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              TOPPING TP21の改造     ('09,11,18 掲載開始)

LIHAO AcousticIVの改造記事を見た読者からメールを頂きTOPPING TP21を薦められました。
Web上にある基板の写真を見るとAcousticIVよりも優れた設計のようです。
手元に3台もディジタルアンプがあるので迷いましたが、物欲と好奇心に負けました。

      1.購入

      2. 改造前の評価
        2ー1 自作円筒形SPでの試聴
        2-2 Yoshii9でLIHAO AcousticIVと比較    ('09,12,01追記)

      3.改造
        3-1 クランプ フェライトの取り付け      ('09,12,03 追記)
        3-2 デカップリングコンデンサの交換      ('09,12,05 追記)
        3-3 デカップリングの高周波特性改良     ('09,12,11追記)
        3-4 内蔵5V電源の安定化           ('09,12,11 追記)
        3-5 無線周波数帯域の制限           ('10,01,01 追記)
        3-6 味付けの排除               ('10,01,03 追記)
        3-7 出力LPFに併用のセラコン切離し       ('10,01,05 追記)
        3-8 グランド・インピーダンスの低減1     ('10,01,07 追記)
        3-9 グランド・インピーダンスの低減2     ('10,01,09 追記)
        3-10 出力LPFのコンデンサ交換        ('10,01,24 追記)
        3-11 グランド・インピーダンスの低減3    ('10,01,28 追記)
        3-12 電源デカップリングコンデンサの増強   ('10,03,01 追記)

      4.電源アダプターの比較              ('09,12,07 追記)

      5.改造後の試聴
        5-1 改造履歴Phase10での試聴         ('10,01,18 追記)
        5-2 改造履歴Phase12での試聴         ('10,02,07 追記)

      6.出力ノイズの観測                ('10,01,20 追記)


1.購入
Yahooオークションで買いました。LIHAO AcousticIVは深センからでしたが、今度は都内です。
ACアダプターは12Vと14Vから選べましたが、14Vを選びました
本体が4,980円、ACアダプターが1,300円、送料が500円でした。
中国から買うと時間が掛るのですが、国内なので代金振り込みの翌日に手元へ届きました。
発送方法にExpac500を選んだので、下の写真のようにプチプチに巻かれ送られてきた。
送料をけちらず宅配便で依頼すれば箱に入って送られてきたのでしょう。



2.改造前の評価     ('09,11,24 訂正)
早速開封して出来を調べました。
ゴム足は付いているし、RCAコネクターもゆるゆるではなく少し堅めですが左右のバラつきはありません。
基板の出来も良くLIHAO AcousticIVよりも高い製造技術を感じました。国産に近い高品質です。

手元に届いた直後から通電開始し8時間経過した時点で試聴を始めました。
新しい電解コンデンサは性能が安定するのに時間が掛かります。


2ー1 自作円筒形SPでの試聴
音源には自作したD/Aコンバータを使い円筒形SPを鳴らしました。

◎通電8時間後
音に全く魅力が無く嫌な感じです。30分間の試聴で耳の後ろが痛くなりました。
高音が割れてクラリネットがチャルメラ風に聞こえました。

◎通電24時間後
チャルメラ風のクラリネットは若干改善されましたが、心地良い音ではありません。

◎通電48時間後
音は大幅に良くなりました。高音の伸びが良く透明感のある音です。

不満は、改造AcoustivIVに比べると低音に芯が無い感じなのと、
ピアノのハンマーが弦に当たった瞬間のピークが割れている感じがする事です。
また大幅に改善されましたが、クラリネットの音が少しだけチャルメラ風です。


TP21は高音が強く、AcoustivIVの弱い感じとは対照的です。
誇張した表現をすると、
TP21はクラリネットがチャルメラ風
AcousticIVは尺八がリコーダー風に聞こえました。

どちらが良いかは聴き手の好みですが、筆者はどちらにも満足できません。
しかし、何れも既存のアンプに比べ破格のコストパフォーマンスで大変御買い得なアンプだと思います。

普段聴いている改造AcousticIVの音と比べると音質に差がありますが、
高性能な導電性高分子コンデンサを大量に搭載した改造AcousticIVと比べるのは酷だと承知しています。
追加した導電性高分子コンデンサの値段はAcousticIVの購入価格を凌ぐ程なので当然です。



