LANケーブルの作り方

最近では家庭内LANも珍しくなくなってきました。配線の手軽さから無線LANが好まれる事もありますが、基幹部分や据え置きのパソコンには基本的に有線ケーブルを使った方が有利です。
このLANケーブル、パソコンショップで1m、3m、5mと様々な長さの完成品を売っていますが、極めて短いケーブルが欲しいとか丁度ぴったりの長さが欲しい等には対応できません。そんなときには自作することが可能です。自作の場合、必要な長さを必要な本数、無駄なく作ることが可能です。
「LANケーブル」と一口に言っても、物理的には実は様々な種類があります。同軸ケーブルを使うもの、光ファイバを使うもの、銅線を使うもの…。今回はその中から現在パソコンへの接続で最も一般的に使用される10-BASET/100BASE-TX用RJ45ツイストペアケーブルの作り方を説明します。

LANケーブルの種類

まず、LANケーブルとして使われるケーブルの種類を簡単に紹介しておきましょう。

●同軸ケーブル
 同軸ケーブルとは、伝送用の導体を絶縁体で囲み、その外側を被覆したケーブルです。最も馴染みが深いのは、テレビのアンテナ用に使われる同軸ケーブルでしょう。物理的強度があり外界からの電磁気雑音にも強いため、かつてはLANの基幹部分にもパソコンへの接続用としても多く使われていました。ただ、配線の作業性の悪さ(硬くて曲げ難い)やレイアウト変更に対して柔軟に対応できない(ケーブルを数珠繋ぎ状に配線する必要がある)等の問題から、後に登場するツイストペアケーブルに主役の座を譲っています。
 採用する主な通信規格:10BASE5、10BASE2、1000BASE-CX


●ツイストペアケーブル
 ツイストペアケーブルとは、細い銅線をポリエチレンで被覆し、撚り合わせたものです。簡単に作成でき配線も容易なことから現在では広く使われていますが、同軸ケーブルに比べると外界雑音に弱い(漏話しやすい)という特徴があります。
 ツイストペアケーブルでも、導体の周りを同軸ケーブルのようにシールドしたSTP(ShieldedTwistedPairCable)と、シールドの無いUTP(UnshieldedTwistedPairCable)の2種類があります。多く使われているのはシールドされていないUTPで、今回のケーブル作成もUTPで行います。
 採用する主な通信規格:10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T


●光ファイバケーブル
 光ファイバケーブルとは、石英若しくはプラスチックで出来たケーブルに光を入射し、透明なケーブルの中を光が伝播することで信号を伝送する物理媒体です。方式にもよりますが、銅線を用いたケーブルよりも大容量通信が可能として脚光を浴びています。近年では銅線を使用した高速通信であるDSL方式の台頭により、一般家庭のアクセス回線としては普及の遅れを心配する声があります。
 採用する主な通信規格:100BASE-FX、1000BASE-SX、1000BASE-LX


●無線
 ケーブル、ではありませんが、伝送路のひとつとして取り上げます。
LANでは「無線LAN」として使われ、2.4GHz帯(ISMバンド)や5GHz帯が使われます。
 使われる主なプロトコル:802.11(2Mbps)、802.11a(54Mbps)、802.11b(11Mbps)、802.11g(54Mbps)


用意するもの

10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T用のLANケーブルを自作するためには、以下の工具や部材を揃える必要があります。
ただ、「10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T対応LANケーブル」と毎回書くのは長すぎるため、省略して以下「LANケーブル」で話を進めます

1.ツイストペアケーブル
ツイストペアケーブルとは、その名が示すとおり2本のケーブルを撚り合わせて1ペアとした形状のものを指します。こうすることにより、単純に2本のケーブルを平行に引いたときよりも外界からのノイズ耐性が高くなります。LANケーブルでは、4ペア8芯タイプのツイストペアケーブルが主に使われます。
ただ、一口にツイストペアケーブルと言っても様々な種類があり、用途によって適切なケーブルを選択する必要があります。

まず、ケーブルの心線の種類には2種類、単線(たんせん)タイプと撚り線(よりせん)タイプがあります。撚り線は単線よりも柔らかく、配線の引き回しに優れています。一般的に店頭で売られているLANケーブルの場合、大多数が撚り線です。

