「酒の肴王国 富山を考える」 担当 神保


始めに
富山を離れて15年、つくづく富山は酒の肴ということに関しては、
相当恵まれた環境であるということを再認識しております。

かわきもの編 第一回

塩イカ

富山には「塩イカ」という食べ物がある。 簡単に言えばイカの干物である。 しかし、いわゆるスルメと比べかなり生っぽい。 このニュアンスを文章で伝えることは難しい。 あえて言うなら、スルメはイカのミイラであるのに対し、 塩イカはイカのゾンビである。 塩イカも、結構塩分はきつく、かなりの間保存もできる。 この塩分はゾンビに張られた「おふだ」なのではないか。 熱を与えることにより、この「おふだ」の封印が解かれる。 すると、塩イカは現世に再び甦り、イカであった時代を思い出す。 そして一瞬甦った塩イカがまだぷりぷりとしている間にをすかさず食う。 立山の2級酒の熱燗が近くにあれば、いうことはないだろう。
かわきもの編 第二回

ひイカ

「塩イカ」ときたら「ひイカ」である。 やはりこれもイカの干物である。 「ひイカ」はたぶん「干イカ」だと思われる。 実は、富山西部地方で一般的に「ひイカ」という呼称が使われているのかどうか、 富山を離れて久しい神保には分からない。 しかし神保家ではヒイカなのである。 「ひイカ」は十分乾燥することで「塩イカ」との差別化を計っている。 「ひイカ」は決して熱を加えてもゾンビにはならない。 枯れた面もちを崩すことなく、「ワシはひイカなのじゃ。」と静観を 決め込んでいる。 全国的に売られているスルメと比べるとかなり肉厚である。 うちの親父が昔いった言葉によると 「ひイカは日本のチューインガムなのだ」そうだ。 全国的スルメの食感が、「しゃぶる」という感じであるのに対し、 ひイカの食感は、関西弁でいうところの「しがむ」である。 しがんでもしがんでも「ワシはひイカなのじゃ。」と静観を崩さないところが ひイカの偉いところだと思う。 かといって本物のチューインガムを食いながら、酒を飲むのは避けたい と思う今日この頃である。
第三回

はべん

はべんとは富山弁で富山地方の蒲鉾のことである。 富山のはべんは板についておらず、だいたいは自力でとぐろを巻いている。 幼少の頃不思議であったのは、児童向けのテレビ番組で、 「かまぼこの板を利用した工作」というのが、数多く取り上げられていた ことである。 かまぼこがはべんのことであるのは幼いながらも、知っていたと思う。 しかし、板に着いたはべんは見たことがなかった。 当時から、クラフトマニアだった神保にとっては板が付いていないために 工作に利用できないはべんがちょっとくやしかった。 そういうわけで、はべんは主にとぐろを巻いているわけだが、 この構造をイメージするにはロールカステラを思い浮かべていただきたい。 表面を茶色く焦がしたスポンジケーキを巻き込んでいくことで、 この茶色の部分がとぐろを形成する。 はべんの場合は、2周少しで完結する力強いとぐろである。 とぐろはべんのうち、二大勢力は赤巻種と黒巻種。 赤巻種はとぐろ模様の目立つ部分には食紅を使っており、 言ってみればどこでも全部魚肉、はべん純血種として存在する。 黒巻種は昆布によりとぐろ模様を形成しており、魚肉昆布異種混在型の構造を なしている。 他にはべんとしては、結婚式の引き出物として配られる「鯛種」をはじめとした 飾りもの一族、とぐろを巻いたり巻かなかったりする黄色一族がある。、 ただ、味の方はどの一族に属するかはあまり関連がないようである。 味の方で特筆すべきは、軽くあぶったときのふくらみ具合のような気がする。 全国的にはかまぼこは基本的に生で食うものであって、 火であぶるのは邪道なのではあるまいか? ということで、神保ははべんをかるくあぶって食うのが好きである。
第四回

かぶらずし

かぶらずしを説明するのは難しい。 かぶら(蕪)を使用しているのは間違いない。 かぶらずしなのだから。 しかしあまり寿司とは似ていない。 かぶらずしなのに。 食感はぬるぬるしながら、しゃきしゃきしている。 知らない人には、謎は深まる一方だと思う。 こういうときは製法を述べればよいのだが、よく口にした割には製法は知らない。 ますます謎は深まっていく。 材料くらいは分かる。 かぶらと、ブリあるいは鯖と、米粒と、人参の細切りである。 これだけでは知らない人には、絶対に分りようがない。 味は「なれ寿司」に似ていると思う。 酸っぱいようで甘みがある。 基本的に以下の役割がある。 「ぬるぬる」=魚+米粒の連合軍 「しゃりしゃり」=かぶら 「単なるいろどり」=人参の赤 以下は神保の私感である。 実験して試したわけではないので、失敗しても責任は負わない。 なんとなくそう思うだけである。 また、実に気持ちの悪そうな食べ物のような気がしても知らない。 「簡易的かぶらずしもどきの作成方法」 材料:京都の千枚漬け、鯖の押し寿司、刺身のつまの人参 作成方法: ・鯖の押し寿司のご飯の部分を1/5程度だけ残し、後は全部食ってしまう。 ・残った部分をもみしごき、ぬるぬるになるよう願う。 ・それを上下から千枚漬けでサンドする。 ・刺身のつまの人参をふりかける。 これではどう考えてもうまそうには思えない。 諸先生方のフォローを期待する。 また本物のかぶらずしを食ってみることをおすすめする。 神保のホームへ