映画感想 (2)


トロイ ☆☆☆

軽く楽しめる映画でした。美しい海、美しい男、美しい筋肉。

この映画が批判されているとしたら、あれですね、あの「ああ〜う〜」という女声の歌の入った音楽、あれがあまりにも「グラディエーター」に似ているせいじゃないでしょうか。あれがあるんでつい「グラ」と比較してしまうのでしょう。(実際、最初のシーンはあまりに似すぎていて、私も一瞬、麦畑を歩くマキシマスが出てきそうな気がしたし。)でも、全然違う映画です。(アキレスかヘクトルのどちらかにマキシマスを求めたら、失望すること確実。)

私は「イーリアス」を読んだ事はないし、この話は子供向きの本で読んだ記憶があるのみなので何とも言えないのですが…この話を「アキレス対ヘクトル」の映画にしたのは大正解だったと思います。今時、「国を滅ぼす愛」とか「傾国の美女」の話なんて、見たいと思わないですよ、女性は。それより「男と男の対決」「さまざまなタイプの美男ずらり揃い踏み」でしょう。

その点では、エリック・バナもショーン・ビーンも美じいさんのピーター・オトゥールもよかった。でも、やっぱりこれはアキレスの、ブラッド・ピットの映画ですね。あのバカっぽいまでの美しさ(褒めているのです)、美しい腕と脚、脱ぎ脱ぎ方面のサービスぶり、軽々とした動き、名声に焦がれる、自己中でバイセクシャルなヤンチャ坊主。トシをとりすぎる前に彼がこの役をやってくれてよかったです。

だからこそ、彼が破天荒なヤンチャな魅力を発揮してくれる場面が少なかったのは、私的には残念。最初のシーンの「アキレスはどこだ〜」と探しにいったら、ご乱交の後女二人と寝たくっている、という登場があまりにすばらしくて、いいキャラだなーと思ったのに、割とすぐに「愛に目覚め」たりしちゃったのは残念。いや、最後はそれでもいいのだけど、その前にもっと好き勝手やってくれなきゃ。

ヘレン役の女優さんがあまりに安いので、予告編を見たときから「?」となっていたのですが(キレイはキレイだけど、王妃というより「今月のプレイメイト」って感じ)、あれはわざと…というか、「ヘレンとパリスには重点をおいていない」という表れなのでしょうね。だったら、本当にもっと出番を少なくしてほしかった。あのバカップルが出てくると、映画がどんどん安くなるのよね。いや、オーランドくんの愚弟ぶりはそれなりに可愛かったですけど。

何でも、監督は最初はヘレンを出さないつもりだったのに、会社から圧力をかけられて出すことになって急遽みつけた女優さんだそうです。ああ、出さない方がよかった。ウィアー監督のように、踏みとどまってほしかった。

「女性キャラが出てこないと女性が感情移入できない」なんていう思い込みを、いい加減捨てて欲しいですな、日米の映画関係者は。女性キャラへの感情移入なら、ちゃんと女性を主人公にした映画でします。このヘレンにどうやって感情移入しろっちゅうねん。(2004/6/12)



ベッカムに恋して ☆☆☆

この邦題、とても評判が悪いようです。公開されたのはベッカム人気が最高潮の頃だし、日本語にしてぴったりくる題名は思いつかないし、しょうがないかなあ、とも思うのですが、いかにも惜しい気がする。なぜなら、この映画でおそらく一番いい部分は、"Bend it like Beckham"というこの題名だからです。

私はサッカーにあまり詳しくないのでよくわからないのですが、何でも、ベッカムというのは「止まったボールを蹴らせたら世界一」だそうですね。見事にスピンがかかって敵の間をすり抜けてゆく彼のコーナーキックは絶品らしい。「ベッカムのように曲げろ」というこの題名は、女としてマイノリティとして生きてゆく上での障害を、ベッカムのコーナーキックのようにしなやかにすりぬけてゆけ−という意味。実にいい題名です。

主人公のジェスミンダは、予想より大人っぽい娘で、ベッカムにも「恋している」というより、選手として憧れている部分の方が大きい感じ。だから本当は、「ベッカムのコーナーキックに恋して」という題名にしなければいけなかったかも(笑)。

