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Low D ウィスルについて

  
 このレポートは平成14年9月までに当方に入荷した商品を中心にしたものです。品質のバラつきやその後の設計変更などについては未確認の部分がかなりあります。また、現時点で市販されているすべての Low D ウィスルをチェックしたわけではありません。

 「押さえやすい」「少ない息量で演奏可能」などという表現は、すべて Low D を基準としたもので、通常のD 管のウィスルとはまったく次元が異なります。実際には「異常に押さえにくく」「極端に大量の息を消費する」と思ってください。
  

 Overton Low D
 Low D ウィスルはバーナード・オーバートン氏によって造られたアルミ製のものが元祖で、数多くの演奏家によって愛用されてきました。ところがそのオーバートン製 Low D は指穴がかなり大きいうえに、その間隔も極端に遠く、必要とされる息量もかなり大量で、殆どの人にとっては演奏不可能なものだったのです。このため1990年代になって多くのメーカーから次々と新設計の Low D が発売されるようになりました。
※オーバートンはブランド名がゴールディに変更になりました。(2009年8月追記)  

「指使い」
 
Low D で特に問題になるのが指使いです。右の写真のように、基本的に右手は指先ではなく、指の関節付近で押さえる『ストレート・フィンガー』スタイルが必要となります。手の小さい人や指の細い人には根本的に演奏が不可能な場合もあります。

「息量」
 機種によっては極端に大量の息を必要とするものもあります。吹き込みに対する抵抗感があればそれほど苦しくない場合もありますが、もともと大量の息を吹き込むことに慣れていない人にとっては「非現実的」と思えることも多いでしょう。
 逆に「少ない息で演奏可能」ということがよい意味に聞こえるかもしれませんが、実際に「少ない息で演奏可能」な笛は、その分、息づかいによる様々な表現がしにくく、ウィンドウェイに水分が詰まりやすいという面もあります。

「音色」
 一般的に知られている Low D の音色はオーバートン(ゴールディ)のもので、かなり特徴のある個性の強い音です。ウィスルとしては例外的に音をハスキーに「潰し」、吹き込みに対する抵抗感をつけ、「唸るような」「吠えるような」「ドスの効いた」音色を持っています。他の製品ではこの特徴を継承したものや、逆に「笛」として「素直」に設計されたものもあり、それぞれに音色は異なります。

「表現力」
 Low D をただ漫然と吹いているだけでは、反応が鈍く、吹きにくい、単なる「音の低い笛」という感じになってしまいます。実際の Low D の醍醐味は、尺八の演奏のように様々な表現方法を用いた場合に得られるものです。これは演奏者の技術の問題でもありますが、そのような表現の「しやすい」ものと「しにくい」ものがあることも事実です。一概には言いにくいのですが、息を大量に消費する笛でやや反応が鈍く、吹き込みに対する抵抗感のあるものの方が、様々な表現をしやすいという感じがします。

   

以下に当方でチェックした主な Low D ウィスルに関してご報告します。

(ページ内リンク)
スザート】【ディクソン】【ハワード】【バーク
ゴールディ】【スウィートハート】【選び方

    

スザート(Sst)
 合成樹脂(ABS)製。笛としては素直な造りで音もストレートです。やや甘く密度の濃い音で比較的音程も良く、必要とされる息の量も少なめで、レスポンスも早くなっています。残念ながら右手中指の穴が極端に大きく、押さえにくい状態です。また、2ピースですがピッチ調節のできる範囲は狭くなっています。安価ですが、楽器としての品質にはかなり高いものがあります。  
※2005年春にキー付きのものが発売されました。「1 key」は右手薬指の穴にキーが付き、「2 keys」は更に左手薬指の穴にもキーが付いています。
臨時情報:キー付きのスザート製ウィスルについて
  
Susato Low D「Keyless」
Susato Low D「1 key」
Susato Low D「2 keys」

   

