ミュジカミリオン/アーリー・ミュージック・プロジェクト
ホーム管楽器/横笛類>アイリッシュ・フルートについて
  
アイリッシュ・フルートについて
 アイリッシュ・フルートはもともと19世紀のイングランドでオーケストラに使用されていた木製フルートでした。その後、すべての指穴にキーを用いた金属製のフルートが誕生し、木製のフルートは一般的には使用されなくなりました。しかし、アイリッシュなどのトラッド系の奏法のためには指穴を直接指で押さえる必要があり、そのためにトラッド系のフルート奏者達だけが木製のフルートを使い続けることになったのです。このことからこれらの19世紀の木製フルートは「アイリッシュ・フルート」と呼ばれるようになりました。従って、この呼び名は「アイルランド製のフルート」という意味ではありません。実際、今日でも一部の奏者が使用しているオリジナル楽器の多くは、当時のロンドン(イングランド)で製造されたものです。このため英語の正式名称では "English Simple System Flute" と呼ばれています。
  

*キー付きとキーレス

 現在製造されているアイリッシュ・フルートには大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは19世紀のオリジナルの復元楽器で、幾つかのキーを持つタイプ、もうひとつはそこからキーをすべて取り去ったタイプのものです。アイリッシュ・フルートは基本的には6孔のダイアトニックな音階の笛で、途中の幾つかの半音を出すのにはキーが必要になります。しかし、トラッド系の音楽ではこれらの半音をほとんど使用しないので、キーのないタイプの方が経済的で扱いやすいということになります。ボア(内孔)に余分な穴があいていないので、実は音質や機能の面でもキーのないフルートの方が有利です。すぐに動かなくなってしまうキーや、パッドの劣化による息漏れに悩まされたりすることもありません。

*頭部管の問題

 19世紀スタイルのフルートは頭部管とジョイント管の内部に金属管を使用しているため、かなり高い確率で割れます。リンシード・オイルやアーモンド・オイルを塗ったり、温度や湿度の変化に気を配っていても、この19世紀のスタイルである限り「いつかは割れる」と思っていた方がよいでしょう。現存するオリジナル楽器の多くも割れて修復された痕跡があります。割れて捨てられてしまったものがあるとすれば、当時のものもかなりの確率で割れていたことになります。そのために金属製のフルートが考案されたと言ってもよいでしょう。
 割れてしまっても修復は可能です。但し、割れた裂け目が歌口にかかっていた場合には、演奏性に影響が出るでしょう。

*キーの問題

 現在でも19世紀スタイルのフルートを造り続けているのは、すべて海外の小さなガレージ・メーカーであり、仕入れる材質やパーツ、製品に対する品質管理が万全であるとは言えません。その上、木製のフルート本体は湿度の変化などによってわずかに変形しますので、使用しているとキーがうまく動かなくなってしまうこともよくあります。
 現代の金属製フルートを演奏されている方々は、キーが「パカ・シャカ」とスムーズに動くものと思われているでしょうが、この時代のキーは大きく異なり、もっとずっと重くゆっくり動くものです。従って、実用性の点でも難があります。

*当オフィスの商品について

 当方で主に販売している木製のアイリッシュ・フルートはスウィートハート製のキーのないもので、頭部管にも金属管は内包していません。従って、割れる確率は低く、キーの問題も生じません。ディクソン製の合成樹脂のフルートも同様です。しかしそれら以外の機種やそれら以外のメーカーによる木製のフルートは、すべて前記したようなトラブルが発生することを考慮しておいてください。 
 当方から購入されたものに関しては、当方で修理の手配をします。或は、修理可能な業者をご紹介することもできます。費用は状況によって大きく異なります。また、かなりの日数を必要とする場合もありますので、あらかじめご了承ください。

ご注意:横笛初心者の方々が木製フルートを購入された場合、残念ながらかなり高い確率で割ってしまいます。演奏の前後で管を握って暖めるなどの必要な手順を踏まず、無理に長時間吹いてしまうためです。横笛初心者の方々は必ずディクソンのPVC製かソリッド・ポリマー製のモデルをご購入ください。

ご注意2:アイリッシュ・フルートを持つ際は、Low D ウィスルのように『ストレート・フィンガー』で指穴を押さえてください。指先で穴を押さえる「リコーダー・スタイル」では無理があります。

*取扱中の各機種について

 以下に当方で主に取り扱っているアイリッシュ・フルートをご紹介します。現在は5機種です。

ディクソン(Dxn)PVC 2ピース・モデル
ディクソン(Dxn)PVC TB モデル
ディクソン(Dxn)ソリッド・ポリマー製3ピース・モデル
スウィートハート(Swt)ライトウッド製スタンダード・モデル
スウィートハート(Swt)ローズウッド製レゾナンス・モデル
スウィートハート(Swt)ローズウッド製スタンダード・モデル

   
          
