
超自然的ホラー度:★★★
超常現象のSF的意味付け度:★★★
スリルとサスペンス度:★
人気のないキャンプ地。使われていないピンク電話が鳴る。ハイカーの「澤地」は、おそるおそる取り上げると…
東京近郊にあるキャンプ地の、螢女という巫女伝説。近くに造成中の近代的リゾート開発。廃屋の中で鳴るピンク電話。これらを舞台に物語は展開する。
作者名からSFだと思って読みはじめたが、どうやらちょっと違う。
作者の意図は、超常的な、現代科学では説明できないようなことを、SF的な解釈で説明しようとするところにあったよう。
その意図は成功しているようだが、小説としてはいまいち。そんなSF的な解釈はせず、ミステリアスなままの方が小説としては面白い。
森林と人間や動物の共生関係についての蘊蓄や、後半のスリリングになるべき展開も、ものたりない。
SF小説に、新たな味付けをしようとした作者の思惑は、半ば達成といったところ。
B級パニックSF度:★
闘争と殺戮度:★★
アホな登場人物度:★
金と時間を持て余す2人の男。彼等は究極のゲームである人間狩りをするため、南米のジャングルに分け入るが、彼等が目にしたのは、銀色のスーツに身
を包むエイリアンだった…
全編エイリアンと戦う、あるいは殺戮シーンの連続。映画「ダイハード」のように、展開や戦闘シーンに工夫があるわけでもなく、帯にあるような「新本格
SF」と言えるようなSFらしいところもなく、ただ殺戮シーンが続く。
登場人物達も自己中ばかりで嫌になるし、そこに作者の意図があるわけでもない。ただ主人公だけがやけに冷静で、その割にたいした活躍もしないのが、変。
おまけに浦浜圭一郎の「DOMESDAY」と、
タイトルも似ていれば、設定も似ている。まぎらわしい。
でもこれって問題にならないのか?
まあ、どっちのドームズデイもそんなに面白くないからいいけど。
愛と笑いと涙の人情小説度:★★
あまりにもベタ度:★★
フランス文化度:★
不況に喘ぐツアー会社の敏腕ツアコン「玲子」。彼女は起死回生一発逆転のフランスツアーを計画するが…
あまりにもあざとい文章に、しばらく遠ざかっていた浅田次郎の小説。久々に読んでみたが、ベタなセリフや人物描写にちょっと辟易。
癖のある人物描写や人情話しには、作者ならではの説得力と感銘を受けるが、デフォルメさせすぎ。背景に描かれるルイ十四世の、王としての悲劇も、なんかの
めり込めない。物語に挿話として描く必然性も弱いし。
最大の弱点は、笑いが空回りしていること。
いまさらオヤジジョークをひけらかされてもねぇ。でもこれって、自分のオヤジジョークが、会社で受け入れられないのと同じ?
やはりジョークは良く練ってから話さないと。思い浮かんだのを、すぐ言うのは、慎んだ方がいいってことね。
荒唐無稽B級ホラー度:★★★★
月は人間を変える度:★★
バイオタイドの高い状態度:★★★
満月の日に自殺した超人的アスリート「佐古」。彼は「冬人夏草」という薬を服用していたが…
月の力による超自然的な現象を題材にした連作集。
人間ではないものへの変態、異世界との疎通、見えないものが見える能力といったところがテーマか。
いずれの短編も、従来作と同様にスピーディーであっけらかんとした展開。ただスピード感と大胆さは控えめ。もっとめちゃくちゃで良かったのに、残念。
独立した短編を統合させる「落ちの短編」もあるが、ちょっと強引か。
それにしても、月の力って本当にあるのか。日常生活でも、ただ訳もなく元気がなかったり、怒りっぽくなったりすることがあるが、月齢と自分の気持ちを比べ
てみるのも面白いかも知れない。
おまけのような短編「アルジャーノンに菊の花を」は、パロディーとして楽しめるし、シニカルでいい。本編よりも、こっちの方ができがいい。
ハードボイルド度:★★★★
男達を行動させる理由度:★★★★
スリルとアクション度:★★★
「逃がし家」のチームリーダー「葛原」。彼は警察庁から取り引きを持ちかけられる。それは日本に潜伏する異国の重要人物を、密かに探し出す事だっ
た…
クールな主人公、彼に篤い信頼を寄せる仲間、複雑にからみ合う人間関係、そして国家的な陰謀。いつもの大沢在昌の小説と同様、テンポのある流れと力強い描
写に押されて、グイグイ読まされる。
展開は急テンポに広がり、予想を許さない。また、込み入った人間関係も、お手上げ状態で、もう物語に追従していくのがやっと。物語のスピードに付いて行く
と、思考は定時状態になり、どんな事件や人物が出てきても驚かなくなる。
これって、小説としては成功しているのかな?