観る前は、「ロンドンに住むサッカー好きのインド系の女の子が、『サッカーなんて女らしくない、それより料理を覚えなさい!』という家族の反対にもめげずにがんばる」という話だと思っていました。いや、それはその通りではあるのですが…お母さんはたしかにそうなんですが、お父さんの反対している理由は違っていました。

お父さんはかつて優秀なクリケット選手だったのですが、インド系であるために英国のチームを追い出されてしまったという苦い経験があります。だから、ただでさえマイノリティとして生きてゆくしかない娘は、「女子サッカー」なんていう、それ自体未だマイナーな競技で苦労するより、大学へ行って弁護士を目指した方が将来にプラスだという、まことにもっともな理由で反対しているのでした。

以下ネタばれ==>しかし、娘ががんばる姿を見ているうちに、お父さんの気持ちが変わってきます。まあ、予想のつく展開ではありますが、「クリケットチームを追い出された時、私は黙って甘んじた。それ以来、クリケットのことは忘れようと努めてきた。お前にはその過ちを繰り返してほしくない」と言って、娘をサッカー留学に送り出すところ、けっこう感動しました。ラストで(おそらく長いことやっていなかった)クリケットをプレイしているお父さんの姿が映るのが、また感慨深い。<===ネタばれここまで

「リトル・ダンサー」といい、これといい、英国のこの手の映画は「お父さんが泣かせる」というのがお約束なのかな。あ、ついお父さん中心の感想になってしまいましたが、主役は娘です(笑)。

それと、ロンドンにおけるインド系の元気さがうかがえる映画でもありました。マサラ映画みたいに踊りまくるシーンもあったし。

唯一のいちゃもんは、あの監督役の人かな。いくら膝を痛めているといえ、サッカー選手の走り方じゃない気がする。(2004/6/14)



めぐり逢う時間たち ☆☆☆☆

たぶん私はよくわかっていないのですが、この映画(「ダロウェイ夫人」を読まないとだめかなあ)。でも、わからないなりにかなり印象的な映画でした。

以下、暑さのせいで頭がまとまらなくて(便利な言い訳だ)ぐちゃぐちゃの感想です。いや、すでに映画の感想じゃないかも…

以前に「私の愛情の対象」という映画を観て、人生のオプションが自由に選べるってことは素晴らしい、けど自分で選んだ以上、幸福も不幸も言い訳なしで引き受けるしかないから厳しくもある、でもやっぱり素晴らしい…とか思っていたのですが、この映画のメリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマンの三世代の女性を見ていても同じようなことを感じました。

それと、ダイアナ(「オーブリー&マチュリン」シリーズの登場人物)のことも考えたりしていました。いろんなところでダイアナの行動が理解できないとか許せないとかよく読むのですが、私はその度に「えー、わたしはよくわかるけどなあ」と思っています。

ダイアナって、この映画のバージニア・ウルフよりずっと前の、女性の生き方のオプションなんてほとんどない時代のひとです。用意されている生き方にぴったりはまる人はいいですよ。あるいは、社会の常識に反することでも「こういう生き方もあるのだ、私はこれでいいのだ」とちゃんと言葉で説明できるほど頭のいい人は。

でもそうでない人は、自分でも理由がわからないままに常にどこかイライラしながらすごし、ある日極端な行動に走るんだろうな…と、この映画のジュリアン・ムーアを見ながら思いました。

少しは映画感想らしいことを。今更ですが、メリル・ストリープの上手さは化け物(ホメ言葉)ですな。ジュリアン・ムーアもすごい。ニコール・キッドマンは二人に比べたらそれほどでもなくて、オスカーは「右代表」って感じですが、途中でニコール・キッドマンが演じていることを忘れてしまうのはすごい。

以上、読み直しなし推敲なし。読みにくくてすみません。(2004/6/23)



ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 ☆☆☆☆

本当に本当に楽しかった。1800円で映画を観たのは3ヶ月ぶりぐらいですが、このワクワク感にくらべたら安いと思えるぐらいに。だから、後でいろいろ文句みたいなことも言うけど、気にしないでください。

