issue_2004.3.4

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Miscellany : April


東京クラシック・シーン、4月のいろいろ...

新年度スタート、そしてシーズン最終節突入!

 早くも春一番が吹き抜け、ぽかぽかと暖かい日々が続く... と思っていたら、突如、厳しい冬が戻り、なにやら霙?雪?なんて状況に。急激な温度変化には、まったくまいります。が、3月に突入ということで、着々と春、本格化は近づいているわけでして、冬の反動も最後の足掻き。そして、東京クラシック・シーン。世間は新年度のスタートで、なんともういういしい季節を迎えるものの、2003/2004年シーズンは、最終幕に向けての盛り上がりを見せる時期。ちらりほらりと来シーズンの情報が流れ出し... ということで、今回の Recommend News は、花咲ける4月、コンサートへの足取りも軽くなる、東京クラシック・シーン、4月のいろいろ...


 春を迎える東京クラシック・シーン、4月のいろいろ... 当然ながらグンと春めく!2003/2004年シーズンも終盤戦となり、フィナーレに向け、内外入り乱れての春の祭典!といった様相。三大テノール、ルチアーノ・パヴァロッティのファイナル・ワールド・ツアー、最初のコンサートという、ビッグなイヴェントが開かれるなど、オペラ界が特に華やか。その中でも、最大の注目を集めるのは、やはり、なんと言っても、鬼才演出家、キース・ウォーナーが新国立劇場で仕掛ける、ワーグナーの大作、『ニーベルングの指環』 、そう“トーキョー・リング”!『ロード・オブ・ザ・リング』 にも負けない、4シーズンをかけての、チャレンジングだったその道程は、国内唯一のオペラハウス、最初の大いなる冒険であり、ステレオタイプにしがみつくだけだった日本のオペラ上演を覆す、画期的、衝撃的プロダクション。まさに記念碑的“トーキョー・リング”。そして、その最後を飾るのが 楽劇 『神々の黄昏』3/26, 27, 29, 31, 4/1, 4/4】 。
 2000/2001年シーズン、楽劇 『ラインの黄金』 でスタートした“トーキョー・リング”。神々の世界ですら危うくし、多くの欲望と、悲劇を見つめてきた呪いの指環が、めぐりめぐって、元の場所へと還っていく... ウォーナーの演出は、壮大なる四部作を如何にして閉じるのか?そしてフィールディングの美術、衣装、今度はどんなにポップで、キッチュで、クールなヴィジュアルを見せてくれるのか?大いに興味はかき立てられます。そして、一流を終結させたキャスティングも魅力!昨シーズンの楽劇 『ジークフリート』 で、英雄、ジークフリートを歌った2人、クリスチャン・フランツ(テノール) 【3/26, 29, 31, 4/4】 と、ジョン・トレレーヴェン(テノール) 【3/27, 4/1】 が、再び同役で登場。両者ともにすばらしいジークフリートで話題を呼んだだけに、『神々... 』 でのジークフリートも大いに期待したいところ。また、2001/2002年シーズンの 『ヴァルキューレ』 から、ヴァルキューレ姉妹たちのリーダーで、ジークフリートに見初められその妻となったブリュンヒルデを歌っているスーザン・ブロック(ソプラノ) 【3/27, 4/1, 4】 も、同役で登場。“トーキョー・リング”との付き合いも3シーズン目ということで、彼女の活躍も注目。そして、ブリュンヒルデにはもう1人、大ベテラン、ガブリエーレ・シュナウト(メッゾ・ソプラノ) 【3/26, 29, 31】 が登場!バイロイト音楽祭はもちろん、ワーグナー作品で、世界のオペラハウスから厚い信頼を得ている彼女の登場は、この 『神々... 