L.A.コンフィデンシャル L.A.Confidential

出演:ラッセル・クロウ=ウェンデル・”バド”・ホワイト ガイ・ピアース=エド・エクスリー ケビン・スペーシー=ジャック・ヴィンセンス キム・ベイシンガー=リン・ブラッケン

さてさて、「L.A.コンフィデンシャル」の感想ですが…「まとまったら書きます」なんて言ってから早10ヶ月。こんなに長く放っとくつもりはなかったのですが、書き直すきっかけもないまま忘れておりました。

今回改めて書く気になったのは、ふと入った本屋で「名作映画完全セリフ集:L.A.コンフィデンシャル」(スクリーンプレイ出版)という本を衝動買いしたせいです。この本にはLACのシナリオが全部、対訳・解説つきで採録されているます。面白いもので、活字でセリフを読んでいると、映画を観ている時とはまた違って、読みながらいろんなことを考えてしまうのですよね。

そこで今回は、バドのセリフをピックアップしてそれに私の駄文を加えるという形で、感想(と言うよりもはや、「LACの謎〜LACに関する、どうでもいい話」という趣ですが)を書いてみたいと思います。あいかわらずまとまりませんので、何回かに分けますが。何回になるかは未定です。すみません。

1. What do you want?

バド:"What do you want?"「何の御用ですか?」あるいは、「さっさと用件を言え。」

シーン:「血のクリスマス」事件の後、停職処分になっていたバドを上司のダドリー・スミス警部が呼び出す。なかなか用件に入らない警部に対し、バドは短気に"What do you want?(用件は何ですか?)と繰り返す。

「L.A.コンフィデンシャル」「インサイダー」、そして「グラディエーター」。この3本はラッセル・クロウの代表作と言っていいと思いますが、この3本の映画には比較すると面白い点がいろいろあります。その内のひとつが、『主人公(ラッセルの役)が、上司などの立場が上の人物に呼び出される』というシーンがあることです。

「LAC」ではこのシーン、「インサイダー」ではワイガンド博士がタバコ会社の経営陣に呼び出されるシーン、「グラ」では二つ、(1)ゲルマニア戦の後でマルクス・アウレリウス皇帝にテントに呼ばれる (2)剣闘士になってから、プロキシモに部屋に呼び出される−という4つのシーンです。

この4つのシーンは、(a)主人公が、何の用なのか分からずに呼び出されている (b)そこでの会話が主人公のその後の運命に大きな影響を与える−という点で共通しているのですが、何より、(c)呼び出した方が主人公をいろいろと誉める(あるいは、皮肉を言う)が、主人公はそれを無視して「早く用件に入れ」という態度−という点が最大の共通点です。

相手がとっても尊敬している皇帝でも、それなりに尊敬している警部でも、まるで尊敬していないプロキシモやかなり軽蔑しているタバコ会社重役でも、「そっちが呼び出しておいてぐちゃぐちゃ言うな、さっさと用件に入れ」というところは同じ(さすがに態度の丁寧さには違いがありますが)というところに、この三人の性格の根底にある共通点が垣間見えて、興味深いです。


2. In Technicolor

警部:"Do you follow my drift?"「私の言っていることがわかるか?」
バド:"In Technicolor,Sir."「テクニカラーで。(はっきりわかりました。)」

シーン:1と同じシーン。バドにこれからの「特別な任務」を説明し終わった警部が、わかったかどうか確認する。

Technicolor(テクニカラー)というのは、年季の入った映画ファンならよくご存知だと思いますが、40年代〜50年代の映画によく使われていた映画のカラープリントの方式です。技術的なことは全然わからないのですが、「テクニカラー」の映画の色というのは、とにかくキレイです。現在の映画のリアリスティックな色あいとは違って、歯は真っ白、肌はピンク、って感じで、いかにもハリウッドの夢の世界にふさわしい色合いなのでした。「テクニカラー」には、俗語(当時の流行語?)で、「鮮明に」「きっぱりはっきりと」という意味もあったようです。ハリウッド映画ですらまだモノクロの方が多くかったこの時代(バドとリンがデートで見た「ローマの休日」もモノクロですね)、「テクニカラー」というのは新しくて豪華な感じのする言葉だったんでしょう。でも、このセリフを言ったときのバドはいつもの仏頂面で、こんなお茶目な言い方をしているとは思えないですけどね。


3. Ignorant Bastard

エド:"How's it gonna look in your report?"
「報告書にはどういう風に書くつもりだ?」
バド:"It looks like justice. That's what the man got. Justice."
「『正義が行われた』と書くさ。あの男には正義が下ったんだ。」
エド:"You don't know the meaning of the word,you ignorant bastard."
「『正義』の意味も知らんくせに。この無知なばか野郎が。」
バド:"Yeah, well you think it means getting your picture in the paper. Why don't you go after criminals for a change instead of cops."
「ああ、お前は『正義』ってのは新聞に写真が載る事だと思っているんだろう。たまには警官の代わりに犯罪者を追いかけてみたらどうだ。」
エド:"Stensland got what he deserved, and so will you."
「ステンズランドは当然の報いを受けた。お前もいずれ受ける。」

シーン:「ナイト・アウル虐殺事件」の容疑者として逮捕された黒人少年グループが、メキシコ人女性をレイプし、監禁していると自白、警察が現場に駆けつける。単身乗り込んだバドは現場にいた少年を射殺。…救急車で運ばれる被害者に事情聴取しようとするエドに、バドは怒る。エドはバドが犯人を射殺した状況を不審に思っている。