作者が一所懸命考えたであろう展開を、読者である自分は思考停止状態で強姦されるように受け入れるだけ。
欲いえば、男の矜持だけでなく男女の心の機微も大胆に書いてほしかった。でもそうしないところが、この小説の位置付けなのかも。
何はともあれ、不安なく物語りに浸れる。
大沢在昌は、ハードボイルド小説の安心マーク。
恋愛小説度:★★★
戦い決断する人生度:★★
格闘家の生き様度:★★★
お嬢さん育ちの編集者「靖子」。若く恐れを知らない格闘家「一馬」。仕事を通して知り合った2人は…
恋愛小説の王道を行くような展開。過去の作者の小説から、一風変わったものを期待したが、純正恋愛もの。脇役の存在や出来事もきちんとした伏線になってい
たり、しだいに近付いていく2人の関係など、小説としても純正。そう言う意味では、新鮮味はなかった。
ラストの格闘シーンは、なかなか手に汗握るものの、全体的に薄味。もっとおどろおどろしい描写や、とんでもない展開が欲しい。
落ちも、もう少しで陳腐になるギリギリのところ。
それとも作者のターゲットは、若年者か。
犯人探しミステリー度:★★
復讐劇度:★★★★
心の裏側度:★★★
馘首された腹いせに、社長宅を襲った男達。彼等にはめられた「荒」は、主犯として投獄される。数十年後仮出所した彼は…
残虐な復讐劇と、その犯人を追う老刑事。さらに刑事達の確執。芸能界で苦悩する元アイドル。丹念に描写される人物像は、どれも暗く悲しい。暗い心の影の部
分を浮かび上がらせている。
このトーンが物語のベースとなり、犯人の全生活をかけた復讐劇が展開する。
しかし、全体を覆う暗い雰囲気も、突っ込みがいまいちのせいか感傷的になるほどではない。
目新しい展開も劇的などんでん返しもなく、新鮮味はない。
安っぽい登場人物を排して、心の裏をえぐり出すような描写にすれば、と思うのは欲張り過ぎか。
エスピオナージュ度:★
追跡と逃亡度:★★
秘密警察/情報活動最前線度:★
日本の秘密警察と中国政治の裏側を舞台に繰り広げられるエスピオナージュ。
はじめはフォーサイスが楡周平タイプの情報戦略小説と思ったが、そうでもない。かといって、冒険小説というわけでもない。その中間といったところか。
登場人物一覧と組織表を見ただけで、少々うんざりすしたが、内容も同様。
説明過多であったり説明不足であったり。精緻な展開のようで安易などんでん返しが。
後半の逃亡劇はそれなりにスリリングだが、全体的に見ると、作者の構想に筆がついていかない感じ。でっかい風呂敷を広げ過ぎたのでは。
日本の警察機構に興味がある方には、もう少し面白く読めるかも。
犯人探しミステリー度:★★★
取調室でのドラマ度:★★★★
バーチャルな家族とリアルな家族の挟間度:★★★
杉並区で起きたサラリーマンの刺殺事件。渋谷区で起きた女子大生の絞殺事件。2つの事件を調べるうち、意外な人間関係が分かり…
バーチャルな世界での人間関係という目新しいテーマや、脇役の人物描写の妙といった、物語に奥行きを与える技量は作者ならでは。
しかし読みどこは、本文の2/3をしめる取調室での事情聴取のシーン。
バーチャルな世界とリアルな世界が交錯する人間ドラマは、なかなかの読みごたえ。シリアスな映画にしても面白いんじゃないかと思えるでき。
作者には「家族」を主題とした小説があるが、依然この主題は作者のテーマとなっているよう。
家族でも社会でも、それがバーチャルな世界でもリアルな世界でも、しょせん人間の営みは、すべてロール・プレーイングなのかもしれない。
骨太ミステリー度:★★★★
サスペンス度:★★★
死刑とは度:★★★★
傷害致死の刑期を終えた「純一」は、両親が被害者に対して支払う賠償金で、経済的にも精神的にも苦しんでいることを知る。そんな時、顔見知りの刑務
官から「死刑囚の冤罪をはらす調査を手伝わないか」と云われ…
純一と刑務官「南郷」が冤罪の調査を進めるて行く様が、物語の主軸。それに純一の思いや、刑務官としての南郷の苦悩などが描写される。読んでいて飽きない
構成。中でも「死刑」という制度や死刑を執行する人の気持ちを描いた章は、読みごたえ十分。それが物語のバックボーンにもなっており、うまく物語と融合し
ている。
展開にも無駄がなく、作者の考えや意図がストレートに伝わってくる文章に好感が持てる。
おちゃらけた小説もいいが社会派のミステリーも読んでみたい、という方におすすめの骨太のミステリー。
おぞましく陰湿なホラー度:★★
耽美度:★
やな感じ/やな女度:★★
新人の女流作家が缶詰めとなったマンションからは、安アパートの住人達が見おろせた。彼女は、アパートの住人を主人公にした小説を書こうと想像を膨
らませ…
人間の欲や憎悪といった裏側の感情を、映像的にデフォルメさせた短編集。
登場人物達がみんな変で異様なところや、グロテスクな描写や耽美的文章は、一部の好事家にはけっこう受け入れられるかも。
「いずれ檸檬は月になり」という短編が、非常にグロテスクで印象深い。死体専門のインターネットサイトを見ているような、嫌な気分にさせてくれる。
もう少し物語に工夫やインパクトがあれば、よかったかも。
倉阪鬼一郎ファン向けの小説か。
善と悪あるいは意図と偶然の構図度:★
老人達の活躍/ヒーロー物語り度:★★
ダークファンタジー度:★★
デリーに住む「ラルフ」老人。彼は妻を亡くした頃から不眠症に悩まされるようになるが、それに伴って不思議なことが起きはじめる…
プロローグから本文への展開は、さすがというかキングのお得意というか、要はキングにしか書けない文章。見事ではある。
その後の展開もいつも通りのまどろっこしさと描写でいささか辟易するが、一番自分が引っ掛かったのは、これはホラー?
考えてみれば最近のキングの小説は、ホラーというよりファンタジーなのでは。
それが読んでいてつまらない原因かも。
ファンタジーが嫌いなわけではないが、物語りや出来事にきちんとすじが通っていないと、イライラしてくる。
オーラの世界も、リアリティないし(チビでハゲの医者が鋏で切るなど、お笑いに近い)、よっぽど「オルファクトグラム」の方が真実味がある。
値段も上下で6,000円(ろくせんえん!)だし、興味のある方は図書館で!
子供向け生活の裏ワザ度:★★
試してみたくなる度:★★★★
誰かにいいたくなる度:★★★
「出そうなあくびを止める知恵」「好きな人に話しかける知恵」「隠し芸がない時の知恵」など、子供向けにあみ出された知恵の数々…
むかし栄養剤の「わかもと」の付録だった「重宝秘訣絵本」=生活の知恵子供版 を、作者がリメイクしたもの。
この裏ワザはちょっとやってみたい!というのが盛り沢山。大人でも楽しめる。
「出そうなあくびを止める知恵」はやってみたくてしょうがないが、こういう時にかぎってあくびが出ないんである。
あくびを出す知恵も教えて!
