Chapter 10-2 〜 報告書


(p239〜p241)エスメラルダ号への斬り込みで負傷したジャック。彼の脚を剣で刺した敵兵を、ジャックの後についていた「不器用」デイビスが斬り込み斧で殺す。ホレイショ・ハンソンがジャックをまたいで立って彼を守り、二人は彼を安全な場所に引き摺ってゆく。ジャックは、ペルー兵たちが降伏しているのを見て満足し、エスメラルダ号の錨を上げるように命令し、「それと、脚を縛るネクタイか大きなハンカチがあったらくれないか」と言う。

ジャックはハンソンの肩を借りて立ち上がる。エスメラルダ号はしっかり係留してあったが、ハンソンとデイビスがロープを切り、艦は動き出す。安心したジャックは意識を失い、サプライズ号のシックベイに運ばれてゆく。


負傷して倒れた戦友をまたいで立って、敵を撃退するっていえば、8巻のラストで倒れたトム・プリングズを守って戦っていたジャックを思い出しますね。今回はホレイショ君が、その役をやっています。

戦闘の真っ最中はアドレナリンの作用で、傷を負っても痛みをあまり感じないで動けるそうなんですが…「ハンカチ貸して」とか言ってるジャックはやっぱり超人です。

(p241〜p243)次の朝、ジャックはこんこんと眠り続けるが、スティーブンとジェイコブが彼の怪我について話し合っている声で目覚める。肩を撃たれた弾は、運良くちょうど剣帯のバックルに当り、ひどい痣ができただけで骨は無事だった。腿を刺した剣も、奇跡的に主な血管をすべて避けて通っていた。

目覚めたジャックは、「おはよう、諸君」と言い、エスメラルダ号がちゃんとついて来ていると聞いて喜びが湧き上がり、笑い声を上げる。のどが渇いたと言って、スティーブンが支える水差しから馬のようにごくごくと水を飲む。ジェイコブは呆れるが、「元から血の気の多い人だから」と言い、二人はジャックに勝利のお祝いを言う。

「神の祝福を、マイディア、素晴らしい勝利だった。でも、ジャック、痛みは感じるかい?」「眠れないほどじゃない。ああ、よく寝た。ねえ、何か食べても大丈夫かな?薄いオカユか何か?これから大事な手紙を書かないといけないんだ。」二人の医者は驚くが、ジャックの鉄人ぶりを知っているスティーブンは、卵とミルクを処方する。

ジャックはハーディング副長を呼び、味方の死傷者は軽微だったこと、エスメラルダ号は火薬庫の爆発で被害を負っているが航行しながら修理が可能であることを聞いて喜び、書記のアダムスを呼んで報告書の口述を始めようとする。


相変わらず、戦闘に関しては、ここぞというところでは運の良いラッキー・ジャック。本人も、「守護天使がミヤマガラスの群れのようにくっついてくれている」と言っています。

負傷したジャックをスティーブンが治療するシーンも、これで最後です。というわけで、今までの巻でジャックが怪我をした時のことを思い返していたのですが…ここでの怪我は、たぶん2巻とか、5巻とか、6巻とか、12巻とかの怪我ほどにはひどくないんでしょうね。(全部思い出せますか?)スティーブンはジャックのことを、「若い犬のような回復力」と思ったりしていますが…今までの例でゆくと、負傷していても戦闘に勝った時は、回復が早いようです。精神が高揚しているからでしょう。

大怪我の後目覚めて、まずのどが渇いたとか、なんか食べたいとか言う患者に、スティーブンは慣れているけれど、ジェイコブさんはびっくりのようです(笑)。

(p242〜p245)通常の海軍省への報告書を書く気満々だったジャックだが、スティーブンが、サプライズ号は今は公式には海洋測量のために海軍に雇用されている民間船であり、チリ海軍のために行った攻撃なので報告はオイギンズに出さなければならないと指摘する。それを聞いたジャックはとたんに元気を失い、目の前でみるみる老け込んでゆくような様子にスティーブンは心配する。

スティーブンは、この勝利は海軍省の意図にかなったものだし、手紙の形式が変わるだけで実質は変わっていない、サー・ジョセフへ秘密の手紙とオイギンズへのスペイン語の報告書は自分とジェイコブが書くので心配ないと言う。それを聞いてジャックは少し安心してにっこりする。スティーブンはジャックに、君はたくさん失血したのだから、チキン・スープを飲めるだけ飲んで寝るようにと命令する。


ジャックが怪我のわりに元気だったのは、「青色艦隊少将になれるかどうかの瀬戸際で、これで海軍省によい報告ができる」という思いからだったのですね。今回の勝利は、いつもの、普通に英国海軍の一員としてあげた勝利とは違うと言うことを思い出し、みるみる元気がなくなるジャック。大丈夫でしょうか…

(p246〜p249)ジェイコブと二人でサー・ジョセフへの報告書を書いて暗号化したスティーブンは、アイザック・ニュートン号に行って、パナマ地峡を越えて英国に帰る学者たちに手紙を託す。サプライズ号に帰ったスティーブンは、今度はスペイン語でオイギンズへの報告書を書き上げ、サプライズ号とエスメラルダ号より早くヴァルパライソに着くリングル号に託す。

独立したばかりのチリにとって、ペルーの侵略は一番の脅威であったので、ペルー海軍最大の力であった重量級フリゲートのエスメラルダ号を拿捕したことは、実質上、これでチリの独立を確実にしたと言ってよく、これは非常に重要な勝利なのです。

その報告を一刻も早く英国に届ける事は、国にとっても、ジャック個人にとっても非常に重要なことなので、スティーブンもアイザック・ニュートン号に乗船するとき、防水袋に入れた手紙をしまった胸のあたりを大事そうにぎゅっとつかんでいます。

あ、それと…「エスメラルダ」は、スペイン語でエメラルドのこと。考えてみれば、Interchapterでスティーブンがエメラルドを買ってクリスティーンに贈っていたのは、象徴的意味があったんでしょうか。スティーブンはあの時点では、ジャックがエスメラルダ号を攻撃するつもりなのは知らなかったはずですが…でも、スティーブンのことだから、勘づいてはいたのかも。

さて、いよいよあと1回です。