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    プロトタイプユニットの改造   ('10、03、 13 開始)
円筒形スピーカーにタイムドメインラボ社から発売されたプロトタイプユニットを搭載しました。
残念ながら筆者の好きな解像度の高い音が出なかったので大改造を行いました。
試行錯誤の末、ダンパーレス化振動系の補強で最強のSPユニットに変わりました。
以下はその記録です。

      1.購入の動機

      2.マウント搭載試験

      3.仮想グランド用コネクターの製作

      4.未改造機の試聴と感想
        4-1 十日目
        4-2 半月経過

      5.改造1回目
        5-1 ボビンの補強
         (1) 樹脂の選定
         (2) 増加重量の推定
         (3) 塗付作業
         (4) 改造の効果
        5-2 ドームの補強
        5-3 フレームの制振1
        5-4 フレームの制振2
        5-5 コーンの補強1
        5-6 コーンの補強2
        5-7 遮音壁の取付け1
        5-8 遮音壁の取付け2
        5-9 ダンパーの改造
         (1) 改造直後の試聴
         (2) コーンの沈下量測定
         (3)改造FF-85Kとの比較
         (4)考察
        5-10 ダンパーレスへの改造
         (1) 改造の詳細
         (2) 改造直後の試聴
         (3) ダンパーレス大成功
         (4) 友人H氏からの情報
         (5) コーンの沈下量測定
         (6) 磁性流体注入後の試聴

      6. デフューザーの仮設試験
        6-2 デフューザーの取付け
        6-3 チューリップ形デフューザーの取付け

      7. インピーダンスの測定
        7-1 左側のスピーカー
        7-2 右側のスピーカー
        7-3 右側のスピーカーへ磁性流体注入後
        7-4 磁性流体の減量

      8.ダンパーレス改造2回目     ('10,06,07 開始)
        8-1 ダンパーのカットとボビンの補強
        8-2 磁性流体の注入
        8-3 コーンの補強       ('10,06,07 追記)
        8-4 試聴会          ('10,06,15 追記)
        8-5 改造FF-85Kとの比較    ('10,06,23 追記)
        8-6 フレームの制振3      ('10,07,19 追記)
        8-7 ボイスコイル周辺の反響防止 ('10,07,22 追記)

      9. ARTAによる特性の測定      ('10,09,23 追記)

      10. 共鳴部位の探索          ('10,12,09 追記)


1.購入の動機    ('10、03、13 開始)
筆者の円筒形スピーカーは改造したFostex FF-85Kを搭載しています。
高音から低音まで楽器の持つ音の魅力を再現でき完成と呼べる水準に達していますが、
しかし強いて言えばピアノの低音がもう少し豊かにならないかと考えていました。

改造FF-85Kではフレームを削って窓を広げ音質の 向上に成功しました。
プロトタイプユニットはコーンとダンパーの間隔が広く、
音が通る窓の面積が既存ユニットの数倍も広い事が魅力でした。

また市販のSPユニットを円筒形SPに組み込む為には何らかの改造が必要ですが、
プロトタイプユニットは簡単に搭載できそうだったので試しました。



2.マウント搭載試験
フランジ部の大きさが従来使っていたマ ウント(試作3)に合うのか試す為に改造FF-85Kを外して載せてみました。
何の加工もせず載せただけで誂えたようにピッタリ合いました。
防振用ゲルもそのまま使えたので新たにマウントを作らずに済んで楽でした。
マウントは付帯音(ノイズ)を出しやすい部品で製作に手間が掛ります。

上の写真では仮想グランドを繋いでいないのでゲルが潰れていません。

ゲルがはみ出しSPユニットの鍔が小さいように見えますが、
ゲルの6割程度に乗っていて最適と思える重なりです。
これ以上鍔が広くてもゲルに接触せず、鍔から無駄な音が出る可能性があります。

写真では見えませんが鍔に続く円筒部もゲルに接触しており横方向も固定されています。


3.仮想グランド用コネクターの製作
従来使っていた改造FF-85KはM4の雌ネジを使っていましが、
今度のSPユニットはM6なので流用できません。そこで新たに製作しました。
下の写真は左が部品、右が製作後です。


使用した部品は下記です。
 長ナット ユニクロ M16*60mm   205円
 ホールインアンカー M10       16円
 キャップねじ    M6 *50mm    22円
 スペーサー 内径6mm 長さ10mm   10円
 スプリングワッシャー M6用      2円
 ワッシャー      M6用      2円

加工は簡単でした。
長ナットにホールインアンカーを差し込みエポキシ接着剤で固定するだけです。
接着剤というと柔らかそうなイメージが在りますが、
ダイソーで買った2液混合エポキシは工業用を小分けした?ようで石の様に硬くなります。
ホビー用とは違って手に付くと刺激でヒリヒリするので要注意です。

ホールインアンカーの内径は8mm、キャップねじは6mmなので隙間ができます。
隙間は、ねじにスペーサーを四個被せて埋めました。接着していません。

下の写真はコネクターをSPユニットに取り付けた状態です。





4.未改造機の試聴と感想    ('10,03,23 追記)
4-1 十日目
円筒の頂きに載せてから概ね10日が過ぎ延べ40時間程度鳴らしました。
充分なエージング時間とは言えませんが、現状を報告します。

試聴には、下記の機器を使用して鳴らしました。
iPod → ONKYO ND-S1 → HRDAC-01 → 改造TP21 → 円筒形SP
またSPユニットにはボイスコイルと並列に8.2Ωのダンピング特性改善用抵抗を繋いでます。

ホー ンポールはFF-85K用に作った物を、そのまま使っています。
FF-85Kの低音再生能力を最大限に引き出すべく太さを最適化させました。
プロトタイプスピーカには合わない可能性があります。

鳴らした当初は硬い感じの嫌な音が出ましたが、随分良くなりました。

低音は充分過ぎるほど出ます。10cmクラスのSPユニットみたいです。
従来使っていた改造FF-85Kと較べても勝っています。
SPユニットの後部にあるフレームの窓が広く“実効コーン面積”を損なってないからでしょう。

チェロやピアノの低音がゆったりと鳴って良い感じです。
ウッドベースの唸る感じが自然です。

低音は良いのですが、エージングが不十分な為か高音がきれいに出ません。
高音は出ているのですが音色が不自然です。
特徴的なのは、トライアングルやバイブ(鉄琴)の鋭い高音の部分を魅力的に再現できません。
エージングが進めば良くなるのではと期待しています。

高音の拡散は良好でデフューザーは必要ないようです。
FF-85Kに比べコーンの凹みが少ない為でしょうか。
コーンを囲むエッジが凹んでいるので音の広がりを妨げないのかもしれません。

先週、名古屋へ観光に出かけた折に大須観音へ立ち寄りました。
その際に何軒かのオーディオショップを覗いたのですが、良い音と感じたシステムは在りませんでした。
音源の楽器が何なのか判らない音量だけが大きい低音、不自然な楽器の音、箱の共鳴が目立つSPシステム等です。

それらに比べればプロトタイプユニットを使った円筒形SPは良い音を出しています。
筆者の評価基準が厳しすぎるのかもしれません。

4-2 半月経過    ('10,03,31 追記)
留守にした時も鳴らしっぱなしでSPユニットの成熟を待ちました。
延べ80時間程度は鳴らしたでしょう。しかし高音の問題は解消していません。
少し良くなった気がしますが、これ以上大幅に良くなる事は無さそうです。

筆者の円筒形SPは低音を出す為にパイプの内部をホーン状に絞っています。
その為にコーンの背面に掛る負荷は通常よりもかなり大きい筈です。
空気が重くてプロトタイプユニットが充分に押せないのではないかと推定しています。
このままでは実用化できません。何か対策が必要です。


5.改造1回目
プロトタイプユニットを背面負荷の大きな円筒形スピーカーに適合させる為に幾つかの改造を行いました。
改造を重ねる毎に音は良くなっていますが、効果の程度を忘れてしまうので改造履歴と効果を表にまとめました。  ('10,04,02 追記)
◎:効果大  ○:効果在り  △:良くなった気がする  ★:効果を感じない  ×:悪くなった

 改造履歴  評価      改造内容
  5ー1    ◎      ボビンの補強
  5ー2    ◎      ドームの補強
  5ー3    ◎      フレームの制振1    ここからチョット良い感じ。
  5-4    ○      フレームの制振2
  5-5    ◎      コーンの補強1
  5-6    ◎      コーンの補強2
  5-7    ◎      遮音壁の取付け1    音楽を楽しめる水準
  5-8    ◎      遮音壁の取付け2
  5-9    ◎      ダンパーの改造     すごく良い感じに変わりました。
  5-10    ◎      磁性流体ダンパーを採用 飛躍的に音質向上

5-1 ボビンの補強    ('10,04,01 追記)
背面負荷の大きな円筒形SPで高音が充分に出ない原因は、
コーンとダンパーを繋ぐ紙筒が高音を吸収している為と推定しました。

この紙筒はボイスコイルを巻いたボビンを延長したものです。その紙が問題です。
紙は適度な強度が在りながら音の内部伝達損失が大きい素材です。
コーンに使うには最適と思われますが、高音の伝達には不向きな素材です。
普通のSPユニットでは高音の減衰を抑える為にコーンとダンパーを接近させ最短にしています。

長いボビンには、もっと硬く高い強度を持つ素材が適していると考えました。
しかし筆者の技術で別の素材を使って作り直すのは不可能といえる難しい作業です。
そこで紙に樹脂を含浸させ強度を高めました。その結果、高音の問題は大幅に改善されました。
以下にその経過を解説します。

 (1) 樹脂の選定
   樹脂の含浸は、紙に塗料を塗って浸み込ませました。
   塗料はには、以下の性質を重視してセラックニスを選びました。
   紙との親和性が良く浸透しやすい。
   紙をふやけさせない。水性塗料を使うと紙がふやける事があります。
    コーンやダンパーとの接合に使われている接着剤を溶かさない。有機溶剤系は溶かす?
   塗膜が硬い。

   セラックニスはラック虫(かいがら虫)の分泌物を精製した樹脂をアルコール(エタノール)に溶かした物です。
   バイオリンなど伝統的な楽器の塗装に使われているので適している?と考えました。

   何軒かのホームセンターを回ってALESCO製を見つけました。
   他社の製品ではアルコールを使わずシンナーを使うように改質された物もありました。
   シンナーのほうが乾きが速い筈ですが、塗膜の硬さに不安があったので避けました。

   