アイデアまたは夢の記録度:★★
お笑い/ナンセンス/狂気度:★★★
超短編度:★★★
ショートショートからSF、お笑い、ハナモゲラ、日記までの超短編集。
全体のトーンは統一されていないが、びっくり箱を開けるような楽しさはある。
本当と嘘が微妙に混じって、意表をつくこともある。しかし、アイデア集という未推敲の文のためか、洗練された狂気/爆発的な言葉の力は薄い。
しかし筒井康隆、妙にはまってしまうところがあり、約3分笑いが止まらなかった。(どことはいわないけど)
読者の感性と、短編のすべてがシンクロすることはないだろうが、誰が読んでも最低1箇所は大受けするシーンがありそう。
寝る前かトイレで読むには、最適の本。
ドタバタコミカル劇度:★★★★★
収束するドラマ度:★★★★
カタルシス度:★★★★
99人の列車度:★★★★
茶菓子を買いに走る優子。舞台のオーディションを受ける麻里花。俳句のオフ会に参加する俊策老人。喫茶店の片隅で人待ち顔の佳代子… 彼等の運命は
これからどうなるのか…
東京駅を中心として起きる日常の些細な出来事。ところがこれらのストーリーが交錯し収束して、とんでもない事件になっていく様は、スリリング。この先どう
なるのか読みはじめたら止められない。
星新一の小説やヒッチコックの映画にも、似たような展開のシーンがあったと思うし、井上夢人の「99人の最終電車」がこの小説の大きなヒントになっている
と思われる。しかし構成やテンポも良く一級のエンターテイメント小説になっている。オリジナリティーもあり、倍の長さでも許せる。そつのないラストもベテ
ランの味。
とにかく誰にでもすすめられる面白い小説。おまけに大笑いできる。
レンとチカの冒険度:★★★★
サバイバル小説度:★★★★
スリルとアクション度:★★★★
両親の離婚のため離れて暮らす家族が、夏休み中に父親がいる中央アフリカで過ごすことになるが…
全巻発行されるまで待ってから一気に読んで良かった。断続的に読んでたら、相当フラストレーションがたまったと思う。
始めはこの小説の落とし所が良く分からずハラハラしたが、途中からは一気読み。ストーリーを要約すると、ゲーム小説のようなおとぎ話のような、なんとも陳
腐な内容になるが、そこは恩田陸。次々と展開するシーンと少年達の心情に心奪われ、最後まで飽きさせない。
2巻目が自分はお気に入り。二人の気持ちが伝わってきて、いつの間にか一緒に喜んだり悲しんだりしている。いい歳こいて、なんか恥ずかしいけど。
最終巻も予想される結末でありながら、それなりの感動的な幕切れに。
ファンタジーの好きな方には超お薦め。
江戸捕物帳度:★★
エログロ度:★
説明過多あるいは冗長度:★★★★★
閻魔の藤兵衛率いる盗賊一味。彼等は新たな盗みを働こうと、着々と準備を進めていたが…
江戸の町を舞台に、盗賊と同心の駆け引きあり内乱あり翻意あり涙ありの、捕物帳。と、書けば面白そうだが「陰陽寮」のような面白さを期待する
と、がっかりする。
なんせ説明書きが長過ぎるし、繰り返しが多い。せめて半分の長さに圧縮し、行間に作者の思いを入れ込めば、面白くなったろう。
ただでさえ長かった本文の後に、作者の後書きが上下2段組で7ページもあったりして、さらにうんざりさせられる。
この後書きの中で、本書の原案となった同名の短編が「新人賞」にノミネートされた時の、選考委員の評が紹介されているのだが、これが傑作。そのまんま本書
の評としてもおかしくない。
「陰陽寮」の方は大丈夫なんだろうか?
S・キング風ホラー度:★★★★
鳥肌度:★★★
魂抜け度:★★★★
妻を亡くした「健次」と引きこもりがちの「ルカ」幼い「洋一」。彼等父子はゴルフ場の管理人として、孤島に移り住むが…
物語の展開は、S・キングの良いとこ取り。作者はキングの大ファンなのがよく分かる。その分新鮮味はないけど。
しかし、人物の描写や情景描写はなかなかのできばえ。新人とは思えぬ。物語の展開もスムーズ。モダンホラー好きにはおすすめ。
問題は次作。本書は手本となるものがあり、それを作者風にアレンジして成功したが、いつまでも同じパターンでは失礼しちゃう。題名も決まっている自作は、
作者独自のホラー小説であることを祈る。
取材先での戦闘と恋度:★★★★
停戦地域キプロスの歴史度:★★
鬱屈する大人の感情度:★★★
旅行雑誌に勤める「響子」は取材のため、中年カメラマン「檜山」とキプロスに行くことになるが…
母で妻で嫁でありながら働く響子のやるせない気持ちは、同世代の女性達の共感を呼びそう。そんな気持ちを抱いた響子は、どこか冴えない、それでいてつかみ
所のない檜山と取材を行う。
キプロスという異国、情勢不安という非日常、うまく打ち解けられない男女。
これらをうまく構成させ、日常の安定した生活を見つめなおさせるこの小説は、作者の持ち味をうまく出している。
作者は「女の側から掛れた冒険小説」といっているが、冒険小説というより消極的アバンチュールといったところ。しかし、リアリティを損なわないため細心の
注意をはらっているため、安易なハーレクインロマンスに落ちないところは、さすが!
十二国記外伝度:★★★★
みんな苦労してんだな度:★★★★
理想の国とは?度:★★★
十二国記シリーズに登場する国や人物にまつわる短編集。
「華胥」ってどんな意味かと思い辞書を引くと「中国の黄帝が昼寝の夢に見たという理想の国」だって。なるほどそもののズバリの題名だと感心。
なじみのある国やらない人やらが登場するが、いずれも自国を守るにはどうすれば良いのかに腐心している。
ちょっと青臭いところもあるが、このシリーズに貫かれている王や家臣の矜持に、心うたれる。
歴史小説がサラリーマンの戦う上でのバイブルになり得たように、十二国記シリーズは、生きる上でのサブテキストになり得るのではないか。
(ちょっとほめ過ぎ?)
ホラー度:★
少年達の夏度:★
納得いかない度:★★★★★
小学生「真介」の友だちや学校生活。一見なんの変哲もない生活の中に、驚くべき秘密が隠されていた…
文章や展開に多少のぎこちなさはあるものの、許容範囲内。少年達の性格描写もまあまあだし。
しかし何といっても、結末はお笑いぐさ。下手なSFでも、これより論理的で納得いく展開を用意するだろう。
ホラーにするなら、ロジックを超越した理論を、スーパーナチュラルなら、もっと医学的見地にたった理論と背景を書き込まなければ納得いかない。
少女達の鬱屈と冒険度:★★
NHK若者向け討論番組度:★
潔癖性の近未来度:★★
人に直接会うことが少なく、ほとんど通信回線と端末で事足りる近未来。少女を狙う連続殺人事件が発生し…
「読者からの応募による設定を盛り込んだ小説」という辺りが、この小説をつまらなくしているポイント。
今現在の若者達が考えていることは、それなりに反映されているだろうが、それは最大公約数的な思惟であるため、ありふれている。また、それを取り入れるた
めに、近未来の情景や少女達の考えの描写が、長い。
民主的な展開は凡庸になり、超越的なストーリーは劇的な感銘を与える小説になる、ということか。
とはいっても京極夏彦。この人の劇画センスは本書でも遺憾なく発揮されている。このまま劇画にしても、おかしくない。
超・ミステリー度:★★★
シニカルあるいはおちゃらけ度:★★★★
ムフフ度:★★★★
「名探偵の掟」系のメ
タミステリー短編集。
なんとも形容しがたいが、読む人によっては怒りだすか、あるいは笑い出すか。自分は笑う方だったけど。
それぞれの短編は、普通のミステリー的設定を構築した後、さらにそれを破壊している。その破壊の仕方が、作家自信をおちょくったり、読者をこけにしたりし
ながら、それをブラックな笑いにまで昇華させる手法。どことなく筒井康隆の「毒」を感じるが、筒井康隆ほど刺はない。
それぞれきちんと落ちまでついてるし。変態ミステリーファンにはお勧め。
この本を呼んだ後、自分はやっぱり「似非理系人間」で「超高齢化」している読者の一人だと、妙に納得した。
江戸怨念話度:★
暗い水戸黄門度:★★
生きている人間の方がよっぽど妖怪度:★★
カバー裏がなかなか度:★★★
諸国の怪談奇談を蒐集している「百介」。彼のもとには、その嗜好に沿うような、小賢しい妖怪使いが集まって…
「巷説百物語」の続編にあたる連作
集。登場人物は小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん等例のメンバーが勢ぞろい。
しかしどうも内容が暗い。
吃驚するような、あるいはミステリアスな印象は薄く、どちらかというと暗い「水戸黄門」か「遠山の金さん」といった赴き。
人の世で起きる様々な出来事。一見すればただの怨念話しだが、裏には幾重にも人の哀しい性が塗込められている。又市は、それを妖怪の所為にすることで出来
事を解決する。
又市は「京極堂」とは真反対のスタンス。たぶん京極夏彦は、それをやってみたかったのだろう。
逃げるあるいは進む男達度:★★★
ハングリー度:★★★★
生きるための三角関係度:★★★
ヤクザ社会のトラブルから逃亡の身となった「修司」。彼は逃亡先のベトナムで、貧しくもそこから脱出しようとしている若者達に出会い…
今までの真保裕一とはちょっと違ったタッチの小説。
ベトナムで、どん底の生活を強いられている若者達の夢を追い求める姿が、ひとつの大きなテーマ。そこにベトナムの腐った警察機構や裏社会、日本のヤクザや
女がからむ。
目まぐるしい展開があるわけでもなく(無理な展開もあるし)、アクションシーンが激しいわけでもない。なんか青春小説を思わせるような、それでいて現実の
厳しさに落ち込みそうな、ちょっと薄味の小説。
もっと書き込めばいくらでもドラマチックにできるものを、あえて平板に書いたよう。(取材中にベトナムで食あたりにでもあったか?)