次に、シールド被覆の有無で2種類、STPとUPTという違いがあります。STPは前途の通りツイストペア線がシールドされており、外界からのノイズ耐性がUTPに比べて高くなります。

最後に、ケーブルの性能(周波数特性)によってケーブルのグレードがクラス分けされています。
グレードは「カテゴリ○」と表記され、数字が大きくなるほど高速伝送にも耐えるケーブルとなっています。
カテゴリ3はかつて10BASE-Tの時代に主に使われました。その後100BASE-TXが登場し、これに対応できるグレードとしてカテゴリ5が定義されました。さらに、より周波数特性を向上させたエンハンスド・カテゴリ5(Cat5eと表記することもある)が登場し、100BASE-TXや1000BASE-Tに使用されています。2004年現在市販されている中で最も高特性なものはカテゴリ6準拠のケーブルですが、個人が家庭内用に自作するレベルではそこまでの性能は必要とされません。

以上、ツイストペアでLANケーブルを作成するときはこれら5つの属性(単線/撚り線/UTP/STP/カテゴリ)の中から適切な性能を持ったケーブルを選択しなければなりません。
勿論どれを使用してもLANケーブルは作成出来ますが、個人が簡単に作りたいというレベルであれば、ケーブル・工具等の入手性や値段を考え、「単線/UTP/カテゴリ5以上」のケーブルを選択すると良いでしょう。
価格は、「単線/UTP/カテゴリ5e」で1mあたり大体40円程度です。

2.モジュラープラグ
LANケーブルの両端に取り付けるプラグも用意する必要があります。これも、単線用と撚り線用、STP用とUTP用などがありますのでケーブルと合わせて購入します。色々と種類がありますが、LANケーブルで使用するのは「RJ-45」という種別のものになります。
大体1個あたり70円〜120円くらいです。

3.圧着工具
ツイストペアケーブルとRJ-45モジュラープラグをかしめ、接続するための専用工具です。他の工具での代用は効きません。
業務にも使えるレベルの圧着工具ともなると1万〜2万円は下りませんが、個人が家庭内用に数本作るレベルであれば、たとえばELECOMのLD-KKTA2という製品の場合、5000円未満で購入することが可能です。

4.ケーブルテスタ
ケーブルテスタとは、LANケーブルが正しい性能を有しているかをチェックする機械です。業務用の高性能なものともなると、1台50万円〜200万円近くまでとかなり高価な機械となります。これら高性能なケーブルテスターは、単にケーブルの導通チェックを行うのみならず、作成したケーブルの高周波特性調査やツイストペアのペア誤り検出等の機能も備えています。
ただ、個人がそんなものを買えるわけもありませんので(高価なケーブルテスタを買うくらいなら、業務用にも使えるしっかりした圧着工具を買った方がいい)、一般的には単に導通チェックを行うだけの、5000円程度の製品を買うことになります。
「結線を間違ったりなんてしないからケーブルテスターなんて不要」と思われる方もあろうかと思いますが、ツイストペアケーブルをモジュラープラグに挿入する段階で、心線の並び(順番)が狂ってしまうことはよくあります。そんなときケーブルテスターが無いと、結線誤りをすぐに見つけることが出来ず時間や手間を無駄にします。

5.ニッパー、6.カッター
ニッパーはツイストペアケーブルを目的の長さに切断するために、カッターはツイストペアケーブルの被覆を剥くために使用します。
これらを行うケーブルストリッパーという専用工具も数千円で市販されてはいますが、あまり精度が良くなく心線に傷を付けてしまうことが多いことから、個人的には信用していません。ただ、もしあまりケーブル加工に自信がなければ、使用しても良いかと思います。

結線

LANケーブルの結線には2種類、「ストレートケーブル」と「クロスケーブル」があります。
ストレートケーブルはHUBとパソコン、HUBとADSLモデムなどを接続する場合に使用します。クロスケーブルは、パソコンとパソコンをダイレクトに繋ぎたいときや、HUBを多段接続する時のみ使用します(但し最近のHUBは、多段接続時にもストレートケーブルで接続可能な製品が一般的です)。
現在はストレートケーブルがあれば問題ない環境になってきていますので、クロスケーブルを作成するのはごくまれでしょう。