 横笛が初めてなら、、、
ディクソン『PVC 2ピース・モデル』
 ボディは同社の Low D ウィスルと兼用で軽量のPVC製円筒管。横笛類未経験者のための楽器です。
 吹きやすく、ややソフトな音色。例外的に円筒管となっているため、高音部の音程と音質に難がありますが、「横笛とはどんなモノか」を知るためには最適な機種です。Low D ウィスルとのセットでの購入がお得です。
※このモデルは2011年までで生産を終了し、下記の「TB」モデルに置き換えられます。
(2011年11月追記)
 簡易フルートの進化形
ディクソン『PVC TB モデル』
 上記の胴管をフルートらしく逆円錐管とした2011年のニュー・モデルです。同じく横笛未経験者が「横笛とはどんなモノか」を知るために最適です。音は比較的上品に整えられており、音程も改善されていますが、その分、音量は控えめとなっています。やはり、Low D とのセットでの購入がお得です。
   
 アイリッシュらしい音なら、、、
ディクソン『ソリッド・ポリマー製3ピース・モデル』
 円錐管で重量級。音色や吹き心地はアイリッシュとして本格的なもので、強く吹き込んで演奏することも可能です。合成樹脂製とはいえ、実力はエボニー(ブラックウッド)製のホンモノと比較しても負けていません。それでいて割れる心配もなく、メンテナンス・フリーなので、気楽に扱える機種です。横笛経験者はこのクラス以上の笛を選んでください。初心者からプロまで安心してお勧めできるモデルです。ピッチ調節は可能ですが、アンブシュアのスタイルによっては A=442Hz 以上の高いピッチには合わせにくいと感じられる場合があるかもしれません。その場合は正面からではなく、多少角度を付けて吹いてみてください。

※最新のモデルではわずかに歌口が大きくなり、より本格的な音色となりました。アイリッシュらしい、やや泥臭い雰囲気も出ますが、その分、吹き手のパワーも必要になってきた感じです。
(2007年9月追記)

※同じ胴管を用いた Low D-SP が発売された関係で生産数が飛躍的に伸び、これに伴って大幅に値下げされました。2種類の頭部管と共通の胴管のセットもあります。
(2009年3月追記)

※装飾用の白いプラスティック・リングはブラス製のリングに変更されました。
(2009年4月追記)

※本体表面のどこかしら(1〜2カ所)に「ひっかきキズ」のようなものが見られます。これは製造作業中の取り扱いによるものと思われます。割れているわけではなく、表面的なキズですので演奏に支障はありません。あらかじめご了承願います。

 3パートです。ジョイントにはコルクが巻かれています。基本的にはメンテナンス・フリーですが、このコルクの部分にだけはコルク・グリースを塗ってください。保管する時は必ず各パーツを外しておいてください。
 シンプルな布製のケース付きです。パッドは入っていません。
     
 クラシック系奏者のマスコット・フルートなら、、、
スウィートハート『スタンダード』ライトウッド製2ピース
 円錐管で軽量級。材質はチェリー、アップル、メイプルなどのライトウッドで、湿度の急激な変化にも比較的強く、割れる心配はまずありません。甘い音色でアンブシュアのポイントが広いため、クラシック系のモダン・フルート経験者との相性がよいようで、「木の音がする」と好評です。逆にアイリッシュやバロックの経験者が吹くと、音が甘くなりすぎてしまうかもしれません。
 2パートです。ジョイントは赤いベルベットに見えますが、赤い糸によるものです。グリースは通常のコルク・グリースを使用してください。
 パッド入りのソフト・ケース付です。ジョイント部分の劣化を予防するため、必ず頭部管と胴管を取り外した状態で保管する必要があります。
     
 息も指も楽な新設計
スウィートハート『レゾナンス』ローズウッド2ピース
 円錐管。やや重量はありますが、比較的少ない息量で演奏する設計となっており、「重量級」とは言えない感じです。指穴が小さく、しかも左手の薬指の穴が少しだけひねった位置に開けられているため、非常に押さえやすくなっています。音は同社の『ライトウッド』よりもソリッドで太く重い感じがします。やや人工的な音色ですが、指穴の押さえにくさや肺活量不足で悩まれている方々にとっては「これしかない」という感じの貴重なモデルです。
 2パートです。ジョイントは木がそのままのように見えますが、実際には頭部管のジョイント部分の内側にコルクが貼ってありますので、コルク・グリースは必需品です。ジョイント部分には黒いシリコン・リングが装着してあります。高めのピッチにチューニングする時は、このリングを抜いてください。
 パッド入りのソフト・ケース付です。ジョイント部分の劣化を予防するため、必ず頭部管と胴管を取り外した状態で保管する必要があります。
※以前は同じ設計でラミネートウッドによって製作されていましたが、現在はローズウッド製となっています。(2009年3月追記)
     