しかしラストの海洋シーンは、迫力。
勧善懲悪度:★★★
ノスタルジック度:★★★★
時代劇シナリオ度:★★
誰もが知ってる「大魔神」。これの筒井康隆風シナリオ。
なんでこんなシナリオを書いたのか。
・歳をとると昔が懐かしくなるから
・映画好きの作者らしく、凝った造りの本を出版してみたかった。
・実は作者が主演したくて、シナリオを書いた。
筒井ファンと大魔神ファンは必読。
エスプリ度:★★★★
文化批評度:★★
笑っちゃう度:★★★
「づくし」シリーズの最新作。
それにしても別役実の「づくし」ものは息が長い。おまけに作者のちょっと(だいぶ)ひねくれた文章と、トリッキーな文章も衰えを感じさせない。
劇作家らしい斜に物を見る姿勢と、強引なそれでいてユーモラスなロジックは、作者ならでは。また、活字でしかできない芸当でもある。
困難な壁にぶち当たっている時、この本を読むと良いかも知れない。訳の分かったようで分からない文章を読んで気分転換することで、問題解決の糸口が見えて
くるかも。
ハードボイルド風度:★
千秋の本当の姿度:★
黒魔術度:★
ソーシャルワーカーの「千秋」が自宅で焼死する。2年前に彼女と交際のあった「広也」は、この事件を調べるうち…
短いセンテンスや文体、会話にハードボイルド風の雰囲気を出そうとしているが、まるでチグハグな感じ。読みにくく描写不足になっている。
なんか主人公の「広也」と同じように、小説自体の存在感が希薄。
作者はこの小説で、いったい何を書こうと、あるいは言おうとしているのか。
謎解きに徹するわけでもなく、「魔女」に比重を置くでもなく、広也のアバンチュールに男女の機微を描写するでもなく、傲岸な「水穂」を貶めるでもない。
いったい何が面白くてこんな小説を書いたんだぁ〜?
自分の理解不能範囲の小説。
マルチ商法にのめり込む人達度:★★★
健康マットが欲しくなる度:★★
人生の苦→楽→苦度:★★★
失業中で明日の食い扶持も心配な「趙」。悪友のつてで健康マットを販売するマルチ商法に手を出すが…
生活に喘ぐ人が、後
先を考えずに危険な商売に手を出す。とりあえず住む場所も食べるものにも不自由しない自分自身に、安心する。登場人物のような立場になったら、どうなるか
わかんないもんなぁ。
小説の中で、自己啓発/洗脳の状況が詳細に描写されるが、よく耳にする話とさほど変わらない。こんなやりかたで、人の思いは変えられるものなのだろうか?
でもよく考えれば、会社での仕事のやり方も、スポーツ等のサークル活動も、どこか同じ面を持っている。一つの目的や理想を獲得するために、集団で行うこと
など、たいして変わらないということか。
そこに「権力」「金」といったいかがわしい欲望が絡んでくると、泥沼のような世界が待っているということだな。
俗物教祖度:★★★
壊れる妻/ダメ男の夫度:★★
驀走/暴走度:★★
カルト宗教を妄信する妻、その妻を罵る夫、両親の諍いに怯える少年の心は、次第に壊れて…
B級度炸裂の、カルト宗教エロチックバイオレンス。
カルトの洗脳の描写、ダメ男の情けない姿、教祖の酒池肉林、どれをとってもリアリティはなく浅薄。逆に劇画チックで笑いをも誘う。
しかし勢いだけはある。
くどく長々しい文章も安易な展開も、斜読みしてすっとばせば、それなりに読者を引き付ける力があるから不思議。
リアリティやディテールを気にする読者には全く受け入れられないだろうが、勢いやパワフルピストン?を受け入れられる読者には、面白い小説。
自分にはどっちつかず。せめて半分の長さで、もう少し文章の細部に気を使った表現をすれば、面白く読めたと思う。
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おちゃらけ&シリアス/ルポ&写真度:★★★★
下ネタ度:★★★
爆笑度:★★★★
どんな取材にも突貫するカメラマン宮嶋茂樹。その凄さと命知らずは周知だが、今回のルポは軟派路線。
芸能人を張り込み写真におさめる姿は、必死でありながら笑いをさそう。最近の著書の中では、文章も最高。本を読みながら久しぶりに声を出して笑ってしまっ
た。
妙に色っぽい竹下景子のチチや石井久子の萎れた姿の裏に、ドラマもどきの白熱した展開があると思うと、興味もひとしお。
最近は文庫本もバシバシ出てるし、ファンには嬉しい活躍ぶりである。
これからも言いたいことをバンバン書いて欲しい。
カレーに賭ける青春度:★★★★
爽やかカレー旅行度:★★★
カレーが食べたくなる度:★★★★★
幼い従兄同志が、祖父の死をきっかけに決意したこと。それはカレー屋になることだった…
カレーを作ることから始まって、カレーの歴史やスパイスの調合まで分かってしまう青春小説。
なんと言ってもこの小説が成功しているのは、カレーを題材にしていること。
これが「医者になる」「スポーツ選手になる」といった、青春小説であったら、ここまで読者を引き付ける事は無かったのではないか。「カレー屋になる」とい
うユニークなそして誰もが好きであるテーマが、万人うけする元になっている。
多少御都合主義なところが見えるが、語り口の清清しさやスピーディな展開もうまいし、青年達の成長物語りとしても良い味を出している。カレー好きの青年に
は、是非読ませたい。
□私の予言:この本を読んだあと、あなたは必ずカレーを食べるだろう。
狂気の中身度:★★★
電磁波度:★★
安直度:★★★★
精神病院への移送中に逃亡した「正也」。彼を探す「佐藤ミミ」は、捜索中に自分の過去をも知る事に…
本作も例に漏れず、非日常的なそして身体的な感覚が、小説世界を支配している。だけど前2作よりは、分かりやすくてつまらない。
少年達や犯罪を犯す人たちの作者ならではの解析が、登場人物を通して語られる。それは数有る猟奇犯罪や少年犯罪を主題とした小説の、どれとも異なってお
り、その点では特異。
登場人物の感覚的な言葉も突き抜けていて面白いが、共鳴するほどではない。
