ミ ステリー文庫(1999年)
ミステリーを中心とした独断的感想。
「面白ければ何でもOK」というのが信条。

書名 著者 コメント 年月
働く女 群ようこ おじさんが読んでも役に立つOL物語 ★★ 99.12
ク リスタルサイレンス 藤崎慎吾 正統派日本SF ★★★★ 99.12
何も のも恐れるな ディーン・クーンツ うすっぺらホラー ★★ 99.12
馳星周 エロチックパワー炸裂 ★★★ 99.12
順列都市 グレッグ・イーガン 電脳ハードSF ★★ 99.11
宇宙消失 グレッグ・イーガン 量子論ハードSF ★★★ 99.11
木曜組曲 恩田陸 登場人物達が秀逸なミステリー ★★★★ 99.11
百器徒然袋 雨 京極夏彦 榎木津礼二郎大爆発 ★★★★ 99.11
青の炎 貴志祐介 家族を愛する青年の確信的犯罪 ★★★★ 99.11
ぼっけ え、きょうてえ 岩井志麻子 ちょっとグロテスクな怪談ばなし ★★★ 99.11
象と耳鳴り 恩田陸 日常の中の非日常を描いた短編集 ★★ 99.11
亡国のイージス 福井晴敏 和製冒険小説久々のヒット ★★★★ 99.11
冷 静と情熱のあいだ Blu 辻仁成 実験的恋愛小説男性版 ★★★ 99.10
冷 静と情熱のあいだ Rosso 江國香織 実験的恋愛小説女性版 ★★★ 99.10
電車 久美沙織 じわじわくるサイコホラー ★★ 99.10
不 肖・宮嶋 踊る大取材線 宮嶋茂樹 週刊誌カメラマンの笑える奮戦記 ★★★ 99.10
どんどん橋、落ちた 綾辻行人 ファンには待望の本格もの ★★ 99.10
カムナビ 梅原克文 クロスオーバーなエンターテイメント ★★★ 99.10
デイブレイク 香納諒一 B級アクション 99.10
カ ナリヤは眠れない 近藤史恵 ミステリーっぽい小説を読みたい人向け ★★★ 99.10
透明な一日 北川歩美 アイデアだけのミステリー 99.10
T.R.Y. 井上尚登 スケールのでかい詐欺師の小説 ★★ 99.9
巷説百物語 京極夏彦 京極堂シリーズではない短編集 99.9
ボーダーライン 真保裕一 シリアスな探偵小説 ★★★★ 99.9
三億円事件 一橋文哉 著者が刑事だったら犯人は捕まっていたかも ★★★ 99.9
呼人 野沢尚 呼人を読むのはヨヒト 99.9
陰陽寮(弐)怨霊篇 富樫倫太郎 伝奇エンターテイメント 恋物篇 ★★★★ 99.9
陰陽寮(壱)安部晴明篇 富樫倫太郎 伝奇エンターテイメント 荒唐無稽篇 ★★★★ 99.9
わたしのグラ ンパ 筒井康隆 ジュブナイル版仁侠小説 ★★★ 99.9
闇の貴族 新堂冬樹 一気読みの悪漢小説 ★★★ 99.9
沈黙 古川日出男 幻想的世界 ★★ 99.9
MISSING 本多孝好 スマートでドラマチックな短編集 ★★★ 99.8
最悪 奥田英朗 社長を許してやって ★★★★ 99.8
そ して二人だけになった 森博嗣 それをいったらおしまいよ 99.8
ハサミ男 殊能将之 トリック重視のミステリー ★★ 99.8
突破 西村健 異色の探偵小説 ★★ 99.8
白夜行 東野圭吾 とってもシリアスなミステリー ★★★★ 99.8
イツロベ 藤木稟 ホラータッチの異色SF ★★★★ 99.8
時計 を忘れて森へいこう 光原百合 みずみずしい感性と森の描写がいいミステリー ★★★ 99.8
共犯者 山崎永幸 驚愕の犯罪ノンフィクション ★★★★ 99.7
百鬼夜行−陰 京極夏彦 今までの長編のサブストーリー ★★★ 99.7
湾岸ラプソディ 盛田隆二 正統派メロドラマ ★★★ 99.7
つばめの来る 橋本治 様々なオトコ達の心象風景 ★★★ 99.7
AV女優 永沢光雄 AV女優42人のインタビュー集 ★★★ 99.7
宇 宙・地球・生命・脳−その原理を求めて 立花隆 最先端科学レポート ★★★ 99.7
蘆屋家の崩壊 津原泰水 幻想と怪奇 ★★★ 99.7
ク ロノス・ジョウンターの伝説 梶尾真治 純愛SF小説の傑作 ★★★★★ 99.7
隕石誘拐 鯨統一郎 ウルトラDのミステリー ★★ 99.7
撃つ薔薇 大沢在昌 ゲームソフトの前振りハードボイルド ★★ 99.7
グッドラック 戦闘妖精・雪風 神林長平 レムのSFを思わせるテツガク的SF ★★★ 99.6
戦闘妖精・雪風 神林長平 戦闘機メカフェチ向きSF ★★★ 99.6
奇妙な道 ストレンジ・ハイウェイズ1 ディーン・クーンツ 短編集の第1弾 ★★ 99.6
もののけづくし 別役実 づくしシリーズの新いやつ ★★ 99.6
偏執の芳香 アロマパラノイド 牧野修 いまにのホラー 99.6
屍の王 牧野修 いまいちのホラー ★★ 99.6
バトル・ロワ イアル 高見広春 ロマンチックサバイバルゲーム ★★★★ 99.6
青猫の街 涼元悠一 パソコンマニアのミステリー ★★★ 99.6
千里眼 松岡圭祐 面白さてんこもり娯楽小説 ★★★ 99.5
スノウ・クラッシュ ニール・スティーブンスン 超高速バーチャルSF ★★★★ 99.5
頭弾 樋口明雄 大陸風マカロニウエスタン? ★★★★ 99.5
イントゥルーダー 高嶋哲夫 まあまあのミステリー ★★ 99.5
燃える地の果 てに 逢坂剛 得意のスペインミステリー ★★★ 99.5
柔らかな頬 桐野夏生 超ディープなミステリー ★★★★ 99.5
幻の女 香納諒一 緻密なミステリー ★★★ 99.5
極大射程 スティーヴン・ハンターハ かつての冒険小説のヒーローふたたび ★★★★★ 99.5
童話物語 向山貴彦 異世界ファンタジーの佳作 ★★★★ 99.4
宿命 「よど号」亡命者たちの秘密工作 高沢皓司 革命家の末路 ★★★ 99.4
エンデュアラ ンス号漂流 アルフレッド・ランシング 信じられないノンフィクション漂流記 ★★★★ 99.4
クリムゾ ンの迷宮 貴志祐介 新手の冒険小説 ★★★★ 99.4
不安な童話 恩田陸 ホラーっぽいミステリー ★★★ 99.4
ピンの一 伊集院静 阿佐田哲也には遠くおよばない ★★ 99.4
双頭の鷲 佐藤賢一 破天荒なヒーローのフランス歴史物語 ★★ 99.4
青 らむ空のうつろのなかに 篠田節子 危うい心理を描いた短編集 ★★★ 99.3
特命リサーチ200X 超常現象編 松岡征二 TVの方が面白い ★★★ 99.3
永遠の仔 天童荒太 心ゆさぶれる傑作 ★★★★★ 99.3
デルフィニア戦記 1〜18 茅田砂胡 おじさんが読んでもめっぽう面白い少女小説 ★★★★★ 99.3
悪魔 は夜はばたく ディーン・R・クーンツ クーンツマニア向け ★★ 99.3
ストーカー ディーン・R・クーンツ クーンツマニア向け ★★ 99.3
謀略軌道 新幹線最終指令 北上秋彦 出張の時新幹線の車内で読むには最適 ★★★★ 99.3
キラキラ星 群ようこ 笑える恋愛小説 ★★★ 99.2
偽造手記 国分寺公彦 変質ホラー その趣味のかたに ★★★ 99.2
エンディミオン ダン・シモンズ SFの金字塔の続編 必読 ★★★★★ 99.2
二十歳のころ 立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ 学生による習作インタビュー集 ★★ 99.2
私が彼を殺した 東野圭吾 いったい誰が犯人なんや ★★★★ 99.2
バースデイ 鈴木光司 リング3部作を読んだ人には損なし ★★★ 99.2
球形の季節 恩田陸 学園ホラーの佳作 お買い得 ★★★★ 99.2
明るいクヨク ヨ教 東海林さだお まずいものもこれを読みながら食べればだいじょうぶ ★★ 99.2
葛橋 坂東眞砂子 彼女のファンはどうぞ ★★ 99.2
レクイエム 篠田節子 シリアスな恐怖小説集 ★★★ 99.1
恋愛中毒 山本文緒 ちょっと怖い純愛小説 ★★★★ 99.1
翔べ麒麟 辻原登 中国の歴史物に興味のある人向け ★★★ 99.1
佐藤正午 純愛ファンタジー ★★★ 99.1
負けない私 群ようこ マンネリの快感 ★★★ 99.1
ジオラマ 桐野夏生 変態ホラー ★★★ 99.1




働く女 群ようこ 集英社 1,200円
OL物語度:★★
笑える度:★★
共感度:★★
おじさん改造講座教本度:★★★
様々な職種のOLたちを題材にした短編集。
相変わらずのシニカルな視点は健在。ただ短編集とはいえ、ちょっと短すぎ。もう少し書き込めば、人物の性格もめりはりがでてよかったのでは。
おじさんとしては、登場するOL達の思いに、我が身を省みるところあり。
彼女達と「楽しい会話」をしているつもりが、彼女達から見ればとんでもない勘違い、といったケースは有りがち。
おじさん達はこの本を読んで注意注意!