私はハリポタは3巻だけ限定で「熱心なファン」です。(他の巻は、好きだがファンというわけではない。)だから、3巻の映画化が前2作より格段に良い出来なのは嬉しい。(前2作の出来が特に悪いわけではないけど。)

ヒッポグリフの造形は、今までこのシリーズに出てきたどのクリーチャーより良いし、「忍びの地図」のデザインには本当に感心しました。前2作のハデハデから、全体にダークなトーンに押さえてあるのもいい。「バットマン」から「バットマン・リターンズ」への変化みたいなもんで、前作を引き継ぎながら、より暗くなり、character-drivenになり、センスがよくなった。

そして、ゲーリー・オールドマン、デビッド・シューリスを始めとする、大人の俳優陣のすばらしさ。そして、常にこのシリーズの最大の輝ける星でありつづけるハーマイオニーのカッコよさ。なんだ、完璧じゃないか、と思いながら観ていました…最初の2時間は。

そう、残念なのは…この映画の唯一最大の欠点は、「解決編」があまりにも急ぎすぎで説明不足なことです。私は原作を英語と日本語両方で何度も読み返している人なので、こういう仮定に立つのは難しいのですが…これ、原作を読んでいない人には、よくわからないんじゃないかと思う。

以前に私は、「映画を必ずしも映画単独で評価する必要はない、原作とセットになっているという映画もアリだ」という意味のことを書いたのですが…この映画の場合、全体的に良く出来ているだけに、終盤の説明不足のせいで映画自体として傑作になりそこねているのが惜しいのです。

まあこの「解決編」は、原作でもある人物の長台詞のみで説明されていて、一回読んだだけではわかりにくかったところです。映画化は難しいだろうなーと思っていたのですが。だからこそ、いっそ回想シーンなどふんだんに取り入れて、じっくりやって欲しかった。それは私が個人的に「親世代」のファンだからというわけではなくて…やっぱりあの友情と裏切りのドラマが、3巻のキモだと思うのですけど。

また伏線として、「ピーター・ペティグリュー」の存在がこの解決編のポイントになっているのだから、あらかじめしっかり紹介しておくべきだったと思う。特に、彼の死因が「シリウスの起こした大爆発」であり、「死体が指一本しか見つからなかった」ということを。「犯人と被害者のトリック」…ミステリの基本です。

そう、前にも書いたけど、「ハリー・ポッター」シリーズって、ファンタジーでありながら話の基本構造はミステリなんですよね。だから、「事件のあらまし」「容疑者」「手がかり」はちゃんと提示しておかないと。

ハリーが地図にペティグリューの名前を見つけたり、それをルーピンに教えたりする原作にないシーンを入れたのは上手いと思う。でも、ペティグリューがなぜ重要なのかわからないのでは何にもならない。

ルーピン関係の伏線もはしょりすぎ。終盤でハーマイオニーが「あの薬は飲んだの?!」と叫ぶけど(<訂正。叫んだのはシリウスでした)、だったら要るでしょう、「あの薬」のシーンは。それからたとえば、「ルーピンの前で変身した『まね妖怪』を見て、ふと眉をひそめ首をかしげるハーマイオニー」とか「宿題をしながらはっと息を呑むハーマイオニー、資料の本の動く写真のアップ」とかの短いカットをはさんでおくだけで、最後の唐突さはだいぶ薄れると思うのですが。

そんなシーンを全部入れていたら時間が足りないだろうって?それなら代わりに、ホグズミードのシーンをそっくりカットしてはどうでしょうか。ピーター・ペティグリューとシリウスがハリーパパの親友だった話、殺人事件のあらまし、全部まとめて最初にロンパパが話してしまうのです。そうすればハリーが盗み聞きするシーンは必要ないし、「事件の背景説明」と「真相の暴露」が1回づつになって、かえってわかりやすかったのではないかと思いますが、どうでしょうか。まあ、いまさらまったく意味のない提案ですけどね。