』 の目玉の一つであることは明らか。そのすばらしい歌は今から楽しみ。ワーグナー作品の大ベテランの一方で、ワーグナー作品における世界的なニューカマー、藤村実穂子(メッゾ・ソプラノ)が、再び“トーキョー・リング”に戻ってきます。『ラインの黄金』 、『ヴァルキューレ』 で、神々の長、ヴォータンの妻で結婚の女神、フリッカを歌い、その国際級の歌、演技、そしてタイトなスーツをクールに着こなすそのスタイルに驚かされ、“トーキョー・リング”で大ブレイク!今では、ワーグナー家の総本山、バイロイト音楽祭をはじめ、ミュンヒェン州立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ウィーン国立歌劇場などなど、本場、ドイツ語圏で、ワーグナー歌手としてなくてはならない存在に。『神々... 』 では、ヴァルキューレ姉妹の1人、ヴァルトラウテを歌います。もちろん要チェック。
 “トーキョー・リング”で、もう1人気になる歌手が、今やワーグナー歌手としてバイロイト音楽祭などでも大活躍している注目の存在、ドイツ出身のバリトン、ローマン・トレーケル。『神々... 』 では、指環を狙う異父弟、ハーゲンに利用されるギービヒ家の長、グンターで登場。バレンボイムの信頼も厚い、ベルリン国立歌劇場の専属バリトンである彼は、ワーグナーのみならず、モーツァルト作品でも存在感を示し、来シーズンには新国立劇場でオペラ 『コズィ・ファン・トゥッテ』 のグリエルモにキャスティングされており、こちらも今から楽しみ... また、プッチーニのオペラ 『蝶々夫人』 のシャープレス、『ラ・ボエーム』 のマルチェッロや、ロッシーニのオペラ 『セヴィーリャの理髪師』 のフィガロもレパートリー。さらには、古楽界の巨匠、ルネ・ヤーコプス指揮で、テレマンのオペラ 『オルフェウス』 (harmonia mundi FRANCE - 輸入盤 : HMX 2901618)のタイトルロール、ドイツ・バロックにおける知られざる巨人、カイザーのオペラ 『クロイソス』 (harmonia mundi FRANCE - 国内盤 : KKCC-454/輸入盤 : HMC 901714)でもタイトルロールを見事に歌い上げ、それらの録音で彼の美しい声を聴くことができます。また、ドイツ・リートでも定評を得ており、すでに数々のドイツ・リートを歌ったアルバムをリリースし、まもなく珍しいブラームスの歌曲集 『マゲローネのロマンス』(OEHMS CLASSICS - 国内盤 : BVCO-38032/輸入盤 : OC 331)もリリースがまもなく、ということでこちらも楽しみ。そして、『神々... 』 に出演するための今回の来日では、シューベルトの歌曲集 『美しい水車小屋の娘』4/2】 も予定されており、こちらも要チェック!ワーグナーのトレーケルを聴いたなら、是非ともリートのトレーケルも味わってみたいところ...
 さて、“トーキョー・リング”に話しを戻しまして、このプロジェクトに欠かせないのが、東京クラシック・シーンの人気者、ジュン・メルクル(指揮)。そして、昨シーズンの 『ジークフリート』 からオーケストラ・ピットを担っている N響。まさに、黄金コンビとも言えるメルクル + N響ですが、『ジークフリート』 での演奏は予想以上にすばらしい演奏... いや、圧倒的!とも言える名演を繰り広げてしまったわけです。スタート時点では、キース・ウォーナーによる奇天烈演出の話題が先行した“トーキョー・リング”も、今や歌手も充実し、オーケストラだって凄いとなると、これはもう“引越し公演”なんて吹き飛ばすほどのクウォリティが望めてしまう。いやぁ〜、東京クラシック・シーンのオペラ上演も、凄いことになってきたんじゃないすか?

