プロヴァンスの贈りもの A Good Year




出演:ラッセル・クロウ(マックス・スキナー 英国人、シティの敏腕トレーダー)マリオン・コティヤール(ファニー・シャナル レストランオーナー)アルバート・フィニー(ヘンリー マックスのおじさん)フレディ・ハイモア(少年時代のマックス)アビー・コーニッシュ(クリスティ・ロバーツ ヘンリーの娘と名乗るアメリカ娘)トム・ホランダー(チャーリー・ウィリス マックスの弁護士)

笑える、泣けない、考えさせない、と三拍子揃った(?)、暑いときにはぴったりの映画でした。

実を言うと、観る前、ちょっとだけ心配だったのですよね。この映画を気に入らなかったらどうしようか…つまり、感想をどう書こうかと。「イマイチ」程度なら、何とでも書きようがあるのですが、もう決定的に嫌い!だったら困るなあと。この映画を好きな人が読むことは分かっているし、好きな人に向かって悪口を書くのはなるべく避けたいし、これだけ期待表明してしまった以上「観なかったフリ」で何も書かないという手もきかないし…

軽くてあまり意味のないラブコメディはむしろ大好きなので、そういう心配はしていなかったのですが…私は「都会の仕事中毒人間が、田舎の素朴な人情に触れて心を入れ替えるor子供の頃の純粋さを思い出す」みたいな話は大キライなので、心配なのはその点でした。

「プラダを着た悪魔」や「サンキュー・スモーキング」の時も思ったけれど、得意なことを仕事にして、嬉々として全力を尽くしている人というのは、見ていて気持ちのよいものです。職業が何であれ。(違法なことや反社会的なことは別ですが…と、一応言っておく。)予告編で「今日もがっぽり儲けるぞ!」と嬉しそうにやっているマックス(ラッセル・クロウ)にも同じようなものを感じて、こういう人が意味もなく「報い」を受けたり、反省させられる話だったらいやだなあ、と…

でも、そういう心配はありませんでした。ロンドンでもプロヴァンスでもマックスは結構楽しそうにやってるし、彼の性格ってば、子供の頃からラストまでけっこう一貫してるし(笑)。

まあもちろん、マックスは最後に多少ライフスタイルを軌道修正するのだけど…あれは「好きなように生きるための別のやり方」を見出したってだけで、別に反省したわけでも、性格が変わったわけでもないと思う。

<以下ネタバレ気味>

だいたい、「共同経営者になって給料は破格、でも休暇なしの超多忙生活」と、「がっぽり退職金もらって南仏でのんびり(それに飽きたら事業でも始めるか、元手もあるし)」との比較で、前者を選んだら馬鹿でしょう。「使う暇がないんじゃ、いくら稼いだって意味ないし」という当たり前のことに気づくのに、それほど深い思索や反省が必要とも思えない。

それに…マックスの才覚があれば多分、金なんぞいつでもどっからでも稼げるけど、いい女は(男も)チャンスがあれば絶対押さえておかなければならない限りある資源…これもまた、人生のシビアな真実だ。

でもマックスは、おじさんみたいに完全引退状態になるにはまだまだエネルギーが有り余っていそうだから、少しのんびりした後はまた事業に乗り出しそうだな。退職金でシャトーの権利買って経営手腕を発揮したり、レストランを開業したり…そもそも、インターネットと携帯電話があれば、南仏からでもトレーダーの仕事はできるだろうしね。(ロンドンの最前線でバリバリやるほどには稼げないかもしれないけど。)

それから、登場する南仏の人々(プラス、ナパ・バレーから来たアメリカ娘)が素朴で純粋とか思ったら大間違い。みんな絶対に我を曲げないし、自らの目的のためには手段を選ばず、ウソだってつきまくる。だからマックスとも意外と気が合ったりする(笑)。でも、それはお互い様って感じで、誰かが犠牲になるわけでもないし、みんなのびのびと楽しそうにワガママを通しているので憎めないのだ。

考えてみればこの映画、映画の最初と最後を比べて、登場人物の誰ひとりとしてあんまり変わってない。それぞれ好きなように生きてきた人々が、特に反省もせず苦難にも遭わず、マイペースを貫いたまんまでみんな望みのものを手に入れました、めでたしめでたし、って話。そこが不満な人もいるだろうけど、そこがいい、と私は思う。

まあ確かに、恵まれた人々の贅沢な選択の話って言えばそれまでで、特に深い意味や教訓があるわけじゃない。この手の映画が特に好みじゃなくて、ワインにも南仏にもラッセルにも他の俳優にも特に興味がなければ、楽しく見たとしても5分後には忘れてしまえる映画かもしれない。

でもそれでいいのだ。これは「休暇の映画」なのだから。

ここんとこ、思い入れが強すぎて感情的に負担の大きいフィクションにちょっと疲れ気味で、「涙腺超弱の私でも絶対に泣けない映画を求む!」という気分だった私の注文にハマったのも、タイミングが良かった。あまり深刻な映画は観たくないこの暑さもあるし、タイミングのせいで評価が多少良くなっていることは否めませんが…

でもいいよね。コメディとビジネスに大事なのはタイミングだということだし。


<以下無駄話>

・プールに落っこちているところで、「オーブリー&マチュリン」9巻のマスチフ犬ポントにそっくり、とか思ってにやにや笑いが止まりませんでした。立場逆ですけどね。

・私はマックスの性格、最初からけっこうチャーミングに思えました。頭が良くて、陽気で、美人と見ればすかさず全身チェックし、女性をクドくためなら、さっとエプロンしてウェイターもやるマメさ。本命は別の女性のくせに、美人のイトコが現れると弁護士の友達に「フランスでイトコと寝るのは違法かな?」と、とりあえず聞いておかずにはいられないやつ。

私はフィクションの中では、マキシマスとかルーピン先生とかジョン・スミスとかいう「殉教者タイプ」に惚れてしまうことが多いのですが、現実につきあうんならマックスのような人の方がいいです。でも、現実にはマックスみたいなタイプって意外と競争率高いのですよね…(笑)

・マックスが南仏でサイクリストに会うたびに「ランス・アームストロング!」と叫んでいましたね。自転車レーサーだということは公式サイトで読んで知っていたので、私、マックスのことだから、フランスのチャンピオンを負かしたイギリス人レーサーの名前かなんかを、嫌がらせでフランス人に向って叫んでるのかと思っていましたが…そうじゃないようですね。ランス・アームストロングはアメリカ人でした。

ウィキペディア ランス・アームストロング

というわけで、マックスが叫んでいた意味合いはイマイチ、謎なのですが、上のウィキペディアを読むと、いやいや凄い人だったのですねランスさんって。このエネルギッシュさは、なんとなくマックスにも通じるところがあるような。マックスはファンなのかな?



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