とても、「インターネット」な小説。
海洋ミステリー度:★
親と子の成長物語り度:★★★
爽やか度:★★★★
16年前にフィジー沖で遭難したヨット。生き延びたクルーの「船越」は、偶然沈没位置を知る事になり…
ヨットと海を愛する船越の現在と、過去の遭難事件が交互に描かれる。ミステリーとしての謎の設定は十分とは言えないが、船越の生立ちと彼に関わる登場人物
の配置は、なかなかうまい。もっとも強烈でミステリアスな人物「月子」には、人物描写の薄さを感じるが、インパクトはある。
印象深いのは、やはり海洋での航海シーン。荒れた/凪の/夜の海や、遭難する前のクルーの葛藤は、爽やかにして危機迫る。
海とヨットと家庭を愛する人お父さんにとって、船越がフィジーまで航海するシーンは、一種夢見るようなシーンだろう。
過去の小説でもそうだったが、作者にとって「海」とか「水」は、生死や深遠なものを表す一種畏敬の存在なのだな、と感じる。海を舞台にして、人間の愛憎や
生死を語るベースに、作者の実体験があるのかもしれない。
異世界ファンタジー(十二国記)度:★★★★
戴国の行方は?度:★★★
ひねた心もまっすぐになる度:★★★★
戴国の王となった「驍宗」は、反乱軍を治めるため王宮には不在であった。幼い麒麟の「泰麒」は、何者かに突然襲われ…
久しぶりのシリーズ最新作は、期待したよりおとなしめの展開。まあ、こっちが読む前から勝手に盛り上がっていた、というのもあるが。
今回の物語は、戴国の女将軍「季斎」を中心に、戴国の動向と泰麒の喪失劇が語られる。激しい戦闘シーンや苦難を乗り越える登場人物が詳細に描写されること
はないが、替りに季斎の言葉を通して、十二国を支配する神の存在、主従関係のあり方や、責任を負うもののジレンマが語られる。
少女小説あるいはファンタジー特有のストレートでウエットなシーンは、自分の気持ちがストレートであるかどうかのバロメータにもなるか。
本シリーズを未読の方は、「魔性の子」から順番に読む事をお勧め。
このシリーズを読んで「つまらない」と思う人はいないんじゃないか。
SFチック度:★★
自分の中の異世界度:★★★
親子の絆度:★★★
地球と同程度の文明が発達していた、パラレル世界の「テーラ」。人口不足に悩むテーラの科学者は、優秀な人材の人格をマシンに移し替えるという実験
をしていたが、大事故が発生し…
SFチックで、ほんとに夢の中のような話でありながら、きちっと青年の心の葛藤や、人生のわびさびを描いているあたり、宮部みゆきならでは。
始めはインターネット上の小説配信という条件のせいか、ぎこちないところが伺えたが、中盤からはいつも通りの語り口に。
あまりにもミスマッチな2つの出来事を、うまくまとめてスマートに落とす技量は、中編とはいえ塾考の跡が伺える。ただ、最近のシリアスな小説とは異なり、
劇画タッチのシーンと展開が特徴。
安くてすぐ手に入るe−NOVELS、なかなか便利。14回連載のうち1回目は無料で読めるし。
ただ、パソコンの前でないと読めないのが難点。
転がり落ちる人生度:★★★
ふつうの生活に潜む不幸の罠度:★★★
理不尽度:★★
面白半分におやじ狩りをする高校生。妻を亡くした刑事。平凡なパートの主婦。小さな放火事件をきっかけに、それぞれの生活が崩れて行く…
どこにでもいそうな人たちが、ちょっとしたきっかけで安心していた生活から転がり落ちる様は、悲しい。登場人物に非が無くはないが、何もそこまで理不尽な
展開にしなくても、と思ってしまう。
前作「最悪」ほど悲惨なストーリーではないが、パート主婦「恭
子」の境遇は、最悪。
カタルシスも無く、後味も良くないし、活劇シーンや謎の解明もない。でも、自分が勤める会社のパートの人には、優しく接しようと思う。
スペースアクションSF度:★★★★★
ラブコメディ度:★★★★
少女小説度:★★★
宇宙一の財閥の娘にして、男勝りのじゃじゃ馬「ジャスミン」と、一匹狼の宇宙海賊「ケリー」が巻き起こす、破天荒な恋愛スペースオペラ。
主人公達はとてつもなく強いか、とてつもなくかわいいか、とてつもなくかっこいいかで、現実味が無いところが素晴らしい。
とって付けたようなくさい台詞も、茅田砂胡の手にかかると、生き生きとしてくるから不思議。ジャスミンとケリーの掛け合い漫談も笑える。
宇宙空間での戦闘シーンも、デルフィニア戦記の
実績を見れば納得の出来映え。勧善懲悪のカタルシス。迫力ある戦闘シーン。手に汗握ってしまう。
茅田砂胡ファンはもとより、SFファンにもおすすめ。
(我慢して一気に5冊読めば、もっとのめり込めたな。)
謎解きミステリー度:★★
コミカ度:★★★
初級心理学度:★★★
女子高生のようなメンタルクリニックの所長「波田」と新米心理療法士「松本」が、相談者相手に繰り広げる珍治療…
「と
んち探偵一休さん 金閣寺に密室」を読んだあと、もうこの人の小説は読むまい、と思っていたが、心理学をテーマにしているところに惹かれて購入。
登場人物は類型的でマンガの主人公のようだが、結構笑える。心理学をテーマにしたアクロバティックな治療/謎の解明も、無理はあるもののうまく笑いのオブ
ラートにつつんで、読者を煙にまく。
本格的な、あるいは重厚な小説を「主食」とすれば、ちょっと変わった「おやつ」みたいな感じ。ちょっとつまむには最適だが、主食にするには軽すぎる。
ミステリー度:★★★
人間のジェンダーとは度:★★★★
同じ釜の飯を食った仲間度:★★★★
アメフト部のOB飲み会の帰り、「哲朗」は元マネージャーの「美月」に合う。彼女は自分のジェンダーについて悩んでいる事を打ち明けるが…
性同一性障害という目新しいテーマを、偏見なくそして人の心に染み入るよう描写しているところは、作者の感性を伺わせる。本気で悩んでいる人には、多いに
勇気づけられるのではないだろうか。
