Front Page

     ONKYO ND-S1の改造      ('10,02,10 掲載開始)

ONKYO製iPod用ドック ND-S1を買いました。
購入の動機はHRDAC-01(D/A変換器)を御買い上げ頂いた御客様(K.A氏)から廉くて良いと聞いたからです。
このドックを使うとiPodから光S/PDIFのディジタル信号が得られます。
まるでHRDAC-01の為に誂えたような製品です。

音は凄く良い感じです。何れの曲目も今迄よりも自然で嫌みが無いように感じます。
超高級CDトランスポート並みの良い音を求めて簡単な改造を施しました。

      1. リップル電圧の観測

      2. 改造
        2-1 TOSLINK発光部のデカップリング増強
        2-2 +5V電源のデカップリング増強
        2-3 +3.3V電源のデカップリングコンデンサの交換

      3. 改造後のジッタ観測1

      4. 改造後のジッタ観測2

      5. 改造後の試聴

      6.フェライトクランプの評価

      7.iTunesのジッター観測

      8.未改造機との音の比較

      9.未改造機とのジッター比較



注:同様の改造を行う場合は自己責任で行って下さい。
  この改造に関して当方は一切の責任を負いません。
  また改造するとONKYOの保障を受けられなくなる可能性があります。





1. リップル電圧の観測
好奇心からND-S1を分解しました。
光S/PDIF信号を送り出すTOSLINK素子の電源電圧(3.3V)を
オシロスコープで観測したところ僅かな電圧変動(リップル)が見られました。
リップルはジッターを生じ音質の低下を招きます。

ND-S1では音に影響を与える程の水準ではないのですが、
気にすると精神衛生に良くないのでコンデンサを入れて改善しました。

下の左は未改造。   右はTOSLINK発光部に積層セラミックコンデンサを取り付けた後です。


上左の波形はTOSLINK送信素子の電源(3.3V)に含まれるリップル電圧を観測した結果です。
右のコンデンサを取り付けた後の波形では、電圧変動が吸収されています。
鋭いスパイクはコンデンサを取り付けても波高値が変わっていないので
別の回路からオシロのプローブに飛び込んだものと推定しています。

電圧が変動するとTOSLINK素子が出す光信号の強さが変化します。
S/PDIFで使われる光パルスは矩形波が鈍った形をしています。
パルスの立ち上りや下がる際に僅かな傾斜があります。
光の強さが変動すると傾斜の存在によって1と0のタイミングが変動しジッターを生じます。


2.改造
下の写真で濃く示したABC、の三か所を改造しました。Aは裏側です。


2-1 A部:TOSLINK発光部のデカップリング増強
基板の裏側、TOSLINK発光素子のピンに10uFの積層セラミックコンデンサを取付けました。
効果は著しく、このコンデンサの追加だけでも充分かもしれません。


2-2 B部:+5V電源のデカップリング増強      ('10,02,13追記)
この部分にはコンデンサを取り付ける為のパターンが用意されていますが、空いています。
そこへ330uFの導電性高分子アルミ個体電解コンデンサを取付けました。
簡単な作業でした。


2-3 C部:+3.3V電源のデカップリングコンデンサの交換     ('10,02,13追記)
写真に写っている電解コンデンサには220uFのオーディオ用と書かれた物でした。
これを導電性高分子アルミ個体電解コンデンサ330uFと交換しました。

簡単な作業だと考えて着手したのですが、電解コンデンサを外すのに手間取りました。
電解コンデンサのグランド側が両面ベタアースに半田付けされています。
半田鏝の熱がベタアースに奪われ半田が融けません。
普段は殆ど使わない60Wの鏝を使って外すのに成功しました。


3. 改造後のジッタの観測1
手持ちのオシロスコープを使ってS/PDIF信号のジッターを観測する方法を考えました。

光のままではオシロスコープに繋がらないので前出の光ー同軸変換器を使いました。
その出力をオシロスコープで観測しました。
デジカメでオシロスコープの画面を撮影する際にシャッター速度を10秒間にしました。
10秒間に何度も線を描くのでジッタが多いほど線が太くなる筈です。

オシロの時間軸を0.2mS/divに設定したのでトリガーにより走引したのが白い帯になっています。
左端から右端までは2mSです。その白い帯の右端に縦に赤い線が在ります。
その赤い部分を拡大走引したのが下側に在るブロックを並べたような赤線です。

下の写真がコンデンサを取り付ける前で
その下がコンデンサを取り付けた後です。
取付け前が何本かの軌跡が集まっているように見えるのに対して
取付け後では太い一本の軌跡に見えます。ジッターが改善されているようです。




4. 改造後のジッター観測2   ('10,02,14追記)
ディジタルオシロスコープの取り扱説明書を読んだところ
カメラの長時間シャッターで撮影するような機能を備えているのが判りました。