褒めるつもりなのに、どうも文句の方が長くなってしまうなあ。でも、そこんとこを除けば良かったのですよほんと。

最後に褒めておこう。クディッチやキングス・クロス駅やクリスマスやゆかいなゴーストなどといった1〜2作で紹介済みの要素をばっさり切って、テーマを「ハリーと亡き両親との絆」に絞っているのはいいと思います。

恐怖に勝つのはユーモアだ」ということ、「幸福な記憶は絶望に打ち勝つ力がある」ということ−原作で魔法を通じて語られるテーマが、ハリーの「最も幸福な記憶」の設定を原作とは変えることで「取り返しのつかない大きな喪失(愛する人の死)にどう対処するか」というもう一つのテーマと繋がってくるあたりも、うまいなあと思いました。

まあ、とにもかくにも、映画を観るのにこんなにワクワクしたのは、去年の11月に「マスター・アンド・コマンダー」を初めて観たとき以来ですから。

ところで、映画館に入る前にちょうど、銀座をナイト・バスが走っているのを見ましたが、あれは何だったのかなあ。(2004/6/30)



スカートの翼ひろげて ☆☆

夜中にやっていたので、ポール・ベタニー目当てで見ました。
せっかくDVDレコーダーをつないだのだから録画して後で見ればよかったのですが、連休中で寝坊していたので眠くならず、最後まで見てしまいました。

「イギリスの戦時中に、若者が出征して労働力不足なのを補うために農業を手伝いに行く婦人部隊のお話」ということは読んでいたので、それを中心にしたさりげない感動ものかと思っていたのですが…普通にメロドラマでした。

主人公の3人の女性が手伝いに行く農家の息子(<この人が出征したために手伝いに来ているはずなのに、なぜかまだいる)がメロドラマの中心になるのですが、この男がねー。見た目もしょぼい上に超浮気者、性格もぐずぐずうだうだしていて、あー苛々する。ヒロインが婚約者を捨てて走りたくなるのがどうしても納得ゆかない。いや、その婚約者がポール・ベタニーだからというわけではなくてね。

ポール・ベタニー、よーく見てないと見逃してしまうほどのちょい役かと覚悟していたのですが、わりとちゃんと脇役でした。軍服がかっこよすぎ。ズボンをきちんと畳んでいるお育ちの良さそうなところとか、あとの病院のシーンの目が泳いでいるとことか、小さい役ながらなかなかよかったです。(2004/8/8)



アメリカン・スウィートハート ☆1/2

久々に、最後まで観たのを後悔したくなる映画だった。

こんな映画を見て腹を立てるのもナンだけど…別居中とはいえ、妻の妹と寝る男って絶対キモチワルイよ〜。いくらジョン・キューザックが演じていても、この男はダメダメ。

ジュリア・ロバーツは自分の意志で姉の付き人をやっていたくせに、姉の夫と寝た上に、最後には何百人もの記者の前でわざわざ「あなたのワガママに付き合うのはうんざり」とか言うなんて、何てイヤな女なんだ。

逆にビリー・クリスタルは「血も涙もない宣伝マン」のはずなのに、中途半端にいい人で何がしたいのかわからない。キャサリン・ゼダ・ジョーンズは「最後にひどい目に遭わされて当然のビッチ」のはずなのに、あの程度のワガママなら可愛いとしか思えない。

ヒーローとヒロイン以外の人に味方したくなるようでは、ロマコメは失敗なんですよね。ロマコメの路線をあきらめて、ジュリアのキャラを消して、ビリーのキャラを中心にした業界内幕コメディにしたら面白かったのかも…(2004/8/14)



華氏911 ☆☆☆☆

たしかに、「ボウリング・フォー・コロンバイン」ほどには「面白く」はないのだが−
たしかに、ムーアの著作「おいブッシュ、世界を返せ」を読んでいれば、新しい情報は何もないのだが−

というか、ムーアは何も「暴露」しているわけではないのだ。ここで語られていることのひとつひとつは、トップ・シークレットでもなんでもなく、特に上手に隠されているわけでもなく、それどころか、使われている素材のほとんどは、公文書だったり、ちゃんとメディアで報道された映像だ。ちゃんと目を開き頭を使っていれば、わかるはずのことなのだ。