 (2) 増加重量の推定
   セラック樹脂の含浸による重量の増加を推定するために予備実験を行いました。
   その結果、概ね0.02g程度と見込まれました。
   コーン、ボビン、コイルの総重量を1.5g程度とすれば1.4%程度の増加です。
   この程度ならば重量増加による高音再生能力の低下よりも強度増による向上のほうが大きい筈と判断しました。

   下の写真は予備実験の様子です。クラフト紙でパイプを作りセラックニスを塗り増加重量を測りました。
   この実験の為に中国製のディジタルスケールを買いました。
   最小桁にドリフトがあったので何度か測って平均を求めました。
   
   クラフト紙に塗った際に原液を薄めずに使い問題はありませんでした。
   ALESCO製セラックニスは適度な濃さで紙の裏側まで浸透しました。


 (3) 塗付作業
   本番でも薄めずに使いました。ダンパーとボイスコイルの間も細い筆を使って塗りました。
   下の写真で紙のボビンが飴色に変わり少し艶があるのが判ります。
   
   塗ってから一時間程度で表面はべとつかない程度に固まりますが、
   硬くなり強度が出るまでには一昼夜を要しました。

 (4) 改造の効果
   ・改造には著しい効果があり大成功でした。高音の量が増し質も向上しました。
   ・改造したプロトタイプユニットはFE83Eの低音を強化したような嫌みの無い音です。
    特にピアノが良い感じで独特の馥郁とした響きをだします。
   ・ドラムの衝撃を体で感じる。

   別物のSPユニットに変貌しました。悪くなったと感じた部分は皆無です。

   この文を書いている時点で塗ってから三日経過していますが、日々高音が良くなっています。
   セラックニスの硬化が現在も進行していると思われます。

   筆者は改造FF-85Kの出す鋭い高音が好きですが、まだその水準には至っていません。


5-2 ドームの補強    ('10,04,02 追記)
優れた高域性能を持つFostex FF-85Kのドームはアルミニューム製です。
また多くのツイーターでは金属製のドームが使われています。
プロトタイプユニットの紙製ドームを補強すれば筆者が好きな鋭い高音が出るのではと考えました。

そこでボビンと同様にセラックニスを塗りました。
ドームだけではなく周囲のコーンとの接続部にも塗りました。

下はセラックニスを塗った後の様子です。
ドームの黒色が更に濃くなり艶が出ています。



改造の効果         ( '10,04,05 追記 )
顕著な効果があり従来よりも高い周波数まで出せるようになったと感じています。
この改造によって悪くなったと感じたところはありません。
具体的な効果は以下の様です。

・ギターの金属弦を弾いた瞬間の音が従来よりリアルになりました。
・トライアングルの衝突音が改善されました。
・シンバルのシャリシャリ感を少し再現できるようになりました。

初めて聴く人ならば凄く良い音と感じるであろう水準に到達しました。
しかし筆者は改造FF-85Kに比べ今一つ魅力が足りないと感じています。
何が違うのか思案しています。

5-3 フレームの制振1        ('10,04,06 追記)
フレームの柱の部分を指先で弾くと金属音が響きます。
フレームは梵鐘に穴を開けたような形なので響くのは当然かもしれません。
音への影響が懸念されたので柱の部分にゴム系制振材を貼ってみました。


上の写真では見難いのですが柱の内側に制振材が張ってあります。
ダンパーの下の柱へは外側に貼りました。

改造の効果
大きな期待は無かったのですが、明確な効果がありました。

全般に音の透明感が増しました。特に高音で顕著です。
どうやらフレームが共振して付帯音を出し音を濁していたようです。
制振材を外側にも貼り付けてサンドイッチにしたら更に良くなるかもしれません。

このSPユニットで初めてチョット良い感じの魅力ある音が出ました。


5-4 フレームの制振2        ('10,04,07 追記)
フレームの制振を更に強化しました。
下の写真のように柱だけではなく環の部分にも貼りました。


結果は良い感じです。
明らかに付帯音が減りスッキリとした音になりました。
違和感の無い音です。

しかし改造FF-85Kと較べると大きな違いがあります。
改造FF-85Kの心地良い音には筆者を虜にする魅力があります。
長時間聴いても音楽に飽きる事が無く更に続けて聴きたくなります。
6時間程度はザラで12時間聴いた事もありました。
まったく疲れず心身共にリラックスできます。

StudioEnzaで聴くYoshii9でも同様の感じを受けますが、
他のスピーカーでは感じた事がありません。
改造したプロトタイプユニットでも、そのような魅力は感じません。
何が違うのか判りません。


5-5 コーンの補強1      ('10,04,13 追記)
改造FF-85Kに比べて魅力に乏しいのはコーンの強度が足りず
楽器のの高調波を再生できないからではないかと疑いました。

そこでセラックニスを塗ったのが下の写真です。


中心にあるドームの周囲に6mm程度の幅で塗りました。
コーン全体に塗ろうかと考えたのですが、重量の増加を懸念して少しずつ進める事にしました。
結果が良ければ更に塗るかもしれません。

上の写真でセラックニスを塗った中央部が黒っぽく写っているのが判ります。

蛇足ですが、写真の撮影にはfinepix S200EXRを使いました。
普段使っている一眼デジカメよりも明暗の諧調表現が自然です。
以前撮影した5-2と比べると差があります。

音は良くなりました。
シンバルの音が鋭くなり透明感が増しました。
ピアノのハンマーが弦に当たった瞬間の衝撃も良い感じです。

セラックニスを塗った分だけ振動系の重量が増えた筈ですが、
明らかに高域が伸びた感じで楽器の魅力を少しだけ再現できているようです。


5-6 コーンの補強2      ('10,04,15 追記)
先の改造でコーンの内周にセラックニスを塗ったところ音が良くなりました。

プロトタイプユニットのコーンは、
背面負荷の大きな円筒形SPに使うには強度が足りないと判断しました。
そこでコーン全体に塗れば更に良くなるのではと考えました。
下の写真はコーンの全面に塗った後です。

写真では内周部に塗った場合と同じように見えますが、全体的に黒っぽくなりました。。
特に内周部が濃くなっていますが、その部分は重ね塗りになった為で艶もあります。

内周部には強い力が加わりますので重ね塗りのほうが良いのではと都合の良い解釈をしています。

改造には大きな効果がありました。
総ての楽器の音が自然になり従前よりも格段に良い感じです。
フルートがフルートに、ピアノがピアノに聞えます。

しかし尺八は尺八に聞えません。尺八の掠れる感じが出ません。
掠れる音には沢山の高調波が含まれているのですが、それが出ないのでしょう。
このユニットの限界かもしれません。

トライアングルの衝撃音も改造FF-85Kに比べ鋭さが足りない感じですが、
琴の弦が弾ける低音は改造FF-85Kよりも魅力的です。


5-7 遮音壁の取付け1         ('10,04,17追記)
コーンの補強によって音はまともになりましたが、困った事に耳が疲れます。
改造によるものか最初からなのかは判りません。
原因はダンパーから発生する音ではないかと疑いました。

アンプから出力される電力でコーンが振動して音が出ますがダンパーも振動します。
そのためダンパーからも音が出ている筈です。

通常のSPユニットはコーンとダンパーが接近しているので問題はありませんが、
このSPユニットはダンパーとコーンの間隔が13mmほど開いています。
音が伝わるのに38マイクロ秒程掛るので両方から出た音が干渉すると13kHzあたりが強められる筈です。
このあたりの周波数が強く出ると耳に痛い感じがして疲れます。

検証する為に下の写真のように遮音壁を取り付けてみました。

遮音壁は厚さ5mmのコルク板をサークルカッターでドーナツ状に切り抜き、
2分割してフレームの中に入れ接着してドーナツ状に戻しました。
縦位置を決める為にフレームの柱にゴム系接着剤で固定しました。

特にコルクが素材として好ましかったのではありません。
手元に在った材料で可撓性があり吸音しそうだったので使いました。

結果は歴然、疑念は的中しました。
完全ではありませんが、遮音壁によって耳に痛い感じが軽減されました。
しかし遮音壁の中央の穴が大きくボビンとの隙間から音が漏れているようです。
隙間を狭める工夫をすれば更に良くなるでしょう。

耳に痛い感じが減っただけでなく音の純度が上がりました。
シンバルのシャリシャリ音に魅力を感じます。

遮音壁によってコーンの裏側から出た音が抜ける窓の面積が狭くなったのですが、
低音が減った感じはありません。

加工に手間が掛るため右チャンネルしか改造していません。
そのためモノラルでの試聴ですが、充分楽しめる水準になりました。

遮音壁の形や材質を工夫してダンパーから発生する音を
完全に遮音できれば高い水準の音になるのではと期待しています。


5-8 遮音壁の取付け2         ('10,04,22追記)
前の改造でコルク板による遮音壁に顕著な効果がありました。
しかしコルク板による遮音壁は工作に手間が掛り面倒です。

もっと簡単に遮音壁を取り付ける方法として針金とスポンジによる方法を試しました。

下の写真のようにフレームの柱に切り込みを作り、
そこへ針金(ビニールホルマル銅線)を三角形に張り巡らせ、
その上へドーナッツ形に加工したスポンジを載せました。

スポンジの表面はカッターで放射状の溝を刻みました。
気休め程度ですが、少しは吸音性能が上がるのではとの考えです。

音を聴いてみると耳に痛い感じの高音はまったく感じません。
コルク板で作った物よりも効果があります。
たぶん材質の違いではなくボビン周辺の隙間が狭いためでしょう。

今、マイスキー氏の奏でるバッハの無伴奏チェロ組曲をモノラルで聴いています。
一時間ほど経過しましたが、耳が疲れる感じは全くありません。

その後の試聴        ('10,04,25追記)
昨日は風邪をひいたらしく咽喉が痛んだため仕事を休んで一日中音楽を聴きました。
右のSPユニットはコルク製遮音壁を、左にはスポンジを組み込んだステレオです。

音はまともになりました。
いろいろな曲を聴きましたが、楽器の音が変とは感じませんでした。
興味深いのは、録音の良いCDと普通のCDとの音の違いが判りません。
原音の位相を正確に再現する能力が劣っているのではないかと考えています。

プロトタイプユニットは改造FF-85Kに比べると再生帯域の中心が低い側にあります。
その為にチェロやサックスの音は秀逸ですが、シンバルの音に魅力を感じません。(注1)