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クリスタルサイレンス 藤崎慎吾 朝日ソノラマ 1,900円
正統派SF度:★★★★
異生物度:★★★
電脳度:★★★★
火星の北極冠から発見された生物の死骸。この謎を研究するために派遣された「サヤ」は、火星上で謎の解明に取り組む…
舞台設定はオーソドックスすぎるくらいだが、これがSFファンの気持ちを掴む。長丁場で、文脈にギクシャク感はあるものの、つぼを押さえたストーリーは、 読みごたえ十分。
異生物との接触、ネットワーク上の人格、火星での覇権争いと、基本部分はすべて押さえている。驚くべき展開があるわけではないが、SFというジャンル内で おもいっきりはじけようとしている作者の意気込みと、SFに対しての愛を感じる。
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何ものも恐れるな ディーン・クーンツ アカデミー出版 上857円 中857円 下857円
ホラー度:★★
サスペンス度:★★
SF度:★★
自分の父親の死体が、見知らぬヒッチハイカーのものと入れ替えられた現場を目撃した「クリス」は、その謎を探るうちに様々な事件に巻き込まれて行く…
クーンツらいしいテーマと展開ではあるのだが、 文章に品がないし、どうにも薄っぺらな感じ。
うまくすれば「ウォッチャーズ」のような感動を得られたかも知れない小説なのに、残念。やっぱ、超訳のせいか?
結末は中途半端で不満が残る。これは作者のせいだろうが、クーンツもちょっと疲れぎみで、自作のリメイクでお茶を濁しているのでは。
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M 馳星周 文芸春秋 1,524円
エロ小説度:★★★★
破滅度:★★★★
人の裏側度:★★
ちょっとしたきっかけで、破滅していく人々を描いた短編集。
従来の馳星周であれば、破滅のきっかけは暴力であったが、今回は「性的」なものがそれに替わっている。
描写は暴力的なまでにハード。エロ小説とかわらない程である。
エロチックな描写以上に、主人公達の心理描写や精神的葛藤が描かれていれば、新たなダークサイド小説の手法として評価できるであろう。が、どうも性描写ば かりに目がいってしまい、人物が霞んで見える。(まあ、自分がスケベなだけかもしれないが)
しかしながら、現在巷でおきている陰惨な事件の原因が、この小説と同じシチュエーションではないと言い切れない。そう思わせるリアリティがある。
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順列都市 上,下 グレッグ・イーガン 早川文庫 上620円 下620円
電脳SF度:★★★
バーチャルリアリティ度:★★
冗長度:★★★★
人間の意識をコンピュータ内で生かし、永遠に存在し続ける…
バーチャルリアリティをもっと発展させた電脳空間。ここに存在する人間達の葛藤を描きながら、さらにアクロバティックな電脳空間を描き出す。
前作同様アイデアは秀逸だが、ちょっとSF理論がはなにつく。読んでいてだんだんめんどくさくなってくる。
「宇宙消失」にもそのきらいはあったものの、本作の方が目立つ。
しかしながら、ラストの展開はなかなかスピーディー。コンピューターマニアのSFファンをも納得するであろう。
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宇宙消失 グレッグ・イーガン 創元SF文庫 700円
ハードSF度:★★★★
驚き度:★★★
納得度:★★
太陽系外に突如あらわれた暗黒球体「バブル」により宇宙から星が消えた。そんな世界で、元警官「ニック」は行方不明になった脳損傷の障害を持つ女性の捜索 を依頼される。彼女とバブルの関連は?
出だしは近未来の探偵小説風だが、行方不明の女性を見つけるあたりから、俄然ハードSFに。
「シュレディンガーの猫」「ハードSF」「量子論」といった言葉に、うきうきするSFファンにはお勧め。ウルトラD級の論理展開と、近未来のナノテクによ る人体改造について楽しめる。
自分はちょっとついていけなかった。
脳損傷の障害を持つ女性の行方不明理由が、量子論に結びつくあたりは「技あり」だが、後の展開はなにも量子論を持ち出さなくても、いいんじゃないの?
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木曜組曲 恩田陸 徳間書店 1,600円
ミステリー度:★★★
個性ある女性達度:★★★★
作家自身の投影度:★★★★
作家重松時子が自殺してから四年。彼女と交流のあった五人の女性達が集まり重松時子の死因の謎を解明していく。彼女は本当に自殺だったのか。それとも五人 のなかの誰かが殺したのか。
舞台の設定は、因縁ある五人がかつて重松時子が生活していた館に集まる、というミステリーファンをわくわくさせるもの。
期待に違わず展開されるストーリーは、ミステリー小説としても楽しめるが、それより登場する五人の女性達の描写がいい。
世間話や料理にに盛り上がるシーンなど、彼女達の性格が活写されている。
さらに彼女達の仕事が作家もしくは編集者という設定にうかがえる、作家恩田陸自身の作家生活も垣間見え、楽しめる。
女性読者にはおすすめ。本筋とは別のところで納得できるかも。
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百器徒然袋−雨 京極夏彦 講談社ノベルス 1,150円
ミステリー度:★★★
榎木津礼二郎度:★★★★★
笑える度:★★★★
榎木津ファン待望の中編3本。
破天荒で痛快な榎木津が、事件を解決?していくさまは、まさに痛快。仲間の京極堂をはじめ、おもだったメンバーが全員でてくるサービスぶりだが、いつもと 違い、京極堂もちょっとおちゃめ。
事件を解決というより、榎木津自身がミステリーで、それを解決するのが主題にも見える。
第1番「鳴釜」は、榎木津の破天荒ぶりと、事件の解決ぶりが傑作。笑えるし人情話もうまく、3作中では最高の出来。
これで新たな女性ファンを、榎木津は獲得するであろう。
うらやましい限りである。
(自分には小説家関口の気持ちがよくわかる。さびしぃ〜)
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青の炎 貴志祐介 角川書店 1,400円
家族のための犯罪度:★★★★
青春度:★★★★
せつなく悲しい度:★★★★
高校生の「秀一」は、忌むべき父親を排除することでしか、愛する母と妹を守ることができないと思った。彼は確信犯として行動を開始する。
賢く家族を愛する主人公の、正義感に満ちた行動は、犯罪を犯そうとしているにもかかわらず、読者の心を掴む。
彼の気持ちに同調し、理解できるのは、それだけ描写が優れているから。
一種悲哀のこもった動機は、せつなく悲しくもあるし、それを実行する過程は緊迫感にあふれている。
第2の事件への飛躍はちょっと書き込みが足りなく思える。物語の展開としてはいいが、あまりにも性急か。
ただ、彼をとりまく家族や友人たちの描写は素晴しい。特に妹と「紀子」の心理描写は涙をさそう。
自分が高校生だったら、滂沱のごとく泣いていたかも。
(年とるってやーね)
それにしてもこの人、テーマが違う小説を外れなく書き上げる筆力はスゴイ。
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ぼっけえ、きょうてえ 岩井志麻子 角川書店 1,400円
ホラー度:★★
グロテスク度:★★★
怪談話し度:★★★
ホラー小説中編集。
「日本ホラー小説大賞」の腰巻にちょっと期待しすぎた。
ホラーというより、「お岩さん」を連想させるような、ちょっとグロテスクな怪談ばなしといった感じ。
表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」は、シチュエーションもうまく、小説として読めるが、他3編はめりはりがなく、いまいち。
ただ、作者独特の世界はみえる(ちょっと陰湿で暗いけど)。
いい題材とうまい構成さえできれば、独特の物語世界を構築できるかもしれない。ま、それが簡単にいけば、誰も苦労はしないだろうけど。
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象と耳鳴り 恩田陸 祥伝社 1,700円
安楽椅子探偵度:★★★
日常の中のミステリアスなシーン度:★★
大事件が起きるわけでもなく、サスペンスあふれる展開でもないが、人のわび さびを感じさせるミステリー。
謎解きもなかなかひねってありそれなりに楽しめるが、ちょっと無理を感じる とこあり。
日常が非日常になる時。その断片をうまくミステリー小説にまとめている。 自分の生活の中にも、ひょっとして同じ様なミステリアスな事件が起きている かも、と思わせるリアリティがある。
逆に作者が小説を考える過程が見えるようでもある。
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亡国のイージス 福井晴敏 講談社 2,300円
冒険小説度:★★★★★
ひたむきな男たち度:★★★★
泣ける度:★★★
海上自衛隊護衛艦「いそかぜ」の艦長「宮津」は、「息子さんは国に殺された んです」という男と会う。それから彼は、その無念を晴らすため一国をゆるが す行動にでる。
ストーリーはトム・クランシーに代表されるアクションものに似ているもの、 内容はアクションというより冒険小説。
前半ちょっとたるい展開だったり、説明過多のきらいはあるが、中盤からの展 開はみごと。これだけの長丁場を、一気に読ませる迫力はなかなか。
護衛艦内の描写はディテールにこだわっており、マニアにはたまらんものがあ るかも。
だた、臨場感は生まれていない。これでもっとリアリティーのある描 写がされていたら、文句なし。ひたむきで一途な海の男たちの描写と相まって 初期のマクリーンの小説を彷彿とさせるような小説になっただろう。
ちょっとした文句はあるものの、冒険小説では久々の大当り。 ファンは読み逃さぬように。
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冷静と情熱のあいだ Blu 辻仁成 角川書店 1,400円
恋愛小説度:★★★
忘れられない人度:★★★
情熱の転嫁と模索度:★★