なのに、なぜわからないんだ、アメリカ人(…の一部)には!−という苛立ちと。

ひょっとして、本当はわかっているのか?騙されたふりをしてるだけで、実は百も承知で、それでもブッシュを支持しているのか?「戦う大統領」だから、「強いアメリカ」を実感したいから。(大義があろうとなかろうと、戦争しなけりゃ戦勝国にはなれないものね)−という、何とも胃の重くなる、うすら寒い思いと。

おそらく感動の涙を誘うであろう、息子をイラクで失った母親のエピソードも−彼女には心から同情するが、それでも−「自分の息子を失わなければわからなかったのか」と、どこか醒めた目で見ずにはいられない。

正直、この映画を観ても、「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「ロジャー&ミー」を観た時のような、知的刺激や楽しさは感じなかった。

でも、それがこの映画なのだと思う。他に描き方はないのだろう。映画として良く出来ているかどうかは(かなり良くできているとは思うが)、この際、あまり関係ない。

アメリカ人は本当に見えていないのか、無意識に目をふさいでいるのか、それとも−考えるのも嫌だけど−見えているのに、それでいいと思っているのか?(2004/9/29 「ブッシュ再選確実」とのニュースを聞きつつ)



笑の大学 ☆☆1/2


映画館で日本映画を観るのは「千と千尋の神隠し」以来だ。実写だと「七人の侍」のリバイバル以来。実写の新作に限れば、もしかして生まれて初めて?…と思ったけど、鑑賞記録をしらべてみたら「利休」以来で十五年ぶりでした。(何で「利休」を観たのかは謎。人の付き合いだったと思うのですが…)

ま、それはともかく…

そこそこ面白かったのですが、「泣かせ」のシーンの演出が私の好みには味がくどすぎて、居心地悪い気分になりました。

「喜劇の脚本にカタブツの検閲官が難癖をつけて、それに対応しているうちに、皮肉なことにかえって面白くなってしまう」というのがこの話の主眼だと思うのですが、監督か脚本家が「それだと検閲制度を肯定しているみたいだ」と思ったのか、それをカバーしようと試みているようなシーンと台詞があるのが、ちょっと邪魔な感じ。

でも、演技はよかったです。役所さんが上手いのは予想していましたが、ゴローちゃんが健闘しているのにびっくり。昭和十五年の人間にはどうしても見えないけど、まあ、それはしょうがないよね。

ラストのタイトルがオシャレ。あの後に、ちらっとでも「登場人物のその後」を示すシーンがあるとよかったなあ。(2004/11/14)



ボーン・アイデンティティ ☆☆☆


ラドラムの原作「暗殺者」を読んだのはずいぶん昔のことで、記憶は定かでないのですが、もっと派手にバイオレンスだったような気がする。映画はキレイにまとめているけど、正攻法のアクションという感じ。派手派手のバイオレンスアクション映画は多いので、今はこっちの方が新鮮かもしれない。

でも、やっぱり最高なのは「尻にマイクロフィルムを埋められた記憶喪失の男が海から助けられる」「なぜか、明らかにシロウトとは思えない技術をいろいろ持っている」「で、彼は『僕はなぜこんなことやあんなことができるんだろう?』と悩む」という原作の美味しすぎる設定なのですが。

「ボーンにマット・デイモン?イメージ違うなあ」と思っていたのですが、この映画の主人公には合っていました。

以下ネタバレ(原作読んだのは相当前なので、勘違いしている可能性はあり。)
原作と映画で主人公の「正体」の設定が違うのは、時代の流れを感じました。「政府の諜報機関」に対する人々のイメージが落ちて、「フリーランスの暗殺者」は悪者だけど「それを殺そうとしているCIAのエージェント」は善玉だとは、もう誰も思ってくれない。だから「自分の正体が前者かと思ったけど後者でよかった〜」というのは話として成立しないのかな。むしろ「悔い改めた悪人」の方がいい人に思えるのかも。

でも、サスペンスという観点から見たら、ヒロインがマジで危ない目に遭うシーンが皆無なのはマイナスかも。原作どおり、はじめの方でヒロインが命を救われるところがあった方が、行動を共にする必然性があると思うのですが…
】(2004/11/23)