他方改造FF-85Kは繊細な高音を華麗に再現します。
その魅力は他のSPユニットでは得難い音です。

低音が魅力のプロトタイプユニットを取るか、
高音が華やかな改造FF-85Kを選ぶか悩ましい状況です。

低音部は電気的な補正によって改良できる可能性があるので改造FF-85Kに戻しました。

注1:シンバルの音を綺麗に再生する為には、高音部の位相を狂わせずに再生できる
   CDプレーヤーとアンプが必要です。


5-9 ダンパーの改造        ('10,05,07 追記)
先に行った「遮音壁の取付け」でダンパーが第二のコーンのように音を出し、
本来のコーンからの音と干渉して音質を悪化させているのが判りました。

完全な遮音壁を作るのは困難と諦め一度は取り外したプロトタイプユニットですが、
ダンパーを取り去る事ができれば根本的な解決になり良い音が出るに違いないと考えました。

ダンパーの役割は、
ボビンと磁心の軸を正確に合わせ、無信号時にコーンを変位零位置へ復原させます。

通常のSPユニットは直立したバッフルに取り付けられるのを前提にしています。
そのため重力による偏芯を防ぐ目的で強いダンパーが使われています。

円筒形SPではボビンが直立する為に重力による偏芯は無視しても良いほど小さい筈です。
また零位置への復原性もエッジだけで充分と考えました。

しかしダンパーを総て取り去ると給電用ワイヤー等の影響で偏芯する恐れがあります。
そこで円形のダンパーにカッターナイフで切り込みを入れ、3本の放射状の梁を残して切り取りました。
下の写真でも判りますが、「遮音壁」は取り外しました。


ボビンが偏芯してボイスコイルと磁芯が接触する事を懸念したのですが、
今のところ問題は発生していません。
接触していれば長時間鳴らすと摩耗によって断線するかもしれません。
しばらく様子を見ましょう。


(1) 改造直後の試聴       ('10,05,07 追記)
音は良くなりました。
高音が美しくなり嫌みを全く感じません。
改造前では考えられなかった程に自然な音です。
耳が痛くなる様な事もありません。

振動系に占めるダンパーの重量が減った分だけ高音の再生上限が上に延びました。
金属製打楽器の衝撃を鋭く魅力的に再現できます。良い感じです。

しかし低音の音量は減りました。
改造前はダンパーが第二のコーンとして低音の再生に寄与していたようです。

全体的に個性が薄れ普通のSPユニットになりましたが、
低音と高音のバランスも良く歪みを感じない自然な音は他のSPユニットよりも優れているかもしれません。
やっとTIMEDOMAINのSPユニットと呼べる水準になりました。


(2) コーンの沈下量測定      ('10,05,09 追記)
ダンパーを大きく削り取ったので偏移零位置に復原する力が低下した筈です。
それによってコーンが下へ沈んだ可能性があります。
改造から二日過ぎたので零位置が下へ移動したかもしれません。
そこで写真のように物差しとポストイットを使ってコーン周縁部とフランジ部の高さの差を測りました。

同時に改造前のプロトタイプユニットも測定しました。
どちらも沈下は2mm程度で差は判りませんでした。
ダンパーを切り取った事による変位零点の沈下は、素人では測定できないほど小さく無視しても良いようです。

ダンパーの硬さを把握したくて10円玉を4枚(18g)載せた時の沈下量を計りました。

結果は、改造前は2.5mm(偏移0.5mm)で改造後は3mm(偏移1mm)でした。
ダンパーの弾力は改造によって半分程に軟らかくなっていました。

弾力の半減は、コーンの中心に在るドームを指で押した感じと合っています。
ダンパーには手を加えていない改造FF-85Kと改造プロトタイプユニットは同じ程の硬さです。

ダンパーを切り取った量から考えると弾力は2割程度迄減っても良い筈ですが、
5割に止まっていることからダンパーだけでなくエッジの弾力が効いていると思われます。


(3)改造FF-85Kとの比較      ('10,05,12 追記)
ダンパーを削り取った事で改造プロトタイプユニットの音は大きく変わりました。
先日までの音からは想像できない程に良い感じです。

そこで従前の主力であった改造FF-85Kと比較しました。
結果は驚いた事に改造プロトタイプユニットの圧勝でした!!。
しかし大音量で鳴らすと低音でビビリ音が出る欠点があります。

過去に試したSPユニットでは最も美しい高音が出る改造FF-85Kですが、
改造プロトタイプユニットと聴き比べると高音部に混変調(無線通信用語)のようなモヤモヤ感があります。


下の写真のように2本のスピーカを並べモノラルで切り替えながらの試聴です。


先に改造プロトタイプユニットの音を聴き、
アンプとスピーカーを結ぶケーブルを繋ぎ替えて改造FF-85Kで同じ曲を聴きました。

使用した機材は、iPod(WAV) - 改造ND-S1 - HRDAC-01 - 改造TP21 - スピーカー です。

以下は試聴した曲と、改造FF-85Kとを聴き比べた相対的な印象のメモです。
@思い出のグリーングラス / 森山良子氏
 ・ボーカルが生々しく聞える。
 ・各楽器の音が混ざらずに聞える。
 ・ギターのスチール弦が出す音がリアルで心地良い。

A静かな場所で / 小田和正氏
 ・金属製打楽器の出す衝撃音が鋭い。
 ・ボーカルとバックコーラスの音が混じらない。
 ・ボーカルが生々しい。

Bキャラバン / ナット・キング・コール氏
 ・ボーカルは改造FF-85Kと変わらない。
 ・コンガ(小太鼓)の皮に指先が当たった瞬間の音がリアル。改造FF-85Kでは不鮮明。

CEight Days A Week / Beatles
 ・コーラスの部分で3人?の声が聴き取れる。改造FF-85Kよりも鮮明。

Dバッハ無伴奏バイオリンソナタ / ヘンリク・シェリング氏
 ・目の前で弾いているよう。過去最高のバイオリン。

Eバッハ無伴奏チェロ組曲 / ミッシャ・マイスキー氏
 ・癖が無く自然な低音。
 ・管内共鳴を全く感じない。大きく開いた窓で空気抵抗が減りダンプ抵抗による“回生制動”の効果が増えた?
 ・音量は少なめだが再生下限周波数が下へ延びた。不足は感じない。

Fリバーリズム / ジョン・海山・ネプチューン氏
 ・尺八の掠れが自然
 ・シタール(インドの弦楽器)の音が美しい。

Gサキスホン・コロッサス / ソニーロリンズ氏
 ・サックスが生々しい。
 ・大音量で鳴らした際にベースの特定音階でビビリ音がでる。
 ・実用範囲の音量ならばビビリ音は出にくい。


(4)考察      ('10,05,16 追記)
ダンパーを切り三点支持に変え生々しく心地良い音に変わりました。
しかし同じ曲をイヤホーンやヘッドホンで聴いた場合よりも生々しく聞えます。
音場の違いを差し引いても音が良過ぎます。

人の耳は、音波に同期した10kHz以上の高音が少し混じると鮮度の高い音と錯覚します。
既製のDA/Cやアンプには故意に添加している物が少なくありません。(注1)
結構胡散臭い世界ですが、営業努力でしょう。

生々しい音と感じたのは、切り残したダンパーの好影響?と思われます。
切り残した帯状のダンパーが弦の様に振動して鮮度を加味しているのでしょう。

筆者のダンパーは全般に幅8mm程度の均一な幅です。
幅を変えたり形を変えれば音が変わるのかもしれません。

ダンパーを総て切り取る事ができれば更に原録音に近い音が期待できる筈です。

注1:タイムドメイン社の製品には添加が無いようです。
   その為に録音の善し悪しが音にそのまま反映されます。


5-10 ダンパーレスへの改造     ('10,05,18 追記)
一般論としてSPユニットの同心円蛇腹状ダンパーは
コーンの位置決めに必要ですが音を汚します。いわば必要悪的な存在です。

先の改造で同心円蛇腹状ダンパーを切り三点支持とし大幅に音が良くなりました。

根本的な解決を目指して同心円蛇腹状ダンパーを完全に切り取り磁性流体ダンパーを試しました。

その結果、当然ですがダンパー由来と思われるノイズは皆無になりました。
音楽を聴いている際も“静粛”を感じる程です。またビビリや異音は皆無です。


(1) 改造の詳細
同心円蛇腹状ダンパーに代わる良い手は無いかとWebを探したところ磁性流体の記事を見つけました。
磁場空間に磁性流体を充填するとダンピング効果、センタリング効果が得られるそうです。
そのうえ放熱が促進され許容入力が1.6倍に増えるそうです。

記事の内容が事実ならプロトタイプユニットの同心円状蛇腹ダンパーを
磁性流体に置き換えられそうでしたが、踏ん切りが付きませんでした。

To be or not to be ....などとウジウジしていました。
このアイデアを、紙管で円筒形SPを作った友人HY氏に相談したところ、
すぐに磁性流体を入手し自身のプロトタイプユニットで試してくれました。
その結果は「上手くいった。磁性流体を送るからお前もやってみろ」との事。

翌日磁性流体が届いたので改造作業に着手しました。簡単でした。

・先ず切り残した三点支持ダンパーを切除。

・次に磁性流体がクラフト紙に浸み込む恐れがあったのでボイスコイルと
 その上のボビンにセラックニスを塗付。

・乾燥後にスポイトを使い磁性流体を磁気ギャップへ注入。
 磁力で吸い込まれる為に玉状にはなりません。不思議な感じ。
 概ね500μリットル程度。泡を包まないように注意。

・作業終了後、指でコーンを押して擦れや当たりが無い事を確認。

(2) 改造直後の試聴
タイミングのズレを感じない素姓の良い音が出ました。

パイプオルガンの重低音を再生し音量を最大限に上げても異音はありません。

高音の鋭さは増しましたが量が減り音の魅力が減りました。
周波数が増すにつれて弱まっている感じです。
磁性流体ダンパーの効果が高音で強く働き過ぎるのか、
プロトタイプユニットのコーンやボビンの強度不足が疑われます。

高音が減った為か相対的に低音が強化されました。
量が多すぎると感じます。
ダンピングも良く効いていて引き締まった低音が良い感じです。

(3) ダンパーレス大成功    (’10,05,20 追記)
高音の弱さを改善すべくボビンにセラックニスを重ね塗りし、
コーンの裏側にも一回塗りしました。
これでかなり高音が増えましたが、音が不自然でした。