 さて、話しはワーグナーから一転、イタリア・オペラ。東京クラシック・シーンでは、この春、気になるプッチーニのプロジェクトがスタートします。それが“サントリーホール・プッチーニ・フェスタ 2004-2006”。日本を代表するコンサートホールで、オペラをコンサート形式ではなく「上演」してしまうという実験、“ホール・オペラ”。1989年にスタートしたこの試みは、これまで、タン・ドゥンのオペラ 『TEA』 (2002/10)の世界初演という意欲的な試みから、ヴェルディやドニゼッティの名作まで、様々なオペラが取り上げられており、サントリーホールが世界に誇る最高の音響と、演出家たちの創意工夫により、劇場、オペラハウスでは味わえない体験をもたらしてくれました。そして、今、プッチーニというオペラ界の巨人に、改めてスポットをあてる“サントリーホール・プッチーニ・フェスタ 2004-2006”。その第一弾が、プッチーニの人気作、オペラ 『トスカ』4/11, 14, 18】 。カヴァラドッシには、世界各地のオペラハウスが信頼を置く、ベテラン、ニール・シコフ(テノール)。スカルピアには巨匠、レナート・ブルゾン(バリトン)という、“ホール・オペラ”の常連にして最強のキャストが揃う中、ルーマニア出身の新進ソプラノ、ドイナ・ディミートリゥがトスカを歌うのも気になるところ。スカラ座のアカデミーで学び、スカラ座の若手歌手たちにより上演された、ヴェルディのオペラ 『オベルト』 で、やはりアカデミーで学ぶ日本期待のテノール、中島康晴とも共演... そんな彼女、ここ数年の間に、スカラ座をはじめとする、本場、イタリアのオペラハウスへ次々と出演し、活躍著しい存在。東京ではどのようなトスカを聴かせてくれるのか、とても楽しみ。そして、このホール・オペラ 『トスカ』 で特に興味深いのが、照明デザイナーとして世界的な活躍を見せる 石井幹子 が、美術、衣裳、そして本業である照明を担当すること。これには、何か美しいヴィジュアルが期待できそう... サントリーホールの空間がなかなか特殊なだけに、ライティング一つで、普段のコンサートとはまったく違う雰囲気で満たしてくれるはず。効果としての照明だけではない、アートとしての光も体験できるかも。楽しみ。ということで、“サントリーホール・プッチーニ・フェスタ 2004-2006”、来年は、三部作、『外套』、『修道女アンジェリーカ』、『ジャンニ・スキッキ』 が、再来年にはプッチーニの遺作、オペラ 『トゥーランドット』 が取り上げられる予定です。
 さて、もう一つ、プッチーニのオペラを... 毎年恒例、若い音楽家の卵を集め、オーケストラ・ピットを経験させてしまうという稀有なユース・オーケストラのプロジェクト、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト。第五弾となる今年は、プッチーニの人気作、オペラ 『ラ・ボエーム』4/29, 5/11】 に取り組みます。そして、注目は、ムゼッタを歌うアンナ・ネトレプコ(ソプラノ)。ゲルギエフ率いるマリンスキー劇場が、ロシア出身の新たなプリマ・ドンナを世界に送り出し、あっという間にドイツ・グラモフォンの専属歌手に、そして世界各地のオペラハウスに引っ張りだこ... そんな、スターダムへと駆け上ってしまった彼女、クリアな美声と確かなテクニックによる歌はもちろんのこと、ハリウッドの若手女優を思わせるスレンダーなその容姿は、オペラ界に新たなアイドル誕生!といった観アリ。そして、昨秋のマリンスキー劇場の引越し公演では、日本デビュー!のはずが、売れっ子ゆえの確信犯的キャンセル(劇場側の無理なキャスティング、招聘元のプロモーションに問題を感じずにはいられない... )。多くのオペラ・ファンをガッカリさせたわけであります。そんなこんながあっての、改めてのアンナ・ネトレプコ、日本デビュー!どんなムゼッタを聴かせてくれるのか?今回は聴き逃したくない...