また、かつて同じチームで戦ってきた仲間たち、彼等の友情と葛藤、仲間の抱える問題、そして事件。これらをテーマとうまく交錯させながら、展開させるあた
りは、ベテランの味。体育会系のクラブに属していた男性は、すぐに感情移入してしまいそう。
センチメンタルな文章も、青春を遠い昔に置き忘れた年代にぴったりくる。
しかし大人になるといろんな悩みがあってやだけど、この小説のような美しい情景が、現実世界でも健在である事を祈りたい。
社会派ミステリー度:★★★★★
猟奇度:★★★★
生きている人物描写度:★★★★★
痛ましい事件に巻き込まれた経験を持つ「真一」。彼は愛犬との散歩の途中、公園でゴミ箱に捨てられた人間の手を発見する…
久々の著者によるミステリーは、期待を裏切らない出来。
最近の惨たらしい事件を連想させる殺人事件。それを綿密にそして多角的に描き出す。「理由」を読んだ時にも感じたが、今正統的な社会派ミステリーを書かせた
ら、宮部みゆきをしのぐ人はいないのではないか。
フィクションでありながらノンフィクションよりリアル。フィクションだからこそ描ける犯人の思考や被害者の心情が、なぜか直に伝わってくる。
小説だからこそできる説得力のある虚構世界を、見事に完成させている。
登場する人物の詳細な描写、かつてない、それでいて実在の人物を連想させる犯人像、被害者達のマスコミでは取り上げられないだろう悲しみ、さらに物語が持
つカタルシスと見事な展開。
しかし素晴らしい作家である。
・BK1
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妖怪対談集度:★★
妖怪カルト度:★★
サブカルチャー度:★
1ページに最低3回は「妖怪」という言葉が出てくるカルト対談集。
物好き同志が集まると、こんなディープな会話が成立するのかと感心。妖怪好きにはたまらないかも。
しかし、さすがの京極ファンでもこの会話についていくのは大変。どちらかといえば、水木しげるファン向けの本。
自分は、本文より脚注のまめ知識が面白かった。
それにしても京極夏彦は器用な人だ。
復讐劇あるいは改心度:★★★★
愛する人と親子の絆度:★★★★★
刑事の執念度:★★★★
人に裏切られ無惨な境遇からのしあがった青年実業家「柏木」。彼は富と実力を得た今、かつて自分を裏切った人たちに復讐をしようとしていた…
ていねいな文章とストーリーで綿密に描写される展開は、派手さはないがひたひたと心に迫るものがある。
主人公柏木と彼を取り巻く人々の篤い関係。殺人事件にかかわる刑事達の地道で執念深い捜査。しだいに明らかになる柏木の生い立ち。
くどすぎるくらいていねいに書き込まれる文章は、松本清張の小説を思わせるよう。人間の心の襞が浮かび上がってくる。
前半は、やや柏木の復讐心の設定や行動に文章の弱さを感じたり、ていねいすぎる文章に刺激の無さを感じたが、後半のドラマチックな展開は男の琴線にふれる
展開。ぐっとくる。
センチメンタルな内容と非難することもできるだろうが、人をあいする気持ちと親子の絆に、涙を禁じ得ない。
読後しばし呆然。
ベストテンには必ず入るだろう力作。
愛あるいは壊れる関係と造り上げる関係度:★★
孤独度:★★★
桐野夏生はミステリーから離れた度:★★
「松村」との関係に終止符を打った「有子」は、上海に留学する。悩む有子の枕元に大伯父の幽霊が現れ…
現在進行する松村と有子の関係、70年前の大伯父「質」と「浪子」の関係。時を隔てて二つの恋愛物語がシンクロする。
うわべと排他的な有子の恋愛は、どうしようもなく壊れていく。あがく姿がどうにもやるせなく、そして醜い。
それに対し、質の恋愛は悲恋もの。昔の映画にでもありそうな美しさを描き出してる。
ただどちらも孤独な悲しさを、体の交わりで癒そうとする所に、作者の男女の恋愛関係に対する見方を伺える。ラストの展開もそれを肯定しているし。
やっぱ心と体の交わりは、切っても切れないものなのね。
こういう恋愛小説もいいけど、ミステリアスな味付けのないのは、ちょっと物足りない。
桐野夏生はもうミステリーを書かないだろうか。
なんか小池真理子に似ている。
ハードボイルド度:★★★
体制への怒り度:★★★
晶はどこにいった度:★★
自殺した同僚の7回忌に訪れた「鮫島」は、何者かに拉致され檻の中で目覚めるが…
今回は鮫島以外、知っている登場人物がいないせいか、新宿鮫シリーズという感じが薄い。
物語は、ヤクザや裏社会、警察や覚醒剤をキーワードにして目まぐるしく展開しながら、友情や愛情、憤怒を味付けにするというシリーズ共通のもの。
歪んだ警察機構に対しての鮫島の考えは、本書でもテーマの一つとなっている。
しかし、新宿鮫シリーズというより番外編といった感じが強い。シリーズに欠かせない「晶」との関係は、全く書かれてないし。
ちょっと残念である。
斬新なミステリー度:★★★★
SFの魂度:★★★★
ホラーの魂度:★★★
アジアの西の果て、ただ広い荒野に白い矩形の構造物がある。そこに入り込んだ者は一瞬にして消え失せるという迷路のような構造物…
殺人事件や人間の愛憎などの世俗世界とは、一線を画したミステリー。ちょっと変わった設定のため、先の展開が読みにくい。
途中、SF的なわくわく感や、ホラーぽい味付けもあったりして、余計にどんな風に決着させるのか、興味津々。
本当はミステリー部よりも、そっちの方が面白かったけど。
結果は読んでからのお楽しみに。
ただ、変にミステリーに捕われない作風に、恩田ワールドを感じた。
ラストはちょっとうなずけないけど。
本格推理度:★★★★
孤島の因習度:★★★★
ねじれた審判度:★★★
ノンフィクションライターの「葛木志保」は、3日後に帰らなかったら部屋を始末してくれと「武部剛」に言い残し失踪する。武部は彼女を探すうち「夜
叉島」に辿り着くが…
中盤の謎を解明して行くシーンは、推理小説ファンには十分受け入れられるだろうが、自分にはちょっと重たい。
