Chapter 5〜水泳と壊血病


サプライズ号はには大使のスタンホープ氏とその随行員が乗せ、インド経由でマレーシアに向う。

5章〜6章、サプライズ号のインドまでの長〜い航海が続きます。このあたり、大好きなんですよねー。本当に気持ち良さそうな、楽しそうな航海で。これなら乗ってみたい!と思ってしまう。実際には、当時の航海なんてそんなに楽しいわきゃーないんですけどね。

赤道近くの暖かい海、無風地帯で止まっているサプライズ号。甲板で寝ているスティーブン、水兵たちの甲板磨きを邪魔したあげく、手伝おうとしてよけい汚くする。ジャックが彼を泳ぎに誘う。

スティーブンが甲板に袋をかぶって寝ていて、甲板磨きの邪魔をするシーンも大好きです。ある意味、このシリーズを象徴するシーンというか、このシリーズが本格的にスタートしたシーンだと思う。(それにしても、いくら暑くたって甲板で寝る事はないだろうと思う。)

寝起きが悪くて朝の甲板磨きの邪魔をし、起きたと思ったらせっかくキレイにした甲板にタールの足跡をつけ、あげくに自分で拭こうとして余計に汚くするドクター。水兵たちも、「困った人だなあ、でもドクターだからしょうがないな」とか思っているに違いない。そしていきなりstark naked(<辞書を引いて下さい)で現れるジャック。このシーン、ぜひ映画でも…(こほん。いかん、暑くなると話が脱ぎ脱ぎ方面に行くクセが直ってない…)

温かい、澄み切った海を一緒に泳ぐジャックとスティーブン。ジャックは長い時間をかけてスティーブンに泳ぎを教え、スティーブンは下手ながらかなり泳げるようになっていた。出航した頃は歩くのも不自由だったスティーブンだが、毎日マストに登ったり泳いだりとリハビリに励み、今はかなり回復している。

スティーブンの意志の強さも大したものですが、ちゃんと泳げるところまで指導したジャックの我慢強さも尊敬に値する−と私は思っています。この水泳シーンも、とても美しい。ぜひ映画でも…(しつこい)マストによろよろ登るスティーブンと、それをがっちりガードするボンデン、甲板から見上げながら心配でいても立ってもいられないジャック、というのも微笑ましく想像してしまいます。

ジャックはスティーブンとプリングズ、それに当直士官候補生のキャロウを招いて朝食をとる。スティーブンが生態観察のため(?)ネズミを飼っている事が明らかになる。艦長が士官候補生時代にこの艦に乗っていたことを知ったキャロウ候補生は「この艦はすごく古いんですね!」と叫んで、プリングズに脛を蹴飛ばされる。ジャックは点呼の時に乗組員に壊血病の症状が出ている事に気づき、スティーブンに知らせる。

サプライズの士官候補生、バビントン君、キャロウ君、チャーチ君は順番にボケ役を担当して笑わせてくれます。牧師のホワイトさんもなかなかナイスボケな人です。サプライズ号には、あまり嫌われ役の乗組員がいないですね。大使秘書のアトキンズ氏ぐらいか。ここで出てくる、スティーブンがバターで湿らせたビスケットで飼っている(なんと贅沢な)ネズミ、というのは後の話にも出てくるので注目。それにしても、艦のネズミって士官候補生の貴重な栄養源なんですね…(泣)

スティーブンなら壊血病でも何でも簡単に治せちゃうと思っているジャック。いくらなんでも、野菜も果物もないのにそれは無理でしょう〜。ソフィー号で行った脳外科手術はそれほど印象的だったらしい。まあ、確かにスティーブンは人間離れした天才医師ではあるんですが。

艦はセント・ポールズ・ロック(大西洋、ブラジルのサン・ロケ岬沖にある火山性の岩群)の近くを通る。スティーブンはニコルズ海尉にボートを出してもらい、岩に向う。ニコルズは夫婦仲がうまくいかなくなっている事を悩んでいることをスティーブンに告白する。。岩で鳥や昆虫の標本採集に励むスティーブンだが、一帯は激しいストームに襲われる。ニコルズは行方不明、ボートも流されてしまう。サプライズ号はストームによって遠くに流され、スティーブンはひとり岩に取り残される。

この、ニコルズさんなんですけどね…登場して、スティーブンに夫婦間の悩みを打ち明けて、あっという間に死んでしまう。(10巻でスティーブンは「自殺に近かったのではないか」と回想しています)登場する意味はあるのか?とか考えてしまいますが、おそらくあるのです。実は、彼の話はこの本の裏テーマを象徴しているのですね。その裏テーマとは「船乗りの結婚、その困難」。4章にはプリングズの「家では僕はじゃまみたいです。結婚生活ってのは、艦の上とは違いますね」なんてセリフもありますし。(では表テーマは何かと言うと「一生スティーブンの面倒を見る決心をしたジャック。」…すみません、このへん冗談です。半分は。)

なんてことは、ともかく…草も生えていなければ水もない岩に一人取り残されたスティーブン。風下に流されてしまったサプライズ号が戻るには何日もかかるし、さて、どうなるか?というところで5章は終わっています。