ご参考:映画「マスター・アンド・コマンダー」の宣伝に関する配給会社への手紙と回答



昨年暮れから「マスター・アンド・コマンダー」の映画本編とかけはなれた宣伝について指摘してきました。

下記の手紙は、2月27日にブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン宣伝部長宛に連名の上送付したものです。21人の方からご賛同をいただきました。

これに対するブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン宣伝部よりの3月5日付け「回答」はこちら




前略

我々は貴社の配給による、2月28日より公開の映画「マスター・アンド・コマンダー」のファンです。
我々は今までに、個々にお手紙かEメールを差し上げたことがありますが、話し合いの上今回は連名でこの手紙を送らせていただくことに致しました。
用件は、「マスター・アンド・コマンダー」の宣伝についてです。
以下、要旨をできるかぎり簡潔に申し上げますので、表現に失礼なところがありましたらご容赦下さい。


我々は貴社に対し、以下のことを真摯に要望致します。

この宣伝において、我々が特に問題があると考えているのは以下の二点です。

・『さようなら、母さん。僕は〜』という文言、またはこれに類似した文言。
・『〜戦場に送られたのはまだ幼い少年たちであった』という文言、またはこれに類似した文言。


<要望>
1.映画「マスター・アンド・コマンダー」のTVCM、劇場用予告編、印刷媒体広告、貴社公式サイトにおいて、上記の文言を使用している宣伝を即刻中止すること。

2.上記の文言を掲載している印刷物を、即刻回収・撤去すること。

3.貴社よりの情報に基づいて、上記に類する表現を使用した映画紹介記事・番組・ウェブサイトを作成しているマスコミ各社に、変更要望の連絡をすること。

要望は以上です。以下にこの要望の理由を述べさせていただきます。

1. この宣伝は「戦場に送られた幼い少年の悲劇性」に重点を置いている。しかし、映画本編はそれを主題にしていない。
先日来日した同映画の監督ピーター・ウィアー氏の「当時は『子供時代』という概念がなかった」「特にメッセージを伝えたいわけではない」「2時間を楽しんで下さい」という発言をみても、「戦争の悲劇・幼い少年の悲劇」に重点を置いたこの宣伝が、作り手の意に添わないものであるのは明らかである。

2. 当初使用されていた「英国は戦力不足のために幼い少年たちを戦場に送らざるを得なかった」というコピーは一部の媒体で、「戦火の大海原で 幼い少年たちは戦っていた。」と変わった。字義的な虚偽性は薄まったが、「戦争に『幼い少年』が送られている」という文章の強調点は変わっていない。また当初のコピーが訂正されておらず、新聞広告以外の宣伝には継続して使用されているため、結局のと ころ受け手に映画を誤解させる虚偽の情報を与えつづけている。

3. この宣伝では、限られた時間・スペースの中で、映画本編に実際に登場する要素を排除し、本編にまったく登場しない「士官候補生の家族への思い」「母親への手紙」などの要素をわざわざ作り上げ、それを中心とした宣伝をしている。故意にこのような宣伝を行うことは、「映画を紹介し、受け手に興味を持ってもらう」という映画宣伝の本来あるべき趣旨に反し、欺瞞的である。

4. 映画本編と主題・雰囲気の大きく違う宣伝を行うことで、以下の弊害が懸念される。また、実際に起きている。
・この映画本来のテーマ・ストーリー・雰囲気を好むはずの人々が、映画を誤解して観に行かない。
・宣伝に引かれて観に行った人が、宣伝とあまりに違う映画にとまどい、失望する。または「騙された」という感情をもつ。この映画、宣伝を行った配給会社、ひいては映画というもの全体に悪印象を持つ。

5. このような宣伝は、この映画、出演俳優・監督、原作のファン、また映画を愛する全ての人を深く傷つけるものである。消費者に害を与えるものであり、これを放置するのは映画配給会社としての、ひいては業界全体のモラルに関わる。