しかし、失踪した葛木を捜索する模様、排他的な孤島の住民、島に伝わる邪教の描写、どれもが説得力のある骨太の小説になっている。
特に冒頭の夜叉島にまつわる無気味な風景や排他的な人物描写は、物語の導入部として最高。いやでも不吉な展開を想像させる。
推理小説を読み慣れている人には、驚くべき展開と結末にはならないかも知れないが、妙に「推理小説」していなくていい。
逆に、シリアスなホラー作家としての味付けもある決着の付け方に、作者の奥深さを感じる。
ラストシーンも、立場を替えると泣けてくる。
スリルとサスペンス度:★★
少悪夢の正体と陰謀度:★
猪口を右手に持ち酒を飲むのは粗野で短気度:★★
京都でジャズクラブを経営する「ジョアンナ」。日本に休暇で訪れていた探偵「アレックス」は、彼女が12年前に失踪した女性であると気付くが…
京都を舞台として、日本の文化や風習を背景に、ジョアンナとアレックスの関係が展開する。日本の描写も大枠を外れていない正統派といったところ。
物語の展開は読者の予想を裏切るものではなく、ちょっとものたりない。
退行睡眠の描写やアクションシーン等それなりに読ませるが、ディテールがお粗末なせいか、盛り上がらない。
昔のクーンツを期待すると、がっかりする。
モダンホラー度:★★★
猟奇殺人度:★
「あいつ」あるいは闇の世界度:★★
頭部だけが吹き飛ばされた死体。捜査を始めた刑事「佐伯美夏」の前に、次々と「あいつ」の跡が…
シチュエーションと展開は、モダンホラーの典型といっていい。その分新鮮さはないけど、読みやすい。
展開にスピードもあり、手練た作者のテクニックを感じる。
前作「ゆび」の続編、ということだが、前作を読んでいなくても、面白く読める。ただ自分は前作を読もうという気にはならなかったけど。それに本作の内容
も、そんなに長い間覚えていないだろうし。
正しい少年向けのホラーといったところか。
お嬢様の戦争体験度:★
少年の日の想い出度:★★
いつか巡り逢う二人度:★★★
戦前の混乱期に、比較的裕福だった「水原真澄」は、幼友達の家で逢った少年に恋心を抱く。しかし次第に戦争が激化し…
前半は、ブルジョアのお嬢様達の日常が描写されるだけで、つらい展開。始めの数ページで読むのを止めようかと思ったほど。
後半、男性の懐古は自分の子供の頃と似ていて、なつかしさを覚える。が、展開はさほど劇的なものはない。
(うーむ。ファンの反感を買いそうだ。)
しかしラストはみごと。ロマンチックな展開でどきどきしながら泣かせる。
短編小説にしたら良かったか。
恩田陸「ライオンハート」と似た傾向の小説だ
が、恩田陸にはSF系の、北村薫には文学系のロマンチックさを感じる。どちらかといえば恩田陸に共感を覚えるなぁ。
学園パニック度:★★★★
凄惨な描写度:★★★
予断を許さぬ展開度:★★★★
高校教師の「近藤亜矢子」は、卒業式の前日にクラスの生徒を人質にとり、制裁をくわえようとしていた…
おとなしい中年教師「近藤亜矢子」が変貌するさまに少々無理はあるものの、先を読ませない展開は見事。明らかになる高校生達の悪事、警察やマスコミの対応
など、なかなか侮れない作者のテクニックを感じる。昔の冒険小説のシーンを思い浮かばせるようなアクションシーンもリアル。
内容は極めて凄惨だが、かつて戦争を舞台に語られた聖戦が、今は学園を舞台に語られるという背景が、教育現場の戦場化を物語っている。
ただ無条件でヒロインに感情移入できなかったのは、まだ自分が惨いめに会っていないためか。
本書を読んで、カタルシスをおおいに感じるような経験だけはしたくない。
ナチュラルホラー度:★★
児童虐待度:★
不安定な登場人物と文体度:★★
保健婦の「工藤公恵」は「渡井敦子」からの切迫した電話を受ける。不安な気持ちでおもむいた先には…
自分の娘に虐待を加える工藤公恵と、娘の看病をする渡井敦子。この二人を中心に物語が展開するが、なんとも暗くおぞましい。
作者の文体も、どこか不安定でぎくしゃくしており、それが登場人物達の性格と相まって、不安感をかき立てる。
理解の範疇外にある登場人物には、とても感情移入できない。読者に不安感や嫌悪感を抱かせるのが作者の意図なら、成功している。
これから子供を産もう、あるいは幼子を育てている方には、勧められない。
伝奇SF度:★★
大風呂敷度:★★★
荒唐無稽度:★★★★
陰陽寮シリーズの第4弾と第5弾。
四では大きな展開はないものの、前作までの内容をおさらいするような展開で、忘れていた内容を思い出させてくれるあたりは、読者に親切。文章に勢いがあり
一気に読ませるが、御都合主義や荒唐無稽さがちょっと気になる。
「刀伊」という外国勢力、伊周の陰謀、亜弊火武意と土蜘蛛族。広げられた大風呂敷は、いくつか解決するものの、大部分は広げたそのまま。
いったいこの後どうなるのか。
話題を絞った方がいいんじゃないか。この調子でいくと、終結するのはだいぶ後になりそう。
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SF度:★★
神の存在確認度:★★★
未知との遭遇度:★★
21世紀、人々の心には「神」存在しえなくなっていた。神の存在に悩む「榊」神父は、神の存在/意義を見つけだそうとするが…
前半は、榊神父の「神の存在」にまつわる苦悩が物語の中心。後半の展開に結びつく内容とは言え、長すぎるしSFしていない。「神父の苦悩」といったサブタ
イトルにした方が良かったのでは、といいたくなる。
後半の展開は、未知の知的生命との遭遇というSFに。
登場人物が平板で盛り上がりにかけるものの、「神の存在」という大テーマをそれなりに決着させているところは、良く言えば評価できるが、悪く言えば問題の
回避。
つまらんサブストーリーを排し、展開がもっとダイナミックで個性的であればもっと面白く読めた。おしい!