こちらは、Rossoの姉妹篇で、男性の「順正」からみた小説。
シチュエーションはまったくといっていいほど同じ。
ただ、Rossoが内向的なのに対し、ちょっと外向きか。そのあたりが、ラストの部分にも現れている。
二人の作家が、おなじ小説を、それぞれの登場人物の視点から書くというのは 実験的で面白い。
ただ、こうまで内容が似ていると、ちょっとつまんない。視点が替わると、見 えかたが劇的に変化するような小説にして欲しかった。

ついでに言えば、「あおい」は「マーヴ」を、「順正」は「芽実」をもっと大 切にすべきだし、そのほうが自然でなおかつ感傷的な結末に涙できたかも。
実験的小説の制約はあるにしろ、おとなの恋愛小説としては奇麗すぎる。
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冷静と情熱のあいだ Rosso 江國香織 角川書店 1,400円
恋愛小説度:★★★
忘れられない人度:★★★
怠惰な生活と逃避度:★★
「今世紀最後で最高の恋愛小説」という歌い文句の小説。
ヒロイン「あおい」は、かつて恋人だった「順正」とわかれ、今はミラノで 「マーヴ」と暮らしている。マーヴとの生活のなかに、あおいの心に消えるこ とのない順正の影が、たえず見え隠れしている。
怠惰で逃避的になっているヒロインの心象風景は、女性読者の心を掴むだろう。
前の彼を引きずりながら、今の彼を好きでいる気持ち。
今の彼を思いながらも、完全に心を開けないでいる自分。
このへんの心理描写は、読者の共感を誘う。
ただ、あまりにもストレート。 癖のある小説ばかり読んでいるつわものには、ちょっとものたりないかも。
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電車 久美沙織 発行:アスキー 販売:アスペクト 1,800円
ホラー度:
どうも回りくどい度:★★★★
サイコ度:★★
電車の中で読みはじめた小説を発端に、主人公の狂気がしだいに明らかに…
繰り返し挿入される作中作が、女性の井戸端会議的執拗さで繰り返される。 どうもそこが、自分の肌に合わない。
繰り返しの効果により、じわじわと恐怖が沸き上がることもあるだろうが、ち ょっと、いらいら。
むかーし、女性の書いた小説は生理的に受け付けなかったが、久しぶりに同じ 気持ちになった。
ただ、次第にテーマに収束していく過程は、なかなかのテクニックを感じる。
感覚的な文章に感覚の合う方には、こわい小説のはず。
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不肖・宮嶋 踊る大取材線 宮嶋茂樹 新潮社 1,500円
奮闘記度:★★★★
笑える度:★★
週刊誌カメラマンの裏側度:★★★
フリーカメラマン、宮嶋茂樹の現場取材奮闘記。
とてつもないことをやっていながら、独特のユーモアあふれる語り口のためか 笑いながら読んでしまう。
フリーのカメラマンっていうのは、大変なんだなぁと思いつつ、なにもそこま でやらなくても、と思うことしばしば。なかでも「死してスクープ拾うものな し」の章は、冒険小説を思わせる出来。
山中行軍は手に汗握ってしまった。
各章に挿入されている写真も、文章を読んだ後に見ると、感慨深い。文章と同 じぐらいの重み(笑い)を感じる。
それにしても、この人のバイタリティーはどこから出てくるのか。読んでいる うちに、こっちもだんだん元気になっていく。
まあ、逆にいえば、これだけの バイタリティーがないと勤まらない仕事なのかもしれない。
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どんどん橋、落ちた 綾辻行人 講談社 1,700円
作者からの挑戦度:★★
メタミステリー度:★★
作者も悩んでいるんだなぁ度:★★★
犯人当てを主眼にした、連作短編集。 作者の挑戦を「受けてたとう」という読者にはおすすめ。
自分はごちゃごちゃしたパズルをちまちま組み合わせるようなのは苦手なため、 読み飛ばしてしまったけど。
本格ミステリーでありながら、東野圭吾の「名探偵の掟」を思い出させる味付 けあり。しかし、それほどミステリーから逸脱していないところが、残念とい うか、面白みに欠ける。
ただ、作者はいろいろ悩んでいるんだなぁと、ひしひしと感じる。
読んでる方 は、つまんなきゃ次らか読まないけど、作者にとっては死活問題。趣味でやっ ている分にはいいけど、職業となると何でも大変なのね。
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カムナビ 梅原克文 角川書店 上1,600円 下1,900円
B級度:★★★★
歴史ミステリー度:★★
SF度:★★★
ホラー度:★★★
考古学者「志津夫」は、前代未聞の土偶を見つけたという知らせに、茨城県へ 赴くが、そこで彼は常識では考えられない高温により焼死した死体に対面する。 焼死体の謎と、前代未聞の土偶を調べていくうち、神話に隠されていた真実を 探り当てる。
初めは歴史ミステリーかと思いきや、途中でSFになったりホラーになったり と、忙しい展開。
神話や邪馬台国の説明がちょっと鼻につくものの、一気に読ませるところは、 娯楽小説としてなら成功している。
あんまり細かいところを気にしていると、物語の世界に入り込めずイライラす るので、すっとばして読むのが正しい読み方。 それなりに楽しめるけど、上下合わせて3,500円はちと高い。
新書判なら納得できるか。
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デイブレイク 香納諒一 幻冬舎 1,800円
B級アクション度:★★
政治謀略度:
主人公たちの暗い過去度:
元自衛隊員の「左木」と元ストリッパーの「美奈子」。それぞれに自分の過去 を抱えている2人が出会い、美奈子の友人を探して行くうち、裏社会へとはま りこんで行く…。
作者は主人公たちの抱える過去をモノローグで語らせ、それぞれの動機づけを 行っているが、どうも上っ面にしか見えない。心に響くところがない。
物語の展開も、大風呂敷を広げるかに見えるが、こじんまりと収束してしまう。
脇役たちも、なんか全員同じに見えるし。
フラストレーションがのこるアクションもの。
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カナリヤは眠れない 近藤史恵 祥伝社文庫 533円
ミステリー度:★★
心を病む女性度:★★★
ちょっと笑って、ほんわかした気分になれる度:★★★
買い物依存症になやむ「墨田茜」は、ひょんなことから癖のある整体師「合田」 の元をおとずれ、自分の心の病に立ち向かうようになる。
自分を人間として扱 わない夫、姑の小言、友人達との見栄のはりあい。それらに改めて疑問の目を 向け、自分を見つめ直そうとする。が、実は…。
前半はミステリーというより、心を病む女性達と合田の日常を描写しているだ けだが、これがなかなかドラマチックでいい。
墨田茜の描写はシリアスなタッチで、また週刊誌記者や合田の描写は、関西弁 でコミカルなタッチと、切り替えも絶妙。
ラストでりミステリー的な落ちをつけているが、中間小説的な、あるいは恋愛 小説的な展開でも読み手を納得させられる。
物語を書ける作家だと感じる。
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透明な一日 北川歩美 角川書店 1,700円
ミステリー度:
アイデア度:
前向性健忘症という短期の記憶力を事故でなくした学者の周りで、殺人事件が 起こる。
彼の娘と婚約者が事件を調べていくうち、たどり着いた結末とは…
前向性健忘症というのを小説に取り入れたアイデアはいい。 だがそれだけ、っていう感じ。
人物もストーリーもギリギリOKだが、文体に活気がないためか、全体的に平 板な印象。
物語を書くのではなく、ミステリーを書いている小説。

ところで最近、病気でもないし飲みすぎたわけでもないのに、「俺はいったい 今何をしようとしていたんだ?」と立ち止まることがある。 つい最近読んだはずの小説も覚えてないし。
前向性健忘症なのだろか。それとも多重人格なのか。ただの老人力なのか。
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T.R.Y. 井上尚登 角川書店 1,500円
コン・ゲーム度:★★
どんでん返し度:★★
展開が早い度:★★★
明治時代の日本と中国を舞台とする、詐欺師「伊沢修」の小説。
ただ、詐欺と いっても、相手が軍や革命家というスケール。
読者の先を行く展開とその早さは、なかなかのもの。登場人物達の描写も、新 人とは思えない。
ただ展開をスピーディーにしすぎたためか、物語としての厚みが削がれている。
新人にしては手慣れた感を受けるが、逆に新鮮さはない。
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巷説百物語 京極夏彦 角川書店 1,900円
京極度:
ミステリー度:
テクニック度:★★★
江戸時代を舞台に、巷でおきる妖怪がらみの事件を解決していく短編集。
おぎん、又市、百介等の登場人物に個性はあるものの、京極堂スリーズにある ような強力な個性はない。
ストーリーも「不思議なことなどなにもない」というキーワードは同じである が、それを積極的に(強引に)進めて、事件の解決とするところが違う。
いずれにしても、インパクトに欠け、京極堂の蘊蓄ファンの自分には、あまり 面白くなかった。
物語の設定や背景はばっちりでテクニックも十分なのに、なんかやっつけ仕事 のようにも感じる。
自分にとっては、京極堂の蘊蓄が最大の魅力であったことを再認識。
そういえば「嗤う伊右衛門」も、さほど面白くなかったし。
あの、ぐちゃらぐちゃらした京極堂の理論が、すべてを強引に解き明かす場面 が、やっぱ快感。
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ボーダーライン 真保裕一 集英社 1,700円
探偵小説度:★★★
ハードボイルド度:★★★★
ディープ度:★★★★
病める人間達度:★★★★
アメリカを舞台とする、日本人探偵「長岡」を主役にした探偵小説。
サニーと呼ばれる日本人を探す仕事が、長岡に依頼される。サニーを探すうち 彼の犯罪者としての性格が明らかになり、ついに…