以上の5点が最も凝縮されているのが、当初に挙げた『さようなら、母さん〜』『幼い少年たち〜』という文言であると考えています。従って、この文言の削除を強く要望致します。

映画はすでに公開されてしまっているので、これは緊急のお願いです。
この映画のため、また映画界全体のため、どうか誠実な対応をお願い致します。

尚、私共のお願いに対する回答は下記に記す代表者宛とし、その回答期限を3月8日までとさせていただきます。短い期間と思われるかもしれませんが、私共の「お願い」が昨年末より始まっていることを思い起こしていただきたく存じます。


草々

2月27日

<代表者>

(記名)

<以下賛同者>

(記名)


上記手紙に対するブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン宣伝部からの回答です。(※映画のネタバレ含む)

2004年3月5日

ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)宣伝部(ウォルト・ディズニー・ジャパンの社印)

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

**様及び**様からの2月27日付け書簡拝受いたしました。また、以前に頂戴いたしました書簡等につきましても併せて御礼申し上げます。

**様及び**様をはじめとされる数名様から以前頂戴いたしましたご意見等を考慮し、弊社配給作品『マスター・アンド・コマンダー』の新聞広告及びテレビコマーシャル等を変更いたしましたことは、既にご存知のことと推測申し上げます。また、日本広告審査機構様につきましても平成16年2月10日付けで、回答申し下げて(ママ)おりますこともご存知のことと思います。

 さて、今般、上記映画につき、再度ご意見を賜りましたので、以下、弊社の考え方につき、ご説明申し上げたいと存じます。

 今般、**様お呼び(ママ)**様よりご指摘を頂きました点は、『さようなら、母さん。僕は〜』及び『〜戦場に送られたのはまだ幼い少年たちであった』という文言及びこれに類似する文言ですが、日本広告審査機構様への回答の中でも説明いたしましたとおり、弊社は、この映画を子供達の悲劇として世に送り出す意図は一切有しておりません。この映画は、フランス軍との戦いの中で表現されるオーブリーとマチュリンの友情と確執、その中に自然に溶け込むそれぞれの少年達のあどけなさ、勇気、不安、怯え、規律、友情、そして失意の中で死を選ぶホロム等のいくつものストーリーのタペストリーを折り込んだ素晴らしい作品であると思っております。このような素晴らしい作品をできる限り多くの皆様に鑑賞していただきたいという思いから、当初の宣伝広告企画を立てましたが、作品に対する誤解を招くものであってはならないという考えから、皆様のご意見を十分に考慮させて頂きました上で、その後の新聞紙上での広告宣伝はレイアウト及び広告コピー及びテレビコマーシャル等につきましても変更を加えた上で展開することとしました。また、弊社ホームページ上での告知内容も変更致しました。特にテレビコマーシャルでは、この映画が持つ多面的要素を伝えるべく複数のバージョンを作成致しました。

 確かに現時点における宣伝広告の中にはご指摘がありました表現等を依然として使用しているものもありますが、これらの展開はこの映画の多面性を表現するためのものであります。

 ご案内の通り、本作品は2月28日に劇場公開されました。そして弊社にも鑑賞された皆様から多数の貴重なご意見を頂戴しております。オーブリーの威厳とカリスマ性に感動した方、マチュリンの理性と子供らしさの交差の中で表現される「複雑で豊かな内面をいちばん感じさせてくれた」という方、そしてブレイクニーの優しさを感じたという方、等々のご意見を頂いております。

 ピーター・ウィアー監督自身も、同趣旨のことを言明しておりますし、特に、弊社が行っております宣伝につきましても理解を頂いております。

 先週土曜日の封切りからまだ一週間しかたっておりませんが、配給を担当するものとしてできるだけ多くの皆様に鑑賞していただけるよう努力してまいりたいと存じます。

 末筆ながら、**様、**様他それに賛同者の皆様より貴重なるご意見を賜りましたことに関し、衷心より感謝申し上げます。有難うございました。

敬具




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