Front Page
バッテリー機能回復装置の製作
('09,05,25 初稿)
月に一回ほどしか車に乗らないためにバッテリーが心細い。
そこで簡単な回路で必要充分な機能を備えた
フローティング充電用アダプターを作りました。
小まめに充電するので空になる心配は無くなったが、バッテリーの劣化が懸念された。
劣化を止め、更に機能を回復できる知恵はないものかとネット上を探したところ
デサルフェーター(Desulfator:造語)と呼ばれる電子回路の記事を見つけた。
スパイクパルス状の電圧をバッテリーに加え、電極の表面に付着して機能を阻害する
硫酸鉛の白い結晶を溶かして機能を回復させるそうだ。
GoogleにButtery Desulfatroと入れてウエブ全体から検索すると類似の英文記事が沢山見つかった。
その殆どはAlastair
Couper氏が雑誌に発表した製作記事を出発点にしているようだ。
「デサルフェーター」と入れて検索すると日本語の製作記事もたくさん見つかる。
またCouper氏の方式と同じかどうか判らないが商品化されているものも複数ある。
それらを参考にしてデサルフェーターを自作し機能を検証した。
当初は胡散臭い物ではないかと疑っていたが、試してみて効果が在る事が判った。

以下に製作の要旨を記述しました。
なおデサルフェーターの基本的な技術は、先達の優れたホームページを参照して下さい。
------------------ 目 次 ---------------
1.回路図
2.Alastair Couper氏の回路との差異
2-1 555をPIC12F683に変更
2-2 FETをP形からN形に変更
2-3 C4(電解コンデンサ)を積層セラミックコンデンサに変更
2-4 D1(ファーストリカバリーダイオード)をショットキーバリヤーダイオードに変更
3.パルスの波形 (ネット上に公開されている波形では最速か!!)
4.パルスの幅と周波数 (最適周波数を見出せず)
5. 評価試験
5-1 実車での実験 (効果在りと確信)
5-2 廃バッテリーでの再生実験
@能力評価方法(放電持続時間の測定)
A使用前の能力評価
B再生実験 (放電持続時間が6倍に復活、実験を継続中)
----------------------------------------------
1.回路図
Couper氏の回路を基に自分が実験しやすいよう回路に変更を加えた。

2.Alastair Couper氏の回路との差異
Couper氏の設計は簡潔で無駄がない優れた設計と思われる。
米国内の通販やReidioShackで
入手しやすい部品を用いている。
これを秋葉原で入手できる部品に変更し性能Up?を狙った。
一部のホームページに硫酸鉛の結晶に共振周波数があり、それが3.26MHzと書いてあった。
真偽の程は判らないがクーパー氏のデサルフェーターよりも高い周波数と思われる。
そこでスパイクパルスの立ち上がりを速くすべく部品を選定した。
2-1 555をPIC12F683に変更
Couper氏の設計ではFET駆動パルスの発生に555(タイマーIC)を使っている。
555は組み合わせるコンデンサの充放電でパルスの幅と周期を決めている。
パルスの幅や周期を変えたい場合には抵抗やコンデンサを変えなければなりません。
いろいろな条件を試すには甚だ面倒です。
そこで555に替えPIC12F683(コンピュータ)を使いました。
ピンの数やICの大きさは同じですが、優れた機能が満載されています。
コンピュータなのでプログラムを作らねばなりませんが、慣れているので簡単でした。
PIC12F683に内蔵されているPWM機能を活用してFET駆動パルスを作ったので、
プログラムの修正でパルスの幅や周期を簡単に変更できました。
またAD変換の機能を利用して電源電圧を監視し充電状態の時にだけ動作させる機能も組み込みました。
2-2 FETをP形からN形に変更
オリジナルは555の出力がオープンコレクタなのでP形FETを使っている。
555をPIC12F683に変えたのでP形FETを使う必要性は無くなった。
N形FETを使ったので全回路のアースが共通になり、オシロスコープでの観測が容易になった。
当初はターン・オフ時間の短いH7N0308CNや2SK2936を試しましたが、速い立ち上がりのスパイクパルスを得られませんでした。
