Chapter 4 〜 ホレイショ・ハンソン


(p87〜p100)英国海峡を抜けたサプライズ号。ホレイショは、彼を侮辱した士官候補生室の同輩とケンカをすることもあったが(彼には少し拳闘の心得があるらしい)、少しずつ艦に慣れている様子。彼に王族の後見人がいることや、ましてや息子だなんてことは、艦長とドクター以外だれも知らない(息子であることは艦長も本人も知らない。)

ジャックは彼にマストの登り方を、文字通り手取り足取りで指導している。ジャックはめったに初航海の少年を乗せないが、昔のシップメイトの頼みで仕方なく乗せた時は、いつも最初は自らマストの登り方を指導することにしている。

ホレイショ、ジャックに助けられてクロスツリーまで登り、帆船とまわりの海の光景に感激して「こんなに美しいものを見たのは生まれて初めてです。」と言う。デッキに下りると、元捕鯨船員の見張りが「There she blows!」と叫ぶ。見ると、6頭のクジラの群が通りかかり、潮を吹いている。


4章は、英国を出てからマデイラに到着するまでの航海。久しぶりに、「いつもの」航海の描写が戻ってきました。砲撃訓練、ジャックがソフィーに書いている手紙、嵐のとき吊り寝台から落っこちるスティーブン、朝は不機嫌なスティーブンとジャックがコーヒーを分け合う朝食、夕方の水兵たちのソング&ダンス、ジャックとスティーブンのバイオリン・チェロの合奏、スティーブンのロージンをポケットに隠すジャック、etc,etc...

王子の隠し子ホレイショ・ハンソン君は、航海の初めごろに嵐が続いた時は船酔いしていたようですが、その後はすっかり回復して、艦の生活にすっかりなじんでいるようです。

初航海の士官候補生には、ロープの結び方や、軍艦の細々したことを教えて面倒をみてくれる水兵がついていて、それを「シー・ダディ(sea-daddy)」と言うそうです。ホレイショ君の「海のとうちゃん」はジョー・プライスじいさんになったらしい。そういえば、ジョー・プライスはボンデンの叔父だかイトコだかだったんだっけ。(えーん、ボンデーン…)

砲撃訓練の描写のところでも、「右舷の一番艦首側の砲から順番に…」というのを読んで、そういえば一番前の砲の砲手長はボンデンだったんだっけ、とか思い出してしまいました。しんみり…

思い出すっていえば…この章の、ジャックがホレイショくんを手取り足取りでクロスツリーまで連れてゆくところでは、3巻の、ディルの死で落ち込んでいるスティーブンをジャックがクロスツリーに連れてゆく、思い返すと胸が痛くなるほど美しいシーンを思い出していました。

(p100〜p103)途中でリングル号と合流したサプライズ号、マデイラに到着する。スティーブン、短期間にすっかり一人前になったホレイショの指揮するバージで上陸し、ジェイコブに伝言を残しに行くが、運良く本人と再会する。

ジェイコブはチリについて詳しい情報を得ている。チリの独立派は南北二つの勢力に分かれている。このうち北の方がオヒギンズとその友人のサンマルタンが率いている勢力で、ジャックを呼んだのはこのグループ。南の方のグループはサー・リンゼイを呼ぼうとしている。南の方がより理想主義的で、北の方が地に足のついた現実的な戦略を持っている。

サー・リンゼイはシップ型スループ艦とアスプ号という船を持っていて、リオで修理させている。ジェイコブ、ブエノスアイレスから上陸して、山越えでチリに向かうと言う。そうすればサプライズ号より一足先に着いて、その間に情報を集められる。


スティーブンの友達で医者のドクター・エイモス・ジェイコブですが、彼はユダヤ人で、医者なんですが、家は代々宝石商をやっていて、彼自身も医者のかたわら宝石の取引を続けているらしい。そのコネでいろいろ情報源を持っているのですね。

(p104〜p106)ジャック、ジェイコブの情報(サー・リンゼイの船の状況)を聞いて喜び、それなら十分時間の余裕があるので、フリータウンにちょっと寄ることもできるだろうと言う。

「ちょっと寄るだけかい?ぼくはフリータウンで大事な用事があるんだ。」「この任務に関係のあることかい?」「直接には、ない。…実は、クリスティーン・ウッズに結婚を申し込もうと思っている。」ジャックはそれを聞いてびっくり仰天するが、しばらくすると立ち直り、「心から成功を祈るよ」と言う。

「そういうことなら、自分たちの捨てた牛肉の骨で座礁するまで待っている。」「そんなにかからないよ。このような質問は、また彼女のような人なら、即座にイエスかノーで決まりだ。イエスなら、できれば一週間ぐらい滞在したい。ノーなら、すぐに出航してもかまわない。」


あー、そうじゃないかとは思っていたけど、やっぱりそういうことになったのね。(<クリスティーンへのプロポーズの件)まあ、いろいろフクザツな女心はありますが…許してやるか。(<あんたが許すこっちゃないでしょう。笑)まあ、そう決めたんなら、成功を祈っているよ、スティーブン。

3巻の、ダイアナにプロポーズした時のスティーブンを思い出すなあ…これは最終巻であるせいか、やたらに以前の巻を思い出しているのでした。特に3巻は、やっぱり最高のお気に入りだった…と今更ながら思うわたし。

(p106〜p107)サプライズ号の喫煙サークルは、キリック、ポル、マギーも含めて復活している。彼らはジェイコブが乗船してきたことを話題にしている。

なぜかスティーブンが総督未亡人にプロポーズするつもりであることまで知れ渡っている。(情報源:キリックの立ち聞き)

「あんなみっともない小男が、あんな美人に?」と、ある口の悪い水兵が言うと、「何てこと言うんだい。腕を切断せずにすんだのは誰のおかげだい?」と叱りつけるポル。「腕のいいドクターでも、美男子じゃねえってことはあるじゃねえか…」と、叱られた水兵はぶつぶつ言うが、みんなに冷たい目で見られて輪を離れる。

「ドクター、うまくゆくといいなあ。」別の水兵がぽつりと言う。「つらい目に遭いなさったからなあ。」


サプライズ号のみんなは、前巻の最後に黄金のガレー船を拿捕できたのはジェイコブの持ってきた「栄光の手」とドクターの持ってきた「一角獣の角」のおかげだと信じているので、この二人のドクターのことを縁起物のお守りのように思っていて、今回は戦時じゃないから拿捕船は望めないと知りつつも、二人のドクターが揃ったことで「もしかしたら」と期待するキモチがあるみたいです。

サプライズ号のメンバーが、二人のドクターのことを話すとき、区別するためにスティーブンの方を「うちのドクター(our doctor)」と呼んでいるのが、なんだかほのぼのです(笑)。

「つらい目に遭いなさった(He's had it cruel hard)」というのは、ダイアナの死のことを言っているのだと思いますが…スティーブンは人前ではそれほど悲しみを出していないと思うのですが、それでもシップメイトには感じるところがあったのかな。これも、しみじみ。