2-2 Yoshii9でLIHAO AcousticIVと比較     ('09,12,01追記)
11月28日にSutudioEnzaで中国製ディジタルアンプの試聴会を開きました。
その際Yoshii9のSP部に未改造のTP21と未改造のAcousticIVを繋いで試聴させて頂きました。
システムはWalkman+HRDAC-01+Noise Cut Cable+ディジタルアンプ+Yoshii9-SP部です。

完成度の高いYoshii9-SP部で廉価な中国製アンプを試すという贅沢な試みです。
これも施設を提供して下さったStudioEnzaのご協力の賜物です。

AcousticIVは少し聴いただけで高音が弱いのが判り、試聴者に不評でした。
この試聴の前に改造AcousticIVの音を聞いたので弱点が目立ったのでしょう。
またNoise Cut Cableで高音の差が顕著になったと思われます。

それに比べてTP21は好評でした。高音が素直に出ていました。
また電源に比較的大きな電解コンデンサを備えている為か低音にも不足は感じませんでした。
しかし筆者は全体的に音が“痩せている”感じがして今一つ好きになれません。

改造AcousticIVの音に比べると未改造のアンプは何れも魅力に欠ける感がありました。

驚いた事にYoshii9でTP21を聴くとクラリネットがチャルメラのようには聞こえませんでした。
どうやら自作した円筒形SPではコーンの背面負荷が大きくSPのコイル分とディジタルアンプのLPFが
過渡的に共振のような状態になり割れたような振動音を生み出しているようです。
Yoshii9ではSPの背面負荷が小さいので過渡状態は生じないのでしょう。
これは技術的に大きな収穫でした。ディジタルアンプと円筒形SPの問題点が見えてきました。


3.改造
改造を重ねる毎に音は良くなっていますが、効果の程度を忘れてしまうので改造履歴と効果を表にまとめました。  ('09,12,21 追記)
◎:効果大  ○:効果在り  △:良くなった気がする  ★:効果を感じない  ×:悪くなった

 改造履歴  評価       改造内容
  Phase1  △  ACアダプターにクランプフェライト取付け
  Phase2  ◎  デカップリングコンデンサを導電性高分子アルミ電解コンデンサに交換
  Phase3  ○  内蔵5V電源に積層セラミックコンデンサ1個取付け
  Phase4  ○  デカップリングコンデンサに積層セラミックコンデンサ70μFを追加
  Phase5  ○  デカップリングコンデンサに積層セラミックコンデンサを150μFまで追加 ('09,12,28評価を訂正) 
  Phase6  ◎  無線周波数帯域を制限する為、10pFのコンデンサを追加
  Phase7  ○  味付けコンデンサを排除
  Phase8  ○  出力LPFに併用されていたセラミックコンデンサを外した
  Phase9  ◎  グランド・インピーダンスの低減1
  Phase10 ◎  グランド・インピーダンスの低減2   【ここから心地良いと感じる音になりました】
  Phase11 ×  出力LPFのコンデンサ交換   【元に戻しました】
  Phase12 ○  グランド・インピーダンスの低減3
  Phase13 ◎  電源デカップリングコンデンサーの増強

3-1 クランプ フェライトの取り付け      ('09,12,03 追記)        
TOPPING純正の14V電源アダプター(SW電源)にはノイズ対策用のクランプ フェライトが付いていません。
改造AcousticIVにTOPPING製電源を使うと電圧が高いので音量が増えるのだが、ノイズも増したようにザラツク感じがしました。
クランプ フェライトが無い事が原因かと考え秋葉原の鈴商で150円のクランプフェライト(内径6mm)を買い取り付けました。

その結果、ノイズかと疑うような感じは軽減され心地よさが増しましたが、まだ僅かに残っている気がします。

従来から使っているトモカ電気で買った12V5Aのほうが良い感じの音を出します。
これには最初からSW電源を出たところにフェライトが付いていました。
更にプラグの手前にもフェライトを追加したので2個も付いています。

音の差はフェライトの数の差か、電圧の違いか、電流容量の問題か判りません。
TA2021Bの特性から同音量で聴く場合には電圧の高い電源のほうが歪みが減る筈なのですが。

今回はDCプラグの直前に取り付けたのですが、フェライトは廉いのでSW電源を出た後にも追加してみようと考えています。
もう一個多く買っておけば良かったと後悔しています。

◎フェライトクランプの追加     ('09,12,04 追記)
その後、秋葉原へ出かける機会があったのでフェライトクランプを買ってきました。
今度は少し大きめの物にしてSW電源を出た所に取付けました。
大きめにしたのは電線をフェライトの中に通すだけではなく一回りさせる為です。
こうするとフェライトクランプの穴の中を電線が2回通るので雑音除去能力が二倍になります。