 ロング・セラーの人気機種
スウィートハート『スタンダード』ローズウッド製2ピース
 円錐管で中量級。ローズウッド製の管に金属製のリングが使用されています。他社から樹脂製のアイリッシュ・フルートが発売されるまでは、トラッド系フルートの入門機として人気を独占していました。前記した『ライトウッド』と比べると明るく芯のある強い音ですが、一般的なアイリッシュ・フルートと比べると、ややソフトで優しく上品な美しい音色です。
 基本的には2パートですが、頭部管のヘッド・キャップも取り外し可能です。ジョイントは赤いベルベットに見えますが、赤い糸によるものです。グリースは通常のコルク・グリースを使用してください。
 パッド入りのソフト・ケース付です。ジョイント部分の劣化を予防するため、必ず頭部管と胴管を取り外した状態で保管する必要があります。
 特注になりますがC管やE♭管もあり、どちらも高い評価を得ています。
 写真の上が通常のD管で、その下がE♭管です。D管とは異なり、やや野太いアグレッシブな音です。アイリッシュ本来の泥臭い味わいも出せるでしょう。写真にはありませんが、C管は非常にソフトで甘く優しく包み込むような音色で、ゆったりとエアーを演奏するのに適しています。

   

  

追加情報

追加情報1
 「どのモデルを吹いても上品な音しかしない」というご感想をいただく場合がありますが、実際にそのような方々の演奏を見てみると、非常に上品な吹き方しかしていません。確かにスウィートハート製の横笛は上品な音色ですが、ディクソンのソリッド・ポリマー製フルートでも、穏やかで常識的な範囲の吹き方をしているだけではアグレッシブな音は出ません。「極端に激しく」「思いっきり」「狂ったように」吹いてみてください。優れた奏者は息の使い方のツボを心得ているので、見た目には通常の範囲で簡単に楽に息を吹き込んでいるように見えますが、実際には非常に大量の息を瞬間的にかなり強く吹き込んでいます。

追加情報2
 今のところ当方では、頭部管内部に金属管を内包した本格的な構造のアイリッシュ・フルートの取り扱いは中止させていただいてます。このようなモデルはすべて最も割れやすいエボニー系のブラックウッドを使用しており、しかもその内側に熱膨張率の異なる金属管を内包しているわけで、当方で在庫していたものはすべて割れてしまいました。これは保管方法の問題で、入荷直後から毎日少しずつ演奏し続けていれば割れないのですが、それでは売れる頃には「中古品」になってしまいます。また、割れてしまう可能性が高いのですから、売る側としても安易にオススメできないという面もあります。「それでも欲しい」という場合は、ご相談ください。

追加情報3
 アイルランドの笛の基本的な奏法などについて知りたい場合は、ウィスル用の教本を参考にしてください。運指や奏法は殆ど同じです。また、この分野では「ウィスルで奏法や曲を覚えてからフルートを始める」というのが「常識」です。ウィスルが吹けない状態でアイリッシュ・フルートを始める、という挑戦にはかなり無理があります。
 残念ながらアイリッシュ・フルートの初心者用の教本でオススメできるものはありません。誤解を招きかねない内容で、しかも必要と思われる情報の含まれていないものなら複数ありますが、仕入れるのに3ヶ月前後かかります。
 ウィスルの方が演奏が楽なので、息の使い方や様々な装飾音の指使いを学びやすく、曲も覚えやすいと思われます。また、ウィスルなら教室やワークショップなども多く、実際に指導してもらえる機会が多くなります。
 「初めて演奏する楽器がアイリッシュ・フルート」という場合、挫折して演奏を断念されてしまう方が殆どのようです。できればその前に、ウィスルで最低限の演奏法をマスターできるかどうか、確認してみてください。その際、ウィスルは通常のD管をチョイスしてください。同じウィスルでも Low D 管では演奏が難しいので、アイリッシュ・フルートと同様に最初のハードルが非常に高くなってしまいます。

追加情報4
 フルートのジョイント部分には必ずコルク・グリースを塗ってください。塗らないでいるとジョイント部分が劣化して息漏れ等の原因となります。ジョイント部分がコルクではなく、糸やベルベットのような素材の場合も同様です。但し、ジョイント部分が金属管同士の場合は何も塗らないでください。汚れを簡単に拭き取る程度にして、何もしない方が無難です。どうしても何か塗る必要が出てきた場合は、蝋(ろう)を少しだけ擦り付けてみてください。

追加情報5
 最近、クラシック系のフルート奏者の方々から数多くのお問い合わせやご注文をいただいていますが、根本的な部分で大きな勘違いをされている方々が少なくないようです。こちらでご紹介しているのは「D管」の「アイリッシュ・フルート」で、「木製のベーム式フルート」ではありません。基本的にダイアトニックな楽器で、クラシック系の音楽に求められるような精度での半音階は出ません。最低音は「レ」で音域は2オクターブ未満だと思ってください。唇の形や息の吹き込みのスタイルも変える必要があります。
 リサイタルなどの1〜2週間前に購入され、本番で使おうとして、まったく対応できずに演奏を断念されるケースが意外と多いようです。くれぐれもご注意ください。

追加情報6
 頭部管とジョイント内部に金属管を内包した本格的なアイリッシュ・フルートの情報に関しては、関西を中心に活動されている hatao 氏のサイト『アイリッシュフルート infomedia』を参照してみてください。

  
アイリッシュ・フルートについて>管楽器/横笛類ホーム