そこで磁性流体の量を減らしてみました。
磁気ギャップに滞留する磁性流体を減らせばダンパー効果が弱まる筈です。

注入した磁性流体を減らすのは難しいかと考えていたのですが、簡単でした。
コーンを指先で持ち上げボイスコイルに付着した磁性流体を綿棒で拭き取り、
コーンを戻してからまた持ち上げて拭き取りました。合計2回行いました。
注入量の半分程は減らしたのではないでしょうか。

磁性流体を半減したので異音の発生を懸念したのですが杞憂でした。

結果の素晴らしさには驚嘆しました。

・周波数帯域が上下に拡がった。
・諧調が倍増か?。
・解像度も倍増か?。
・余分な音が無く音楽を聴いている時も“静粛”を感じる。
・鋭く繊細な高音と芯のある引き締まった低音。
・小音量でも歪まず違和感の無い自然な音。

ダンパーレスは、期待以上の大成功です。
新しい音の世界への扉が開いた感じです。

磁性流体でダンパーレスとしたプロトタイプユニットは
最強の円筒形SP用ユニットに生まれ変わりました。


(4) 友人HY氏からの情報      ('10,05,21 追記)
筆者よりも先にダンパーレスを成功させ
余った磁性流体を提供してくれた友人HY氏からの情報です。

・磁性流体は下記のWF用。
 写真のような大きな壜ではなく5ccです。使い残しを貰いました。
 http://www.baysidenet.jp/shopdetail/010008000001/brandname/
 少量ですが充分です。既に4台のSPユニットに使った筈ですが、半分近く余っています。

・WF用を選んだのは店(横浜ベイサイドネット)の技術者に薦められ たから。
 技術者は磁性流体とダンパーカットへの知見を持っていたそうです。

・異種の磁性流体を混ぜると分散していた鉄微粒子が凝集する可能性がある。

・磁性流体はクラフト紙製ボビンに浸み込み黒く変色するが、ふやけない。今も鳴っている。
 注:筆者のは予めセラックニスで覆ってあるので浸み込んでいません。

・ボビンの片側だけに浸み込むと磁力で吸引され鉄心に擦れる。
 手でコーンを押したり引いたりすれば均一になり問題は解消。

・ボビンとコーンの補強にはセラックニスでなく合成漆を使用。
 セラックよりも漆のほうが分子の結合鎖が多く強いそうです。

(5) コーンの沈下量測定      ('10,05,23 追記)
ダンパーレスにしたのでコーンの落ち込みが気になり測定しました。
測定方法は三点支持ダンパーの場合と同じでフランジの最高部からコーンの最高部迄の差です。

右側SPは2.5mm、未改造時は2mmだったので0.5mm沈んだようです。
左側SPは2mm、未改造時のデーターと同じです。

右側SPが僅かに沈みましたが、重力による沈下か磁性流体を減量する際に
コーンを上げたり下げたりして乱暴に扱った影響かもしれません。

10円玉を載せ反発力を計るのは悪影響が在りそうだったので止めました。
指先でコーンを押した感触では三点支持ダンパーと同じ感じでした。

右側SPのコーンが僅かに沈んでいましたが、音への影響は全く感じらません。
しばらく様子を見ましょう。


(6) 磁性流体注入後の試聴
磁性流体を注入しダンパーレスにしてから一週間以上が過ぎましたので聴いたCDの感想を書きました。

@Waltz for debby / Bill Evans Trio      ('10,05,26 追記)
 有名なライブ録音で酔客の声やグラスの音が入っています。
 その聞こえ方が従前に較べ桁違いに繊細です。

 例えばCDの最初に入っているMy Foolish Heartの後半(4分25秒頃)に
 男性の声でOh Yha!と聞えます。今まではそれだけでした。

 ところがダンパーレスで聴くと、
 男性AがI like .........と話し、それに呼応して男性BがOh Yha!と答えています。
 しかも声の質も判ります。知人の声ならば識別できるでしょう。

 iPhoneと付属のイヤホーンでも聞えましたが劣るようです。
 筆者は初版とRemaster版(20Kbit K2)を持っています。
 聴き比べるとK2のほうが判りやすいです。

 この“会話”はシステムの解像度を客観的に評価する道具として使えそうです。

 注1:同CDにはRemaster版が複数ありますが、円筒形SPで試聴したのは初版です。
 注2:F特オーディオ用に作られた機器では解像度の低い物があり聞えない可能性があります。
 注3: 筆者はライブ会場並みの大音量で聴きました。

ATokyosphere / ジョン 海山 ネプチューン   (’10,06,01追 記)
 尺八、琴など和楽器と胡弓で演奏されたジャズ?です。
 筆者は海山氏の作品が好きでCDを3枚持っています。

 従前と比べが、琴の魅力が大幅に増しました。
 特に低音弦を弾いたときのリアルな音はFF-85Kよりも格段に上です。
 弦が弾ける音と続く余韻が快感です。

 ダンパーレスに改造したプロトタイプユニットは低音の再生能力が優れています。
 自然で歯切れが良く鮮明な音程は、過去に試したユニットでは得られませんでした。
 管内共鳴を意識する事もありません。
 ホーンポールやダンピング抵抗との相性が良いのでしょうか。

 興味深い事が判りました。
 小音量で聴くと尺八の掠れる音が僅かに濁っている感じがします。
 コーンかボビンの機械的な自己共振周波数が掠れる音と重なっているようです。
 
 昨日は大音量で聴いたのですが感じませんでした。
 磁性流体の粘度がボイスコイルの発熱で変わる為か、
 セラックニスの物性が日々変化しているのでしょうか。しばらく様子を見ます。

 意識せずに聴いていれば判らない程の小さな問題ですが気になります。
 セラックニスを塗り重ねて強度を上げ高い周波数へ移動させるか、
 軟らかい塗料を重ね塗りして減衰させる等の対策が考えられます。

 昨日は大音量で聴いたのですが、音が部屋一杯に拡がる感じで心地良く
 そのまま2時間も昼寝をしてしまいました。
 iPhoneはリピートになっていて目が覚めた時も鳴っていました。
 目が覚めた時も良い音と感じ爽快感がありました。

 僅かな問題が判りましたが、総合的に見てダンパーレス・プロトタイプユニットは
 円筒形SP用として最強のSPユニットです。


BBeethoven Piano Sonata No.14 月光 / EMIL GILELS  ('10,06,03 追記)
 ベートーベン作曲のピアノ曲です。
 従前に較べ音色の魅力が大幅に向上しました。
 高音と中低音とのバランスが取れたようで素晴らしい音です。
 特に馥郁と響くピアノ独特の余韻が心地良く快感です。

 この曲は優しく静かに弾く所と全力で鍵板を叩くような所が混在してます。
 近所迷惑にならないようにアンプの音量は強く弾くところに合わせます。
 従来は小音量の所で音色の美しさが損なわれていましたが、
 ダンパーレス・プロトタイプユニットでは小音量でも美しく自然な音です。

 ダンパーレス化によってダイナミックレンジが拡がりました。
 大音量側へ拡がったのではなく小音量の諧調が増した感じです。
 同心円蛇腹状ダンパーには応力と偏移との間にヒステリシスのような挙動があり
 小さな音は、その影響で変質してしまうと推定しています。

 従来使っていた改造FF-85Kの出すピアノの低音に不満が在り
 解消を目指してプロトタイプユニットの実用化に取り組みました。
 その不満はダンパーレス・プロトタイプユニットによって完全に解消しました。
 我が円筒形SPは、満足できる水準に到達しました。


6. デフューザーの設置 

6-1 デフューザーの仮設試験     ('10,05,29 追記)
従来使っていた改造FF-85Kは高音の指向性が鋭く天井に向かってしまいます。
その対策としてデフューザーを使っていました。

改造プロトタイプユニットは改造FFー85Kに比べると高音の指向性が緩やかです。
これはコーンの凹みが浅い為と推定しています。

プロトタイプユニットではデフューザーは本当に不要か?
確かめる為に改 造FF-85K用に作ったデフューザーを仮設して試聴しました。

その結果は改造プロトタイプユニットにもデフューザーが在った方が良いと判りました。

写真のようにSPマウントの固定ネジを長い物に替え輪ゴムを掛けてデフューザーを載せました。
安直な方法でしたが、脱着が簡単で実験には便利でした。

試聴はTVに繋ぎBS-TVと地デジ、CATVを見ました。
TVの光出力からHRDAC-01に 繋ぎ改 造TP21で鳴らしました。
簡単な方法ですが、TVは短時間でいろいろな音が聴けSPシステムの評価には便利です。

何度か付けたり外したりして試聴したところ取付けたけた方が美しい音でした。
指向性が改善され耳に届く美しいと感じる高音が増えたからでしょう。

改造前のプロトタイプユニットでは必要性を感じなかったのですが、
改造前は高音が出なかったので差が出なかったのでしょう。

蛇足ですが、CATVで映画を見ると音に映画館のような奥行き感があり良い感じです。

我が家で使っているSHARP製Aquosは良い音を出しますが、
デフューザーを取り付けた円筒形SPは更に自然な音を出します。
繊細な高音と歯切れの良い低音で勝っています。

注:デフューザーは反射器ではありません。似てますが。
  音波の合成を阻害し鋭い指向性が形成されるのを防ぎます。
  反射器よりも球形に近く自然な音場が得られると考えています。

6-2 デフューザーの取付け      ('10,06,14 追記)
先の実験でコーンのすり鉢が浅くデフューザーの必要性が無いのではと思われた
プロトタイプユニットでも在ったほうが、音が良いとの結果が出ました。

そこで以前にFF-85K用に作った物をプロトタイプユニット用に改造しました。
プロトタイプ・ユニットには鍔が無く支柱を立てられないので
SPマウントを固定するビスを長い物に替えて支柱にしました。

支柱とデフューザーの間隔が広いので従来のような簡単な耳では支えきれないので
電気配線を束ねる為に使うインシュロックを4本使って吊りました。

最も細いインシュロックでも充分な強度がありました。


13日に友達の作品を集めて試聴会を催しました。
防音室だったので大音量で鳴らしたところコーンがデフューザーに当た異音を出しました。
コーンとデフュザーの間隔は、改造FF-85Kでの実績に合わせて5mmで作りました。
しかしダンパーレス・プロトタイプユニットでは不充分でした。1cmに拡げる予定です。


今回の試聴会ではディジタルアンプだけではなくアナログアンプも使いました。
以前に改造したKAF-5002で、 定格出力が40W(瞬時90W)もあります。
この大出力が、コーンとデフューザーが衝突する原因を作ったと考えられます。

音は好評でディジタルアンプより好きだという参加者も居られました。
しかしアナログアンプは重くて団地内にある防音室まで運ぶのが大変です。
試聴会での使用は今回限りにしようと考えています。