今更言うまでもない事ですが、「LAC」の脚本は、読めば読むほど見事です。あの長い小説を実に手際良く2時間の映画にまとめ、ストーリーやキャラクター設定をかなり変えながら原作を損なわず、そのスピリットを随所に感じさせてくれます。特に素晴らしいのが、限られたセリフの中で、主役である刑事たちの性格が見事に描写されている点です。このシーンの会話は、とりわけ濃いです。

このシーン、全てのセリフにバドとエドの性格がべた一面に表れています。特に、正義というモノに対するそれぞれ違った方向にヒネクレた、対照的な考え方が表れていて面白いんですが…細かく解説するのもうるさいかと思いますので、敢えてひとつだけ。

バド・ホワイトはエド・エクスリーに、

"You ignorant bastard"(※ignorant=無知な、無学な、馬鹿な bastard=「このヤロー」という位の意味の罵言。けっこうヒドい言い方。)

…と言われても冷静を保っていた…少なくとも、キレはしていなかったのですが、

"Stensland got what he deserved..."(ステンズランドは当然の報いを受けた…)

…云々、と死んだ相棒の事を言われると、とたんに激怒してエドに掴みかかって行きます。

「ナイト・アウル事件」で殺されたバドの相棒のステンズランド。この人、映画ではあまり背景が描かれていないのですが、原作では、新人刑事のバドとコンビを組み「世話係から教師の役目まで引き受けて」彼を一人前の刑事に育ててくれた人、となっています。父親が母親を殴り殺すのを目撃して以来悪夢に悩まされ続けているバドに、「父親のかわりに暴力亭主どもに復讐しろ」とすすめたのも彼。警官としてはどうやら無能だった彼ですが、バドは恩義と絆を感じているんですね。

…で、つまり…

何が言いたいのかというと…

やっぱりバドはいい奴だ!(笑)

しかしこの後、ステンズランドが生前にやっていた事がいろいろ明らかになり、エドの言っていたこと(「当然の報い」)が正しかったのが分かります。バドは死んだ相棒にも裏切られることになるのですが…その話はまた後程(多分…)

4. Why Me?

バド:"Why me?"(なぜ、俺を?)
リン:"I don't know."(わからないわ。)

シーン:さんざん迷った末、リンの家を訪ねて来たバド。リンは何も言わずに、彼をまっすぐ(『ビジネス用』の部屋でなく)私室に通す。その意味を悟ったバドは…

この映画の感想として、私は最初に

「この映画は、犯罪サスペンス、フィルム・ノアール、警察ものミステリー、などに分類されると思うのですが、私にとっては、いままで観た中で最も切ないラブストーリーのひとつ、でもありました。」

と書きました。

しかし考えてみれば、この映画に限らず、いわゆる「恋愛映画」よりも、そうでないジャンルの映画の方が、その中に描かれている恋愛は切なさがより胸に迫るものが多いような気がします。

で、その理由を考えてみたのですが…ひねくれた言い方ですが、「恋愛映画」には、恋愛について語る時間がありすぎてかえって切なさは薄れるような気がします。私などは、フランスのシリアスな恋愛モノによくあるみたいに最初から終わりまで愛、愛、愛と語られると「他に考えることないんか〜」とつっこみたくなっちゃう(笑)。

それよりも、一言で…あるいは無言で全てを語っちゃうのがいいですね。

この"Why me?"というセリフ(しかし、いいセリフだな…うっとり)、それに後でバドとリンが「ローマの休日」を観ているセリフなしのシーン(<私は『高校生の初デートみたい』と思ったもんですが)、この2つのシーンだけで、この2人の関係のみならず、2人が今までどういう人生を送ってきたか、どういう恋愛をしてきたか−あるいは、してこなかったか−までが、なんとなく分かるような気さえします。

つづく。



この映画について私が知っている2、3の事柄

・「L.A.コンフィデンシャル」の映画化に当たっては、(ハリウッドではたいへん珍しいことに)ハンソン監督は原作者の意思を映画に反映させることに非常に気を使ったそうです。それで、原作者のエルロイは実際に撮影現場に頻繁に現れていたそうです。ラッセルは彼のことを「情報の金脈」と思ったそうです。

「おれがやったことは、専門用語で言うと、『頭痛のタネ(Pain in the ass)になる』ってことだった。おれは彼に質問しまくった。どんな小さな情報がキャラクターを動かす力になるかわからないからね。エルロイは自分のキャラクターにものすごい情熱をそそいでるんだ。だから、キャラクターに関してどんな質問をしても、たちどころに答えが返ってくる。あんなことは初めてだったね。」 (ターニング・ラブのページのリンクのインタビューより)


L.A.コンフィデンシャル スクリーンテスト


スクリーン・テスト映像あり。「クイック&デッド」の時のような長髪のままバドを演じるラッセルが見られます。スクリーン・テスト映像、アメリカ版のDVDには特典で入っていると聞きました。なんで日本のには入ってないの〜!みたいよ〜!せめて画像でも見て想像するか。くすん。

このスクリーンテストのラッセルについてハンソン監督は、「こいつは凄い。彼が、私のバド・ホワイトだ。('This guy is great. This is my Bud White')」と言ったそうな。ふふ。


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