マスター・アンド・コマンダー Master and Commander:The Far Side Of The World
感想その2(ちょとだけネタバレバージョン)



この「感想」では、ストーリーのポイントは避けていますが、細かい点でのネタバレはあります。また、思わせぶりな発言もあるかも。思いつくままに箇条書きで加えてゆきます。(2003/12/06)

第2段更新。最新の更新はこちら。(2003/12/08)

第3段更新。最新の更新はこちら。(2003/12/12)

・まずびっくりしたのは、しょっぱなの水兵たちのハンモックが揺れているシーン。原作で読んで想像はついていたのですが、あんなに狭いとは。あれで眠れるところが凄いなあ。

・それに続いて映る大砲の列。ひとつひとつに名前がついているのに注目。「Jumping Billy」とか「Sudden Death」とか。

・最初に原作ファンがニヤリとするあろうシーンは、最初に画面に登場する「キャラクター」が、山羊のアスパシアちゃんであること。いえ、映画には名前は出てきませんが…彼女はサプライズ号唯一の女の子(?)です。

・私が一番好きなシーンは、スティーブンが「ジャック、大丈夫か?」と言うころ。このシーンを見るために何度も映画館に通いそう。

・艦長が士官たちと会食しているシーンが2回ありますが、艦長は毎日士官たちと一緒に食事するわけではありません。士官たちは「士官集会室(wardroom)」で、艦長は艦長室で一人で食事します。この2度の会食シーンは、最初は「艦長が艦長室に士官たちを招待している」二度目は「士官たちが艦長を招待している(毎週日曜日の習慣)」ところです。

・最初の食事のシーンで、ジャックはネルソン卿と会った時のことを語ります。1巻3章(ハヤカワ版上巻191p)を参照。

・また、この食事のシーンで、6巻に登場する「lesser weevil」のジョークが披露されます。6巻2章の「解説」を参照。どうがんばっても、日本人には笑えるジョークではないけど、これを言うときのジャックの顔がすごく好き。ジョーク自体はおかしくなくても、つられて微笑んでしまいます。

・2度目の食事のシーンで出される特別デザート「フローティング・ガラパゴス諸島」のレシピは、レシピ本「Lobscouse & Spotted Dog」に載っています。写真はこちら。映画に出てきたのは、見たところあんまり美味しそうではありませんでしたが。

・食事のシーンの最中、まわりで会話が弾んでいるのにスティーブンが一人ぼーっとしている瞬間があって…これも、「おお、スティーブンらしい」と思える一瞬でした。

・ジャックが書いている手紙が一瞬だけ映るのをお見逃しなく!書き出しは「My dearest beloved Sophie」(<正確ではないかも)その手紙の上に、ミニアチュールの美しい女性の肖像画が。黒髪のようだけど、あれはソフィー…ですよね。

中ネタバレにつき反転==>ガラパゴス島でのジャックとスティーブンの会話(うろ覚えで書いているので正確ではありません)−「木におれの名前をつけてくれ、丈夫で、絶滅しそうもないやつに」「それなら大きな亀がいい。テストゥード・オーブレイだ」…3巻を読んだ人なら大喜び。<==

・夜、音楽を楽しむ二人に、キリックが「まったく、毎晩毎晩飽きもせずギーコギーコと…」とかなんとか、ブツブツ文句を言いながら作ってあげているのは…おおこれがかの有名な、キリックのtoasted cheese(チーズトースト)!へー、ああやって作るのね〜。

・ジャックとスティーブンがバイオリンとチェロの合奏をするところ、こんなにしっかりと出てくるとは思いませんでした。それもちゃんと、二人の関係を表すようなシーンになっていて、なかなかいい感じです。

・サプライズ号に刻まれたジャックの「青春の記念」のイニシャルも登場します。残念ながら、「ビール腹の人魚」はいなかったけど。

・非常に残念なのは、メイキング本写真が載っていた、艦長が海に潜るシーンがカットになっていたことです。そう、脱ぐシーンはないの…せめてDVDで復活希望。

・ジャックが士官候補生たちに六分儀を使った天体観測を教えているシーンで、ブラックニーくんの手元に注目。一瞬、「あれ、ミス?」と思ってしまうところがあるのですけど、よーーく見るとミスではないのですよね。…私は3回見て、3回とも「ミス発見!」と思っていたのですけど、あとでネットの掲示板を読んで、ミスではなかったことを納得しました。うーん、不覚。

・映画のロケに使われるのはこれが初めてだという、ガラパゴス諸島の美しい景色にも注目。この島の「テーマ」として使われているヨー・ヨー・マのチェロの曲も美しくて、スティーブンでなくても、"How extraordinary!"(なんて素晴らしい)と叫んでしまいます。

・ジャックは、若い部下のひとりにネルソン提督の戦績を記した本をプレゼントします。それはジャックがネルソンを心から尊敬しているからでもあるのですが、もう一つの理由は……いいシーンです。

・細かいことですが、感心したのは船乗りたちの「手」。そして水兵たちの「歯」。21世紀の手と歯じゃないです。

・ブラジルで補給しているシーンは、唯一、女性が出てくるシーンなのですが…この時のジャックの「目つき」に注目。目は口ほどに物を言う。

・スティーブンにとっては宝の山のガラパゴス諸島。でも、他の船乗りたちは珍しい動物には見向きもせず、何をやっているかというと…そう、クリケット!こんな所まで来てクリケットかよ英国人。