サニーの追跡劇を主軸としながらも、過去にかかわってきた殺人事件や恋人と のトラブルなどが絡み付き、厚みのある物語となっている。
ハードボイルドタッチの探偵小説として読めるが、作者がこの小説で書こうと したのは、事件の裏にある人間の犯罪性について。
人種差別、児童虐待、レイプなどが起きる原因はなんなのか。
自分の子供が歪んだ性格にならぬよう、親は細心の注意と愛情をそそぐ。にも かかわらず、犯罪者になる人が絶えないのはなぜか。
自分の子供はかわいいに決まっている。にもかかわらず、自分の子供を虐待す るのはなぜか。
人々がそれらの問題に正しく答えようとしても、けっしてすべてに正しい答え は得られない。ただ、なにかが間違った結果だけが無限に実在する。 その間違った結果の一つがサニー。

永遠の仔や白夜行などと同じモチーフの小説。 読むと精神が疲れる。
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三億円事件 一橋文哉 新潮社 1,600円
真相解明度:★★★★
綿密な取材度:★★★★
著者が刑事になったら度:★★★
1968年に起きた三億円事件。これの真犯人に迫るノンフィクション。
一枚の紙幣の断片から、真相を解明していく取材過程は緊張感あり。
ただ、非情に硬派な文章で説得力はあるのだが、人物の描写には不向きか。
真犯人とされる人物の性格が、もっと浮き彫りにされれば、文句なし。
この事件は自分が子供の頃に起き、また事件の現場も何回も車で通ったりして おり、非常に身近に感じる。「恋ヶ窪」「戸倉」とかいう地名がでてくると、 俄然興奮してしまった。
そういえば子供のころ通っていた床屋のおばさんが「夜中にあやしい車が駐車 しているのを見た。ライトがついていたからきっと犯人がいたに違いない」と 興奮しながら客に話していたなぁ。
あのころ地元では、三億円事件はみんなの合言葉だった。
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呼人 野沢尚 講談社 1,700円
超人度:
青春と友情度:
アクション度:
呼人という12歳で成長が止まってしまった少年と、その友達3人の物語。
小学生から25年後の近未来までの出来事が、呼人を中心に語られる。 彼らのたどる運命と、12歳で成長が止まってしまった呼人の存在意義は? というのが物語の主題。
各年代ごとに日航機墜落事故や連合赤軍事件などの、実際に起こった社会事件 が語られ物語に関連づけられているが、うまく構成されていない。リアリティ を出す効果より削ぐ効果の方がおおきい。
呼人の設定も、いまいち。
実際の社会事件を持ちだし、小説に現実感を出そうとするのなら、もっと読者 を納得させる設定にすべきだろう。
物語の展開も安直でご都合主義。
作者が、ファンタジックなものを求めているのか、リアリティなのか、ノン フィクションタッチなのか、SFなのかよくわかんない。
ただ多摩川の源流をたどる部分は光っている。この部分だけにしぼって物語を 創れば、いい小説になったと思う。
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陰陽寮(弐)怨霊篇 富樫倫太郎 徳間ノベルス 1,300円
伝奇小説度:★★★
お手軽エンターテイメント度:★★★★
荒唐無稽度:★★★
少女小説度:★★★★
安部晴明篇でも登場した人物の、別の面からの物語。
歴史的人物よりも、脇役の少年少女達に焦点があっている。
ストーリーは前作同様テンポよい。
「怨霊篇」となっているが、怨霊をモチーフにした恋物語といった出来映え。
前作よりも少女小説の雰囲気を色濃く感じる。 でも(だから?)面白い。
続編が出るまで、人物の関係を覚えていられるか心配。
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陰陽寮(壱)安部晴明篇 富樫倫太郎 徳間ノベルス 1,300円
伝奇小説度:★★★★
お手軽エンターテイメント度:★★★★
荒唐無稽度:★★★
平安時代の藤原家をメインにした政治戦争に、呪術師が暗躍していたという 大伝奇娯楽小説。
はじめは登場人物の名前(みんな頼,信,道という字がつく名前なんである)や 大納言やら関白やらの役職名に辟易したものの(歴史ものはやっぱ苦手)、 物語の展開の早さと面白さが勝った。
荒唐無稽でご都合主義のつじつま合わせがなきにしもあらずだが、まあ面白い から許せるし、そういう小説でもない。
政治謀略あり、呪術合戦あり、ミステリアスな登場人物ありの娯楽小説。
どこか少女小説と同じ、「なんにも考えないで物語にはまる」という面白さを 感じる。
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わたしのグランパ 筒井康隆 文芸春秋 952円
ジュブナイル度:★★★★
仁侠度:★★★
ヒーロー度:★★★
筒井康隆久々の本。
帯にはジュブナイル小説とあり、小説の形態はその通り。主人公も少女だし。
でも本当の主人公は、グランパこと、刑務所返りのゴダケンであろう。
かわいい孫娘のために、級友からのいじめをなくし、不良少年達を校正させる。 仁侠でありながら良心の塊のようなゴダケンは、強くやさしいヒーローそのま まである。
これはたぶん作者の理想とする姿なのでは。
深読みすると、ゴダケンが筒井康隆で不良少年達は制度、珠子は筒井の小説に もみえる。
「敵」でもとりあげられた「老い」または「死」というテーマの延 長線上にあるようにもみえる。
でも本当のところは凡人では考えも及ばないところに主題があるのだろうな。
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闇の貴族 新堂冬樹 講談社ノベルス 1,300円
悪漢小説度:★★★
アクション度:★★★
一気読み度:★★★★
闇金融と政治の世界に、金と人脈で台頭する主人公「加賀」。彼と彼を取り巻 く人物を描き出しながら、物語は一気に展開する。
人物の描写もいいし、裏金融業界の話しも説得力あり。暴力シーンや変態シー ンもリアル。
馳星周ほどに暗くはないが、似たかんじのストーリー。
だが主人公達の過去も類型的だし、心に残るっていう小説ではないな。
暗殺者養成機関のところは、日本の小説としては新機軸。青年の性格が変わっ ていく様は、もっとしつこく書いても自分は飽きなかっただろう。
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沈黙 古川日出男 幻冬舎 1,900円
幻想的世界度:★★★
音楽と悪度:★★
とらえどころがない度:★★★★
ひょんなことから、亡くなった親戚の残したレコードと記録に出会う「薫子」。
その記録は「ルコ」という世界から抹殺されたプリミティブな音楽についての 記録であった。それを調べていくうち彼女は…。
「音楽」「悪」といったテーマは、前半の物語の背景のテーマとしては、うま く機能している。
主人公「薫子」の弟も、いわくありげでミステリアス。 だが結末は、尻すぼみの感をまぬがれない。
前半の過去の歴史を背景にした記述が、ラストの個人的ともいえる結末へとは うまくつながっていないように見える。
ただ、散文的な文章は少し読みずらいが、小説の醸し出す現実感のなさをうま く表現している。 とっても幻想的世界。
だけど自分の世界じゃない。
だいたい前作「13」を読んでいながら、全然覚えていないということを、 本を買う前に思い出すべきであった。
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MISSING 本多孝好 双葉社 2,700円
ミステリー度:★★
中間小説のお手本度:★★★★
主人公が輝いている度:★★★★
日常のミステリアスな風景を軽いタッチで書き上げた短編集。
どこにでもありそうな出来事を、登場人物の心の動きをドラマチックに書き上 げていく手腕は、デビュー作とは思えない。
登場人物たちは、みんな心のなかに傷や悩みをもっていて、ちょっと間違えば どろどろした人間の内面が描き出されてしまいそうなのに、なぜか輝いている。 なぜかいきいきとしている。
透明感のある文体がそうさせるのか、聞き役の男 性のちょっとひねた性格描写がいいのか。
とくに女性が魅力的。こんな人がそばにいたらいいだろうなぁ、と思わせる。
泥臭いところがちっとも無く、スマートなTVドラマに最適っていうかんじ。
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最悪 奥田英朗 講談社 2,000円
身につまされる度:★★★
社長を許してやって度:★★★★
不条理度:★★★★
小さな町工場の社長や銀行のOL、パチンコに明け暮れる不良。そんなどこに でもいそうな主人公達に様々な災難がふりかかる。
なかでも町工場の社長はちょっとかわいそう過ぎ。次々に災難が起き、悲惨な 状況に陥っていく様は、なんか自分の仕事に近い話しだけに、超リアル。
犯罪小説というより、不幸な人生模様といった感じ。
小説のトーンはちょっと暗めだが、恋模様やアクションシーンもちりばめられ なかなか読ませる。
中小企業の社長が読んだら、小説にのめり込むか拒否するかのどっちかだろう。
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そして二人だけになった 森博嗣 新潮社 2,000円
ミステリー度:★★
密室度:
なんでもあり度:★★★★
海峡大橋の巨大な基礎コンクリート内に作られた空間。この密室状態の空間で 連続殺人事件が起きる。
このての小説はあんまし自分には向いていないかも、と思いながらも、前半は テンポよく進み、解決編もどうなるのかちょっと楽しみだった。
でも、この結末で納得できる読者はいるのだろうか。または、なんらかのカタ ルシスを感じる読者はいるのだろうか。
自分には理解不能。 「ハサミ男」のほうがよっぽどましに見える。
エピローグの部分は、作者の自分自身に対しての懺悔では?と勘繰りたくなる。
それとも出版社がアコギなのか。
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ハサミ男 殊能将之 講談社ノベルス 980円
推理小説らしい推理小説度:★★
サイコ度:★★
謎解き度:★★★
連続少女殺害事件。彼女達の喉にはハサミが突き立てられていた。
本当の犯人は誰なのか。作者が張り巡らすトリックをあなたは解明できるか!