ラブ・アクチュアリー ☆☆☆☆☆

面白かったです!これを映画館でやっていた時は「マスター・アンド・コマンダー」を観るのに忙しくて観に行けなかったのですが、かえってよかったかな。今の季節に観てこその映画ですね。

こういう群像劇は、ひとりひとりの話がポイントだけでさっさと終わるのがかえって気持ちいいです。英国のいい役者の演技がたくさん楽しめるのもいい。(ローワン・アトキンソンだけ余計ですが。)

ヒュー・グラントが、英国首相の役をやってさえ、まったく寸分違わぬいつものヒュー・グラントなのがお見事です(<褒めている)。コリン・ファースが水に飛び込むのも、もしかしてお約束?

音声解説でヒュー・グラントがコリン・ファースの悪口ばかり言っていたのが可笑しかったです。こんなこと言えるってことは、ほんとは仲がいいんだろう…と普通なら思うところだけど、ほんとはほんとに仲悪かったりしてね(笑)。

リーアム・ニーソンの息子をやっていた子はヒュー・グラントのまたいとこだそうですね。そういえば、似ているような…この子も音声解説に出ていて、監督に「ヒューとコリン、どっちのキャリアを歩みたい?」と聞かれて困ってました。(2004/12/3)



MR.インクレディブル ☆☆☆☆☆

傑作!

「Mr.インクレディブルはどことなくジャック・オーブリーを思わせる」とか思ったらへんですか。(スーパーパワーを発揮して活躍しているのにやりすぎて訴えられちゃうところとか、活動を禁止されてでっかい身体をちぢこめていじけているところとか。)

Mr.インクレディブルに惚れたらへんですか。(2004/12/12)



ターミナル ☆☆☆

観たのは去年なんですが、いまさら感想を…

面白かったです。なぜか私、空港って好きなんですよね…海外旅行の時のワクワク感が蘇ってくるせいだろうか。この空港が全部セットとはすごいなあ。ホンモノのJFKでロケする予定が、9・11の影響で空港の撮影が許可されなくなり、セットを作らざるを得なかったそうですが。タイタニックの巨大タンクみたいに、残しておけば今後いろんな映画で使えそう。(残してあるかどうかは知りませんが。)

キャサリン・ゼダ=ジョーンズが、相変わらずステキです。トム・ハンクスも、感じいいし演技もうまいのだけど…ただ、この役はトム・ハンクスでない方がよかったような気が。これはこっちの問題なんですが、あまりにお馴染みの人なんで、英語喋れないのがなんかピンとこないのですよね。興行面の要望があるのは分かるけど…やっぱり、ここはホンモノの「外国人」(できれば東欧人)で、もうちょっと若い人を使って欲しかったような。

トムが英語勉強するシーンで、なぜか「フレンズ」の記事を使ってましたね。お馴染みの写真がアップで映ったのでびっくりしました。(2005/1/21)



ハウルの動く城 ☆☆☆

たしかに描き方のバランスが悪いところはあるのだけど(戦争をあんなに重厚・シリアスに描いておいて、【あんなにあっさり終わらせては拍子抜けだ】とか)、私はかえってこの方が好きでした。

何もかもにきっちり説明がついて、「監督はこの映画で何を訴えたかったのか」なんつう安易な疑問にもすっきりした答えが出るような映画が、なぜか疎ましく感じられる今日この頃。このバランスの悪さ、まとまりのなさがかえって好もしく感じたりする。それに、絵がこれだけ素晴らしければ、ストーリーなんて「良ければそれに越したことはない」程度のもんです。

ソフィーの呪いは解けたのか解けてないのか、気にしている人が多いみたいだけど…あれは、【元々「ばあさんになる呪い」じゃなくて「精神年齢に合った肉体年齢になる呪い」なのではないかな。だから、最後まで解けていない。心が若いままなら、ソフィーは一生あの姿】なんでしょう、きっと。