その機能を使ってS/PDIF出力のアイパターンを観測した結果が下の写真です。
四枚の写真を合成しました。線が細いほど低ジッターです。
各データは測定に約20分掛りました。概ね5千回トレースした結果です。


最上部の黄色い帯は0.1mS/divで掃引した結果です。
掃引が遅いので波形がくっついて帯状になっています。
その右側の縦に赤い部分を拡大したのが下の波形です。トリガーから0.8mS後です。
測定結果には黄色い帯も四本在るのですが、違いが判らないので一本だけ残しました。

SONY VP-FX720はポータブルDVDプレーヤーです。光出力を観測しました。
アイパターンの線が太く20nS程度のジッタが見られます。0.0025%程度のジッターです。
回転速度を時間の基準にしているDVDプレーヤーとしては大変に優秀です。
測定は光出力を光ー同軸変換器を使って電気信号に変換した後にオシロスコープで観測しました。

改造ND-S1の光出力光ー同軸変換器を使って観測しました。
出力は立上がりが速く線も細くジッターを計算するのが難しい程の高性能です。
改造前にはジッタが在りましたが、改造によって大幅に改善されました。

改造ND-S1の同軸出力には大きな寄生振動が含まれています。
パルスの立ち上がりも遅く振幅に電圧変動が見られます。

何か測定方法に問題が在ったのかもしれませんが、ノイズの影響を受けたものと推定しています。
同軸伝送は電源から侵入するノイズの影響を受けやすいのかもしれません。

S/PDIFは光よりも同軸のほうが音が良いとの説が有力ですが、
この観測では光の方が良いとの結果です。

光の方がジッターが少なかった理由は、
発光側電源のリップルを減らす改造をした事と、
受光回路の問題を自作した光ー同軸変換器で回避したからでしょう。

十羽一絡げに"同軸の方が良い音"とは言えず送受回路の出来不出来次第です。

SONY-DE999はCDウオークマンです。光出力を観測しました。   ('10,02,16 追記)
アイパターンには大きなジッターが見られます。
概ね同期していますが、大きく外れた場所にも軌跡があります。
円筒形SPの実験を始めた初期に使っていた物で最近は使っていないので
軸が重くなっている可能性があります。音はまともに出ています。



5.改造後の試聴        ('10,02,13 追記)
試聴に使ったは iPhone - 改造ND-S1 - HRDAC-01 - 改造TP21 - 円筒形SP です。
iPhoneにはApple ロスレスで記録しました。

改造前から低音も高音も美しく出ていました。
改造後も楽器の音色などは変わった気がしません。

未改造のND-S1が手元にないので記憶との比較ですが、
明らかに変わったと思われる所があります。

円筒形SPで音楽を聴くと、そこに演奏している部屋(空間)があるように感じます。
特にライブ録音されたアルバムで顕著に感じます。その空間が大きくなったようです。

また板垣誠氏が演奏するビブラホン(鉄琴)の音でも違いを感じました。
同氏の演奏はStudioEnzaでの生演奏を何度も楽しんだので耳が覚えています。

ビブラホンには電動で回転する弁が付いていて音が出る方向を変えるので
"ホワーンホワーン"と音源が移動するような不思議な感覚が心地良いのですが、
その感じを従前よりも忠実に再現しています。

改造ND-S1によって円筒形SPの音が生演奏に近づきました。


6.クランプフェライトの評価   ('10,02,18 追記)
電源アダプターの出口側プラグの手前にクランプフェライトを取り付けました。
同軸S/PDIF信号のアイパターンをオシロで観測して差異が出るか比較しました。
測定は従前と同じ方法ですが、特徴的な部分を拡大しました。
左側がフェライトを取り付ける前、右が取付け後です。

眼を凝らして見ると僅かに良くなっているような気もしますが、殆ど同じです。
大きな効果は無いようです。

軌跡の幅から計算してジッターを推定したところ9PPM程度のようです。     ('10,02,19 追記)
メーカーのカタログでは10PPM以内となっているので仕様に収まっています。

改造後の光S/PDIFのジッターは線が細いので推定が難しいのですが、
2PPMから3PPM程度ではないでしょうか。無視しても良い程の素晴らしい低ジッターです。
光も同軸も共通のクロック源を使っている筈なので同軸のジッタは水晶振動子が原因ではありません。
疑わしいのは内部電源のリップル(電圧変動)です。

比較の為に高価なCDトランスポートのジッターを知りたくてWebを探したのですが、
低ジッターと書いてあるだけで具体的な数値を書いてある物は見つかりませんでした。
電子的な緩衝メモリーが無い物はND-S1に遠く及ばないと考えています。


