PlayStation ピックアップ復活計画

1994年に次世代32bitマシーンとして登場したPlayStationですが、初期型となるSCPH-1000番では既に発売から5年近く経過しておりCD-ROMを読みにくい状態となっている本体も多いことと思います。そのような本体の対策として、本体を横にしてみたり逆さまにしてみたりすると起動するという話を良く聞きます。実際我が家の3500番でもその症状になりまして、これはもう寿命かと思っていたところピックアップの復活に成功しましたのでそのやり方を紹介します。
但し、ここで復活できる可能性があるのは電源スイッチの側を下にして立てた時には動く本体です。どの向きに立ててもひっくり返しても既に読まなくなっている場合には今回の修理の範囲を超えている可能性があるので直らないかもしれません。

もはや言うまでも無いくらい当たり前なことですが、以下に説明する修理を施したうえで発生した如何なる事象も当方は関知いたしません。自己の責任の元、行って下さい。


分解
PlayStationのCD-ROM読み取り速度は最高2倍速です。もう少し高速なものにすればゲームも快適かとは思いますが、初代SCPH-1000番が発売された1994年当時はパソコンですらCD-ROM実装率は50%程度、読み込み速度は4倍速が普通という時代でしたので致し方ないでしょう。
レーザーピックアップ部は代を経るごとにバージョンが変わっています。ピックアップ部の裏を見るとシールが貼ってあり、初代1000番では「KSM-440AAM」が、3500番は「KSM-440ACM」が、5500番は「KSM-440ADM」が採用されています。そのほかの代では残念ながら私は開けたことがないので解りません。可能ならば後期のピックアップを使ったほうが快適に動作するかと思います。

さて、実際に分解していきます。まず、ピックアップ部を指で外周方向に移動させて下さい。強引に強く引けばずれると思います。
次にモーター側にある2カ所のネジを精密ドライバーで外します。
そしてユニット下部を持ち、上蓋をCD-ROM外周方向に引いてずらし、外します。このとき、上蓋とピックアップから伸びているケーブルが両面テープで張り付けられているので強引に強く引っぱらないようにして下さい。が、両面テープは邪魔なので取ってしまいます。


次にピックアップ部を取り外します。これはいきなり見ただけでは外し方が解らないと思いますので順を追って説明します。

(1)まず、ピックアップ部を外周方向へ最大までずらします。
(2)ピックアップ部に白い平面ギアがありますので、真ん中を押さえてこれの両端を持ち上げる感じにして約2mm引きます。完全に引きますと、この白い平面ギアは持ち上げれば取れます。
(3)ピックアップ部も続いて上に持ち上げれば取れます。この写真には写っていませんが反対側が支点となっていますので、ギアの方を弧を描くように持ち上げて下さい。
(4)CD-ROMユニットを裏返します。次の5番で外すギアが止まっていますので、ニッパーやピンセット等で両側から挟み、そのまま下に押し込んで外して下さい。
(5)このギアを外します。
(6)このギアは持ち上げるだけで外れます。

組み立てるときはこの逆にします。


さて、外した6番ギアの真下が問題の部分になります。ここには棒状のバネがあり、常にギアを噛み合うように押しつける役割を担っています。が、ここが弱ってくると本体をひっくり返さないと動かない、というような状態になるわけです。
動作を観察するとわかりますが、このバネが弱っている事により都合が悪いのはピックアップ部が外周に行こうとする場合です。内周に行こうとする場合にはこのバネが無くても回転方向の関係でギアは正常に噛み合います。
本体をひっくり返したり立てると動作する、というのはこの弱ったバネの役割を重力によって肩代わりさせるためです。ピックアップ外周部が下になるようにCD-ROMユニットを傾けますと、ピックアップ部は重力の影響で外周方向に引っぱられます。このため、6番のギアにはバネで押さえつけられたような方向に力が常にかかることになり正常に噛み合うという訳です。

左の写真を見るとわかりますが、バネが曲がっていることがわかります。このため、本来の戻る力が働かないためギアが空回り気味となります。空回り気味となることによりピックアップ部が固定されないため、モーター等の振動の影響を受けることとなりCD-ROMを読まなくなるわけです。