音は僅かに良くなったような気がします。
微妙な差なので気の持ちようかもしれませんが、精神衛生の見地からは有効な投資だったと考えています。


3-2 デカップリングコンデンサの交換    ('09,12,05 追記)
経験からデカップリングに使われている電解コンデンサが音を悪くしているのではと疑いました。
オリジナルに付いていたのは、nichicon FineGold 220μF 25V が4個でした。
これら総てをニチケミのNPCAP-PSシリーズの330μF 16Vに交換しました。
PSシリーズは超低抵抗の導電性高分子アルミ個体電解コンデンサです。もちろんリード線は銅です。

上の写真で中央部に白っぽく縦に4個並んだのが交換したPSコンデンサです。

音は格段に良くなりました。高水準です。音が痩せた感じだったのも解消しました。
改造AcousticIVと比べると高音の趣が違うのですが、どちらも心地良い音です。
また低音も芯が在る感じに変わりました。

でも相変わらず鈴木章冶氏のクラリネットが僅かにチャルメラ風です。
また“竹竹”の尺八が出す掠れた音が少し荒く聞こえて不自然な気がします。

しかし僅か1280円の投資で、金額以上の音質向上効果が在りました。
安価なディジタルアンプの音が高級感溢れる音に変わりました。

3-3 デカップリングの高周波特性改良      ('09,12,11 追記)
電源アダプターの比較で12V電源の電圧をオシロスコープで観たところスパイク状のノイズが乗っているのが判った。
その時には周波数が1MHzを超えていたのでSPに送られても音には出ず問題ないと考えました。

内蔵5V電源の安定化を行った際に、このスパイク状ノイズが5Vに侵入しているのが判りました。
スパイク状ノイズが有害と判ったので12V電源ラインに2個の積層セラミックコンデンサ(10μF)を入れたところ著しい改善が見られました。
そこで積層セラミックコンデンサを増やしてみました。下の写真がその結果です。縦軸は50mV/div,横軸は1μS/divです。

     積セラ2個(20μF)              積セラ4個(40μF)        積セラ7個(70μF)        積セラ15個(150uF)

上の写真から積層セラミックコンデンサの数を増やすとともに周波数の高い成分が弱まっているのが判ります。

積層セラミックコンデンサを付ける前の波形は電源アダプターの比較に在ります。
僅か2個の積セラでも大きな効果がありました。積セラの高周波特性は素晴らしい。
導電性高分子コンデンサと積セラを併用してノイズを減らす手法は、パソコンのCPU周りでは普遍的なテクニックです。

積セラを更に増やせば良い結果を得られそうですが、秋月電子で購入した10μF25WVが8個入った袋が空になりました。

音は雰囲気が自然になりました。高音の嫌みが減りピアノの魅力が増しました。
『ディジタル臭い音』の尻尾を捕まえたような気がします。

僅か百円の投資ですが効果は大きいです。積セラを二百円分位は追加しようかと考えています。


◎積セラ8個追加     (’09,12,23 追記)
8個追加して15個にしました。その波形を上の写真に追加しました。
明らかに電圧変動が減少しています。

しかし音は悪化しました。ピアノを強く弾いた際の音割れが酷く音楽を楽しめる水準ではありません。
コンデンサの取付け方法が適切ではなく、何らかの共振があるのかもしれません。
今後、取り付けたコンデンサを外して音が戻るか確認する予定です。

◎積セラ8個追加のその後   ('09,12,28 追記)
久々にTP21で音楽を聴いたところ音割れは無くなっていました。
どうやら積セラを配線パターンに半田付けする際の熱で導電性高分子アルミ電解コンデンサの性能が一時的に低下したようです。
音割れしてから音楽を聴かなかったのですが、暫らく通電していたので回復したのでしょう。

読者からセラミックコンの持つ圧電素子としての特性によって積セラがマイクとして機能して
ピアノを強く弾いた際の音を拾い音割れを起こすのではとの助言を頂きました。
試す為に鳴らしながらTP21を手で強く叩いて音への影響を調べましたが、感じ取れる影響は在りませんでした。

音は高音の嫌みが更に減った感じです。しかし僅かですがサワサワしたノイズのような音を感じます。
改造AcousticIVでは無い感じです。これを解消できるかが今後の課題です。
まだまだ改造AcousticIVの心地良さには及びません。