原因はゲートの入力容量が大きくPIC12F683では高速でスイッチングできない為だった。
そこでターン・オフ時間は遅いが入力容量の小さい2SK2232に替えたところ良い結果が得られた。
何れも秋月電子通商で購入した物です。
2-3 C4(電解コンデンサ)を積層セラミックコンデンサに変更
クーパー氏の部品表には低インピーダンス品との注記があるので
当初はPanasonic製低ERS電解コンデンサを使った。
しかし常識的に考えて高周波のパルス電流を通すのに電解コンデンサが適さないのは明らかだ。
電解コンデンサは低コストで大容量を得られるが、
高周波での抵抗が大きく発熱する事、環境温度が高いと劣化が早まるなどの問題がある。
これを積層セラミックコンデンサ(47uF 25V
* 2)に置き換えた。
オシロスコープで波形を観測したところ電解コンデンサの場合よりも電圧の山が高くなっていた。
抵抗が低い為に発熱は全く無い。
たぶんクーパー氏の環境では大容量の積層セラミックコンデンサを入手するのが難しく、
電解コンデンサ以外に選択肢が無かったのだろう。
2-4
D1(ファーストリカバリーダイオード)をショットキーバリヤーダイオードに変更
D1はパルスの通り道です。性能がパルスの立ち上がり速度や電圧に大きく影響します。
オリジナルが使っているGI820CTが入手できなかったので手元にあった三種類で試しました。
評価の基準はパルスの立上がりが速く、ピークが高く、発熱が少ない物を最良とした。
| 型式 |
速度 |
高さ |
発熱 |
評価 |
備考 |
| 1N4007 |
遅い |
低い |
少ない |
△ |
オリジナルの波形に最も近い |
| ER504 |
速い |
高い |
凄く多い |
○ |
鋭いパルスだが発熱が大きい |
| 1N5822 |
速い |
高い |
多い |
◎ |
鋭いパルスで発熱も少なめ |
オリジナルで使われているGI826CTはファーストリカバリーダイオードとしては遅くリカバリータイムが
200nsもあるようです。
そのためにパルスの幅が広くピーク電流が小さくなっています。
ER504(ファーストリカバリダイオード)ではリカバリータイムが35nsしかなくオリジナルよりも鋭
いパルスが得られました。
しかしパルスのピーク電流が大きくなるので発熱も増大し80℃にもなりました。
1N5822(ショットキーダイオード)のりカバリータイムは公表されていませんが、ER504と同程度の性能があるようです。
そのうえ順方向電圧損失がER504よりも少ないので発熱も60℃程度に収まりました。
3.パルスの波形
下の写真はPoloでの実験の初期に撮影したものです。(後述) この時期はFETにH7N0308CNを使っていまし
た。
パルスの立上がり時間が200nsほどかかっています。その後、FETを2SK2232に替え半分近くまで短縮されました。
またパルスのピーク電圧は19Vでしたが6時間後には18Vまで下がりました。

4.パルスの幅と周波数
実験当初、ダイオード(D1)とチョークコイル(L1)の発熱が大ききかった。
指先で触れるとアッチッチで火傷しそうだった。赤外線温度計で測ったところ85℃もあった。
FETを駆動するパルスの幅と周波数はクーパー氏の設計と近い50us,1.2KHzだった。
Siダイオードの耐熱性能は素晴らしく6時間の連側運転後も故障する気配はなかったが、
心配で気持ちが悪い。
クーパー氏のデサルフェーターで発熱が、問題にならないのは、
ダイオード(D1:GI826CT)のリカバリータイムが200nsと遅いため
幅が広くピーク電流が少な
いスパイクパルスを発生している為と思われる。
当初の実験で使っていたER504のリカバリータイムは35ns
で
オリジナルに比べ桁違いに速い為にスパイクパルスが鋭く立上がります。
その結果ピーク電流が増えるので発熱が増大しました。
チョークコイルに貯めたエネルギーは同じでも
ピーク電流が2倍になると発熱も2倍になってしまいます。
対処するためにFETを駆動するパルスの幅と周波数を変えました。
デサルフェーターを劣化したバッテリーに接続しオシロスコープで
波形を見て20V程度のピーク電圧になるように駆動パルスの幅を選びました。
その結果、7usに落ち着きました。
高い電圧のスパイクパルスがサルフェーションの溶解を
促進するという考え方もあるようですが、
