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楽器の国籍について

  
 よくトラッド系のお客様から「アイルランド製のものはないんですか?」というご質問をいただくことがあります。このようなご質問のベースには「アイルランド製がホンモノでその他はニセモノ」という概念があるようです。もちろん、これはひどく間違った考え方です。

*伝統工芸?

 楽器の製作技術が直接的に伝承されるとは限りません。つまり、師匠から弟子へと直接伝わることもありますが、作品である楽器そのものを通じてまったく無関係の人々に伝わることも多いのです。特に民族楽器や古楽器などを造るようなガレージ・メーカーの場合は製作家が一代で終わってしまう場合が多く、その技術や経験が途絶えてしまうことも珍しくありません。逆に言うと、アイルランド人であろうとアメリカ人であろうと日本人であろうと、「楽器製作家になろう」と考えた時点ではほとんど同じスタート・ラインに立つことになります。つまり、ほとんどの場合、古楽器や民族楽器の製作は伝統工芸ではなく、国籍は関係ありません。同様に、楽器の品質と国籍には直接的な関係はありません。

*発祥の地?

 「アイリッシュ・○○○」という名前はほとんどの場合「アイルランド製の○○○」という意味ではありません。「アイルランド周辺でよく使用される○○○」という意味と解釈してください。「アイリッシュ・○○○」の発祥地がアイルランドとは限らないのです。
 また、発祥地でもないのに日本製のカメラや自動車は品質が良く、世界的にも高く評価されています。楽器も同様です。国籍にこだわるよりも、楽器そのものの品質に目を向けてください。

*国際情勢?

 世界最大のハープ・メーカーは日本の青山ハープと言われています。お陰で日本は世界一のハープ輸出国となっています。総合的な生産台数と演奏者人口で世界一のハープ大国といえるのはたぶんアメリカです。ボランやバグパイプの世界一の輸出国はおそらくパキスタンです。英国のお土産として日本人が買ってくるバグパイプのほとんどはパキスタン製です。バンジョーの世界一の輸出国はたぶん韓国で、マンドリンやギターもかつては韓国でしたが、今は中国です。いずれも普及品クラスでは最も安くて品質が良いのです。世界中で最も多くの奏者に使用されているウィスルはイングランド製です。
 アイルランドは人口が少ないのでそれだけ造る人も買う人も少ないのです。オマケに古い楽器が代々受け継がれてしまえば、新しい楽器は売れません。国際的な楽器市場に打って出るようなビジネス・チャンスを積極的に狙っているメーカーもあまりいないようです。逆に言うと、優れたメーカーが眠っている可能性もあるのですが、一般的な楽器市場に製品が流れてこないので、当然、入手も難しくなります。
 為替の水準による物価の違いも重要です。価格だけからすると、米国製の楽器は割安に感じられます。それだけ良いものが安く買えるのです。それと比較してアイルランドや英国周辺の楽器はやや割高で、日本製は更に割高です。但し、実際にはこれに運賃がかかりますし、各メーカーともそれぞれに努力をしていますので、日本製で充分対抗できる楽器もあるわけです。

*当方の商品について

 当方のレギュラー商品では米国製が最も多く、アイルランド製のものはありません。「安くて実用的で品質の良いもの」という条件で楽器を探し、入荷の続いているのがこれらの商品です。まったくの「なりゆき」の結果で、国籍等は気にしてませんでした。冒頭でご紹介したようなお問い合わせがあまりにも多いので、初めて気がついた次第です。

   

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