この試聴会で驚いたのは、
HY氏が作ったWaveLine社製の67mm(2-3/4インチ)を使った紙管の音です。
ダンパーレス・プロトタイプユニットよりも一回り小さなユニットですが、
小ささを感じさせない心地良い良い音で鳴りました。(細い紙管です)

6-3 チューリップ形デフューザーの取り付け  ('11,12,14 追記)
コーンの中央に在ったドームがコーンの動きを阻害していると判ったので切り取り、
そこへホールインアンカーを差し込みデフューザーとしての効果を期待した。
しかし音の拡がりが今ひとつです。

そこで従前の漏斗形デフューザーを使ってみたのだが、
エッジから発生すると思われる雑音まで拡散しているようでスピーカーの存在感が在った。
それにデフューザーを支持できる柱がコーンの中央に在るのに、
周囲に四本の柱を立てて支えるのはスマートでない。

そこで柱の上に取り付けられる球状の物をホームセンターや100円ショップで探した。

candoで見つけたのはチューリップシャワーと称するトイレ用のアクセサリーです。
トイレの蛇口に取り付け下を向いたチューリップの花から水が出るように飾ります。
商品の歌い文句は『トイレを明るく演出します!』です。

蛇口に嵌る穴をヤスリで拡げホールインアンカーに合わせ、差し込んで接着しました。
ホールインアンカーの中央にはホットメルトを充填し不要な共振を抑えています。


音の拡がりは良い感じです。スピーカーの存在感は消えました。
形が少女趣味のようですが、音が良いので我慢です。


7.インピーダンスの測定          ('10,06,04 追記)
ARTAのLIMPを使ってイン ピーダンスを測定しました。
インピーダンスは管やSPマウントに生じる共振を把握でき便利です。
測定の結果は音の良さを裏付ける優秀な特性でした。

山が低いのでノッチ フィルタ無しでも管内共鳴が気になりません。
筆者は改 造したディジタルアンプを使うのですが音が割れる為ノッチフィルタが使えません。

注:インピーダンスに最も大きく影響するのは管内の構造です。
  ダンパーレス・プロトタイプユニットを載せたら優秀な特性(良い音)になるとは限りません。

7ー1 左側のスピーカー
青線が位相で黄線がインピーダンスです。理想はどちらも水平線ですが実現困難です。
下のグラフには大きな山が在りますが、従来使っていた改造 FF-85Kに較べ山が低く谷が高くなっています。
気になるのは8kHzの小さな山です。これが尺八の掠れが僅かに濁る原因かもしれません。
ダンパーレス・プロトタイプユニットの公称インピーダンスは8Ωですが、
我が円筒形SPではボイスコイルと並列に8.2Ωのダンピング抵抗を挿入しているので
合成インピーダンスは4Ω程度になります。
 


7ー2 右側のスピーカー
上に挙げた左側スピーカーに比べて山と谷の差が大きいようです。
磁性流体が少ないのではと疑いました。
また絶対値も高いようですが、これはコネクター等の接触抵抗の差によると推定しています。
 


7ー3 右側スピーカーに磁性流体を注入後
楊枝の先に磁性流体を付けて一滴注入したところ山と谷の差が縮まりました。
しかし左側に較べると充分ではないようですが、
磁性流体の注入量が微妙で最適量に制御する自信が無いので我慢。それでも優秀です。
 

7-4 磁性流体の減量      ('10,06,06 追記)
先に行った右側への磁性流体増量が失敗でした。
音を聴いたところ高音の魅力が減っていました。

右側が少ないのではなく左側が多過ぎたのです。

グラフの比較から磁性流体が多いとインピーダンスの谷が上に上がる事が判りました。

その後、綿棒を使って左右の磁性流体を吸取り減量して音は復旧しました。
綿棒の先が黒くなる程度の量です。


磁性流体を使ったダンパーは微量の増減で音が大きく変わります。
試行錯誤の末、良い感じに調整出来ましたが難しく面倒な作業でした。

磁性流体にWF用を使ったのが敏感な原因ではと疑っています。
TW用を使えば調整が簡単で更に繊細な音が出るかもしれません。


8.ダンパーレス改造2回目      ('10,06,07 開始)
一回目のダンパーレス改造ではWF用磁性流体を使いました。
音は良かったのですが、磁性流体の量が微妙で難しい作業でした。
磁性流体をTWに替えると簡単な作業で更に良い音を得られる可能性があります。

そこでTW用磁性流体を使ったダンパーレス化を試しました。
一回目とは改造の順番を変えコーンの補強は最後に音を聴きながら行う予定です。

8-1 ダンパーのカットとボビンの補強
予備に買っておいたユニットのダンパーを切り取りました。
切り取ったダンパーの重量を計ったところ予想外に軽く0.3g程度です。

ボビンにはセラックニスを2回重ね塗りしました。
一回目を塗り24時間乾燥、その後重ね塗りして24時間乾燥です。
その後、薄めたニスをコイルの上に塗りました。
濃いニスをコイルに塗ると固着する危険があります。



8-2 磁性流体の注入
TW用磁性流体をスポイトに2cm程吸わせて注入した。(写真左)
前回の改造では沢山吸わせてスポイトが真っ黒くなり見えずに失敗したが、今回は上手くやりました。
スポイトの先を磁気ギャップに近付けると押し出さなくても磁力線のような形を描いて吸い込まれました。
注入した感じが無く不安だったのでコーンを持ち上げたところ良い感じで濡れていました。(写真右)


今は深夜なので音量を絞って聴いています。
新しいユニットなので当初は小さな音だったのですが、
1時間経過して量が増え良い感じになりました。
モノラルで小音量にも拘わらず部屋に音が拡がる感じがします。

磁性流体の違いによる音の差異を感じていません。
TW用磁性流体の注入量を増やしたところ少し高音が減りましたが、
WF用の様な急激な変化は在りません。

WF用よりもTW用磁性流体のほうが製作が楽です。

8-3 コーンの補強     ('10,06,07 追記)
左右のスピーカーともダンパーカットを行い
TW用磁性流体を入れてステレオで試聴しました。

高音は出ているのですが、美しくなく魅力を感じません。
また金属打楽器が出す衝撃音が聞えません。
WT用の磁性流体を多く入れ過ぎた場合の高音の減り方とは明らかに違います。

コーンの機械的強度が低く強力なネオジューム磁石が生み出す駆動力に
耐えきれず分割振動を起こし、高音が失われています。

市販されているネオジューム磁石を使ったSPユニットを調べたのですが、
アルミやチタンを使ったり強度の高いプラスチック系素材を使っているのが一般的で、
伝統的な紙コーンを使っている物は見つかりませんでした。

やはりセラックニスでの補強が必要です。

セラックニスの塗付と試聴を繰り返しました。
WF用磁性流体を用いた前回の改造と同じく表2回裏1回で良い音が出るようになりました。
好奇心から更に塗り重ね表3回裏1回まで塗りました。

セラックニスが安定し強度が高まるのには数日かかりました。
その間はシンバルのシャリシャリ音に魅力がありません。


8-4 試聴会          ('10,06,15 追記)
13日に友達の作品を持ち寄り試聴会を催しました。


オーケストラが演奏するクラシックを鳴らした際に顕著な違いが在りました。
筆者の円筒形SPではトライアングルの小さな音が鮮明に聞えたのに対して他のSPでは全く聞えません。
オーケストラの大音量に重なる小さく鋭いトライアングルは埋没したのでしょう。
参加者から同じCDかと質問が出た程です。
筆者の円筒形SPの繊細さは際立っていました。ダンパーレス化の効果でしょう。

友人HY氏が作ったWF用磁性流体を使ったSPでも聞えませんでした。
磁性流体の種類が違う事に拠るのか内部構造の差なのか判りません。

筆者のSP以外では管内共鳴の抑制が充分でない感じがしました。

長年オーディオに親しみMJ誌に所有するシステムを紹介されたことのある先輩NA氏からは、
「低音部がしっかりしてきた」と評価され嬉しくなりました。

この試聴会でダンパーレス化による問題が全く無い事を確認できました。

友人HY氏が作った円筒形SPは紙管で作られていました。    ('10、06、19 追記)
紙の内径は75mm程度で紙の厚みは1cm程もあり充分過ぎる強度があります。
プロトタイプユニットにピッタリの大きさでマウント等も必要なく紙管の上に載っています。
環状に切り抜いたゲルを挟み込んだだけの単純な構造でした。

その上管内には吸音材が無く仮想グランドだけだそうです。
それでもキンキンした音にはならず筆者のSPと似た音を出していました。
紙管の特性が適しているようです。

ボビンとコーンの補強にセラックニスではなく漆を使っているのですが、
音の違いは感じませんでした。

ほぼ同じダンパレス・プロトタイプユニットを使っているのですが、低音の量が少なく感じました。
筆者の円筒形SPはホーンポールを採用しているので差が出たものと思われます。


8-5 改造FF-85Kとの比較     (’10,06,23 追記)
ダンパーレス・プロトタイプユニットも完成と呼べる水準に到達しました。
そこで初心に帰って改造FF-85Kと比べました。
三点支持ダンパーへ改造した際にも比較したのですが、
TW用磁性流体を使ったダンパーレス・ユニットでは初めてです。
やはりダンパーレス・プロトタイプユニットが良い感じです。

モノラルでSPを交互に切り替えてHD Masteringを聴きました。

低音、高音、歪み感ともダンパーレスプロトタイプユニットが良い感じでした。

久々に聴いた改造FF-85Kの第一印象は低音が軽い感じでした。
重低音を再生できず量も少なめです。
改造FF-85Kは、3インチのユニットとしては普通でプロトタイプユニットの低音再生能力が優秀なのです。

高音は改造FF-85Kが良いのではと考えていましたが、
実際に聴くとダンパーレス・プロトタイプユニットの方が鋭く良い感じでした。
但しFF-85Kは嫌みを感じないように巧く纏められているようです。

全体的に改造FF-85Kの音には籠ったような歪んだ感じがあります。
対してダンパレス・プロトタイプユニットの音は自然で無色透明です。

改造FF-85Kも良い音を出したのですが、
ダンパーレス・プロトタイプユニットと比べると霞んでしまいます。

改造FF-85Kもすれば更に良い音が出ると思われますが、
窓が狭く切り抜くのは難しそうで思案しています。
このまま部品箱の肥やしにするのももったいないので
ダンパーレスに挑戦しようかと構想を練っています。


