「さ、ご挨拶なさい」 お声を掛けられると、それまでまったくお姿が見えなかったお方の ふわふわとしたひよこのような御髪が姉君様のスカートの陰からあらわれた。 このお方が。 バターを溶かしたような髪にミルク色の肌、 ふくふくしたほっぺたは、桃。 黙ったまま、おずおずとこちらを見上げられる眼は 空のいちばん高いところの色。 「カナン?」 促されて、ぷにぷにしたちいさな御手が 姉君様のスカートの裾をきゅ、と握られる。 楽園、という御名を持つ王子様。 「はじめまして、カナン王子殿下。セレスト・アーヴィングと申します」 名乗ると、空の色が濃くなった気がした。 「…そら」 「はい?」 たどたどしく言われたお言葉。 「そらの、なまえ。せれすと」 そう仰って、はにかむご様子を見せた。 そのまま姉君様のスカートに、顔を隠してしまわれる。 このお方が今日から、俺の王子様。