ディクソン(Dxn)
※現在、このメーカーのモデルに関しては複数の演奏家からの評価を集めている状態です。下記の評価はすべて暫定的なものですので、あらかじめご了承ください。また、新製品が多く含まれていますので、メーカーが更に変更を加える可能性もあります。(2011年6月追記)
Low D:合成樹脂(PVC)製で軽量。これも素直な造りで、甘くソフトな音色です。スザートほど密度は濃くなく、やや地味でノイズもあり、ウィスルらしいサウンドで、音量はやや控えめです。音程はあまり良くありません。以前のモデルは最低音が弱かったのですが、現在のモデルでは改善されています。Low D としては指穴が比較的押さえやすい方です。チューナブルで調節できる範囲は広いのですが、逆に言うと、必ず慎重にチューニングする必要があります。
 胴管は同社の PVC 製フルートと共通となっており、この Low D にフルート用の頭部管を加えたセットもあります。
※このモデルは2011年までで生産終了となり、下記の「Low D-TB」に置き換えられます。
(2011年11月追記)
Dixon Low D
※ディクソン製品は常に品質を向上すべく、小さな変更が加えられています。最近の製品では右手中指の穴が人差し指側に少し移動しており、それまでの指穴よりはやや押さえにくくなってしまいました。その分、低音域の音程、バランスなどが向上しています。
Low D - TB:上記の胴管を逆円錐管に進化させた、2011年のニュー・モデルです。管の絞りがあまり強くないので、外観上は違いがわかりにくく、指穴も押さえやすくはなっていません。音は上記の Low D を上品に整えてまとめた感じで、音量も控えめになっています。音程に改善が見られますが、スザートほど正確ではありません。最低音の「抜け」もイマイチです。静かな環境で練習したり、小さな音の楽器と小編成で合奏するのに向いているかもしれません。上記の Low D と比較して、楽器としてのクオリティは確実に上です。
 このモデルにも、フルート用の頭部管を加えたセットがあります。
Low D-TB
Low D - TBBS:上記の Low D - TB のジョイントをブラス・スライドにしたもので、やはり2011年のニュー・モデルです。全体的な傾向は同じですが、密度が高く、ブラス・ジョイントの分、重量感のある音になっています。この PVC シリーズの完成形を狙ったモデルかもしれません。
 
※名称は「ブラス・スライド」ですが、実際のジョイントにはコルクが巻かれています。また、現状では Low D - TB よりも音程が取りにくくなっています。この辺は今後、変更・改善される可能性があります。
Low D - AT:PVC 製の頭部管にアルミ製の胴管(円筒形)を持つモデルです。基本的な特徴は最もベーシックな Low D と同様ですが、音の密度は濃くなっており、馬力のある明るい響きになっています。ディクソンの笛としては元気な響きで、セッションなどで気楽に吹きまくるのによいのかもしれません。
※2006年夏までのモデルではスライド部分がブラス製となっていましたが、現在ではシンプルなシリコン・リングによるものに変更されています。
Dixon Low D-AT
要チェック:ディクソン製品の取り扱い方

Low D - SP:同社のソリッド・ポリマー製の本格的な逆円錐形ボアのアイリッシュ・フルートと同じ胴管を用いた Low D です。Low D としては指穴が最も押さえやすいタイプとなっており、馬力や音量はありませんが、全域に渡って整った音色が得られます。残念ながら最低音の息の抜けが悪く、高音部ではやや強く吹く必要もありますが、全体としては吹き込みの弱い方に向いているかもしれません。また、指が辛くて今まで Low D をあきらめていた方でも、これなら大丈夫かもしれません。但し、少々重量があります。フルート用の頭部管とのセットもあります。胴管の基本的な設計はフルートでの使用を優先しているようで、Low D としての音程には難があります。

Dixon Low D-SP

※このモデルは本体表面のどこかしら(1〜2カ所)に「ひっかきキズ」のようなものが見られます。これは製造作業中の取り扱いによるものと思われます。割れているわけではなく、表面的なキズですので演奏に支障はありません。あらかじめご了承願います。


※上から Low D、Low D-TB、Low D-AT、Low D-TBBS、Low D-SP。同一メーカーで5モデルというのは多すぎる感じもしますが、それぞれに異なった特徴を持っています。
※円筒管モデルのボアは21ミリです。TB シリーズは21ミリから18ミリに絞られており、SP モデルは18ミリから14ミリに絞られています。両者とも逆円錐管ですが、根本的に設計の異なるモデルです。

  

ハワード(Hwd)
 プラスティック製の頭部管と金属製の胴管による2ピースで、ピッチ調節可能です。下の写真の胴管は黒く塗装されていますが、ニッケル仕上げのものもあります。造りは素直なのですが、ボア(内孔)がかなり太く、指穴もかなり大きくなっています。その分、指穴の距離は近いのですが、指の細い人には演奏不可能かもしれません。音は演奏者によって大きく異なります。優れた奏者によって演奏された場合はアイリッシュ・フルートのような強く太い音となりますが、大量の息を必要とします。不慣れな場合はハスキーで線が細く、やや不安定で小さな音でしか鳴りません。「チャレンジャー待ち」という感じの笛です。
※在庫分のみにて取り扱いを終了する予定です。(2010年9月追記)
Howard Low D - black