3-4 内蔵5V電源の安定化     ('09,12,11 追記 / '09,12,14加筆)
TA2021Bは、アナログ回路とディジタル回路へ供給する5Vを作り出す電圧レギュレーターを内蔵している。
外部から供給される12V電源(14V)を減圧して5Vを作り出しているのだが、電源にPWMで生じるノイズが在るため5Vにも回り込んで来る。
その5Vをオシロスコープで観測したのが下の写真です。縦軸は20mV/div,横軸は2μS/divです。


A:改造前の波形です。SPをPWMで駆動する際に生じる電圧変動が見られます。
  しかし周期の長い電圧変動は見られませんでした。

B:5V用デカップリングコンデンサ(0.1μF)と並列に積層セラミックコンデンサ(10μF)を並列に取り付けた結果です。
   PWMによる電圧変動は充分に抑制されスイッチングノイズが目立ちます。

C:TA2021Bへ12Vの電力を供給する配線パターンに積層セラミックコンデンサ(10μF)を2個取り付けた結果です。
  高周波特性の優れたセラミックコンを電源デカップリング用電解コンデンサと並列に入れ総合的な周波数特性の改善を図りました。
  スイッチングノイズの源はSPをPWMで駆動するFET周辺なので12V電源のノイズを抑えるのが肝要と考えました。

D:12Vのデカップリングに積層セラミックコンデンサ(10μF)を7個取り付けた結果です。 ('09,12,15 加筆 )
  振幅の広い部分は100KHz程度の周波数なのでSW電源由来のノイズだと推定しています。


音は僅かに良くなりました。
大げさに表現するとTP21の音は、すりガラスのようで滑らかさに欠けます。俗に言う『ディジタル臭い音』でしょうか。
それが少し改善されましたが、まだまだ改造AcousticIVには及びません。

Web上には内蔵された5Vを使わず別に電源を用意すると音が良くなるとの記事が見られます。
別電源ならばPWMに起因するノイズは含まれていませんが、供給先のTA2021B内部で混入する可能性が在ります。
筆者は、10μFの5V用デカップリングコンデンサを追加した場合と大差無いと考えて別電源にはしていません。


3-5 無線周波数帯域の制限     ('10,01,01 追記)
TA2021BのOPアンプ入力部に無線周波数帯域を制限する10pFのコンデンサを入れました。
その結果、サワサワしたノイズのような音は改善されました。
全般的に音が良くなりましたが、まだ滑らかさが足りず汚れた感じの高音です。

このコンデンサは無線周波数帯のノイズが音に及ぼす悪影響を排除する為に入れました。
ディジタルアンプは、それ自体がノイズを出すのでノイズ対策は大事です。
OPアンプを使う際の普遍的な技術ですが、知らない人も多いようです。

TP21には在りませんが、LIHAO AcousticIVでは最初から100pFが組み込まれていました。
電源のデカップリングコンデンサが充分な大きさを確保できない場合には100pF位の大きさが必要でしょう。
LIHAO社は自社でスピーカーシステムまで手掛けている様なので充分な試聴を行った結果でしょうか。


3-6 味付けの排除         ('10,01,03 追記)
回路を調べたところ音量調整VRを通過した後とGndとの間に100pFのコンデンサが入っていました。
この場所に入れるのは高音を弱める目的以外に考えられません。
高音は弱まりますが、位相のズレも生じます。とにかく外してみる事にしました。

上の写真でVRの左側に四股を踏むように片足を上げて二個並んでいる黄色いのが100pFです。

一般にディジタルアンプでは音声入力信号に同期したスイッチングノイズが出力信号に加わり
輪郭が強調されたような効果を作るので解像度の高い音が出ているように聞こえます。
これがディジタル臭い音と言われる所以です。

電源ライン(+12V)のデカップリング増強と無線周波数帯域制限によって
隈取ノイズによる高音が減りました。その結果高音が弱い感じに変わりました。

100pFを外した事で高音が自然になりました。

ここまでの改造(Phase7)で購入時に比べて格段に良い音になりましたが、まだ心地よいと感じる水準ではありません。
この文を書きながら2時間続けて試聴しましたが、何時間でも続けて聴きたくなる改造AcousticIVの音には遠く及びません。

蛇足ですが、過日SutudioEnzaでノイズカットケーブルと改造AcousticIVの試聴会を催しました。
その目的には、自分の耳の性能チェックも含まれていました。
幸い参加して下さった方々からノイズカットケーブルと改造AcousticIVの音が良いとの評価を頂き嬉しくなりました。
筆者も高齢者の仲間に入ったので時折は自分の音質評価能力を確認せねばなりません。