 しかし、最大の注目はと言うと、ロバート・カーセンの演出、マイケル・レヴァインの美術と衣装、ジャン・カルマンの照明! (2000/2001年シーズンにフランダース・オペラにより上演された様子が掲載されています。いやぁ〜 美しい!!!)。ベルギー第二の都市、ベルギー王国オランダ語(フラマン語)圏の中心都市、かのルーベンスの街、アントワープ(アンベルス)と、ヘントという、フランダース地方の中心的二大都市を本拠地とする フランダース・オペラ (フラームス・オペラ)、その1993年制作のプロダクションを用いて上演される今年の小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト。“世界のオザワ”が借りてくるプロダクションは、どれもセンス抜群... ましてや、ファッション界のアントワープ派に負けじと、ハイセンスかつ、アヴァンギャルド路線を貫くフランダース・オペラのプロダクションです。冴えた舞台を体験させてくれるはず。これは見逃せない。ちなみに、2001年のサイトウ・キネン・フェスティバルで上演されたヤナーチェクのオペラ 『イェヌーファ』 も、やはりカーセン演出のフランダース・オペラのプロダクション。

 さて、東京クラシック・シーンにおける“オペラ”において、常にチャレンジングで、音楽ファンに次々と刺激的な新しい作品を届け、新たな発見をもたらしてくれたのは?国内唯一のオペラハウスでもなく、日本のオペラ上演を牽引してきたオペラ団体でもなく... それは、シンフォニー・オーケストラ。コルンゴルトのオペラ 『死の都』 (2001/9)を取り上げた新日本フィル。シマノフスキによる、知る人ぞ知る20世紀の傑作、オペラ 『ロゲール王』 (2002/9)を新シーズンの開幕定期で日本初演してしまったN響。昨秋、三島由紀夫を原作(『午後の曳航』)とするヘンツェのオペラ 『裏切られた海』 の、日本語による改訂新版、オペラ 『午後の曳航』 を世界初演した読売日響。ここ数シーズンは、特にヤナーチェク作品の紹介に力を入れ、近現代オペラに余念の無い東響。そんなシンフォニー・オーケストラによる“オペラ”を、大胆に切り拓いていった東京フィル、90年代における一つの伝説、オペラ・コンチェルタンテ・シリーズ。そして、このシリーズを最後、大いに盛り上げた指揮者が今、新たなオーケストラへと移り、再び刺激的なオペラを取り組もうとしています。
 今年度、日本フィルハーモニー交響楽団の正指揮者に就任した沼尻竜典。2年度目を迎える4月の定期演奏会では、ツェムリンスキーのオペラ 『フィレンツェの悲劇』4/15, 16】 を取り上げます。“CATCHUP COMPOSER”で取り上げた、20世紀前半のオペラ界をリードした作曲家にして指揮者、アレクサンダー・ツェムリンスキー 。20世紀に突入し、煮詰められていくロマン主義をベースに、他にはないマッドな色彩と輝きを放つサウンドが、今、再発見されようとしている... というあたりを、昨年末、“CATCHUP COMPOSER”で紹介したわけですが、彼の代表作の一つ、オペラ 『フィレンツェの悲劇』 が、コンサート形式で、この春、東京クラシック・シーンに登場します。かのプッチーニもオペラ化を試みようとしたオスカー・ワイルドの戯曲を、ツェムリンスキーは一幕モノとしてオペラ化。その舞台はルネサンス期のフィレンツェ。登場人物はたった3人。富豪の商人、その若く美しい妻、その愛人である若い公子。不釣合いな夫婦と、若く美しい恋人たち。やがて立場は逆転し、衝撃的なフィナーレへ... それは、まさに現代人向きのビザールなドラマか、オペラ版のラスト・タンゴ・イン・パリ?