8-6 フレームの制振3   ('10,07,19 追記)
以前の制振ではXETOROゼトロ制振シー トを使いました。
ブチルゴム系自己粘着型制振材です。
D/A変換器に使い実績があり何の問題も生じていません。

しかしSPユニットに使うと主成分のブチルゴムから黒い油状の液体が滲み出ます。
これに手で触れると黒く染まり石鹸で洗っても簡単には落とせません。
微細な振動によってブチルゴムが変質するのでしょうか。

そこで今度はシリコンシーラントを使いました。
下の写真でフレームの内側に見える白いのがシリコンシーラントです。


制振効果はXETOROと変わらないようです。
施工前は爪先でフレームを弾くと金属音が響いたのですが、
プラスチックのような感じの音に変わりました。

音への影響は以前の制振ほど顕著ではありません。
僅かに音が柔らかく感じます。
しかしトライアングル等の鋭さは失われていません。
施工前よりも良い感じです。


8-7 ボイスコイル周囲の反響防止    ('10,07,22 追記)
ダンパーを切り取った事によりボイスコイル周囲の磁心が剥き出しになりました。
この部分で音が反射し濁っているのではと疑ってみました。

そこで下の写真のようにタイルカーペットをサークルカッターでドーナッツ状に切り取り、
ボイスコイルの周りに嵌め込みました。外形44mm、内径24mmです。
 

C形に切り嵌め込もうとしたのですが、エッジやコーンを痛めそうだったので
2分割して嵌め込みました。まだ接着していません。

音は更に軟らかくなりました。
しかし高音の鋭さは失われておらずシンバルのシャリシャリした音を美しく感じます。
ボイスコイル周辺からの反射が音を濁していたようです。

ダンパーレス・プロトタイプユニットは、これまでの改造で
これ以上は望めないと思われるほど良い音を出すようになりました。


9.ARTAによる特性の測定        ('10,09,23 追記)
可搬システムによって簡便にARTAを動かせるようになった。
そこでダンパーレス・プロトタイプユニットを載せた円筒形SPの特性を測ってみました。

仮設低反響室での測定です。マイクはSPユニットと同じ高さで1m
水平距離は50cmです。近すぎるのですが低反響室が狭く我慢しました。

使用したD/A変換器はHRDAC-01です。


9-1 デフューザー付き改造KAF-5002駆動
デフューザーによって高音域が上がっています。増えすぎです。

5KHzに大きな谷があります。
デフューザー無しの測定結果には無いのでコーンから直接届く音と
デフューザーで反射された音との干渉によって生じたと思われます。

デフュザーの形状に改良の余地が沢山ありそうです。

7KHzと11kHzに収束が遅い振動が見られます。
SPユニットの振動系が持つ自己共振周波数との疑いが濃厚です。
磁性流体によるダンピングが弱いのでしょうか。



9-2 デフューザー無し改造KAF-5002駆動
全体的にバランスが取れています。
しかし2KHz以上に由来不明の山が沢山ありますが、
減衰が大きいので音への影響は少ないでしょう。

150Hzの深い谷はコーンから直接届く音と円筒の下部から出た音が干渉した結果です。
Excelで計算したところ700Hzにも谷ができるのですが、
500Hz以上では円筒の内部で減衰するので干渉は起こりません。
また円筒SPからの距離が3m以上に離れれば影響は無視できる筈です。

9kHzの谷はSPユニットを水平に取り付けた事に由来しています。
コーンの手前から出た音と奥から出た音が干渉した為です。
デフューザーを取り付けた場合の測定(9-1)では谷が浅くなっています。



9-3 デフューザー無し改造TP21駆動
中国TOPPING社製TP21を改造したアンプで駆動しました。
改造KAF-5002で駆動した場合と殆ど同じですが、50Hzに壁があります。
電源に由来すると思われますが、アンプの出力に含まれているのか他からの回り込みか判りません。



9-4 レッグウオーマーの効果検証     ('10,10,11 追記)
先の測定で2kHz以上に由来の判らない山が沢山あるのが判りました。
パイプの遮音処理が充分でないのが原因かと疑い
パイプにレッグウオーマーを被せてARTAで特性を測りました。
パイプの上部40cmへ二重に被せました。


下の図は被せない状態での測定結果です。
外部からの騒音の影響か測定する日によって結果が違うので比較用です。


次の図はレッグウオーマーを被せて測定した結果です。


この記事を書くために被せる前と後の図を並べました。
測定した時点では、レッグウオーマーに効果は無いと考えていたのですが、
図を見比べると違いがあります。谷が浅くなり雑音が減っています。
パイプの遮音に問題がありそうです。

しかし8kHzの畝は残っています。
やはりダンパーレス化したプロトタイプユニットの振動系が持つ自己共振周波数と思われます。
対策を思いつかず思案しています。

1kHz以下の山や谷には規則性が在るように見えます。
円筒の管内共鳴周波数と合っているようです。
更なる音質向上には何らかの対策が必要です。

ARTAの測定で有意差があったので試聴で違いが判るか試しました。
システムは iPhone3GS + ND-S1改 + HRDAC-01 + Noise Cut Cable + KAF-5002改 です。
最近はディジタルアンプではなく改造したKAF-5002がお気に入りです。低音が良い感じです。

レッグウオーマー無しでも充分に良い音と感じていましたが、一層良くなりました。
従来は耳にきつい感じが僅かに在ったのですが、聞きやすく自然になりました。
またKUIJKEN氏によるバッハの無伴奏バイオリンソナタの立体的な残響が鮮明になりました。

ARTAでの測定結果で雑音が減っていましたが耳でも音質の向上を確認する事ができました。

このレッグウオーマーは中 島氏のブログで見たルーズソックスを被せるアイデアを頂きました。
ルーズソックスが見つからなかったのでレッグウオーマーで代用しました。

実験の結果から円筒の表面を吸音材で覆うのは効果的だと判りました。
円筒内の遮音が不十分なのかスピーカーの振動がゲルを介して伝わってくるのか判りません。
工夫して解明しようと考えています。


9-5 高音における嫌味の特定     ('10,12,05 追記)
大改造したプロトタイプユニットの高音には、由来の判らない嫌味があった。
その原因を突き止めるべくARTAを使った測定を繰り返したが、
測定する部屋の反響で結果が複雑になり何だか判らない結果でした。
仮設低反響室を使っても目ぼしい前進はなかった。

そこでSPユニットの至近にマイクを設置して測定すれば、
相対的にSPからの音量が大きくなりS/N?を改善できると考えました。

下の写真はマイクを設置した様子です。
音の伝達系を単純にするためにデフューザは外して測定しました。


大変興味深い結果が得られました。測定は大成功です。
4kHzに深い谷、8kHzに大きな山があります。どこかで共鳴しているようです。


共鳴しているのは何処かと探して見つけました。
SPユニットのコーンとボイスコイルを繋ぐ長いボビンが疑わしい。
ボビン内には直径1.9cm,長さ3cmの円柱状空間が在ります。

物理の教科書に出てくる気柱共鳴が起こる筈です。

ポールピースから2cmのところに空気抜きの穴が4つ開いてます。
その距離で計算したところコーンから出た音とポールピースからの反射波が、
逆位相になり弱まる4kHzに谷が、
同位相になり強くなる8kHzと2倍の16kHzに山ができます。

測定結果と計算が概ね合っています。

改造を重ねたSPユニットではコーンとドーム、
ボビンにセラックニスを塗り重ね硬くしました。
それによりボビン内部での損失が減り共鳴が顕著になったと考えられます。
無改造のSPユニットでは違う特性でしょう。

高音における嫌味の原因は判りましたが、対策を思いつきません。
この問題を解決できれば完成といえる水準の音が出るでしょう。

ボビンの中空部に音の伝達を阻害する吸音材を充填できれば解決できる筈ですが、
切り開いたら元に戻せそうにありません。思案投首です。


10.共鳴部位の探索
先に行ったARTAによる測定で嫌味は高音の共鳴にある事がわかりました。
そこで共鳴している部位を探しています。

10-1 ボビン部の調査     ('10,12,09 追記)
思案していても時間ばかり過ぎてゆくので思い切って切開手術に踏み切った。

何処を切り開くかが問題でした。
開いた後に多種の実験が容易なドームにしました。
サークルカッターを使い直径19mmの丸穴を開けました。


開いたボビンの穴にホールインアンカーを差し込みました。
ポールピースの強力な磁力で吸着され具合良く固定されています。

ホールインアンカーはコンクリートにメネジを埋め込む部品です。
12mm用の外形が17mmでちょうど良い感じでした。長さは50mmです。


ARTAで特性を測定したのが下図です。


共鳴が解消するのを期待していたのですが、少し弱くなっただけでした。
8kHzの山が低くなり、4kHzの鋭く深かった谷が浅くなりました。
また10kHz以上の音量が大幅に増えました。

共鳴は改善されましたが残っています。
ボビンは共鳴の主因では無いようです。疑いは的外れでした。
判らなくなりました。


ホールインアンカーを差し込んだ状態で試聴したところ
以前よりも良い感じの音になりました。

高音の嫌味が減り繊細さが増し、
シンバルのシャリシャリ感が以前よりも自然になりました。
オーケストラでは、トライアングルの音が他の楽器に埋没せずに聞こえます。
以前から聞こえたのですが、更に鮮明で魅力的です。

10kHz以上の音量が増えた事に拠るのかもしれませんが、
ホールインアンカーがデフューザーとして機能し、
高音の指向性が改善された為かもしれません。


'10,12,12の追記
10kHz以上の特性改善はドームを切り取った為です。
従前はドームとボビン、ボビンに開いた小穴とでダッシュポットを構成していました。
ダッシュポットは流体の粘性を利用して高速振動を減衰させるシステムです。
設計者が意図したとは思えませんが、これが高音の特性を損なっていた原因でした。

共鳴を探る目的でドームを切り取りましたが、瓢箪から駒でした。

その後、アンカーの楔を抜き上下を逆にしてM12のボルトをねじ込みました。
その状態でボビンに指し込み磁力で吸着させました。
ホールインアンカーの中には直径12mmのネジ穴が開いています。
その音への影響を排除するためにボルトで空間を埋めました。
しかしまだ直径12mm、長さ30mmの空間が残っていますが、
閉空間になったので音への影響は無くなったと考えています。