弱ったバネを外します。ピンセットでつまみ、写真手前方向に一度引いてから上に持ち上げて外します。

先程の続きですが、このバネが正常でない時には音を聞いてもわかります。ピックアップ部が内周方向へ行く場合には普通にギアが噛み合ってる静かな音がするのですが、外周方向へ行こうとする場合にはギアが噛み合ってないような、グリスを塗り忘れたような煩いギーギー音がします。そしてその音は本体を電源スイッチの方を下にして立てると静かになり、正常に読むようになります。

逆に言うと、別に煩い音もしないしバネもちゃんと曲がってないでまっすぐである場合には問題はここではなくピックアップ部の問題、若しくはレーザーの調整の問題であると言えます。ピックアップ部がおかしい場合には基本的にもうどうにもなりません。


交換するバネは長さが13mm以上あるものを選んで下さい。カセットデッキやビデオデッキを分解すると写真のようなバネが見つかるかと思います。抵抗の足やスズメッキ線はただの針金で弾性がありませんので使えません。

新しいバネを入れたら、分解したときと逆の手順で組み立てます。その際、可能ならばグリスをギアや可動部に塗っておきましょう。回転がなめらかになると同時に、不要な振動を吸収する効果もあります。

場合によってはバネを2本入れて強化するのもいいでしょう。ただそうした場合には音楽CDを聞いたときなど特定の円周部で音飛びする可能性があります。



調整
場合によってはCD-ROMドライブユニットを調整した事によってレーザーパワーの調整を行う必要があるかもしれません。その場合の手順を説明します。但し、以下に説明する調整は一つ間違うと二度とディスクを読み込まなくなる危険性もあります。必ず事前に可変抵抗器の初期位置をマジック等で書いておいて下さい。

基本的にはマザーボード上にある2つの可変抵抗で調整します。但し、5500番以降はこの調整用可変抵抗そのものが存在しないため調整は不可能です。

二つあるうちのBIASと書いてあるほうを調整します。必ず初期位置を覚えておいて下さい。まずCD-ROMで一定速度で回転するような状況を作ります。例えば音楽用CDを再生するのでも良いですし、数分あるようなオープニングムービーでも構いません。そして、このときピックアップ部からする「シャー」という音に注目します。耳を近づけ、その音を聞きながらBIASの可変抵抗を少し回してみて下さい。どちらの方向にも回しすぎると「シャー」が大きくなり、しまいには読み取りを失敗してしまいます。この「シャー」という音が一番小さくなる位置が最適なポイントです。いずれにせよ初期位置から半回転以上回す必要はありません。

GAINのほうは基本的に触る必要はありません。


実はCD-ROMユニットの所にも可変抵抗があります。これもマザーボード上のGAINと同じ効果となります。通常は触る必要はありません。

この2つの写真は我が家の動作状態を示したものです。矢印の方向が可変抵抗が向いている方向です。もし触った結果初期位置を忘れてしまったとか全く読まなくなったとかいう場合にはこの写真の位置に合わせてみて下さい。
本当はオシロスコープで読んだ波形を見ながら調整するのが一番良いんですが…オシロスコープを持っている人など普通は居ないだろうと思うし、持っている位の人なら説明の必要も無いかと思いますのでその方法は取りあげません。


さて、その可変抵抗の調整の意味をおおまかに説明します。

マザーボード上のBIAS可変抵抗は、CD-ROMから読みとる信号の時間軸方向の同期を調整します。CD-R等でバックアップした音楽CDが再生できない等という場合にはこの調整が重要となります。

マザーボードとCD-ROMユニット部にあるGAIN可変抵抗は、読みとった信号の振幅方向の調整となります。CD-ROMユニット部の可変抵抗はピックアップの読み取り強度を調整し、マザーボード上の可変抵抗は制御IC側の読み取り強度の調整となります。やってみるとわかりますが、このGAINは読み取り波形を大きくする方向(時計回り方向)に調整しても基本的に読み取りには影響しない事が解ります。どうしてもBIASだけでは読まないと言うときにのみ触ってみて下さい。


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