ゾンビ度:★
ホラーSF度:★
パルプフィクション度:★★
突如東京のオリオン・ガーデンに出現したドーム。この中に閉じ込められた人たちは、ドームらか出現する「天使」により次々飲み込まれて行く…
ドーム内に閉じ込められた人々と、天使により醜く再生されたゾンビとの戦いのシーンが、山場もなく続く。
SFチックな設定やカルト宗教の活動など、それなりの色付けはされているが、ゾンビ一色って感じ。
帯には「小松左京氏絶賛」とあるが、本当かね?
「13日の金曜日」やゾンビもののスプラッタームービーが好きな方向け。
劇画の原作にはなるかもしれぬ。
恐怖におののく文化人度:★★★
メタ推理小説度:★★
狂気あるいはゆるやかな死度:★★★
高級住宅街に住む作家の「村田」は、画家の「町田美都」が殺害されているのを発見するが…
殺人事件が、主人公の村田をはじめ多くの文化人達を恐怖に陥れるさまは、滑稽であると同時に愚鈍で笑える。
主人公や登場人物を襲う恐怖の描写も、芸が細かい。
しかし本書で作者は何を書こうとしたのか?
筒井康隆のこの手の小説は、深読みしようとして疲れる。
恐怖は死の、そして女子高生は生の比喩なのか。
ただの文化人批判か。
女性にエロチックな考えばかり抱く主人公の態度は、生へのしがみつきなのか。
読者の恐怖体験をフラッシュバックさせようという実験小説か。
う〜む。
とりあえず、そこここにばらまかれたギャグに笑いながら読むのが正解か。
シリアスサイコドラマ度:★★★
精神科医と患者の葛藤度:★★★
美しすぎる女性達度:★★★★
精神病院に入院している17才の少女「亜左美」。彼女の担当医である「榊」は、彼女を治そうとするが…
妙に明るかったり拗ねたりする亜左美の描写、毅然とした態度の臨床心理士の「広瀬由起」。どちらも魅力的な女性に描かれている。古臭いといってもいいよう
な題材を、うまく使っているところは感心。患者や医師の描写もいい。
だがそこまでで、物語が発展しない。
掴みはOKだが、その先がない。
平行して描かれる贋作話しは、無理矢理ミステリー小説にするだけの意味しかなく、かえって物語を阻害している。
それより、病院内の他の患者をもっと書き込み、患者や医師達の葛藤を描いた方が読みごたえのある小説になったと思う。
作者が描く登場人物や物語世界はリアルで存在感がある。変に小説の枠組みに捕われなければ、もっと感動的な小説を書けるだろう。
オヤジ臭い探偵小説度:★★
マンガ,若者文化,麻薬への蘊蓄度:★★★
ハードボイルド度:★★
私立探偵の「佐久間」は、失踪した人気漫画家の捜索依頼を受ける。彼を探すうち、裏社会と若者の世界に入り込み…
渋谷という若者文化の街を中心に、物語は展開する。麻薬や友人関係など、大人に理解できない若者の考え方を、物語に積極的に取り入れたのはいいが、結局尻
すぼみ状態。妙に大人の考え方が蘊蓄臭い。
物語のポイントとなるカルト的な女子高生も、その落とし方がいまいちだし、佐久間に失踪した漫画家の捜索を依頼する謎の金持ちも、期待させたわりに消化不
良。
妙に分かりやすい結末にしたため、その分もの足りなさを感じる。
しかし、これだけの長篇を一気に読ませるベテランの実力は健在。
さすがである。
お笑いルポルタージュ度:★★★
昨年起きた事件を振り返る度:★★
おちゃらけ度:★★★
昨年の約8カ月間の出来事の、おちゃらけカメラマン「宮嶋」による写真とルポ。
相変わらずのテンションとノリで笑わしてくれる。
大事件も宮嶋カメラマンの眼で見ると、ちょっと違ったアングルで面白い。斜にかかった見方と、おちゃらけている文章がベストマッチ。
それこそ死と隣り合わせの現場にいながら、おちゃらけられる精神はスゴイ。
ただ宮嶋ファンにとっては、内容も写真もちょっとものたりないか。週刊紙連載だけに制約が多く、やりにくかったのかも。
次回は長篇を期待する。
P148の写真がとっても幸せそうで笑える。
ロマンチック恋愛小説度:★★★★★
美しくせつない度:★★★★
やっぱ一瞬だからいいのよね度:★★★★★
時間と空間をこえてめぐり逢うエリザベスとエドワード。それは一瞬の邂逅であるため、あまりにもせつなく悲しい。
恩田陸、よくもこんなにせつなくファンタジックなシチュエーションを考えたものよ。早々と本年のベスト1は決まりか?
連作の第1遍「エアハート嬢の到着」は、2回読んで2回とも泣いてしまった。
愛する人に逢うためだけにひたむきな少女の姿は、涙を禁じ得ない。
また「記憶」の含蓄に富んだ展開。人生なんてその人の気の持ちよう。
白馬の王子が迎えに来るのを待っている乙女はもとより、女房の顔を見るのもいやになったおじさんまで、あまねく一読をお勧めする。
ロマンチックな小説世界を堪能できる。
(だれか俺にも「私のライオンハート」と言っておくれ〜)
キングの集大成度:★★★★
ハルマゲドン/ロードノベル度:★★★★
善と悪の戦い度:★★★
軍の秘密基地から漏れ出した病原菌は、人々を壊滅的なまでに殺傷して行く。そして生き残った人々は…
ストーリーの組み立て、文体、善と悪の対立、どれをとってもキングの味付け。
キングにしか書けないだろうし、キングでなければ、ここまで面白くは描けないだろう。
解説で、「キャリー」や「シャイニング」などの傑作の直後に書かれた事を知ると、面白さを納得できる。(ひねくれた描写も許容範囲内)
15年前であればリアルタイムで読む事ができ、そしてむさぼるように読んだであろう。ただ今読むと荒唐無稽さや薄っぺらさをどこかで感じてしまうのは、
15年前は夢見がちな青年だった自分も、今はくたびれかけたオヤジになっているためか。
ファンには久々のヒットとして受け入れられるだろうが、他の人にはどれだけあの長ったらしい文章と、癖のある描写について来れるかが、評価の分かれめか
な。
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警察/殺人/新聞記者/裁判官小説度:★★★
心の裏側度:★★
老練度:★★★
警察官や新聞記者などを主人公にした、短編小説。
事件や犯罪が主題ではなく、その周りでおきる人間関係の描写に力が入っている。
文春3位、このミス2位という、輝かしい評価を得ているが、絶賛するほどではない。文章は推敲され展開もうまいが、さほどインパクトのある内容でもない。
どちらかというと、人生のワビサビを心得たミステリーファン向けか。
表題作の「動機」は、人間の奥深さと愛情を感じさせ、味わい深い。
ある年令を超えないと、書けない展開。
見事ではある。