といったかんじのミステリー。
このての小説が好きな方には、お勧めだが、自分には合わない。
文体も平板で盛り上がりに欠け、人物の描写もいまいち。
物語ではなく、トリックに重点がおかれている小説。
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突破 西村健 講談社ノベルス 940円
異色の探偵小説度:★★★
B級アクション度:★★
「脱出」度:★★
西村健の「脱出」はB級活劇の見本の様な小説で、一気に読ませるパワーがあ ったが、本書はどうもパワー不足。
給水塔なみの巨漢の探偵はなかなか豪快で、ラストの「突破」部は勢いがある ものの、それまでは展開が遅くちょっと説明過多。
犯人の異常性と探偵の豪快さを、もっと強調してもよかったのでは。
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白夜行 東野圭吾 集英社 1,900円
ミステリー度:★★★
シリアス度:★★
最近人の心を主題にしたディープなミステリーが多い度:★★★★★
一見お嬢さん育ちで美しいが、どこか目の中に暗い刺のある少女「雪穂」。 見るからに暗い少年「亮司」。
物語は二人が小学生時代におきた事件から始まり、雪穂の周囲で起きる不幸な事故と、亮司の知能犯的犯罪が、20年近くの 時間経過とともに語られる。
二人の物語はそれぞれ別のストーリーとして描かれるが、しだいに事件が絡み 合い、二人の関係が見えてくる。
緻密な構成と淡々と語られる展開は、完成度高し。 脇役の登場人物たちもうまく描かれている。
しかしなんといっても、この小説のポイントは「雪穂」の描写にある。
優等生で、誰にでも愛にあふれた態度で接し、とてつもなく美しい「雪穂」。 だが彼女のそばでは不幸な事件が起きる。
ちょっとリアリティーがないものの、作られた美しさと刺のある雪穂の描写は なかなか陰気な怖さをもっている。

しかし最近のミステリーは、世相を反映してか、それともミステリーが特異な ジャンルではなくなったためか、読後ちょっと気持ちが重たくなるものが目に 止まる。
しかしそれが、幅広い読者に支持される。
ミステリーがかつてのSFのように、なんでもありの自由なジャンルでありな がら、今の小説をリードしている、ということなんだろうな。
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イツロベ 藤木稟 講談社 1,800円
ホラー度:★★★★
電脳SF度:★★
アフリカシャーマニズムと幻想度:★★★★
アフリカにボランティアの医師として派遣された間野は、現地で不思議な体験 をする。
日本に帰国後、現地の体験が原因と思われる不可思議な事件が…。
出だしのアフリカでのシーンは、日本のシャーマニズムとも趣が違い、なかな か呪術的でいい。ジャングルの描写もマッチしているし、そこらのホラー小説 より不気味で怖い。
日本に帰ってきてからも、事件の展開や過去と現在のまざりあう幻想的シーン もうまい。 ただ、アフリカで謎のキーワードとされている「イツロベ」が主題のひとつに なっているのだが、後半の展開にうまくつながっていないように思える。
ネットワークと人間とのかかわりをもう少し書き込み、アフリカの呪術とうま く繋げれば、いいホラータッチのSFになったのでは。
でも、真夏の夜に読むにはうってつけの小説。
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時計を忘れて森へいこう 光原百合 東京創元社 1,600円
ミステリー度:★★
心の癒し度:★★★
森林浴気分度:★★★★
自然環境を守る仕事をしている青年と女子高校生が、みぢかな人に起きた出来 事を解き明かす、ミステリータッチのヒーリング小説。
女子高校生が青年に寄せる思いや、登場人物の描写もうまいが、一番の特徴は 八ヶ岳山麓という自然に満ちた環境が舞台であること。
事件の解決は、謎の解決というよりは、一人ひとりが抱える心の問題の解決で、 これが自然の描写と相まって、なんともすがしがしい雰囲気を醸し出している。
こんな所でしばらく過ごして、ギスギスした人間関係や、泥沼にはまったよう な生活から抜け出してみたい。
高校生か高校生と同じ若々しい感性を持っている方におすすめ。
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共犯者 山崎永幸 新潮社 1,300円
猟奇度:★★★★
ほんとかよ度:★★★★
優れたノンフィクションはフィクションを軽く超える度:★★★★
埼玉愛犬家連続殺人事件。かつてマスコミを騒がせた事件のノンフィクション。
普通と違うのは、作者が事件の共犯者であること。
この事件で殺害された4人について、その殺害と死体の処理方法が、共犯者で なければ分からないほど詳細に記述される。
これがなんともすざましい。
死体を解体するシーンを描写した小説は数あれど、これがノンフィクションだ と思うと、気分が悪くなる。
それにしても主犯の関根という人物、こんな奴が本当に実在するのか、にわか には信じ難い。極悪非道、精神異常、変態、どれもが当てはまるような人物。
そしてその妻もちょっと鳥肌もの。鼻唄を歌いながら人肉を刻むシーンや、薄 く笑うシーンは、夢に出てきそうで怖い。
このような人物が自分の生活圏に入り込まないよう、切に願う。
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百鬼夜行−陰 京極夏彦 講談社ノベルス 980円
京極度:★★
物悲しい主人公の人生度:★★★
副読本度:★★★★
過去の長編小説に登場した人物のサブストーリー。 本編を読んでいないか忘れたりしていると、面白さ半減の短編集。
それだけで完結しているものもあるが、やっぱリアルタイムで読まないと、 なんだか面白くない。かといって、これを機に本編を再読するのもちょっとつ らい。
全体のトーンはちょっと物悲しく、それぞれに「自分」をかかえる主人公の描 写には、悲哀が込められている。
ラストの「川赤子」は、なかなかの出来映え。
川と胎児の対比は、不気味なほどリアルだし、好きではない川に執着する主人 公と、小犬を欲しがる妻が、とてつもなく哀しい。
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湾岸ラプソディ 盛田隆二 角川書店 1,800円
正統派メロドラマ度:★★★★
苦悩度:★★★
続編で二人のドロドロした関係を書いて欲しい度:★★★
訳ありのラーメン屋の妻「裕里子」と北大生「俊介」の、激しくそして狂おしい恋愛小説。
とりたててミステリアスでもなく、過激でもなく、いたって正統派的なストー リーでありながら、飽きさせず読ませる。登場人物の描写や場面展開がうまく 物語としての完成度は高い。
だが、ちょっとできすぎか。
完成度が高い分類型的になり、読み手の裏をかくような展開がないところが 不満といえば不満。
ちょびっと「やわらかな頬」に似た展開があるが、「やわらかな頬」にあるようなパワーは感じられない。
いたって優等生的な小説。
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つばめの来る日 橋本治 角川書店 1,400円
める少年度:★★★
悩める中年度:★★★
主人公がちょっと変度:★★
様々なオトコ達の心象風景を題材にした短編集。
読者の対象を不特定多数にするのではなく、ある限られた個人として書いてい るよう。
ゆえに、その対象となる読者には共感できるし、対象ではない読者に は退屈な小説になっているのでは。
文章も橋本治らしく、回りくどく理屈っぽいが、それでいて微妙な心理や情景 の描写は驚くほど繊細。
書きようによっては、もっとシリアスにも、もっとドラマチックにもなる題材 なのに、あえて淡々と日常の一部としているところに、橋本治の登場人物たち への「愛」を感じる。
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AV女優 永沢光雄 文春文庫 800円
普通の女性像が見える度度:★★★
中にはすごい女性もいる度:★★★★
発情度:
AV女優42人のインタビュー集。
ウケやセンセーショナルなものを狙ったものではなく、彼女達の過去から現在 のAV女優としての半生をインタビューし、まとめたルポ。
全体の印象は、どっかの会社のOL42人にインタビューしても、おんなじ様 な内容になっただろう、というもの。
AV女優だろがOLだろうが、普通の人間。とりたててAV女優が異常である わけがない。 中には、おったまげるような生活をしている人もいるが、OLだって同じこと。
そんなどこにでもいるような女性のインタビューだから、普通は接することが ないので貴重である、ともいえる。
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宇宙・地球・生命・脳−その原理を求めて 立花隆 朝日新聞社 2,200円
先端科学度:★★★★★
まるでSF度:★★★
驚き度:★★★
題名の通り、宇宙,地球,生命等に関する最先端科学のレポート。
ちょっと地味なテーマのためか、読み物としてはさほど面白くなかった。
しかし、科学技術というのはどんどん細分化,専門化されて、まるでSFの世 界だな。その限られた範囲で研究に邁進する学者って、フェチズムの世界。 きっと学者はこのうえなく幸せに感じることがあるんだろうな、と思わせる。
またそれを、本にまとめて分かりやすく啓蒙する立花隆の頭の中は、どうなっ ているのかと思う。
きっと立花隆は知識フェチなんだろう。
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蘆屋家の崩壊 津原泰水 集英社 1,500円
幻想と怪奇度:★★★
恐怖度:★★★★
和風ホラー度:★★★
作者のイメージが悪夢のように描写されている短編集。
脳味噌の「恐怖」を司る部分を、サーっと触られているような感じ。
男性作家でこれだけ感覚的な表現ができる人はなかなかいないんじゃないか。
思えば「妖都」もイメージがほとばしっていたが、「蘆屋家の崩壊」はそれが 適度に抑えられている感じ。
「猫背の女」が超こわい。
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クロノス・ジョウンターの伝説 梶尾真治 朝日ソノラマ文庫 552円
時間SF度:★★★
ロマンチック純愛小説度:★★★★★
ファンタジー度:★★★★
クロノス・ジョウンターという過去にジョウントできる機械にまつわる究極の 純愛SF小説。
(中編3本立)
こう書くとなんとも陳腐なのだが、これが泣かせる。
愛する人のために、過去に滞在できるのがわずかな時間であるにもかかわらず、 副作用で遠い未来に飛ばされてしまうことを恐れず、ジョウントする。
その結果、主人公達に起こるのは…。
特に2編目の「布川輝良の軌跡」がいい。
出会ってすぐに、恋愛が成就してしまう設定ってアリ? とは思うが、男って 幾つになってもこういうのに納得してしまうんである。
登場人物もいい人ばっかで、話しはできすぎで、しばし現実世界を忘れて物語 の主人公に同化できる至福の時をすごせる。

「サラマンダー殲滅」も超おすすめ。未読の方は合わせてどうぞ。
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隕石誘拐 鯨統一郎 カッパ・ノベルス 838円
ミステリー度:★★
邪馬台国はどこですか?度:★★★
作者は宮沢賢治の全作品を読んだ度:★★★★★
童話作家中瀬研二の妻稔美と子供が誘拐される。稔美から七色のダイアモンド のありかを聞き出そうというもの。七色のダイアモンドと誘拐犯の謎を解く鍵 は、宮沢賢治の童話にあった…。