結線の前に、RJ-45モジュラープラグのピン番号を確認しておきます。
左の写真のように、プラグの爪のないほう、端子が見えている方を手前にし、左から1番と数えます。


結線方法には2方式あり、それぞれ「TIA/EIA568A」と「TIA/EIA568B」と呼ばれます。この2方式は、ペアの配置が違うだけで、電気的なペアの接続は同一です。ここでは、一般的に多く使われる後者のTIA/EIA568Bの結線方法を採用します。

左図は、その568B方式でのストレートケーブル、クロスケーブルの結線図です。
4つのペアのうち、10BASE-Tと100BASE-TXでは、実は2ペアしか使われていません(図の送信+等と書いてある箇所)。1000BASE-Tでは4ペア全てが使われます。

クロスケーブルは、ストレートケーブルの片方の結線を一部入れ替えたものです。パソコン同士を直接接続する事を考えたとき、ストレートケーブルで接続してしまうと送信同士・受信同士を繋いでしまうことになり、データが送受信できません。
そこでケーブルの片方のみ、送信と受信を入れ替える目的で1番と3番・2番と6番を入れ替えます。


作業

まず、ツイストペアケーブル外部の被覆を取り除きます。取り除く長さは、作業になれていれば2cm程度、不慣れなら3〜4cm程度あればいいでしょう。


次に、RJ-45モジュラプラグにはめるために撚られている線を真っ直ぐに延ばし、順番通りに整えます。
何も考えないで真っ直ぐに延ばして順番に整えようとしてもうまくいかない事があるので、まず写真のように十字に分けます。十字に分けますが、その時にも、モジュラプラグに差し込む色の順番を意識して、「橙のペア、緑のペア、青のペア、茶のペア」の順に時計回りに配置するといいでしょう。

そして、モジュラプラグに差し込む色の順番で、ケーブルを真っ直ぐに直し、その都度並べていけば綺麗にいきます。
最初は「白橙・橙」なので橙のペアをバラし、左から白橙・橙の並びにします。

ペアを真っ直ぐにするときは、被覆の内側5mmくらいまでを真っ直ぐにするつもりで作業をすると綺麗になります。


次は「白緑」なので、緑のペアをバラし、白緑を橙の隣とします。
そして「青・白青」をバラし、白緑と緑の間に順番通りに並べます。


最後は「白茶・茶」をバラし、結線順に整えます。
色の順番を整えた後、被覆の端を左手の親指・人差し指で押さえ、ケーブルの端部を右手の親指・人差し指で押さえ、その状態で左右に揺らすように動かすと、ケーブルにかかった癖が取れて真っ直ぐになります。

ケーブルが素直になったら、モジュラープラグに差し込むために必要な被覆から2cmを残して、先端を切断します。
このとき、少し手でケーブルを持ち替えたくらいでケーブルの順番が狂ってしまうようであれば、まだケーブルに癖が残っている証拠です。被覆の端とケーブル端部を硬く押さえて前後左右に揺らし無用なテンションを取るか、被覆内部数ミリまで真っ直ぐになっているか確認してください。


ケーブルの順番が狂わないように気を付けて、ケーブルをモジュラープラグに強く差し込みます。
このとき、確実にケーブル端部がモジュラープラグの前端に達しているかを確認してください。中途半端にしか差し込まれていないと、接触不良で通信エラーの原因となります。
また、ケーブルの被覆も、モジュラープラグの奥まで差し込まれているか確認してください。モジュラープラグを真横から見ると判りやすいと思います。これは、ケーブルとモジュラープラグとの物理的接合を、主にこの被覆端部のかしめで行うためです。


ケーブルをモジュラープラグに強く押し込んだまま、圧着工具に装填します。
圧着工具にプラグを装填したら、ケーブルの被覆も強くモジュラープラグに押し込みながら圧着してください。強く押しながらでないと、被覆がモジュラープラグから抜けることがあります。


圧着が終わったら、被覆がきちんと差し込まれているか、ケーブル端部はきちんとモジュラープラグ前端まで達しているかどうかを目視で確認します。もし不適切なら、モジュラープラグの根本でケーブルを切断し、やり直しです。


最後にケーブルテスターで、結線が正常かチェックします。


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