ついでに言うと…これを観た日比谷の映画館「スカラ座」は素晴らしいですね〜。全席指定だし、椅子もいいし、傾斜がついてて前の人の頭が邪魔にならないし、上映前にスクリーンの周りの(観客の視界に入る範囲の)全部の灯りが順に消えてゆくのも素敵。(2005/2/5)



ネバーランド ☆☆1/2

悪い映画じゃないし、「ピーター・パン」の話が好きなら絶対に心を揺さぶられる美しいシーンもありました。しかし…【人の死をクライマックスにして感動を盛り上げる映画】は、やっぱりちょっと苦手です。いちばん感動的なのは劇中劇。「ネバーランド」ではなく「ピーター・パン」に感動した…という感じかな。

ついでに言うと…これを観た日比谷の映画館「日比谷映画」はイマイチ。全席指定じゃないので、映画終盤になると扉の外に並んで次回上映を待っている人の声がザワザワと聞こえるし。周りの椅子とあまりに差をつけたでっかい「プレミアシート」が一番観やすいエリアをどーんと占めているのに、いつ行っても誰も座ってないし。なんかもったいない…(2005/2/5)



レイ ☆☆☆☆

「オペラ座の怪人」が満席だったので代わりに観たのですが、良かったです!観客が少なかったのがもったいない。

主人公(レイ・チャールズ)の、ヤク中のとことか、女に超だらしないとことか、けっこう金にも汚いとこも余さず描いているのに、見ていてなぜか彼を愛し、応援せずにいられない。彼がそうなった背景を描く回想シーンのはさみ方が上手いからかな。事実そのものが限りなくドラマチックなのに、セリフで「感動のだめ押し」をしようとせずに、音楽にゆだねる演出も好感がもてます。

愛人が泣きながら"Hit the road Jack"を歌うシーンが素晴らしい。"Georgia on My Mind"も。今まで何となく耳に馴染んでいた歌の、底にこめられた魂をはじめて理解する瞬間…鳥肌ものです。(2005/2/10)



ロミオ&ジュリエット ☆☆1/2

台詞はまったくシェイクスピアの原作通りなのに、画面はハデハデの現代。銃を持っているのに台詞は「私の剣を…」とかなっていて、それはこの世界でポピュラーな銃のブランドが"SWORD"だから(でも字幕では普通に「銃」となるので何のこっちゃ)…というようなお遊びはすごく好みだし、美術や衣装のセンスも好きです。でももう一歩、ひねりが足りない感じがして、途中で飽きてしまいました。ごめん。

「ロミオとジュリエット」のアレンジというのは、ハードル高いと思う。フランコ・ゼフィレッリの完璧にして清新な映画化がある上に、大傑作「ウエストサイド物語」や、最近では「恋に落ちたシェイクスピア」も面白かったし。見ながら、いちいちこの3本と比較してしまって。正統派のゼフィレッリ監督版の方が新鮮に感じてしまった。だめじゃん。

まあ、この監督は数年後に「椿姫」のアレンジで感涙ものの大傑作を作ってくれたから、これはその小手調べってところかな。

感動して見た人には怒られそうだけど、ひとつだけ、つっこまずにはいられない。ラスト、ロミオが死ぬタイミングだけが原作と微妙に違っているのは…意図はわかるんだけど、ヘンです。台詞がそのまんまだから、「(唇が)まだ温かい」って…まだ生きてますから!(2005/2/23)



”アイデンティティ” ☆☆☆☆

やった、これは面白い!

よく出来たミステリというのは、最後まで犯人(トリック)が全然わからなかったのに、見終わって(読み終わって)から思い返すと
「ああ、もちろんそうだよ!あんなにはっきりヒントが出てたじゃないか!あれに気づかないなんて、私ってなんて馬鹿馬鹿!」
…といった嬉しい(?)思いをさせてくれるものですが、これはまさにそれ。(結末がわからなければいいってもんでもないのよね〜)(2005/2/23)



ドックヴィル ☆☆☆☆

これはミステリじゃないけど、最後になって「あ〜、なるほど、そういうことね」と、全て納得がゆくところが気持ちいい。題名(村の名前)の意味とか、透明な犬とか。【あれ、住民自身が犬だから犬は見えなくて、住民が全部死んでから初めて見えるようになったってことですよね。底意地悪いわ、ほんと。