3-7 出力LPFに併用のセラコン切離し    ('10,01,05 追記)
TA2021Bの出力にはLo Pass Filterが接続されています。
そのLPFは10uHのチョークコイルと4.7uFのコンデンサで構成されています。これは4Ωのスピーカに合わせた値です。
それが気になっていたのですが、良く見たら4.7uFのコンデンサーと並列に0.01uFのセラミックコンが接続されていました。
AcoustivIVの改造では数種のコンデンサを試しましたが、セラミックコンは最も嫌な感じの音を出しました。

意外な事にインピーダンスの整合よりもコンデンサの種類の方が影響が大きかったのです。
そこで0.01uFのセラミックコンが音を悪くしているのではと疑い外してみました。

その結果、音は僅かに良くなりましたが相変わらず滑らかさに欠ける音です。
大袈裟に表現すればスリガラスのような感じです。
SPに耳を近づけて聴いて原因がわかりました。
音量に合わせてホワイトノイズが増減しています。

・Phase12で再確認実験   ('10,02,06 追記)
Phase8で行った出力LPFのフィルムコンデンサに併用されたセラコンを切離す実験は
グランドインピーダンスを低減する前の状態で行いました。

その後の改造でグランドインピーダンスの影響が大きい事が判ったので以前の評価が少し怪しくなってきました。
そこでセラコンを初期の状態に戻して試聴しました。

試聴は5分で結論が出ました。やはりセラコンは音が悪くなります。

試聴には小田和正氏のアルバム「そうかな」を聴きました。
同氏の曲にはトライアングルが多用されているのですが、その衝撃音が小気味良くカチンと鳴りません。
衝撃の山が弱い感じではなく、ゴスートが在るTV画像のようでガサガサして魅力を感じません。

結論が出たので従前どおりセラコンを外しました。


3-8 グランド・インピーダンスの低減1    ('10,01,07 追記)
以前から気になっていたのですが、
TP21の基板には上下の銅箔層を貫通しグランドのインピーダンスを下げる貫通ビアがありません。
まるで低周波回路の基板のようで無線周波数帯を扱う基板には見えません。

それに対してAcousticIVには驚くほど沢山の貫通ビアが並んでいます。
またカマデンや若松通商のTA2020アンプキットでも配線に使っていない部分には
沢山の貫通ビアを並べてグランドのインピーダンスを下げています。

TRIPATH社が公表している評価基板の資料でもTA2021Bを囲むようにビアが並んでいます。 ('10,01,13 加筆)
http://www.art0.de/images/ta2021b_eb.pdf

TP21では貫通ビアが無い事がホワイトノイズを増やしているのではと疑っています。

いろいろと試したのですがホワイトノイズ風の雑音が減らないので思案しながら基板を眺めていて変な事に気づきました。
基板裏面はベタアース(全面グランド)ですが、意味不明の仕切りがあります。

上の写真では全面がグランドなのですが、概ね水平に二本の仕切りがあります。
これらはグランドを電源部とアンプ部、入力部に分けていると判りました。

ノイズを減らそうとする工夫と思われますが、それは他に低インピーダンスの電路が在る場合にのみ効果的です。
TP21の場合にはグランドのインピーダンスを高め雑音を増やすだけで利点はありません。
特にTA2021Bと電源の間のインピーダンスが問題です。

確認の為、下の写真のようにTA2021Bの両側に三個の貫通ビアを設けました。
写っていませんが反対側も同様に加工しました。

入力の2.2uFを一時的に外して放熱器との間に3個の穴を開け錫メッキ銅線を通して上下の銅箔層を短絡しました。


次に電源部とアンプ部のグランドを使用済みのSolderWick(半田吸取りテープ)を使って短絡しました。
上の写真で左中央付近にある貼り付けたような二個の金属片がそれです。

TA2021Bに電力を供給する中央部の縦ラインは、
以前の加工で絶縁塗膜を剥がす為に電動ルーターを使った際に操作を誤り
銅箔が薄くなったり切れた所が在ったのでSolder-Wickで補強した跡です。
見苦しくなっていますが電気的には抵抗が減ったでしょう。

疑念は的中しました。音は格段に良い感じに変わりました。
完璧とは言い難いのですが、嫌みだったホワイトノイズ風の雑音を感じなくなりました。
スリガラスのような艶の無い音が透明ガラスのように変わりました。
またクラリネットがチャルメラ風ではなくなり嬉しくなりました。