なんて空気も漂う... 1917年の初演当時、センセーションを巻き起こしたこのオペラは、今をもってしてもセンセーショナル。そして、この作品を、東京フィルとはオペラ・コンチェルタンテ・シリーズで、ツェムリンスキーのオペラ 『Der Zwerg 、あるいは王女様の誕生日』 を取り上げ、オペラ 『フィレンツェの悲劇』 は、音楽監督を務める名古屋フィル(2002/7) でもすでに取り上げている沼尻竜典が指揮。若い妻、ビアンカには栗林朋子(ソプラノ)、公子、グィド・バルディには吉田浩之(テノール)と、名古屋フィルでの公演に出演した2人に、商人、シモーネには、当初予定されていたローランド・ヘルマンに代わり、ラルフ・ルーカス(バリトン)が歌います。ということで、オペラ・コンチェルタンテ・シリーズでの数々のすばらしい演奏で、一躍、日本における次世代のオペラ指揮者として頭角を現した沼尻が、日フィルではどのような演奏を聴かせてくれるのか?期待は高まるばかりです。
 そして、4月は、日フィルの横浜定期でも指揮を予定している沼尻竜典。こちらでは、仲道郁代(ピアノ)をソリストに、ベートーヴェンの5番のピアノ協奏曲「皇帝」を前半に、後半には ワーグナーのオペラの名曲を取り上げるプログラム4/25】 が用意されており、気になるところ。“ヴァルキューレの騎行”といったオーケストラによる人気作から、“トーキョー・リング”にも、第三のノルンで出演する緑川まり(ソプラノ)が、オペラ 『さまよえるオランダ人』 の“ゼンタのバラード”や、楽劇 『トリスタンとイゾルデ』 の“愛の死”を歌います。日本における次世代のオペラ指揮者、そのワーグナーはどんな具合か?そして、今シーズン末には、ビゼーの名作、オペラ 『カルメン』 【6/28-7/11】 を指揮して、とうとう新国立劇場にもデビューする沼尻。コンサート形式のみならず、実際の上演でもさらなる活躍を期待したい!

 さて、気になる次世代指揮者をもう1人。それが、N響定期へのデビュー、新国立劇場へのデビューを相次いで果たし、今シーズン、まさにブレイクした観のある阪哲朗。ベルリン・コーミッシェオーパーの専属指揮者を務め、日本人としては未だ珍しいオペラハウスでの経験を持つ、新たなるオペラのスペシャリストとして注目される彼。新国立劇場の来シーズンの開幕公演の指揮も予定されており、その活躍はますます期待したいところ... そんな次世代指揮者の“次世代”ならではの気になる一面が、オリジナル主義への関心。シューマンの1番の交響曲をメインに、19世紀前半の作品を集めたプログラムでのN響定期へのデビューでは、果敢にも古楽的なサウンドにも試み、あのN響の変身ぶりには、まったくもって驚かされたわけですが、阪哲朗4/15】 、今度は東京シティ・フィルの定期演奏会に客演、ベートーヴェンの「運命」を聴かせてくれます。その東京シティ・フィルといえば、常任指揮者、飯守泰次郎に率いられ、日本において、いち早くベーレンライター版を用いベートーヴェンの交響曲を取り上げたパイオニア。ロジャー・ノリントン率いる SWR シュトゥットガルト放送交響楽団による、“モダン”と“古楽”のハイブリットという最新モードによるベートーヴェンの交響曲全集が、レコード・アカデミー賞を受賞したばかり... ということで、阪 + 東京シティ・フィルの共演には、日本におけるそうしたサウンドを、是非、期待したいところ。