立ち上がりの鋭いパルスで硫酸塩の結晶を共振させ
揺さぶるのが重要と考えているので電圧は程々で良いとの考えで
20Vにきめましたが、確固たる根拠はありません。
周波数は10KHzが良いとの説が有力ですが、
現在は7.5kHzにしています。
PIC12F683のPWMでは、パルス幅の自由度は大きいのですが
周波数は制約が多い為この値に落ち着きました。
しかし何回も実験したのですが、
このパルス幅と周波数が最適という確証は得られませんでした。
5.評価試験
5-1 実車での実験
愛用している3.2万Kmほど走ったVW Polloで試しました。
古い車ですが故障も無く快調に走ってくれます。
純正のバッテリーは1年半前に交換してから2000kmしか走っていません。
上部に色で状態を示す小窓が在るのですが、健全を意味する明るい緑色です。
いつもセル一発で始動するのでバッテリーが劣化しているという認識はありません。
滅多に乗らないので週に一回は自作したフ
ローティング充電用アダプターで充電しています。
その際に自作したデサルフェータを併用して6時間ほどパルスを加えました。
バッテリーは正常と思っていたので正直なところ効果に期
待してなかったのですが、
◎翌日にエンジンを掛けてみるとセルモーターの回転が速く、始動迄の時間も短く感じました。
◎暖機運転を終えてから動かしてみると発進の瞬間が力強く、従前とは違う感じでした。
これらの結果からデサルフェーターの効果を確信しました。
5-2 廃バッテリーでの再生実験
実車での実験でデサルフェーターの効果を確信したので、
定量的なデーターを収集すべく廃バッテリーで実験しました。
修理工場に御願いしてコテコテにサルフェーションを起こし
使い物にならないバッテリーを貰ってきました。
@能力評価方法(放電持続時間の測定)
13.8Vで満杯に充電し、6.6Ωの抵抗で放電しながら
12.05Vまで電圧が低下する時間を測定した。
12.05Vは75%放電に相当します。
深く放電するとバッテリーの劣化を促進するらしいので程程のところで止めました。
A使用前の能力評価
デサルフェーターの使用前と使用後を比較する為に、
パルスを加える前にバッテリーの能力を測定した。
前述の方法で放電持続時間を測定したところ1時間程だった。
充電-放電を繰り返すと能力が回復するのでは,と考え何度か試みたが、
放電持続時間が延びる事はなかった。
公称40AHのバッテリーなので新品ならば16時間程度は持つはずなのが
1時間程しかもたない。ひどく劣化していた。
B再生実験
実験を始めるとコイルやダイオードの発熱などのトラブルが発生した。
対処するために部品を変えたりパルスの幅や周期を変えるなど試行錯誤を繰り返した。
その結果、放電持続時間は実験前の1時間程から6時間程に延びた。
しかしトラブルに対処し試行錯誤したためにスパイクパルス印加時間と
再生効果の関係を把握するのは失敗してしまった。
現在は実験条件を整え長時間のパルス印加で影響がどのように出るか実験している。
概ね一カ月程度の後に放電試験を行い放電持続時間を測定する予定です。
5-3 長期運転結果
('11,01,16 追記)
作ったデサルフェータを使用して1年半が過ぎました。
故障は無く快調に動いています。
車に組み込んだのではなく、車庫に停めている時にボンネットを開け
鰐口クリップでバッテリーに接続しています。
走るときに外すのを忘れて250kmほど走った事は在りますが、
何も問題は在りませんでした。
しかし走行時のエンジンルームは高温になりそうなので、
今ひとつ耐久力に不安があります。
走っている時間よりも停めている方が圧倒的に長いので
実質的には常時接続に近い状況です。
結果は良好でバッテリーの劣化は微塵も感じません。
エンジンの始動は快調でセルが勢いよく廻り直後に始動します。
キュボンといった感じです。
購入から3年が過ぎたバッテリーですが、新品だった頃と何も変わっていません。
デサルフェータを使う際には、自作した充電器も併用しています。
その結果、常時満杯で劣化が進まないのかデサルフェータの効果なのか判りません。
両方の相乗効果かもしれません。
現在の感触ではエンジンの寿命よりも長持ちしそうです。
バッテリーの劣化を防ぐ目的でデサルフェーターを作ったのですが、
目的は完全に達成しました。
新車のときに取り付ければ廃車まで交換せずに済むでしょう。