大きな問題が解消しました。
あと少しの工夫で改造AcousticIVに迫る心地よい音を出せるでしょう。

TP21では貫通ビアが無い事とグランドの仕切りが、
グランドのインピーダンスを高めノイズを増やしていました。

かつて仕事に疲れ『下手糞な奴が多くて困ると愚痴を言ったら、
父から『下手糞が多いから、お前でも生きて行ける。感謝しなさい』と諭されました。
父は数年前に他界しましたが、今も肝に命じています。
いろいろと独創的な設計で楽しませてくれるTOPPINGの設計者に多謝と言おう。


3-9 グランド・インピーダンスの低減2    ('10,01,09 追記)
先の改造でグランドのインピーダンスを下げ大きな効果がありました。
更にグランド線を追加したところ驚く程大きな効果が在りました。

TA2021BはBTL出力なのでスピーカーを駆動した電流はTA2021Bの中を通ってグランドから電源部へと戻ります。
そのインピーダンスが高いとTA2021Bのグランド電位が変動してノイズを出します。

インピーダンスを下げるにはルートが短い事が重要です。
最短ルートは先の改造で設けた貫通ビアと電源デカップリング用電解コンデンサのマイナス側を結ぶルートです。
そこにグランド線を追加しました。縦に走る太くて白い線がそれです。

材料はジャンク箱にあったFケーブルの切れ端です。その芯線の一本を使いました。
単線のテンロクなので太さに不足は無い筈です。

音は更に良くなりました。
先の改造には大きな効果があったのですが、それを凌ぐ素晴らしい結果です。
嫌みを全く感じず自然で心地良い雰囲気を醸し出しています。

鈴木章冶氏のクラリネットが柔らかく響きます。チャルメラ臭い音が消えました。
New Yourk Trioのピアノが華麗に鳴ります。ハンマーが弦に当たった瞬間のピークが罅割れません。

その後CDを3枚程聴いて意外な事が判りました。   ('10,01,10 加筆)
音量が増えたようです。音量VRの位置が従来は3時あたりでしたが、12時の位置で聴いています。
電路のインピーダンスが下がってスピーカーを駆動する電流が増えたのか、
雑音が減り聴きとりやすくなった為に心地良く感じる音量のレベルが下がったのでしょうか。

低音が引き締まりました。
従来よりもウッドベースの音程が明瞭になって凄く良い感じです。
これも電路のインピーダンスが下がった事によってダンピング性能が改善された効果なのでしょうか。

ダイナミックレンジが拡がったように感じます。
ノイズが減り小さな音も聴き取れるためかもしれません。

やっと円筒形SPで心地良い音楽を楽しめる水準に到達しました。
改造TP21は改造AcousticIVを超えたかもしれません。


3-10 出力LPFのコンデンサ交換     ('10,01,24 追記)
Lihao AcousticIVの改造ではLo Pass Filterのコンデンサを替えて大きな効果がありました。
しかし最も良い音を出したコンデンサのメーカーが判らずWebで情報を開示する価値が希薄になりました。

これを反省してTP21では素姓の判ったPanasonic製 ECQ-V 0.22uFを使いました。
メタライズドプラスチックフィルムを積層した無誘導構造のコンデンサです。
Panasonic社の資料にはプラスチックの種類が書いてないので判りません。
誘電体正接が1%なのでポリプロピレンではなさそうです。

TP21のLPFには0.47uFのコンデンサが6個使われています。
それに合わせる為にECQ-Vを2個並列にして12個を使いました。0.44uFで少し小めです。

聴きくらべたところ凄く良く似た音でしたが、僅かに違いを感じたのは以下の点です。
オリジナルに比べてECQ-Vは、ウッドベースの低音が少しこもった感じです。
またシンバルの衝撃音の鋭さが穏やかになったように感じました。
どちらが良いかは聴き手の好みですが、筆者はオリジナルが好きです。


3-11 グランド・インピーダンスの低減3    ('10,01,28 追記)
先に行った2回のグランド・インピーダンスを下げる改造で音質は大幅に向上した。
これに味を占め三匹目の泥鰌を狙って改造しました。

改造したのは、下記の三か所です。
 @電源入力ジャックと電解コンデンサの負極を2mmの錫メッキ銅線で繋いだ。
 A基板の最下部に貫通ビアを3か所設けた。
 B電源入力ジャックと電解コンデンサの陽極をテンロク銅線で繋いだ。

音は低減1低減2のような劇的変化は在りませんが、僅かに良くなった気がします。
何が良くなったのか上手く表現できないのですが、以前よりも更に自然な音です。
低音のダンピングも改善されているように感じました。