・スティーブン・マチュリンより遅れること30年、別の博物学者が「ビーグル号」という海軍測量船に乗ってガラパゴス諸島を訪れました。彼の名はチャールズ・ダーウィン。彼は後に、この時の観察を元に「種の起源」という本を出版し、科学界の不滅の業績を残すことになります。…事情が違っていれば、進化論に名を残したのはマチュリン先生になっていたのかもね。

・スティーブンの本で、身を守るために「擬態」する昆虫の絵に目をとめたブラックニーくん。「神様がこういうふうに変えたんですか?」と彼に尋ねます。スティーブンは「そうだよ。でも、彼らは自ら変わったのかもしれない。それが問題だ…」と答えます。短い会話ですが、彼らが進化論の芽生えた島に近づいていることを考えると、意味深長です。

2003/12/8

・海外のオブライアン掲示板で拾った小話:「あんな地の果てにいるのに、ジャックはどこでネルソンの本を手に入れたんだろう?」「そりゃ、ブラジルが近いから、アマゾンで買ったんでしょう。」失礼しました〜

・海外のオブライアン掲示板で拾った小話その2:上で書いた、ブラックニーくんの六分儀観測シーンの「ミス」について…「あの六分儀はsecond hand(中古)なんだろう。」…いや、笑える方だけ笑って下さい。

・ジャックとスティーブンの演奏する曲の中で、ことさら印象的なのはボッケリーニの「La Musica Notturna Delle Strade Di Madrid(マドリッド街路の夜の音楽)」。この曲は、一部バイオリンとチェロをギターのように抱えて指で演奏します。ラッセルもベタニーさんもギターは慣れているから、この演奏法の方が楽だったりして。

・ドクター・マチュリンは優秀な医師にして熱心な博物学者。…そう、彼の3つ目の顔−シークレット・エージェントとしての側面はこの映画ではまったく触れられていません。まあ、妥当な選択かな。私も、「軍艦の軍医がスパイでもあるなんて、2時間の映画でどうやって観客に納得させるんだろう?」と思っていましたから。

・軍医助手のヒギンスはまったく頼りにならないのですが、マチュリン先生は普段あまり指導していないのでしょうか?まあ、彼は見込みのある人には熱心に指導するけど(5巻のヘラパスくんとか)、そうでない人は面倒くさがって放っておきそう。

・そんなヒギンスがなぜ軍医助手をやっているのかというと、原作では、彼は歯を引っこ抜くのが得意なんですよね。スティーブンは歯を抜くのが苦手なので、「抜歯担当」として乗艦させているのです(メイキング本によると、映画の設定も同じらしい)。このへんの事情は、時間がなかったらしく映画では説明されませんが。

・ジャックやスティーブンにキリックが持ってくるコーヒー。あんな上品なカップだったとは。なんとなく、大きいマグカップかなんかで飲んでいるような気がしていました。

・スティーブンのサーバントのパディーン。原作ではけっこう重要なキャラクターなんですが、映画では…「ポール・ベタニーより背が高い」という点だけでキャスティングされた模様。


2003/12/12

・スティーブンがサプライズ号のことを"Aging man-of-war"(年老いてきている軍艦)と言った時、ジャックは「おれのことならaging man of warと呼んでもいいが、彼女は年寄りじゃないぞ」と反論します。壊れたところを愛しげに撫でながら、ジャックが言うセリフ、"…bluff bow and lovely lines...fast when she was well-handled..." これは、原作3巻 "H.M.S.Surprise"で、この艦を始めて指揮すると知った時に、ジャックが考えていた事と同じ。3巻4章(ハヤカワ版上巻165p)参照。

・水兵たちが楽しげに合唱しているところに士官候補生のホラムが加わり、とたんに水兵たちが唄を止めてしまうシーン。この時の唄は「Spanish Ladies」。歌詞はこうです。

Farewell and adieu to you Spanish ladies! Farewell and adieu to you ladies of Spain!
さらば、アデュー、スペインのご婦人たち!
For we're received orders to sail for old England. And perhaps never more we shall see you again.
おれたちは懐かしの英国に帰る命令を受けたんだ。だからたぶん、もう二度と会えないよ


…つまり、これは「故郷へ帰りたい」という気持ちをこめた歌なんですね。

水兵が歌をやめてしまったのは、仲間だけで楽しく歌っていたところに突然「上司」が割り込んできたので白けてしまったから、ジャックがそれを見て渋い顔をしていたのは、ホラムの水兵に迎合しようとする傾向を苦々しく思ったから…だと思っていたのですが、それだけではないようです。

「これから英国へ帰るぞ!」という歌詞の唄を合唱するのは、艦を英国に向わせず、アケロン号を追跡するというジャックの決断への遠回しの不満ともとれるわけです。(多分、そんなつもりはなかったと思いますが。)だから水兵たちはジャックが来たのを見て歌を止めたわけで、それに気づかず朗々と歌ってしまったホラムは二重の意味で配慮に欠けていたわけです。

以上、やはりオブライアンの掲示板で読んで「なるほど〜」と思ったことです。唄の選択にも意味があったんですね。深いわぁ。

・とにかくこの映画について書いてあるものが読みたくて、くされトマトのレビューを片っ端から読んでいる私ですが、その中で、これを「スター・トレック」に喩えたレビューがいくつかありました。つまり、ジェイムズ・T・カーク艦長=オーブリー艦長、ミスター・スポック+ドクター・マッコイ=ドクター・マチュリン…うーん、合っているような、いないような。マチュリンが、「艦長、それは非論理的です」なんて言ったり…しないわね(笑)。


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