人物は類型的だし、誘拐された「稔美」が凌辱されるのはあんまし必然性を感 じないし、読者サービスが過ぎる感じ。
ミステリーとしてはちょっと無理があるか。
しかし、 とんでもないもの同士を無理やり繋ぎ合わせ、ウルトラDな解決を見 せる作者の手法は、「邪馬台国はどこですか?」に続き本作でも発揮されてい る。
なかなかの苦心作。
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撃つ薔薇 AD2023涼子 大沢在昌 光文社 1,700円
ハードボイルド度:★★★
ミステリー度:★★
強く美しくかっこいいヒロイン度:★★
著者が肝いりでつくったゲームソフトの前振り度:★★★★
近未来の日本を舞台にしたハードボイルド。
警視庁の特殊班に在籍する超美人の刑事が、麻薬組織に潜入して内部を調査、 壊滅を図るというストーリー。
ヒロインの刑事はなかなか非情でハードボイルドしているのだが、どうも登場 人物や内容が薄い。
やっぱゲームソフトの前振りだからか。
ヒロインの本名が「鮫島ケイ」というのも、作者の意気込みを感じるが、その 意気込みは本書よりもゲームソフトで発揮されるよう。
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グッドラック 戦闘妖精・雪風 神林長平 早川書房 1,800円
SF度:★★★
S・レム度:★★★★
機械知性と人間の関係度:★★
戦闘妖精・雪風の続編。
前作同様戦闘機の描写は、なかなかハード。しかし今回のテーマは、前作でも 語られていた「機械生命体」について。
しだいに明らかにされる異星体と、だんだん人間臭くなる雪風と、パイロット の零たちの間で交わされる会話は、 レムの思索的なSFを彷彿とさせるような 内容だし、レムの影響を強く感じる。
自分はなかなか面白く読めたが、ちょっとテツガク的。
これといって新しい展開が提示されることはないし、解の一つが「愛」である ことに不満はない。が、ちょっと新鮮みに欠けるか。
なんで戦闘機が主役なのか、なんで異星体ジャムは直接地球を舞台にしないの か、といった物語の設定に疑問は残るものの、次作に期待。
レムの小説が好きな人にはお進め。
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戦闘妖精・雪風 神林長平 ハヤカワ文庫JA 560円
SF度:★★★
戦闘機フェチ度:★★★★
異性体との戦闘度:★★
惑星フェアリイで異星体ジャムと戦う超高性能の偵察戦闘機「雪風」。 冷徹で非情なパイロット「零」に操縦され、異星体との戦闘を偵察していくう ち、その偵察戦闘機自身に高度の戦闘技術が備わっていく。
文章は硬く、戦闘機「雪風」とパイロットの関係や、異星体の正体など、とっ てもハードSFしている。しかしながら、そこに機械と人間の関係を折り込む ことにより、物語に厚みが出ている。
マシンや操縦、戦闘に関する描写は、戦闘機フェチにとってたまらないものが あるのでは。
15年前のSFにしては古くささを感じない。
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奇妙な道 ストレンジ・ハイウェイズ1 ディーン・クーンツ 扶桑社ミステリー 648円
ホラー度:★★
サスペンス度:
アクション度:★★
クーンツの短編を納めた「ストレンジ・ハイウェイズ」の第1弾。
表題作の「奇妙な道」は、ちょっとSFっぽい設定のホラー。 それなりのアクションシーンやホラーらしい展開はあるものの、いまいち。
解説を読むと、この「奇妙な道」には作者の思い入れが込められているとの こと。なるほどその分エンターテイメント性が損なわれたよう。
もう一個の短編「ハローウィンの訪問者」は、子供だまし。
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もののけづくし 別役実 ハヤカワ・ノンフィクション文庫 540円
屁理屈度:★★
エスプリ度:★★
「づくしシリーズ」の最新作、ではなく、93年刊行の「当世もののけ生態 学」に2編を加え改題したもの。
相変わらずの屁理屈ぶりだが、劇作家らしい人生観に裏打ちされた文化批評 とも読めるところがさすが。
別役実初体験のかたは「虫づくし」から読むのがおすすめ。
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偏執の芳香 アロマパラノイド 牧野修 アスペクト 1,800円
ホラー度:
ミステリー度:
特異なイメージ世界度:★★
においにより世界を支配しようとする異常者と、それにかかわる人達の戦いを 作者の特異なイメージの世界で展開させた小説。
小説世界に入り込む前に、登場人物の言動の齟齬にイライラし、超常現象や においによる異世界や挿話の消化不良にさらにイライラする。
帯にあるような「麻薬」的な「極彩色のめまい」は、納得のいかない理不尽な イメージにしか見えない。 ストーリーの展開が1頁先も全然読めない、というのも、読者の不安や恐怖を 煽る前に、ただ居心地の悪い椅子に座っているような気持ちを与えるだけに思 える。
まあ、作者の感性と自分の感性がちっとも合わないんだなぁ。 「レディー・ジョーカー」を読んでいた時のような、イライラ感が残ってし まった。
夜中に読んだのに残念。
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屍の王 牧野修 ぶんか社 1,800円
ホラー度:★★
グロテスク度:★★
愛娘を殺され、人生なげやりになっているエッセイストに、かつてつながりの あった編集者から小説の執筆依頼がくる。かれがその小説「屍の王」を書き進 めていくうち…
ホラーというより、グロテスクなシーンの多用で恐怖感を煽ろうとしているよ うな印象。かといって洋物ホラーのようにゾンビが出てくるわけではない。幽霊 じみた登場人物はいるものの、そういった怖さもない。
現実と虚構あるいは彼岸と此岸をさまよう描写も、主人公の陥る見当識の喪失 も、なんかいまいち書き込みがたりない。
昼間に読んだのがよくなかったのかなぁ。 夜中に読めば、それなりに怖いかもしんない。
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バトル・ロワイアル 高見広春 太田出版 1,480円
サバイバルゲーム度:★★★★
スプラッター度:★★★
センチメンタル度:★★★★
パラレルワールドでの日本。中学3年のあるクラス全員が孤島に拉致され、そ こで生き残った者だけが助かる、という死のサバイバルゲームが始まる。
先日読んだ「クリムゾンの迷宮」と同じような展開だが、「クリムゾン…」がどち らかというと生き残るテクニカルな面とその詳細に重点を置いているのに対し これは少年少女たちの感情的な部分に重点がある。そのせいで、残虐シーンは 多いものの印象は薄く、ロマンチックなとこが印象に残る。
ちょっとシチュエーションをかえれば、青春小説としても成り立つ。
ラストも「クリムゾン…」のように小賢しいところがなく、ストレートでいい。
しかし、デビュー作でこの出来は驚き。
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青猫の街 涼元悠一 新潮社 1,500円
ミステリー度:★★★
私小説的自己完結度:★★★★
インターネット利用者にはとってもリアル度:★★★★
とってもマニアックでありながら、システムエンジニアを主人公にしたことと インターネットという世界を取り入れたことにより、リアルな小説世界を築い ている。
その方面の方には、日常そのもの、なのでは。
古いパソコンを1台残して、友人が失踪する…という設定も、なかなか暗示的 で興味をひくが、結果がどうも暗い。
「青猫」の謎解き部分は緊迫感があって スリリングだが、その結末が屈折した少年の心理みたいで、少年向けの展開。
システムエンジニアとパソコン好きの人にはお勧め。
おもわず「青猫」をサーチエンジンで検索してみたくなる。
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千里眼 松岡圭祐 小学館 1,700円
B級度:★★★★
一気読み度:★★★
スリルとサスペンスとアクション度:★★★
千里眼と呼ばれる病院院長、元自衛隊パイロットの美人カウンセラー、テロ集 団の新興宗教、と面白さてんこ盛りのB級アクション小説。 一気に読んで、ビール飲んで風呂入って寝るのにうってつけ。
前読んだ「催眠」も今では内容を全然覚えていないが、この小説も読んでいる ときだけ面白ければそれで良し、というお手軽娯楽小説。
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スノウ・クラッシュ ニール・スティーブンスン アスキー出版局 2,400円
SF度:★★★★
超高速文体度:★★★★
近未来ネットワークのリアリティ度:★★★★
これが超先端のSFか、と思わせるガチガチの近未来バーチャルアクション SF。
なにしろ速い。展開も速けりゃ、乗り物も速いし、文体も速い。最近疲れめの わたしにとってはついていくのがやっとだった。
メタヴァースというネットワーク上の架空世界もリアリティーあり。きっとこ れからの情報ネットワークはこんな風になるんだろうな、と思わせる先見性と コンピュータマニアをも納得させるであろう説得力がある。
だがストーリー自身はそんなに奇抜でもない。やっぱ最大の特徴は超高速の文 体と近未来ネットワークの描写にある。
新しもん好きのSFファンにはおすすめ。
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頭弾 樋口明雄 講談社 1,800円
大陸風ウエスタン度:★★★★
アクション度:★★★
ヒロインがいい度:★★★
1922年、中国の一部が満州と呼ばれていたころの話し。街の不良少女が あるきっかけで、馬族の仲間に。やがて満州に侵攻していた関東軍との戦いに 巻き込まれていく。
武骨でありながら人情深い馬族の描写もうまいし、戦闘シーンもいい。 少女の成長物語とも読めるし、荒くれでありながら仁侠道に生きる馬族の物語 とも読める。よくまとまった物語。
しかし、小説というのは少女を主人公にすると面白くなるものなのか。
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イントゥルーダー 高嶋哲夫 文芸春秋 1,429円
ミステリー度:★★
コンピュータ犯罪度:★★
親子の絆度:★★
大手コンピュータ会社の副社長のもとに、かつてつきあっていた女性から 「あなたの息子が重体です」と告げられる。会ったことのない息子の不審な 事故を調べていくうちに、犯罪の影と、息子に対しての思いにとらわれ…。
「コンピュータ」「原子力発電」と著者の経歴を活かした題材を使っている が、どれも中途半端な感じ。 見知らぬ息子を思う気持ちが物語展開の動力源となっているのだが、息子の いない自分にはいまいち説得力に欠ける。
全体的に破綻はないものの、題材の割りには古くささを感じる小説。
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燃える地の果てに 逢坂剛 文芸春秋 2,095円
ミステリー度:★★
どんでん返し度:★★★
過去と現在の錯綜度:★★★
1966年、スペインの田舎町で起きたアメリカ軍爆撃機の墜落事故。この機 には核爆弾が搭載されていた……。
著者得意のスペインもの。といっても自分は「カディスの赤い星」しかよんで いないけど、なんかよく似ている。
昨年の「このミス」2位、という帯に期待していたのだが、ちょっと期待が大 きすぎたみたい。