無音時のノイズが減る事を期待したのですが、変わりませんでした。
オシロスコープで見る波形の振幅も80mV程度でPhase10と同じでした。


3-12 電源デカップリングコンデンサの増強    ('10,03,01 追記)
2月末に開催された試聴会で改造TP21を使ってYoshii9を鳴らしました。
その際に乾電池で駆動する無改造の鎌ベイアンプと比較したのですが、
鎌ベイアンプの方が低音の量が多く良い感じでした。

原因は電池のほうが瞬時の電流供給能力が勝る為と考えました。
それに較べTP21は電源デカップリングコンデンサが小さめで低音が弱かったようです。

オリジナルのTP21には3000uFの電解コンデンサが2個使われています。
ELNA Pioneerと書いてある国内では見かけない物です。

過去の実験では3万μF程度までの増強は有意差を感じたので6000uFでは小さすぎると判っていました。
しかしTP21の内部空間は狭くて内部に収まる大容量のコンデンサが見つからず困っていました。

仕事で部品を買いに秋葉原へ出かけた折にニチケミ製SMCシリーズ 6800uF 16WVを見つけました。
この電解コンは容量が二倍強もあるのにオリジナルのELNA Pioneerとほぼ同じ大きさで好都合でした。

容量はオリジナルの6,880uF (3000*2 + 220*4)から 
        14,920uF (6800*2 + 330*4)へと概ね2倍に増やしました。

交換後直ちに通電し電解コンデンサの安定を10時間待ってから試聴しました。
結果は低音が増え芯の在る感じに変わり歯切れが良くなりました。
それだけではなくバイブラホン(鉄琴)の音源が移動するような感じが鮮明になりました。
良い音を得るためには電源の安定化が大事な事を再認識しました。

更にコンデンサの容量を増やせばもっと良い感じの音になる筈ですが、ケースに入りません。
何か工夫が必要です。


4.電源アダプターの比較     ('09,12,07 追記)
手元にAcousticIV用にトモカ電気で買った12V5AのACアダプター(写真の上)と、
TP21と共に購入したTOPPING純正14V3Aの電源(写真の下)があります。

Webにある記事等では14Vのほうが音が良いとの報告が多いのですが、
筆者のシステムでは12Vのほうが僅かに音が良い感じです。

そこでオシロスコープを使って電源電圧の変動を観測し、音の違いの原因を探りました。

上の写真で左がTOPPING 14V3A、右がトモカ電気で買った12V5Aです。
X軸は50mV/div、Y軸は1μS/divです。
電圧変化分を拡大して見る為にオシロスコープのカップリングはACです。

試聴にはNEW YOURK TRIO の BEGIN THE BEGIN を使いました。
一曲目に在る YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO の後半に在るウッドベース独奏の部分を捉えました。
音量ツマミは3時の位置で観測しました。

プローブを基板に乗っている大きな電解コンデンサ(3300μF)の両端に接続し電源の電圧を観測しました。
TP21はケースの上半分だけ開けてプローブを差し込みながら通電し音が出せるので良い具合でした。
AcousticIVではケースがパイプ状で分割されていないので、このような事はできません。

写真には鋭いパルスが並んでいますが、これはPWMの影響です。
1MHz程度の周期なので音への影響は少ないと考えました。

問題なのはその中心線の位置です。ウッドベースの弦を強く弾いた時に電圧が低下した結果です。
TOPPING純正14V3Aでは100mVの低下ですが、12V5Aでは60mV程度で済んでいます。

オシロのトリガーレベルをTOPPINGに合わせて観測した後に、12V5A電源に差し替えて測定したのですが、
12V5Aでは電圧降下が小さく同じ設定では同期しませんでした。

この測定で12V5Aの電源が良い感じの音を出す事が裏付けられました。
電源のインピーダンス(内部抵抗)が3Aの電源よりも5A電源のほうが低いからでしょう。

総ての電源アダプターを試したわけではないのですが、
一概に12Vよりも『14Vのほうが良い音が出る』とは言えないようです。



5.改造後の試聴 
5-1 改造履歴Phase10での試聴    ('10,01,18 追記)
改造AcousticIVと改造TP21を比べて試聴しました。
楽曲はBS-hivisionを録画したTOKYO JAZZ 2009でMJQが演奏したモーニンとモザイク使いました。

どちらのアンプも高い水準の心地良い音で不快感が全くありません。

しかし改造TP21から改造AcousticIVへ切り替えると“何か物足りない”と感じます。
逆に改造AcousticIVから改造TP21へと切り替えた際には、より自然で好ましい音と感じます。

