Chapter 1-4〜送別と歓迎


前回書き忘れたのですが(こればっかりだな)、スティーブンは「濡れたブリーチを脱ぎながら」謝っていて、ジャックは「彼の空いている方の手を握って」おれも言い過ぎた、とか言っているのですが…ブリーチって片手で脱げるものなのだろうか。それに着替えている途中の人の手を握るって…まあ、追求しないことにしよう。

スティーブン、ジャックに遅れた訳を話す

さて、スティーブンが遅れた理由ですが…ヤゲロがスウェーデン大使の馬車を借りてくれて、自ら手綱を取ってポーツマスまで送ってくれるはずだったのですが、途中で交通事故が起きます。

というのは、ヤゲロくんはリトアニアの出身で、そこでは平民の馬車は、貴族の馬車に道を譲るものらしい。しかし英国は当時からそういうとこ民主的(?)なので、のろい農家の荷馬車を、当然譲るものと思い込んで無理に抜こうとしたヤゲロくん、相手が頑として譲らなかったために馬車をぶつけ、箱に乗っていたスティーブンとダイアナは無事だったのですが、馬車は壊れてヤゲロくんは腕を折ってしまいました。(ヤゲロくんって、国ではむちゃくちゃ身分の高い人らしい。)早朝だったので馬車を直すのに手間取り、後はダイアナが手綱をとってすっ飛ばしてきたのですが、約束の時間には大幅に遅れてしまったと。

交通事故の原因って、今も昔もあまり変わらないような…余裕のない運転と「相手が譲るはず」という思い込みが事故につながる、と免許センターのおじさんも言っていたわ。

ジャックとスティーブン、ハンカチを振っているダイアナとソフィーを見る。

めでたく仲直りした(ってほどのケンカじゃないですが)二人は艦尾楼に上がって、Sally Port(出撃門)のバルコニーに立ってハンカチを振っている妻の姿を望遠鏡で眺めます。見送りのとき手を振ったりハンカチを振ったりするのは、ただの挨拶じゃなくて、一刻も長く相手の視界に映っていたいからなのね。しみじみ。

ジャックはこういう別れを何度も経験しているわけですが、新婚数ヶ月のスティーブンは妻と離れるのは初めてなのね。(多分)初めて望遠鏡でダイアナを眺めながら、彼は「出会って以来、この数ヶ月ほど幸せそうで、綺麗で、よく笑う彼女を見たことがない」と考えます。「それが自分と結婚したせいだと思うほど自惚れ屋ではない−むしろ、ようやく自分の家を持ち、豊かで社交的な落ち着いた生活をしているからだろう。しかし、ちゃんとした夫がいるという事実も、関係なくはないかもしれない…」いやスティーブン、それは謙遜のしすぎだって。

ダイアナは妊娠している可能性があるのですが、彼は「僕は断じて子供好きではないし、自分の子孫を残したいなんてこれっぽっちも考えていないが、ダイアナのためには、子供がいた方が幸福に落ち着くかも…」と考えます。いやこれは声に出して言ってます。(ジャックはソフィーを見るのに夢中で聞いていないのですが。)こういう人が、こういう普通の人みたいな事を考え始めると、たいがいの場合、「なんだ、丸くなっちゃって」とガッカリしたりするのですが--スティーブンとダイアナの場合「よかったね、幸せになってね」としか思えません(笑)。今まで苦労が多すぎたせいでしょうか。

プリングズとマウアット、ドクターに謝る

時は午後1時、士官のディナー(昼食)の時間です。スティーブンがワードルーム(士官集合室)に行くと、プリングズとマウアットが心配顔で彼を待っていました。スティーブンが遅刻して乗艦したとき思い切り冷たく迎えたのは、本気で怒っていたわけじゃなく、スティーブンをからかう意味が大きかったのですが、やりすぎて怒らせてしまったのではないかと心配しています。「冗談だってことに、気づいてもらえてないんじゃないかと思って…ドクターはその、すごく湿っぽい気分でいらしたでしょうから」とプリングズ。スティーブンは全然気にしていないと答え、3人はグロッグで乾杯します。

ウースター号のワードルームは、ジャックの今までの艦とは比べ物にならないぐらい広いのですが、メンバーは少なくて、がらんとしています。その数少ないメンバーは、主計長も航海長もドクター・マチュリンに会うか治療を受けたことがあり、海兵隊長に至っては2巻でドクターが腕を切断したマクドナルドさんの従兄弟。彼の名医ぶりを聞いていて「戦闘で身体がバラバラになっても、ちゃんと縫い合わせてくれる人がいるっていうのは本当に心強い」なんて言います。最初から、なかなかアットホームな雰囲気。

プリングズとマウアット、ドクターにパイと歓迎の歌をプレゼント

プリングズはドクターに「サプライズ(驚かせるプレゼント)」があると言ってニコニコしているのですが、そのプレゼントはディナーの最中に現れます。それはスティーブンの好物「トリュフと鴨のパイ」。ダイアナの開いたお別れパーティで「海に出たら当分トリュフは食べられない」と言っていたドクターは、意外なご馳走に感激します。プリングズはドクターがトリュフ好きなのを覚えていて、故郷のニューフォレストの森で自ら集めたとか。豚は連れていたのかな?

マウアットは、自ら作詞した歓迎の歌をプレゼント。ワードルームの全員が"Welcome aboard, Doctor!"と合唱。いやいや、ドクターったら、いいのかしらこんなにみんなに愛されてて(笑)。

スティーブン、ウースターのビームにカビが生えていると言う

ディナーが終わった後、スティーブンとプリングズはワードルームに残り、ワインを飲みながら語り合いますが、話題はおのずとこの艦のことになります。下部甲板というのはじめじめしているのが普通だけど、この艦の場合は度が過ぎていて、軍医居室のビームを覆うカビの厚さが2インチにもなっている、とスティーブンは言います。プリングズは、この艦は海軍で「浮かぶ棺桶」と呼ばれるものだと言います。

この時点でウースター号は必要最小限の乗員しか乗せていないのですが、プリマスに寄って海尉と士官候補生と強制徴募の水兵を乗せる予定です。「見込みのあるのを乗せられるといいんですが。艦長ならすぐに一人前に鍛え上げられるし、乗員さえ良ければこんなボロ艦でも、とにかく砲はたくさん載せているんだから、一等級艦を拿捕できるかもしれない…そうすれば艦長は貴族、このトム・プリングズは、ついに艦長(Commander)だ!」と、粗悪なワインを飲みすぎてちょっと酔っ払ったプリングズ。(このシーン、ジェームス・ダーシーくんで想像するとめちゃ可愛いわ。)

そう、プリングズくんは家柄がないせいでまだコマンダーになれていないのです。2年も後に海尉になったバビントンは、もうスループ艦の艦長をやっているのに。プリングズくんも4巻では小さい輸送艦や連絡艦の艦長をしていたけど、ちゃんとした軍艦とは違うのでしょうね。

キリック、スティーブンを呼びにくる

そこへキリックが入ってきて、プリングズに「すぐに(艦長に)なれますよ」と言った後、スティーブンに「音楽はどうかって艦長が呼んでます。もうバイオリンのチューニングを始めてますよ。」と言ったところで、1章はおしまい。

ああやっと1章が終わった。4回にもなっちゃったよ。次章からはもう少しスピードアップします(予定)。