7.iTunesのジッター観測     (’10,02,22 追記)
iTunesから改造ND-S1を使って光S/PDIF信号を出しアイパターンでジッターを観測しました。
過去に行ったパソコンによる音楽再生の実験では、パソコンの処理能力によって音が違いました。
そこでアイパターンにも違いが出るのではと期待して観測したのですが、有意差は無いようです。
iTunesやWindows Media Player、Foober2000やASIOも試したのですが、
やはり結果に差異は見られませんでした。

パソコンの処理能力が二倍程違っていてもジッターに差が無いのは、何故かわかりません。
ND-S1が緩衝メモリーを持っているのでしょうか。

理由は判りませんがジッターという視点からは、改造ND-S1はPCオーディオ用として好適と判りました。

A:iTunesの64bitです。
  DELL inspilon・1526 AthlonX2 1.9GHz 64bit Vista Buisiness64

B:Windows Media Playerの64bitです。
  DELL inspilon・1526 AthlonX2 1.9GHz 64bit Vista Business64

C:Windows Media Playerの32bitです。
  DELL Inspilon・Mini9 Intel Atom 1.9GHz 32Bit XP

注:前回の測定よりもパルスの立上がりが速くなっています。
これは観測に使用した光ー同軸変換器の電源に使われている電解コンデンサの性能が安定した為と考えています。
光ー同軸変換器は半年程使っていなかったので電解コンデンサの性能が低下していたのでしょう。


8.未改造機との音の比較     (’10,03,26 追記)
紙管で円筒形SPを作った友人がND-S1を買ったので改造してから返す約束で借りました。
早速未改造のND-S1と改造済みを繋ぎ換えて音を比較しました。

試聴には、下記の機器を使用して鳴らしました。
iPod → ONKYO ND-S1 → HRDAC-01改造TP21円筒形SP(SPユニット:プロトタイプスピーカー)

試聴にはジッタの影響が出やすいと思われるCDを選びました。
The VeryBest of Erick Kunzel (Cincinatti Pops Orchestra)のSing,Sing,Singと
Kuijkenの無伴奏バイオリンソナタです。

Sing,Sing,Singでは奥行き感に有意差がありました。
冒頭に後列のドラムがドンドンと鳴り、続いて中列の管楽器が演奏します。
その後に最前部のクラリネットが演奏します。

改造機では楽器の前後の位置がはっきりと判りますが、未改造機では曖昧です。
クラリネットが前方で鳴っているのは判りますが、ドラムと中列の管楽器は同列に感じます。
全体的に奥行きが浅く壁に彫られたレリーフのような遠近感です。

楽器の音色には差異を感じませんでしたが、改造機のほうが迫力で勝っていました。

好奇心からiPodのアナログ出力をパワーアンプ(改造TP21)に繋いでSing,Sing,Singを試聴しました。
奥行き感は未改造機と同程度でした。イヤーホーンで聴く事を主眼に作られているので充分でしょう。
iPodには総てWAVで記録しています。

Kuijken氏のバイオリンでは演奏している部屋の残響から立体的な空間を感じる事ができる筈ですが、
改造機と未改造機の両方で不明確でした。
円筒形SPのSPユニットにタイムドメインラボ社から購入したプロトタイプスピーカーを
使っているのですが、載せ換えてから12日しか経っておらずエージングが不十分で
残響の繊細な部分を再生できないようです。
改造FF-85Kならば差が顕著になったかもしれません。

試聴の結果から改造で音に有意差を生じる事が判りました。
しかし一般的には無意味な改造で御勧めしません。

一般に市販されているD/A変換器はFrequency Domainで設計されています。
Frequency DomainではD/A変換部のLPFでタイミングが変わるので奥行き情報は失われ再現できません。
一般のD/A変換器に繋いだ場合には、ND-S1の極めて小さなジッタは無視しても支障の無い範囲です。


9.未改造機とのジッター比較     (’10,03,27 追記)
友人から借りた未改造機を改造して返すのだが、その前にジッター波形を観測した。
以前にもデジカメの長時間露光で観測したが、はっきりしませんでした。
オシロスコープの遅延掃引機能を使ってアイパターンを撮影したのが下図です。

判りやすいように改造前と改造後の2枚の写真を合成して一枚にまとめました。
掃引回数やディジタルカメラの撮影条件は同じに揃えました。そのため格子の明るさが揃っています。

このオシロスコープはディジタルですがアナログオシロの機能を模しています。
通過する回数が少ない場合に青く、何度も同じ点を通過すると白っぽい表示になります。

観測の結果、改造前と後で差異が在りました。
改造後のほうが線が白く、パルスの立上がりと下がる部分の線幅に大きな差がありません。

それに較べて改造前は線が青く、パルスの上りと下りで幅が違います。
しかし掃引の数が少なく見えるのは理解できません。同じ数だけ掃引している筈です。
オシロスコープの表示方法を学べば判るかもしれません。