 次世代... の一方で、巨匠たちも大活躍の東京クラシック・シーン、4月のいろいろ... まずは、朝比奈、ヴァント亡き後、指揮界の世界遺産とも言えるような存在、マエストロ、ジャン・フルネを招く東京都交響楽団。このフランスを代表するマエストロならではの、フランスものテンコ盛りのプログラムが、3つも用意されています。まずは、ショーソンとラヴェル4/16, 17】 というフランス近代音楽を彩った2人の作品を取り上げる定期演奏会。そして、モダン以前のフランスの系譜をたどる、ボイエルデュ、ビゼー、サン・サーンスが並ぶ 19世紀フランスものを集めたプログラム4/25】 。さらには、都響名物、「作曲家の肖像」では、フォーレをフィーチャー4/28】 。名曲にして代表作、レクィエムをはじめ、普段、あまり聴く機会の少ない劇音楽の組曲などが並ぶプログラムは、フォーレを丸々楽しむ最高のもの。なにより、フルネの「匠」をフルに味わう楽しみな3つのプログラム。楽しみです。
 一方、読売日本交響楽団に客演するのが、ロシアを代表するマエストロの一人、ユーリ・テミルカーノフ。あのゲルギエフの前任者として、マリンスキー劇場(当時はキーロフ・オペラ)の芸術監督を務め、現在は、昨秋、来日したばかりでもある、ロシアきっての名門、サンクト・ペテルブルク・フィルの音楽監督であり、アメリカ、ボルティモア響の音楽監督でもある彼。ロシアだからこそのバーバリスム、ロシアだからこそのセンチメンタリスム、そんなロシアの体現者、マエストロ、テミルカーノフ、読売日響では多彩な4つのプログラムを用意してくれています。まずは、東京芸術劇場4/18】 と、サントリーホール4/19】 で、ストラヴィンスキーの 『火の鳥』 組曲と、オルフの 『カルミナ・ブラーナ』 を組み合わせてしまう!なんともダイナミックなプログラム。と思いきや、チャイコフスキーの傑作、バレェ 『白鳥の湖』 と、ムソルグスキーの 『展覧会の絵』 という、ロシアン・ピクチャレスクなプログラム4/23】 、ロシアを代表するマエストロならでは。と思いきや、ベートーヴェンの7番に、マーラーの「巨人」4/28】 という、なんともタフなプログラムも... いずれも、熱い演奏が期待できそう。

 このあたりで気分を変えまして、バッハの話題。今、アメリカでは、リアリスムを徹底して追及したメル・ギブソンの 映画 『パッション』 (日本公開は5月を予定... )が話題沸騰中... オスカー・ナイトでは、ビリー・クリスタルにも格好のネタを提供... そして、東京クラシック・シーン。受難節(キリスト教会暦での、復活祭の前日までの、日曜を除く40日間。今年は2月25日かに4月10日まで)には、受難曲を... 春の恒例となりつつある、バッハの“パッション”が取り上げられます。今や世界的なバッハのスペシャリスト集団として認知されつつある、バッハ・コレギウム・ジャパン(以後、BCJ と略)が、今年の春もまた マタイ受難曲4/9, 10】 を聴かせてくれます。さて、BCJ の十八番、『セント・マシュー・パッション』 を聴いてから、映画 『パッション』 を見るというのは、如何でしょうか?『聖書』 を聴き、そして 『聖書』 を見る。太平洋の対岸、超大国にて、ネオ・コンの次に流行るもの、キリスト教右派。大統領に助言を与え、あの十字軍発言や、同性婚封じ込めなど、政教分離に揺らぎすら感じるその動き。キリスト教美術、キリスト教音楽、キリスト教建築、さらには“クリスマス”、“バレンタイン・デー”、あるいはウェディング・ドレスなどなど、西洋への憧れではなく、その根幹にある“キリスト教”というものが如何なるものかをしっかりと見据えるために。って、仰々しいったら... まったく...