ARTAで特性を測ってみたのですが、特性に変化は見られませんでした。
やはり共鳴の原因はボビンではないようです。

共鳴の原因を探る目的でドームを切り取ったのですが、高音が改善されました。

結果が良かったのでホールインアンカーを使ったデフューザーを継続して使います。
従前のデフューザーは直接音と反射した音との干渉が気になっていました。
ラッパ形にしたのは支持する必要性の結果からでした。
中央に柱を立てた方が良い筈です。


10-2 コーンの調査      ('10,12,13 追記)
共鳴がボビンではなかったのでコーンを疑いました。
コーンにはセラックニスを塗り強くなったので特定の固有振動数が在るのではと疑いました。
そこでコーンにガムテープを貼りました。


コーンが重くなり強度も変わるので共振の周波数と振幅が変わる筈です。
ARTAで測定したのが下の図です。


変化が見られました。谷が狭くなり山が低くなってます。
しかし周波数が変わっていません。

10kHz以上の肩が少し丸くなったのは、
テープによってコーンが重くなった為と理解している。

共鳴には、コーンが関係しているようですが主因ではなさそうです。


10-3 ボビンの共振調査        ('10,12,14 追記)
以前の調査でボビン内での気中共鳴の疑いは晴れたが、
ボビン自体の固有振動で音が出ている可能性も考えられます。

調べるためにボビンにガムテープを貼って測定しました。
しかし大きな変化は見られません。ここも外れでした。



10-4 コーンエッジの共振調査        ('10,12,18 追記)
共鳴を特定する為に可能性の在る所を片っ端から潰したが外ればかりだった。

仮想グランドを半分に縮めたり、ダンピング抵抗を外して試した。
果てはスピーカーユニットをパイプから浮かせて試したが、何れも外れだった。


それらのデーターを見比べて一番変化が大きかったのは、
コーンにガムテープを貼った場合だった。そこで振動系の共振を疑った。
振動系の重さとコーンエッジの弾性で決まる時定数で共振が起こる?。

どの様に試すか迷ったのだが、エッジの凹みにビニールテープを貼った。
ビニールテープは柔らかいので、損失が増え共振の鋭さが鈍る筈だ


下図は測定結果です。


山が低くなり谷が浅くなりました。原因は、この辺のようです。
谷の一番低いところは3kHzで従前よりも1kHz下がりました。

しかし山の周波数は変わっていません。
山と谷は別の原因でしょうか?。


10-5 コーンの共振再調査       ('10,12,18 追記)
先の調査でエッジにテープを貼り効果が在った。
その状態でコーンにも十字型に幅1cmのテープを貼った。
前回はガムテープを使ったが、もっと柔らかい透明ビニールテープを使った。


その結果は下記です。


鋭い共振の山は消えました。
よく見ると頂上が低くなり周囲に埋没していますが、時間方向に共振が続いています。

共振の山はセラックニスを塗り重ね硬化したコーンの自己共振
谷は振動系の重さとエッジの弾性で決まる共振のようです。


'10,12,19の実験
コーンに塗ったセラックニスを剥がした。
コーンにアルコールを塗り染み出たセラックニスをティッシュで拭取った。
5回ほど繰り返してコーンの表面から艶が消えセラックを塗る前の紙に戻った感じ。
染込んでいたので半分も取れてないだろうが、指先でコーンを擦った音が変わった。

期待して測定したところ予想に反して共振が強くなった。
仕方なくエッジとコーンにビニールテープを貼ってみたが、
ニスを剥がす前のような顕著な効果が出ない。

どうやらセラックニスを剥がした事でコーンの強度が低下し、
長いボビンが上下する形の共振がエッジまで届かないらしい。

共振の原因はセラックニスを塗ったことではなく
コーンの強度に比べボビンが長く重いので共振周波数が可聴周波数範囲に入り、
ダンパーを切り取った事で顕著になったものと考えている。

セラックニスよりも効果的な補強をしなければ根本的な解決はできない。


10-6 ボビンの補強     ('10,12,23 追記)
共振の原因はコーンかボビンに在るらしい。
コーンの補強は難しそうなので先ずボビンに着手した。
その前にコーンにセラックニスを塗って以前の状態に戻した。

ボビンにクラフト紙を巻きセラックニスで固めた。
結果が良くなかった場合を想定し接着剤を使わなかった。
振動系が若干重くなるが、切り取ったダンパーに比べれば軽い。

ダンパーを切り取った跡や給電線などの凹凸があったので、
それらを避け上から3分割で巻き付けた。

一番上にはボビン内の空気を抜く穴が4つ開いていたのだが塞いだ。
ドームを切り取ったのでコーンで圧縮された空気がボビンを通じて
外部に抜けてしまうのが嫌だった。

下の写真が補強の様子です。色が違うのはニスが乾いてない為だ。




高域の特性が大幅に改善された。
期待していなかった中域、低域が平坦になり量が増えた。

8kHzの共振は少し残っているが低くなった。
4kHZの谷は浅くなったが残っている。原因が判りません。

音を聴いた感じは大幅に良くなった。今までで一番の出来栄えだ。
モノラルでの試聴だが心地よい音で深夜まで聞き入ってしまった。

一時はTangbandあたりに替えようかと迷ったSPユニットだが、
努力の甲斐あって素晴らしい音を出すようになった。

ボビンの制振を工夫すれば更に良くなるかもしれない。

'10,12,25 の実験
若しやボビンが横方向に振れて振動しているのではと疑った。
そこでボビンの内側にも磁性流体を注入して様子を見た。

共振には影響しなかったが低音が減った。

ボイスコイルの外側と内側に磁性流体が充填された為に
ボイスコイルの下側に在る空気の逃げる道がなくなり
空気バネが構成されコーンが動き辛くなった為だろう。失敗だった。

元の状態に戻すために磁性流体を抜いた。
クラフト紙を細い短冊状に切りボビンとポールピースの間に差し込みふき取った。
10回位繰り返して大部分を拭き取れた。音も元に戻った。



10-7 コーン表の制振     ('10,12,27 追記)
コーンの表面を指先で擦るとカサカサとした音が出る。
セラックニスを塗った為と思われるが、音の成分に周波数の高い音が多すぎる。

対策として軟質ビニールテープを貼っていたが、格好が悪い。
セラックニスの上に柔らかい塗料を重ねて塗り高音を押える事を考えた。
高級バイオリンではテレピン油で溶いた柔らかいセラックを使うらしい。
しかし扱いが難しそうだ。

身近に良い物はないかと考え木工用ボンドを思いついた。
さっそくテストピースを作って試した。


クラフト紙でコーンを作りセラックニスを塗った。
その上に木工用ボンドを重ねて塗り評価した。

左が塗った物だが見た目は変わらない。
指先で擦った音はカサカサでなく良い感じ。

中央の白い物は指先の腹に塗って固めた薄いフィルム状の物です。
折り曲げても割れず、引っ張ると伸びるので適している。

問題は、セラックニスは水をはじくので水で薄めた木工用ボンドが馴染まない。
仕方なく薄めずに指先で塗った。下はコーンに塗った様子。


当初は白いが乾くと透明になる。
右の写真は、中央のボビンとの接続部に重ねて厚く盛った。この辺の強度不足を疑っている。

乾かした後で特性を測った。


高音の凹凸はあまり改善されていないが、低音の特性は著しく良くなった。
高音が抑えられた結果、相対的に低音が増し3.5kHzから400Hzまで平坦になった。

筆者の円筒形SPは構造がバックロード・ホーンなので、
500Hz以下はパイプの下から出る音が加わる。
中低音は理想的な特性に近づいた。

ロン・カーター氏のベースを聴いたのだが凄く良い感じだ。
SPシステム内の残響が少ないので、ベースの音がとても魅力的だ。


10-8 コーン裏側の制振     ('10,12,28 追記)
コーンの表側に木工用ボンドを塗って効果があった。
そこで裏側にも塗ってみた。コーンだけでなくボビンの上にも塗った。


乾いて透明になったところで特性を測った。


8kHzの山が消え、6kHzから9kHzが平坦になった。前進した。
8kHzの共振はボビンとコーンの繋ぎ目あたりに原因が在ったらしい。

しかし4kHzの谷は依然として残っている。
4kHzの谷と8kHzの山とは原因が違うことが明白になった。

低音の量は変わって無いが、なだらかな稜線が階段状になった。
これが良いのか悪いのか判らない。

MJQを聴きながら書いているがいい感じだ。


10-9 ボビン内側の補強     ('10,12,28 追記)
前の実験でボビンとコーンの繋ぎ目に木工用ボンドを塗り効果が在った。

ボビンとコーンのつなぎ目は単純な突合せ接着ではなく、
センタードームとのトラス構造になっている。
トラス構造の一辺になっているボビンには大きな力が加わる。
その部分のボビンは外部から効果的な補強ができない。そこで内側から補強した。

ボビンの最上部内側に幅10mmのクラフト紙を貼った。
接着剤は使わずセラックニスで塗り固めた。


4kHzの谷が消えるのを期待していたのだが、変化は見られなかった。
しかし10kHz付近のモヤモヤが減った。補強が効いている。

また中央の平坦部が広がり下端は200Hzに至った。

今、パトリシア・バーバー氏のナイトクラブを聞きながら書いている。
ピアノの音が従前よりも艶やか。ボーカルも自然でとても良い感じ。
200Hz付近が少し増えただけで音の魅力が倍増した。

'10,12,30の実験
補強したボビンの内側に木工用ボンドを塗って防振を強化。
下の写真は塗った直後です。指先で塗ったのですが、雑でした。


乾くのを待って特性を測定した。


大きな影響は無かったが、7kHzあたりの変化が緩やかになった。
また12kHzの山が低くなった。

木工用ボンドによりボビンの強度が更に上がった為に空気を押す力が増し低音が増えた。

BD図は共振や共鳴、残響を把握するのに大変便利だが、周波数が正確に読み取れない。
そこで伝統的なFR図(周波数特性)を使った。


FR図はBD図のZ軸が0の曲線と同じだ。
BD図で見ると酷い特性のように見えるが、FR図でみると良い線を行っている。

特に250Hzから3.5kHzの重要な帯域に凹凸が少ないのは素晴らしい。
平坦なのは位相も狂わずに再生できる事を意味している。

低域が階段状になったのは管内共鳴の影響だ。
ダンピング抵抗の効果で共鳴の山頂が押えられ階段状になったと考えている。


10-10 エッジのよる防振     ('10,12,31 追記)

(1) 木工用ボンドによる防振:失敗 ('10,12,31 追記)
従前はエッジにダンパーとしての機能を持たせる為に軟質ビニールテープを貼って補強していた。
しかし格好が悪いので木工用ボンドに置き換える実験をした。

