Chapter 10-1 〜 エスメラルダ号


ついに最終巻、最後の章になってしまいました。まあ、最後なので、ゆっくり行きましょう。

(p234〜p237)ジャックはペルーのカヤオ港に停泊している重量級フリゲート艦・エスメラルダ号に対する切り離し作戦の計画を進めている。

11月のある日曜日、アイザック・ニュートン号の博物学者の一人で牧師でもあるヘア氏がサプライズ号で礼拝を執り行う。その後、ジャックはアイザック・ニュートン号を訪れて博物学者のリーダーであるドブソンに会い、戦闘の結果が判明したら報告書を英国に持っていってもらう手はずを整える。アイザック・ニュートン号の船長と情報交換したジャックは、カヤオ港にはエスメラルダ号の他に二隻の商船が停泊していることを知る。


前のInterchapterでジャックは、ペルー(まだスペイン植民地)の侵略を防ぐため、ペルーの重量級フリゲート艦エスメラルダ号を切り離し作戦で拿捕する計画を実行に移す決心をしました。切り離し作戦(cutting-out expedition)とは、港に停泊している艦を攻撃し、拿捕し、「切り離し」て連れて帰ってくることです。

ちょうどタイミング良く、「アイザック・ニュートン号」の博物学者の何人かがパナマ地峡(まだパナマ運河は存在しない)を馬で越え、大西洋側から船で英国へ向うという最短ルートで帰国することを知っていたので、ジャックは戦闘の結果を見届けて、報告書を海軍省に持って行ってもうらうことにします。

当時は運河がなかったのでずいぶん遠回りをしないといけなかった所というとスエズとパナマですが、スエズに比べても、パナマ地峡ってずいぶん狭いのですよね。馬で1日ぐらいの距離とか。大西洋側に出てしまえば、もうヨーロッパまでは数週間の航海で、ホーン岬をえっちらおっちら回るのに比べたら、えらく早いのです。

だから当然、ここに運河があったら便利だというのは早くからみんな思っていて、アイデアそのものは16世紀からあったそうなのですが…距離が短い割には、運河が1914年になるまで完成しなかったのは、地質の問題で崖崩れが起こったり、工事中に黄熱病やマラリアが蔓延したり、いろいろ大変な難工事だったかららしい。

ジャックは、もし戦闘が上首尾に運んで報告書の内容が良いものだったら、出来るだけ早く海軍省に伝えたいと思っているのです。それは、「海軍省が、新しい南アフリカ艦隊の構成を完全に決めてしまう前に読んで欲しい」から…らしい。ジャックには、狙っている地位があるのですね。

ところで…この10章のはじめのところに出てくるヘアさんという「ハタネズミに関する世界的権威」の博物学者は、本業は牧師みたいです。当時の学者というのは、もともと金持ちの人は別として、他に何か職業を持っていないとそれだけでは生活できなかったのでしょうか。そうなんでしょうね。スティーブンも医者が本業だし…

(p237〜p238)サプライズ号のベテラン乗員たちは、命令が下る前からこれからの作戦はだいたい予想できているので、自主的に準備を整えている。水曜の夕刻、サプライズ号は、商船に偽装まではしていないものの、なるべく平和的な何気ない様子でペルーのカヤオ港に入港する。1マイルほど離れた沖にはリングル号、さらに少し離れてアイザック・ニュートン号が様子を見守っている。

ウッドバインの病死で今は航海長代理を勤めるホレイショ・ハンソンが、サプライズ号をエスメラルダ号の横にすべりこませる。


さて、海戦。未完の21巻まで含めても、これが最後の海戦シーンですから、ゆっくりじっくり行きましょう。

サプライズ号の今後の予定については、いつもだとキリックが(立ち聞き盗み聞きの技術を駆使して)情報収集して噂を流すのですが、今回はその必要もなく、みんな目的を察していたようです。「…どんな船にも一人か二人はキリックがいるものだが、海軍の歴史を探してもこれほど強い、しつこい、持てるあらゆる才能を駆使することに何の良心の呵責も感じない好奇心は他に例がない…」と書かれていたのがおかしかった。

それと、ひとつ気になったのは、ここでホレイショ君が航海長代理になっていることですね。ダニエル君の方が先輩なのに。ホレイショ君は後見人(実は父親)のおかげで、本当はこれが初航海なのに名目上はえらい長い間船に乗っていることになっているから、形式上はホレイショ君の方が先任ということになるのでしょうか。世の中不公平ですね。まあ、ホレイショ君にはそれに見合う能力があるからいいようなものの。

(p238〜p239)エスメラルダ号の横につけたサプライズ号、砲撃を開始する。しばらく激しく撃ち合った後、エスメラルダ号の火薬庫が爆発する。ジャック、「斬り込み隊、突入」の命令を下し、自らも敵艦に突入する。

ペルー側の水兵たちはこのような白兵戦に慣れていなかったので、百戦錬磨のサプライズ号の切り込み隊はまもなくエスメラルダ号の乗員たちを圧倒し、追いつめる。しかしその時、今までなぜか沈黙していたカヤオ港の砲台が砲撃を開始する。

ジャックの鋭い目は、港に停泊している商船二隻がマストに色のついたランタンを上げているのに気づく。これが商船と砲台との、あらかじめ決めてあった合図だと気づいたジャックは、サプライズ号に同じように色つきランタンを上げるように命令する。砲台は、どの船を撃っていいのか混乱し、エスメラルダ号を砲撃し始める。

その時、至近距離から発射されたピストルの弾がジャックの左肩に当り、彼は倒れる。ほぼ同時に、敵兵の剣が彼の腿を貫く。


更新が遅れた上にこんなところで切ると怒られそうですが…切っちゃうのでした。最後だし…