PARTY☆NIGHT


誠に残念なことながら、現状を表現するのに『五十歩百歩』ほど適確な言葉もない。

「あの、カナン様」

優美なチャイナフロントのジャケットワンピース。

「その…申し上げ、難いのですが」

赤い裾をボリュームたっぷりに飾るレースパニエ。

「一国の王子が、なさる格好として」

艶やかな金糸を彩るのは薄桃の花飾り。

「お世辞にも相応しいとは…言えないのではないかと……」

目元口元と両頬にうっすら化粧を施された小造りの面。ローズピンクの紅を差した唇が、表情乏しく呟いた。

「…説得力、無いぞ」

白地に金銀の装飾が入った細身のロングチャイナ。大胆なスリットから覗くセレストの素足を、ひるると吹き

こんだ風が空しく撫でた。




一体誰だ。今年の月華祭、責任者を第一王女に任せたチャレンジャーは。




騎士団サイドの準備監督を終え、日課通りカナンの私室を訪れた直後の災難。有無を言わさずとっ捕まって

あれこれ飾り立てられて、引き合わされてみればお互いこれだ。四半刻ほど声をなくしても仕方有るまい。

この喜劇的現場をひとわたり仕立て上げて満足したのか、弟に引けを取らぬご無体ぶりを発揮した姫君は

次なる獲物を求めて去って行った。カナンの嘆息も脱力が色濃い。

「異性装とは…姉上も何というか、思い切られたものだ」

「まったくです…」

お世継やら我が父やらまでも餌食になることを思うと、世の無常を儚みたくなってくる。遠い目をするセレストに、

カナンは何かを堪えるような顔をした。

「まあしかしあれだ、ここは姉上のご慧眼に感謝すべきなのかもしれんな」

「は?」

「…よく、に、似合ってる…ぞ」

「…………アリガトウゴザイマス」

微妙な笑顔で、声と肩とを諸共に震わせながら言われるくらいなら、腹を抱えて大爆笑された方が少しは

マシだったかもしれない。こんな扮装を褒められるのもまた複雑だし、それに……。

(俺なんかより、余程)

透けてしまいそうな白磁の肌を、引き立たせて映える真紅。

雲のように雪のように、重なって清楚なレースの純白。

何より輝かしいのは、ビロードの質感を有する金の髪。彼にだけ許された光の色。

全身で咲き誇る、花の姿。

「…カナン様の、方が」

「え?」

不意に向けられた碧の虹彩に縛られて、

「とても、よくお似合いです」

引き寄せた勢いのまま抱きすくめて、

「本当に、よく…お似合いです……」

「セレスト……」

一瞬にして朱を散らした頬を優しく包んで。

どちらからともなく近づいたくちびるはしかし、




3センチを残して、ぴたりと静止した。




気まずげな沈黙を先に破ったのは、勇敢にも金の王子。

「……あの、な。セレスト」

「はい…」

「何と言うかその……なあ?」

「はい……」

曖昧な指示語と感嘆詞でも了解できたのは、全面的に同感だからだ。優雅で可憐ですこぶる愛らしいカナンは

ともかく、己のこの夜の蝶だか某狩人だかのような扮装で事に及ぶのは抵抗がありすぎる。組み敷かれる側

とて、それはもう覿面に奇異な感覚に陥ることだろう。

「…姉上がお待ちかねだ。行こう」

軽い苦笑と微かな吐息で火種を逃がし、裾の乱れを直したカナンが扉へと足を向ける。その項の白。

吸い寄せられて、気づけばすべらかなそこへ唇を落としていた。

「あ、セレスト……っ?」

「…カナン様。ささやかな提案があるのですが」

「ん……?」

体重を預けてくれる御身が愛しいから。今更ブレーキなんて、かかるわけもないから。

「この、衣装の。一時脱衣を、お許し願えませんか」

「……あ」

思い切り直球で投げた言葉は過たず狙いの場所にヒットしたらしい。悟ったカナンは一息の間にぱあっと

赤面し、俯きながらもごもごと答えた。

「…許可する、が」

ただし、と呟いた唇が、意表をついて振り向きざまに触れる。

「僕の分も一緒に…だぞ」

はにかいながら望みを口にする姿にいとおしさを募らせて、セレストは首肯する代わり、朱色を刷いた目元に

恋情と予告をこめてくちづけた。





君を守る月になる。

君を癒す華になる。




月華の晩に、願いが溶けた。

 

終わりなんだそうです(汗)



・・・頂いた時には我が幸運はもう使い切ったとおもいました・・・(萌倒)
真夜中の携帯メールが、まさかこんな形になって私を悶えさせようとは夢にも思いませんでしたとも・・・(涙)
boyish candyの月見野真殊さんから相互リンク記念に、と頂いてしまいました///
ネタは知る人ぞ知る、うちのトップをしばらく飾っていたチャイナ主従です。
何よりその透明感ですよ王子・・・そして夜の蝶(笑)従者。
2人っきりにされた時の微妙〜な雰囲気、それが甘さに変わる瞬間、カナン様の愛らしさと主君萌えの従者・・・(笑)何をとってもきらきらとステキでビバ月華祭!と誰もが思うことでしょうとも。

お笑いのツボをきちんと押さえつつらぶあまに持って行くその手腕、真殊さんならではでもうもう大好きなのです。めろめろやられ中です。
そしてやっぱり私の為に書いて下さったのー
vvとわかる萌え単語が(・・・笑)v
真殊さーん!ほんとにありがとうございましたー!大好きだー!!(告叫)
20020917.yuz