SPユニットの溝はU字型に凹んでいるので其の部分に木工用ボンドを厚く塗った。




軟質ビニールテープからボンドに替えたが4kHzの谷に大きな影響は無かった。
全体的に高音になるほど弱くなる傾向がある。

音を聴いた感じは、魅力が薄れた。
ボビンの内側に補強を施した時点が最も美しいと感じた。

'11,01,01 の実験
その後、エッジに塗った木工用ボンドを剥がした。
溶かせるかと期待して綿棒に無水アルコールを付けてエッジを擦った。
溶けなかったがフィルム状に剥がれた。下図は剥がした後の測定結果です。


中低音の特性は回復したが、ダンパーが無いので高音部の共鳴が著しい。
木工用ボンドによるエッジの補強は硬すぎたようです。

聴いた感じは良くなりました。100Hzから200Hzの低音が増えた事と
中音部が平坦になったのが効いているようです。

(2) エッジ縁の防振     ('11,01,02 追記)
エッジは鉄製フレームに接着され、その上に環状の紙が接着されエッジを抑えている。
環状の紙に木工用ボンドを塗り影響を調べた。




従前と殆ど同じだが、8kHzの山(中央)だけ-3dBほど低くなった。
8kHzの共振はエッジに関係している。

音は良い感じ。嫌味だった高音は全く感じなくなった。


(3) ゴム皮膜による防振    ('11,01,06 追記)
5kHzの谷は振動系の重さとエッジの弾性で決まる共振と考えた。
そこでエッジ上に薄くゴム膜を作り弾性を強めれば5kHzの共振を上に移動できるのではと考えた。

液体ゴムを使おうかと考えたのだが、水性でエッジが弾いてしまう。
油性の液体ゴムを探したのだが見つからない。
何か良い物はないかと思案の挙句ゴム系接着剤を思いついた。
ゴム系接着剤の殆どはクロロプレンゴムを溶剤に溶かした物だ。
エッジに塗って乾かせばゴム膜ができる筈。

薄い皮膜を作りたかったので溶剤の多い接着剤を探した。
ダイソーに在った革用ボンドはクロロプレンゴムの濃度が20%と少なく残りの80%が溶剤だ。
これをエッジの四箇所に長さ15mmで薄く塗った。
一般のゴム系接着剤のように糸を引かず綿棒で伸ばせて具合が良かった。

下の写真は乾く前の様子です。乾いた後は薄い皮膜になりました。




測定結果を見て、また的外れかと思いました。
特性は従前と殆ど同じで5kHzの谷が僅かに上へ移動し浅くなりました。

ところが試聴して驚きました。
低音の量が倍増し再生下限周波数が下に伸びていました。
低音はパイプの下から出るので測定結果には正確に反映されないようですが、
FR図で調べたところ100Hzから200Hzで2.5dB、50Hz付近では5dBも増えています。

ロン・カター氏の弾くウッドベースの最低音が力強く唸ります。
Emil Gilels氏が弾くベートーベン ピアノソナタ #23が素晴らしい。
聴いていて背筋がゾクゾクするほどです。

“3インチのSPユニットにしては低音が良く出る”といった水準ではありません。
円筒形SPの課題だった“ピアノの低音を豊かに”は達成されました。

低音が倍増した理由を考えました。
従前はエッジが軟らかかったのでコーンが筒内の空気を押す際に
エッジが逆方向に逃げて弱めていたと思われます。

エッジにゴムを塗ったので適度に硬くなりエッジもコーンの一部のように
空気を押す働きをするようになったのでしょう。

実質的にコーンの面積が増えたような効果を生んだと考えられます。

音が安定するのにエージングが必要でした。
次はエッジのゴムの部分を増やして様子を見る予定です。

蛇足ですが、ダイソーの革用ボンドは溶剤の匂いが強いのです。
少量を塗っただけですが部屋に匂いが充満して閉口しました。
寒いのを我慢して窓をあけ換気扇を廻して乾くのを待ちました。
次はベランダで塗ります。


(4) ゴム皮膜による防振2    ('11,01,09 追記)
前回、エッジの四箇所(概ね円周の半分)にゴム皮膜を作り結果が大変良かった。
そこでゴム皮膜を六ヶ所に増やし、12時間鳴らした後に特性を測った。


結果は、四箇所の場合よりも悪化した。

12kHzの山が6dB高くなり、中音の平坦部が狭くなった。
100Hzから200Hzの低音では2dB程減った。
測定では僅かな違いだが、聴いた感じはピアノの魅力が大幅に低下。

すぐにゴム膜を剥がそうと考えていたのだが、全周に塗って特性を測ってからにした。


結果は、5kHzの谷が深く鋭くなった。エッジの弾性が関係している。

'11,01,13の実験
全周に塗ったゴム膜を剥がし、再度4箇所にゴムを塗った。長さ15mm。


概ね以前に似た特性に戻ったが、何故か高音部は戻らなかった。

ゴム膜を剥がすのに、
当初はマニュキュア除光液(アセトン)を使ったが溶けなかった。
次にエナメル薄め液(資生堂:酢酸ブチル、酢酸エチル、ブタノール)を使って成功した。
しかし綿棒の先が少し黒くなったのでエッジの素材を溶かし変質したのかもしれない。


(5) ワセリンによる防振     ('11,01,14 追記)
Webでエッジの防振を検索したところ、
昔のウーファーにはビスコロイドという防振剤がエッジに塗られていたらしい。
昔もエッジに鳴きを押えるのに知恵を絞ったようだ。

ビスコロイドは入手難のようだし剥がすのが面倒そうだった。
ポリデントや玩具のスライム等を検討したが、乾いて水分が飛ぶと硬化してしまう。
そこでワセリンを思いついた。安定で揮発せず安全性も高く安価だ。
近所の薬局で精製した白色ワセリンを 約300円で入手した。

それをU字形のエッジに厚さ1mm程度に塗って特性を測った。


8kHzの共振は抑えられた。原因はエッジの鳴きだった。

ワセリンで共振は抑えられたが、以前よりも2kHz程下側へ広く陥没してしまった。

聴いた感じは、嫌な音ではなく長時間聴いても疲れないが、以前の音ほどの魅力を感じない。


11. 左側スピーカーの改造     ('11,01,25 追記)
共鳴部位の探索では右側のSPユニットを改造して共鳴部位を探った。
明確な結論は出なかったが、予期せぬ周波数特性の改善をもたらした。

そこで左側のSPユニットにも改造を施して同様の改善効果が見られるか試した。
下の図で上が振動系の改造前、下は改造後です。



先に改造した右側と概ね同じ特性が得られました。
残念ながら高音部の凸凹も良く似ています。
改造の効果は著しく、200Hz付近は9dBも増えています。

粘り強く頑張ったのですが、特性の改良は限界に達しました。
これでプロトタイプユニットの改造は終えます。

左右のSPユニットが揃ったのでステレオで聴いています。
ダンパーレス化してダイナミックレンジが広がったプロトタイプユニットの
バランスが改善されました。癖が無く解像度の高い音です。
耳障りな高音も無く気に入ってます。


12 改造のまとめ     (’11,04,11 追記、)
左側の改造から2.5ヶ月が過ぎました。充分に聴きましたが良い音で不満はありません。
低音の力強さと繊細な高音を併せ持っています。

この改造で貴重な知見を得ました。
特にプロトタイプユニットに限った事ではありませんが、
SPユニットで性能を低下させている要因はダンパーとエッジです。
ダンパーレス化には成功しましたが、エッジの問題は残っています。

改造前のユニットの問題点は、
◎ダンパーとコーンの間隔が離れている為に双方から出る音のタイミングがずれ解像度が低下
◎強力なマグネットに比べ振動系の強度が足りず空気を押し切れない
◎エッジが柔らかく低音再生の際にコーンが押した空気をエッジが逃がす。

以下の改造でそれらの問題点を解消しました。
下図の番号と説明を参照して下さい。

大改造なので難しそうですが、やってみると意外に簡単です。
難しいのはドームを丸く切り抜く作業だけです。


  番号1: ダンパー切除
   ダンパーの代わりに8.2Ω3Wのダンピング抵抗器を
   ボイスコイルと並列に接続して"発 電ブレーキ”を掛けます。

   プロトタイプユニットは磁石が強力なので発電ブレーキで充分なダンピング効果が得られます。
   発電ブレーキは雑音を出さない理想的なダンパーです。
   ダンパーを切り取った場合には必須と考えています。

   しかしアンプから見たSPのインピーダンスが4Ωになります。4Ωを駆動できるアンプが必要です。

   またダンピング抵抗が電力を消費する為にアンプの出力が倍増します。
   筆者は20Wのアンプを使っています。これ以下では充分な音量が得られない可能性があります。

   SPケーブルに極端に細い線を使うと駆動力が低下しダンピングの効かない音になります。
   ダンピング抵抗器と極細線の組合わせは最悪です。

   インターコネクトケーブルに極細の単線を使う作例が見られます。
   それは理に適った素晴らしいアイデアですが、電力を送るSPケーブルには適しません。

  番号2:ドームの切り取り
   これが一番難しい作業でした。サークルカッターで丸く切り取ります。

   ボビン内の空気がバネになりコーンの動きを阻害します。
   ドームを切り取り空気の流れを改善します。
   
   開いた穴には丸棒のデフューザーを差込み塵の進入を防ぎました。

  番号3:コーンの補強
   セラックニスを塗り上に木工用ボンドを重ね塗り。緑線と青線の部分。

  番号4:コーン裏の補強
   コーンの裏とボビンにセラックニスを塗付。緑線の部分。

  番号5:裏コーナーの補強
   コーナー部に木工用ボンドを塗付。青線の部分。

  番号6:エッジの補強
   エッジの周囲4箇所にゴム用接着剤を塗付

  番号7:ボビン内側補強
    ボビンの内側にクラフト紙をエポキシ接着剤で貼り付け補強

  番号8:磁性流体の注入
   磁性流体は、ツイーター用を使いました。
   発電ブレーキがあるので粘性の高いウーファー用は適さないと考えました。
   
   磁性流体の役割は主にボイスコイルの位置決めです。
   ダンパーが無いのでボビンがふらふらします。
   磁性流体の粘性でボイスコイルが磁心の壁に擦れ異音が出るのを防ぎます。

   磁性流体を入れすぎると内側まで磁性流体が回り込みます。
   その際は、紙を短冊状に切ってボビン内側のギャップに差し込めば吸着できます。