これといって、欠点はないように見えるところが最大の特徴。 悪くはないけど良くもない。
綿密な描写のわりには人物深くないし、かえって テンポが遅く、緊迫感に欠けるよう。
「柔らかな頬」を読んだ後のためか、なんか平板な印象しか残らなかった。
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柔らかな頬 桐野夏生 講談社 1,800円
ミステリー度:★★★
背筋ゾクゾク度:★★★★★
ディープ度:★★★★
別荘地で起きた少女の失踪事件にまつわる人間模様と、一人ひとりの持つ心の ある一面を浮かび上がらせる小説。なぜか暗く悲しい曲がたえず流れているよ うな気持ちにさせる。
「OUT」で描かれていた人の心のなかにある名状し難い情念が、この小説で はオブラートにくるまれて表現されているが、それだけに怖く不気味。
主人公たちの捕らえ所がなく理解にしにくい、それでいて妙に納得させられて しまう描写は、秀逸であると同時に読者の心のなかにどこか共感する部分があるだけに怖い。
なんか、漠然としたコメントだが、人の心にある深く暗い夜の海を小説にした よう。
こころして読まないと、小説世界に絡めとられてしまう力がある。
特に、幼い子供を持ちながら夫以外の男性と深い仲にある方は、やめといたほうがいい。
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幻の女 香納諒一 角川書店 2,000円
ミステリー度:★★★
緻密な構成度:★★★
ハードボイルド(めめしいい男と強い女)度:★★★
不倫相手からふられた弁護士が、彼女と5年ぶりにばったり出くわし、その直 後何者かに彼女は殺害される。いまだに彼女のことを忘れられなでいた主人公 は、彼女の殺された理由を探し求める……というミステリー。
めめしい主人公に共感できる部分もあるし、緻密な構成と結末も完成度が高い。
でも、なんかごちゃごちゃしてて考えんのが面倒、という感じ。
中盤から結末にかけての、暴力団と役所の疑惑についてのくだりは、少々うん ざり。構成としてはこれしかないのであろうし、結末も意外性を発揮している のだが、物語としてはつまんない。
もっと簡潔にし、ヒロインの心理を伺わせるような展開にすれば、ミステリー としての「キレ」は薄れるが、小説としての「コク」は深まるのでは。
ちょっと自分には向いていないなぁ。
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極大射程 スティーヴン・ハンター 新潮文庫 上667円 下667円
冒険小説度:★★★★
ヒーロー度:★★★★★
アクション度:★★★★
ガンマニア度:★★★
ベトナム戦争で生き残った、なかば伝説と化したスナイパーの冒険アクション 小説。
これは傑作。 展開もスピーディーだし、ガンマニアにはたまらないシーンも変に片寄ってお らず主人公の性格描写に寄与しているし、骨太のストーリーにも登場人物にも 文句なし。
なにより、変に政治的背景や武器の詳細に文章を費やしている最近のスパイも のや謀略小説とは一線を画している。(トム・クランシーとかは今の自分には 全然興味がわかない)
昔、冒険小説を読み漁った時に感じた興奮がこの小説にはある。 マクリーンやヒギンズの小説に夢中になり、そして現在のクランシーに代表さ れるようなサスペンスもの?に「ちょっとちがうよねぇ」と思っている冒険小 説ファンに絶対お勧め。
今までのスティーヴン・ハンターの翻訳本の中でも最高の出来。
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童話物語 向山貴彦 幻冬舎 2,000円
ファンタジー度:★★★★★
少年少女向け度:★★★★
少女の成長と自分探しの旅度:★★★
自分をかわいそうだと思っている読者の自己投影度:★★★★
孤児でいじめられっ子の少女と、世界を滅ぼすといわれる妖精の、旅の物語。
童話というより少女向けのおとぎ話し。
ご都合主義だったり、ちょっとおかしいんじゃない、と言いたくなるところは 随所にあるものの、ツボを押さえた文章と展開には、読者を夢中にさせる魅力が ある。心暖まる場面では思わず涙ぐんでしまうし。
ハードSFファンや本格ミステリー愛好者には、とても勧められないが、細か い所は気にしない異世界ファンタジーファンにはお勧め。
しばしのあいだ、物語の世界にひたれること間違いなし。
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宿命 「よど号」亡命者たちの秘密工作 高沢皓司 新潮社 2,300円
ミステリアス度:★★★
大国に利用される若き革命家度:★★★★
北朝鮮のちょっと変度:★★★★
29年前に起きた、赤軍派による「よど号」ハイジャック。彼らは何を求めて 北朝鮮に亡命し、そしてどのような運命をたどたか。
若き革命家にシンパシーを寄せる若者は、今とて少なくないだろう。 そこには若者だけに許される正義感と情熱がある。だが、若さとは世間知らず でもある。
個人の思想がいかにあろうとも、巨大組織の中ではいとも簡単に組織内に取り 込まれ、変容されてしまう。 そして、巨大組織の思うがままにあやつられ、当初の目的とはまったく異なっ た泥沼のような思想のなかで、自分の思惟を成り立たせるためだけに、もがき あえぐ。
北朝鮮の不気味さはもとより、そのなかに取り込まれてしまった若者の半生に やるせない無念を感じる。
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エンデュアランス号漂流 アルフレッド・ランシング 新潮社 2,200円
漂流ノンフィクション度:★★★★
サバイバル度:★★★
信じられない度:★★★★
1914年、イギリスの南極探検対が約1年半にわたって漂流,生還するまでの ノンフィクション。
文章は比較的淡々としているが、その内容たるやにわかには信じ難い。
少なくとも、冒険小説3冊分の荒業をしていながら、妙に感動的になったり 自慢したりするような描写がないところがいい。
文中の写真がまたすごい。よくもまあ撮ったものよ。
こういったノンフィクションを読むと、フィクションの世界の軽さや、小賢 しさがあらためて目につく。
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クリムゾンの迷宮 貴志祐介 角川ホラー文庫 640円
新手の冒険小説度:★★★★
亜流RPG小説度:★★★
リアリティーの無さ度:★★★★
帯にはホラーうんぬんとあるが、これは新手の冒険小説。
RPGやゲームブックを小説にリメイク(自分はあんましやったり 読んだりしたことないんで合ってないかも)したような感じか、または映画 インディージョーンズを小説にしたよう。
ただし、映画のようなコメディータッチはなく、シリアスなタッチ。 読んでいて引き込まれるものはあるが、どうも「ゲーム」という言葉からか B級小説として読んでしまった。
まあ、面白いし良くできてるんだけどね。
最後のくだりは小説としては必要だが、「ゲーム」としては不要。 どっちが良かったかは難しいところ。
ここらへんに作者の迷いが出て、読むほうも迷ってしまう。
潔く「ゲーム」にしたほうが、よかったかも。
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不安な童話 恩田陸 祥伝社文庫 552円
ホラー度:★★★
ミステリー度:★★★
(光りの帝国の続編を読みたい度:★★★★
書き方によってはバリバリのミステリーにもホラーにもなる物語だが、そこは 恩田陸、独特の小説世界を造っている。
ある種の超能力をもった人物が登場すると、とかく浮世ばなれしがちだが、 彼女の小説世界ではしっかりと地に足が着いた情景として語られ、違和感がな い。
そして彼女独特の描写は、女性読者に受け入れやすいものかも。
宮部みゆきのそれと似ていなくもないが、違うのは方や超能力自身が物語の主 役であるのに対し、恩田陸は超能力はそこにあるものとして物語が進んでいく ことであろうか。
いずれにしろ、スティーブン・キングの小説を面白く読んできた下地がうかが える。
そして彼女達の小説が、キングの小説に夢中となっていたころを思い出させる ほど、日本のホラーやミステリーは面白くなってきている。
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ピンの一 伊集院静 幻冬舎 1,700円
ギャンブル度:
迫力の語り度:
ギャンブル小説というと阿佐田哲也を思い出すが、この小説を含め阿佐田哲也 のギャンブル小説に比肩するものは、なかなか出会わない。
(「真剣師 小池重明」は小説じゃないだけに迫力があったが)
本書に迫力のあるギャンブルシーンや、ギャンブラーの生きざまの間にみえる 心動かされるシーンを期待するのはちょっと無理。
しかし、スポーツ新聞の掲載小説としては、よくできている。
競輪場に行く前に読むのがよかろう。
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双頭の鷲 佐藤賢一 新潮社 2,400円
戦記物度:
中世フランス歴史物度:
破天荒なヒーロー度度:★★★★
14世紀、フランスの破天荒な軍新と彼を取り巻く人々の物語。
戦争に関しては神がかり的な才能をもちながら、日常生活はまるで悪ガキの 主人公は、魅力ある人物に仕上がっている。
しかし、それだけ。
物語はブツ切れで盛り上がりに欠けるし、登場人物も書き込みがたらず凡庸で 生きた人間になっていない。
帯にあるような「興奮」も「面白さ」も感じなかった。
作者の頭の中や、歴史に詳しい人にとっては一気通貫の物語となっているので あろうが、物語として読ませるには、この3倍以上の文章を必要とするだろう。 (それはとてつもない労力と才能が必要だが)
やっぱ自分には、歴史ものは合わないなぁ。
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青らむ空のうつろのなかに 篠田節子 新潮社 1,600円
ホラーっぽい度:★★★
SFっぽい度:★★★
癒されない心度:★★★
人の心の中にある、癒されることのない危うい心理を描いた短編集。
ホラーっぽいのやら、SFっぽいのやら、ブラックのやら混ざっているが、 やはり「癒し」という言葉が浮かんでくるのは穿ち過ぎか。
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特命リサーチ 2000X 超常現象編  松岡征二 日本テレビ 1,200円
納得度:★★★★
テレビと同じ度:★★★★
テレビ放映されている番組そのままの本。
世の中の不思議をきちっと解き明かす内容は、SFファンにも受け入れられる のでは。
しかし、この内容ではTVの方が面白い。
放映された内容に付帯状況や解説等を盛り込み、もっと突っ込んだものにしなければ、映像よりインパクトのあるものにはならない。
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永遠の仔  天童荒太 幻冬舎 上1,800円 下1,900円
やるせない度:★★★★★
こころゆさぶれる度:★★★★
なんともやるせない哀しさ。
幼児虐待を受けた主人公達が、どのように生きてきたか。どのように助け合っ てきたかに心打たれる。
そして彼らが自分を生かすためにとった手段がなんとも哀しい。
主人公達の境遇が、特異なケースでありながら、その小説世界が何故か自分の 世界とオーバーラップする作者の巧みさにも感心。
今までの著書と比べ、主題は異なっていないもののアプローチのしかたが 180度違う。
しかし「永遠の仔」の方が、家族について、そして人間一人ひとりが抱える 心の苦しさと癒しについて、より広く理解と感動をあたえてくれる。