特徴のあるプラスティック製の頭部管

  

バーク(MB)
 円筒管のウィスルとしては革新的なオクターブ・バランスの良さと吹きやすさ、ハスキーで野太い音色、比較的整った音程を非常にうまくバランスさせたメーカーによる Low D です。モデルとしては初期の「Low D」から「Low D EZ」へと進化し、現在では「Low D Viper」というモデルが同メーカーの Low D のメインとなっています。ボディはアルミ製ですが、比較的肉薄で重量は軽く、ピッチ調節も可能です。右手薬指の穴の部分は別の足部管となっており、好みの角度にアジャストできるようになっていますが、全体としてはやや押さえにくいタイプです。後発メーカーだけに最も進化した Low D で完成度も高くなっており、「プロが使う1本」として自信を持ってオススメできるモデルです。
Burke Low D Viper
※歌口にはデルリン(黒いプラスティック)が装着されています。
※このモデルにはブラス製もありますが、重量バランスに問題が発生してしまうため、足部管が回る構造にはなっていません。従って、指穴は更に押さえにくい状態です。

  

ゴールディ(Gld) 旧称:オーバートン(Ovt)
 これが元祖の Low D で、CDなどで聴くことのできる一般的な「Low D の音」の多くは、このモデルによるものです。独特の造りによるハスキーでドスの効いた野太い音色と同時に、味わい深い吹き心地は他にないものです。残念ながら指穴は最も押さえにくいパターンです。息遣いも低音では弱く、高音では強く大量の息を吹き込む必要があり、音程も部分的に凹凸があって吹きこなしは少々難しくなっています。「暴れ馬」的なところもありますが、初期のモデルよりは改良されており、独特の魅力と風格があります。同じ基本設計でピッチ調節の可能な2ピースのモデルもあります。
Overton (Goldie) Low D one-piece

  

スウィートハート(Swt)
 ウッド・ウィスルやアイリッシュ・フルートで定評を得ているメーカーが、満を持して発表した木製(ローズウッド)の Low D です。最も重要なのはボアが逆円錐管になっている点で、このために指穴が近く小さくなっており、更に両手の薬指の穴を少しだけひねった位置にあけていることから非常に押さえやすくなっています。息もややコントロールしながら少なめに吹き込むだけでOKです。この仕様ではリコーダー的な音になってしまいそうですが、実際には繊細で優しいものの、Low D らしいハスキーなものとなっています。吹いている感覚はフルートに近いかも知れません。かなり高価ですが、木製のテナー・リコーダーと比べれば安価と言えます。
 現在のモデルでは残念ながらG音以下の低域で音程に少々凸凹があります(初期モデルよりは改善されました)。

   

【Low D の選び方】
 最も重要なのは指穴の押さえやすさでしょう。残念ながら殆どの方々は「ディクソン」や「スウィートハート」以外のモデルでは指穴が押さえられない状態です。もちろん「慣れ」や練習で克服できる場合も多いのですが、最初から音が出ないのでは練習も辛くなってしまいます。無難なのは「ディクソン」の各モデルですが、特に押さえやすいのは同社の Low D-SP です。「スウィートハート」はかなり高価なので「別格」として考えた方が良いかも知れません。

 ピッチや音程を重視される場合は、「スザート」か「バーク」をチョイスしてみてください。もちろん「Cナチュラル」や「C#」の音程には難がありますが、6孔で円筒管のシステムでは避けられない部分です。指穴の押さえにくさは練習で克服してください。トラディショナルなスタイルの装飾音にこだわらなければ「スザート」のキー付きも良いでしょう。

 比較的少ない息で演奏可能なのは「ディクソン」の各モデルと「スウィートハート」です。逆に言うと、これらのモデルは「吹き込みの強い人」には不向きです。

 Low D らしい音色や吹き心地で選ぶなら「ゴールディ」です。「バーク」も有力候補となりますが、両者はかなり性格が異なります。「ゴールディ」が「マニュアル」で「バーク」が「オートマチック」という感じかもしれません。

 「ハワード」は独特の個性を持っていますので、充分な技術と息量を持っていれば、これを吹きこなして独自のスタイルを見つけることも可能でしょう。

ご注意:ウィスル初心者の方がいきなり Low D を吹こうとしても無理です。必ず通常のD管で基本的なテクニックや曲を覚えてから、Low D に挑戦してください。
  
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