改造TP21ではトランペットの音を美しいと感じますが改造AcousticIVでは希薄です。
改造TP21は僅かですが高音が右肩下がりに弱まりモヤモヤした感じです。
これが魅力の差を作っていると思います。

高音が弱まるのは入力段のカップリングに使っているWIMAのコンデンサが原因と疑っています。
伝統的なオーディオ界で評価の高い部品は癖の強い物が多いというのが筆者の認識です。

またベースの音でも差が出ました。
TP21のほうが引き締まった音でダイナミックレンジが拡がったような感じです。
AcousticIVは出力部のLPF(Lo pass Filter)に使っているチョークコイルの体積が小さいのです。
小さいので巻き線が細く電気抵抗が大きい筈です。
その差がダンピングファクターを低下させていると思います。

5-2 改造履歴Phase12での試聴   ('10,02,07 追記)
グランドインピーダンスの低減3を実施した後に改造AcousticIVと音を比べました。
改造直後に聴いた時は、大きな変化は無く改造前よりも少し自然な音という感じでした。

ところが改造AcousticIVと改造TP21を交互に聴いて音がAcousticIVに良く似ていて驚きました。
グランドインピーダンスの低減3によって改造AcousticIVと同じような音に収斂しました。

違いはトライアングルの音です。
金属が当たる衝撃の鋭さは同じ様ですが、改造TP21のほうが大きな音量です。
また低音のダンピングも改造TP21のほうが少し良い感じです。

改造TP21の音は、これ以上は望めないと思える程に良くなりました。
トライアングルの鋭い音やシンバルのシャリシャリした音の魅力も再現でき、
キンキンせず6時間続けて聴いても疲れませんでした。自然で本当に良い感じです。

Phase10の試聴ではTP21からAcousticIVに切り替えると物足りないと感じました。
ところがPhase12では物足りないとは感じません
グランドインピーダンスの低減3によって改造TP21の心地良い高音が消えました。
その高音はTP21が作ったノイズだったと推定しています。
人の耳は由来がノイズでも心地良く感じる特徴を備えていれば良い音と錯覚してしまいます。
筆者の耳が騙されてしまったようです。


6.出力ノイズの観測       ('10,01,20 追記)
グランドインピーダンスの低減によって音楽を聴いた感じではノイズが大幅に減りました。
効果を電気的に把握したくてオシロスコープで無音時の出力を観測しました。
下の写真で左側が改造初期(Phase4)で右側が改造後(Phase10)です。
上下は測定時期は同じで時間軸が違います。上が1uS/Div、下が5uS/Divです。


改造初期で130mV P-Pだったのが、改造後では80mV P-P程度とノイズの大きさが4割程度も減りました。
グランドインピーダンスを低減した効果が顕著に表れています。
しかし音を聴いた感じからは、もっと大きな変化を期待していたので意外に小さかったというのが本音です。

DVDプレーヤーを止めたり、D/Aコンバーターの電源を切ったり、入力のRCAケーブルを抜いたりして試したのですが、
殆ど影響は在りませんでした。

観測されたのはPWM波の漏れが大部分と思われます。
周波数が高いので波形が即音に出る訳ではありませんが、
改造後でもSPユニットの真上10cm位のところに耳を近付けるとホワイトノイズ風の音が聞こえます。
しかし、この程度ならば音楽を楽しむのに支障はありません。

同じ条件で改造AcousticIVを試したところ、ノイズは40mV P-P程度と改造TP21の半分程度でした。
SPユニットの上に在るラッパ状デフューザーの中に耳を入れると微かにノイズが聞こえます。
真上10cmでは完璧に無音です。ノイズの大小という視点から評価すれば改造AcousticIVの圧勝です。


7.改造終了   ('10,02,12 追記)
やっと改造作業を終え納得できる良い音が出るようになりました。
改造TP21は改造AcousticIVに代わって我家の主力アンプになりました。

TP21は良質の部品を使っていて全体的な品質も国産並みです。
本来ならば良い音が出る筈なのですが、ノイズがとても多く楽器の音色が変わってしまう程です。

TP21では、プリント基板の配線パターンが低周波回路の技術で設計されています。
ディジタルアンプは高周波を扱うので配線パターンには無線機のような配慮が必要です。
しかしTP21には、その配慮が無いのでグランドのインピーダンスが高く出力部のスイッチングによって
ノイズが発生し出力の音声信号に混入してしまいます。
まさに画龍点睛を欠くアンプです。

最初からグランドインピーダンスが高めである事に気づけば
改造作業を早く終える事ができたでしょう。