心に傷のあるひとは、読後しばらく安静が必要。
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デルフィニア戦記 1〜18 茅田砂胡 中央公論社C★NOVELS 800〜850円
少女小説度:★★★★
ファンタジー度:★★★
愛と勇気と冒険と友情度:★★★★★
一気読み度:★★★★★
これは面白い。
この本を書店で買うとき、おじさんにはちょっと恥ずかしいかもしれないが、 それを我慢しても読む価値十分。
少女小説ならではの登場人物(なんで中性的なのがいいのかね)や、はずかしげ もない会話に、ちょっと異世界を感じるものの、それが心地よくなる魔力あり。
つまらない戦国時代小説よりよっぽど面白い。
少女小説を侮るなかれ。 是非ご一読を。
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悪魔は夜はばたく ディーン・R・クーンツ 創元推理文庫 660円
ホラー度:★★★
スリルとサスペンス度:★★
一気読み度:★★
クーンツの原点といわれれば納得はするものの、その後の小説を読んでいる だけに満足はできない。
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ストーカー ディーン・R・クーンツ 創元推理文庫 460円
B級度:★★★★★
スリルとサスペンス度:★★
一気読み度:★★
新刊本はアカデミー出版の超訳だし、「ウォッチャーズ」のような傑作は もう読めないのだろうかと嘆いているファン向けに、押入の奥から引っぱり 出したような復刊版。
クーンツの小説を読み漁りたい人向け。
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謀略軌道 新幹線最終指令 北上秋彦 角川書店 1,200円
B級度:★★★★
スリルとサスペンス度:★★★★
一気読み度:★★★★
新幹線ハイジャック小説。
ケチをつければきりがないが、B級サスペンス物として読めば十分楽しめる。
新幹線で出張するおとうさんに、車内で読む本としてお勧め。
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キラキラ星 群ようこ 角川文庫 438円
笑える度:★★★
恋愛小説度:★★
小説というより、連続した笑い話し。
気分が落ち込んでいるときには、元気を回復する薬になる。
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偽造手記 国分寺公彦 新潮社 1,600円
ホラー度:★★★
変質度:★★★★
江戸川乱歩の危うい世界と、安部公房のあちらの世界を合わせて3で割った ような小説。
前半はなかなか変質的でよかったのだが(趣味が片寄ってる)、まあ、筋道 を通した結末にしたため、恐怖感が薄れている。
筋道の無いところが怖さの根源でもあるのだが、このへんが男性作家の性なのか。
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エンディミオン ダン・シモンズ 早川書房 3,000円
SF度:★★★★
冒険小説度:★★★★★
前作を読んだほうがいい度:★★★★
完結編と一緒に読んだほうがいい度:★★★★
実は、小生この小説を静かに誰にも邪魔されずに読むため、会社を休んで しまった。
(まぁ他にも用事があったんだけどね)
その期待に違わぬ出来映え。 読み始めたらやめられない。
久しぶりにページをめくるのがもどかしく、かつ、めくるのがもったいない 気分を味わった。
物語は「時間の墓標」から戻ってきた少女と「ヒーロー」である若者のエンディミオンとアンドロイドが、様々な惑星をめぐる冒険談。
一言でいうとたいしたこと無さそうだが、これがすごいのである。
始めは前作の内容をまったくといっていいほど覚えていなかったため (なんたって4年くらい前だもんね)ちょっと心配であったが、そんなものは 気にする必要はなかった。(読んでいくうちだんだん思い出してきた)
読んだあと、しばらく物語の世界から抜けられなかった。
しかし、完結編が年内刊行予定とは。
完結編を読んでも完結しない、ということにならぬよう祈る。
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二十歳のころ 立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ 新潮社 2,200円
高校生向け度:★★★
習作度:★★★★
東大立花ゼミの学生がおこなったインタビュー集。
まあ、学生の習作といった感を免れない。
おじさんの自分には、あまりインパクトがないものの、高校生位の人には 印象深いインタビューかもしれない。
それにしても、多くの人にとって「戦争」が、次の世代では「学生運動」が 原体験となり、共通言語となっている。
ところが今の若者にとって、「戦争」や「学生運動」に代わる共通言語は 無いに等しい。
これからの世代の文化を考えるとき「共通言語は何か」が、重要なキーと なるであろう。
インタビューのなかにも、その片鱗がうかがえる。
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私が彼を殺した 東野圭吾 講談社ノベルス 800円 
推理小説度:★★★★
欲求不満度:★★★★★
「やっぱ、小説家って儲かっていると思われているんかなぁ」とか 「電車の中のおばちゃんパワーってかなわないよね」と本筋とは関係ないところで邪推や共感していた私には、薬の数などめんどうで数えもしなかった。
でも知りたい。
いったい犯人は誰なんだぁ!
嘘でもいいから教えてぇ!
ついでに「どちらかが彼女を殺した」の犯人も教えてぇー
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バースデイ 鈴木光司 角川書店 1,400円
ホラー度:★★★
SF度:★★
インパクト度:★★
リング−らせん−ループ3部作の外伝。
3部作をふまえて几帳面に書かれているが、あまりインパクトなし。
さらっと読んでしまえるものの、作者の長所であるすっきりと明快な文体が物語を平板にしている感あり。
映画と抱合せ戦略が濃厚だが、3部作を読んだ人は、おまけで読んでも損はしない。
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球形の季節 恩田陸 新潮文庫 514円
ファンタジー度:★★★
ホラー度:★★★★
青春度:★★★
地方の高校で起きる、噂が現実になる… というホラー。
彼女の小説世界は、きっと頭のなかで細部まで完成しているのだろう。
それゆえ物語に破綻がなく、リアリティーのある世界を描写できる。
類型的ではあるものの、独自の描写や舞台により、読者を惹き付ける テクニックもある。
(積み上げた石の場面は「ペット・セマタリー」を 思いおこさせ、ちょっと怖い)
学園ものを読むと自分の高校時代を思いだし、妙にせつなく悲しくなるなぁ。
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明るいクヨクヨ教 東海林さだお 文芸春秋 1,048円
おいしい度:★★★
笑える度:★★
こじつけ度:★★★
東海林さだおの食べ物エッセイを読みながら、カップラーメンを食べるのが 無常の喜び。
この本は半分くらい食べ物エッセイだが、あと半分が文化批評?になっており、それがちょっといただけない。
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葛橋 坂東眞砂子 角川書店 1,500円
性愛度:★★
ホラー度:★★
日常からの脱出度:★★★
これといって特徴のない短編集。
映画と抱合せの販売作戦もの。
不倫にしても、ホラーにしても、女流作家の描く世界はそこはかとなく怖い。
感性で小説を書けるテクニックがなせる業か。
扉の絵が、表題作そのままで、エッチ。
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レクイエム 篠田節子 文芸春秋 1,619円
SF度:★★★
シリアス度:★★★
怖い度:★★★
ここ14年間に発表された短編を集めたもの。
日常のなかに潜む不思議と恐怖の世界が、乾いた文体で描写されている。
なかでも幼児虐待をテーマとした「コンクリートの巣」は、冷え冷えとした 恐怖を描きだし、秀逸。
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恋愛中毒 山本文緒 角川書店 1,800円
純愛愛:★★★★
ミステリー度:★★★
怖い度:★★★★
予想したほど大胆な結末ではなかったものの、微妙な伏線もうまいし、日常と 非日常のすき間をうまく描いている。
また、女性作家ならではの描写が、リアリティーと恐怖を増す。
先日読んだ「Y」と、恋愛小説という面から比較すると、女性が描く恋愛世界 の方が断然怖い。
男性の描く恋愛は、なんと屈託がなく、純真でお気楽なのだろう。
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翔べ麒麟 辻原登  読売新聞社 1,905円
中国歴史物度愛:★★★
活劇度:★★★
人名が覚えられない度:★★★★★
自分が読んだ数少ない中国歴史物の本と比較すると、ちょっとものたりない。
「蒼穹の昂」ほど物語に重厚さがなく、描写力も劣る。
また「十二国記」シリーズほど感動的でもないし、感情移入もできない。
まあ、比較する相手が悪いといえば悪いし、市井物作家や少女小説作家の方が 芥川賞作家より、力量に勝るともいえる。
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Y 佐藤正午 角川春樹事務所 1,600円
純愛度:★★★
ファンタジー度:★★★
18年間一目惚れ度:★★★★
登場人物の意識が飛んで、18年前の自分に戻るというファンタジー。
出だしはミステリアスでよかったが、後半はちょっとものたりない。
それにしても、18年間も、駅のホームで数回見ただけの女性にストイックな 恋愛感情を持ち続けるというのは、ちょっと無理あり。
まあそう思うのは、自分が年をとったせいかも。

それはそうと、「角川春樹事務所」ってなんなんだ。
角川書店はどうしたんだ。
前から「角川春樹事務所」はあったのか。
小説より、こっちのほうが気にかかる。
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負けない私 群ようこ 毎日新聞社 1,400円
お気楽度:★★★
日常度:★★★
そんな人いるわきゃない度:★★
群ようこは、この手の小説を書かせるとうまい。
どれも同じ様なシチュエーションでありながら、飽きさせず読ませる。
一種、東海林さだおの「丸かじり」シリーズにも似た、安心感とカタルシスを 与えてくれる。
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ジオラマ 桐野夏生 新潮社 1,500円
ホラー度:★★★
ミステリー度:★★
変態度:★★★
ホラータッチで、ちょっと変態の登場人物が多い短編集。
表題作の「ジオラマ」は、自分がマンションに住んでいるだけにリアリティー があった。
こういう危うい世界は、ちょっと味見をして見たい魅力がある。
登場人物に変態が多いのが気にかかるが、短編集のまとめ方としては正しいと感じる。
しかし、そこで話しに落ちをつけているのは、「OUT」を読んでいる だけにちょっと物足りない。
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