拗ねてしまって、くるりと後ろを向いてしまわれたカナン様の様子がひどくお可愛らしい。
だからといって、ここで笑ってはいけないのだ。
朱色になってしまった、常には色白の項や耳朶や、少し長めのお服の袖から覗く握り込まれた手や。
後ろを向かれているので見えないけれど、想像に難くない噛み締められたくちびると、少し膨らされた頬と。
そんなご様子に口元が緩んで仕方ないけれど、笑ってはいけない。
ここでちょっぷを食らうと、タイミングを逃してしまう。
それを量るのは少し、難しい。
こうなってしまったら、陳腐な言葉で何を伝えようが聞いては下さらない。
だから。
そっと近付いて、後ろから包むように軽く抱き締めた。
ぴく、とした一瞬の強張りを俺に悟らせないように平静を保たれようとする様がまた微笑ましいが、我慢をする。
逃げようとは、なさらない。良かった。・・・もう大丈夫。
腰から前に回した手を組んで、馨しい金糸に顔を埋めた。
「・・・怒って、しまわれましたか?」
「べつに、・・・怒ってなどいない」
「では、・・・こちらを向いて、下さいますか?」
「やだ」
・・・やだって・・・。これは、多分赤いお顔を見られたくないからなんだろう。
しかしそれでそうですか、と引き下がっては、ますますタイミングを逃してしまう。
「カナン様」
「や」
後ろからそっと覗き込むと、反対側にお顔を逸らされる。
その反対側から回り込めば、今度は逆方向へ逸らされる。
ううむ。どうしよう。
このまま堂堂巡りをしていては、朝になってしまう。
俺も木石ではないから、ここまで来て何事も無く爽やかな朝を迎えられるとは到底思わない。
少し考えて目の前、張りのある瑞々しい首筋に唇を落した。軽く歯を立てる。途端に強くなる柑橘の甘い香りに、目眩。
「・・・っ!」
凄い勢いで振り向かれた。
俺に噛まれた首筋を手で押さえて、更にお顔を赤くされる。
「ばっ・・・ば、ば・・・」
ぱくぱくと、言葉を失われた可愛いひとへ、会心の笑みが浮ぶ。
「あ。やっとこちらを向いて下さいましたね」
「馬鹿者っ!」
顔面に会心の一撃。
・・・・・・。
失敗した。
どうにも俺は、詰めが甘いらしい。