 気分を変えまして、もう一度、バッハ。さて、BCJ のマタイ受難曲に、コンサート・ミストレスとして客演する、古楽ヴァイオリン界を代表するベテラン、ルーシー・ファン・ダール4/12】 が、日本古楽界のキーパーソンの1人、渡邊順生(チェンバロ)と組み、ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタを中心に、オール・バッハのプログラムを用意してくれています。古楽、パイオニアの地、オランダ出身の彼女、18世紀オーケストラの創設に参加するなど、常に古楽界の第一線で活躍し、古楽というムーヴメントを切り拓き、牽引してきたその存在は大きなもの。古楽とともに歩んできたルーシー・ファン・ダールのバッハは、聴き逃せません。

 最後に、気になるピアニストを2人紹介。1人目は、ワーナー・クラシックスが大々的にプロモーションし、その超絶のテクニックが話題となったトルコ出身のピアニスト、ファジル・サイ。あの 『春の祭典』 (TELDEC - 国内盤 : WPCS-21228/輸入盤 : 8573.81041.2)を弾きこなし、多くの音楽ファンをあっと言わせ、ブームにもなった彼が、今、また来日します。テルデック、エラートという、“クラシック”にはなくてはならない名門レーベルを抱えていたワーナーが、クラシック部門の切捨てという暴挙に出てから、多くのアーティストたちが方々へと散っていった中、ファジルの行方が気になっていたところ、フランスのレーベル、NAIVE (国内盤は話題のavex-CLASSICSからのリリース)から、コンポーザー・ピアニストとして登場!ピアノ・ソロからコンチェルト、さらにはヴァイオリン・ソナタまで、自作を集めたアルバム(avex-CLASSICS - 国内盤 : AVCL-25006)をリリース。まさに“現代っ子”のコンポーザー・ピアニストといった、刺激的な彼のサウンドは、ジャズを思わせ、またワールド・ミュージックを匂わせ、新しさに満ちています。そんなファジルの、コンポーザーとしての代表作、「ブラック・アース」4/26】 が、彼のリサイタルで取り上げられます。アカデミスムを売りにした“クラシック”という枠組みへの挑戦、エリート主義の呪いから徐々に解き放たれつつある“ゲンダイオンガク”の、最前線を感じさせる新しいそのセンスは要チェック。また、このリサイタルでは、ハイドンのソナタに、ラヴェルのソナチネ、ベートーヴェンのソナタ「熱情」も取り上げられる予定。当然ながら、ピアニストとしてのファジルにも注目です。また、東京交響楽団の定期演奏会では、モーツァルトのピアノ協奏曲4/24】 も予定されており、こちらも楽しみ... なのですが、彼のコンチェルトも聴いてみたかった...
 もう1人、気になるピアニストが、フォルテピアノ(古楽)とピアノ(モダン)を自由に行き来するオランダ出身のベテラン、ロナルド・ブラウティハム。スウェーデンのレーベル、BIS からは、フォルテピアノで、ハイドンとモーツァルトのソナタのアルバムを、シリーズとしてリリース。いずれも高い評価を得つつ、20世紀作品だってクールに弾いてしまう彼。DECCA での、シャイーとコンセルトヘボウ管によるショスタコーヴィチの一風変わった管弦楽曲を集めたシリーズ(“ジャズ”、“フィルム”、“ダンス”をテーマにした3枚)では、ショスタコーヴィチの“ジャズ”を取り上げた第一弾(DECCA - 国内盤 : POCL-1282/輸入盤 : 433 702-2)に参加し、キッチュなジャズもどき、1番のピアノ協奏曲を、オランダならでは?デスティル風?スタイリッシュで鋭角なイメージで、さらりと弾いてくれたのが印象的。最新盤(4月に入荷予定?)は、弦楽四重奏から、オーケストラのみによるものから、本格的オラトリオ版まであるという実におもしろい作品、ハイドンの 『十字架上のキリストの最後の7つの言葉』 を、ピアノ・ソロ版で取り上げてしまうというアルバム(BIS - 輸入盤 : BIS-CD-1325)。なにっ!ピアノ・ソロ版まであったのぉー?!というあたりをチョイスしてしまうあたり、ブラウティハムならではかも... ということで、まもなくの来日では、フォルトピアノとピアノを弾き分けてしまうプログラム4/28】 を披露してくれるリサイタルに、新日本フィルのトリフォニー・シリーズへの客演では、リストの1番のピアノ協奏曲4/28】 が予定されています。フォルテピアノとピアノ、どちらでもイケてしまう器用なブラウティハム。彼の春の来日は、要チェックです。


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