横たわって投げ出した腕の内側を、背後から伸びてきた手に触られる。極力刺激を与えないよう、軟らかく撫でるようなその動きはどうやらこちらが眠っていると思っているらしい。少し硬めの長い指、綺麗に切られた爪の先、指の腹で味わうようにして二の腕から肘にかけてをゆっくりと辿り、掌で温みを分ける。
ぼんやりと薄目を開けて見られているとも知らず、まるで蝸牛のように冷えた箇所を探してとろとろと手首の方へ移動してゆく。
手探りで腕を辿るその指が先へ進むにつれ徐々に相手の晒された腕が露になってゆき、それが意外と逞しいことを知った。
つるりとして生白い己の腕とは対照的、むしろ霄壤の差と言うべきか、無駄なく引き締まった腕が愛しげに触れてくる、その事に対して恥じたいような誇りたいような、奇妙な心持ちがした。
そして手首にまで辿り着いた暖かい手は、その感触を確かめるように骨の上から一旦軽くきゅっと握る。こちらが動かないのをいいことに、親指で動脈を圧迫して血流を止めてみたり、こりこりと骨の角を押してみたり、握り込んだ手首ごとシーツに少し押し付けてみたりしている。いい大人が、何を戯れているというのか。
「ぅ、・・・ん」
眠気にまかせてむずかってやると慌てたように悪戯を止め、しばらくじっと様子を窺った後にまた恐る恐る手首から移動を始める。掌の上をそろそろと指先で辿られた時はさすがに擽ったかったけれど、我慢をした。
やがて掌が重なり指が合い、絡めるようにして繋がれる。ただ一方的に弄られる心地とはまったく違う、去来するものは安心感。
「・・・」
寝惚けたふりをして枕を抱くように繋いだ指を抱え込んだ。半分目覚めてはいたものの眠気は本当だったから、今夜はこのまま眠ってしまおうと抱き締めた彼の指に寝息を吹きかける。
しばらく途惑うように硬直していた腕も、それで観念したようだ。背中の温もりから伝わる苦笑の気配。夜気に晒された肩に、くちびるの感触。
おやすみなさい、と無言で伝えられて
穏やかに夜が終わった。