「アイデンティティ」と比較して観ると、また味わい深い。ひょっとしてこれも、そういうことなのかも…(笑)(2005/2/23)



伝記映画あれこれ(歌え!ロレッタ愛のために☆☆☆ フリーダ☆☆☆ エド・ウッド☆☆☆☆☆)

映画館で観た「Ray レイ」も入れて、アーティストの伝記映画ばっかり観ているような気がする。単に「アカデミー賞特集」を観ているだけなんですが。「ビューティフル・マインド」も含めて、アカデミー賞って、つくづく伝記映画好きだなあ。

これらの伝記映画は、ごく大雑把に言えば「主人公が自らの才能と周囲の理解・愛情により、貧乏・差別・病気・障害を乗り越えて行く」という話。どれもいい映画だし、感動的だし、励まされるのだけど…才能あってこそなんだよねー、とか考えていて、そうでない伝記映画を思い出しました。それは「エド・ウッド」。

あれは、主人公がその情熱と脳天気さと、周囲の変人たちの温かい理解によって「自らの才能の無さ」を乗り越えて行く話でした。自身はバリバリの才人であるティム・バートンの、彼に対する愛情溢れる視線が素敵で、大好きな映画です。実際のエド・ウッドの人生が、あの映画ほどハッピー・エンドじゃなかったことを考えると、ほろ苦い気分になりますが。

ところで、「レイ」もそうだけど、「ロレッタ」の子供の頃の貧乏っぷりは驚きですわ。1940〜50年代のアメリカに(白人でも)あんな貧乏があったとは。当時、ハリウッド映画を観てアメリカン・ライフに憧れていた日本人には想像もつかなかっただろうなあ。

「歌え!ロレッタ愛のために」って、恥ずかしい邦題ナンバーワンですが、伝記映画をはじめどんな映画にでも応用できそうですね。「歌え!レイ愛のために」「描け!フリーダ愛のために」「撮れ!エド愛のために」「計算しろ!ジョン愛のために」etc...

相変わらず、全然映画の感想になってなくてすみません。(2005/2/23)



ミュージカル映画あれこれ(オペラ座の怪人 ☆☆☆1/2 オール・ザット・ジャズ☆☆☆☆☆)

「オペラ座の怪人」を見ました。うーん、ファントム役の人の歌声がイマイチなのが、何とも惜しいな〜。でも、やっぱり音楽はすばらしいですね。他のキャストはみんなよかったし。アンドリュー・ロイド=ウェーバーのなかでも、これは「ジーザス・クライスト・スーパースター」や「サンセット大通り」ほどのお気に入りじゃないと思っていたのですが、耳になじんでくるといい曲です。

でも、その後すぐにNHK衛星でやってた「オール・ザット・ジャズ」を観てしまったのがまずかった。頭の中をBGMは、すっかり取って代わられてしまいました。これ、15か16で初めて見た時も大好きだったけど、この年になって改めてみるとまた何倍も素晴らしく思える。ミュージカル映画としてはベスト10に入る傑作、どころか、1960年代以降(つまり、MGMミュージカルが衰退した後)の、映画オリジナルミュージカルとしては最高傑作だと断言できる。頭の中を「Bye Bye Life」と「ショウほど素敵な商売はない」が無限リピート状態です。

しかし、ミュージカルって明るく楽しいもののはずなのに、私が大好きなミュージカルってなぜか死ぬ話ばっかだ。(「ジーザス」「サンセット大通り」「オール・ザット・ジャズ」「ムーラン・ルージュ」…)(2005/3/9)



エターナル・サンシャイン ☆☆☆1/2

「気軽に覗くなよ、人の心の深淵を!」…昔読んだ「おそろしくて言えない」というマンガの、妙に可笑しくて印象に残っている一言を思い出してしまいました。

いやー、面白かったです。こういうあり得ない設定のコメディって、「自分ならどうするだろう」と気軽に考えさせてくれるのが楽しいですね。(そう、宣伝の印象とは違って、ロマンティック・コメディなんですねこれ。みんなコメディだと思って観てないから、可笑しいシーンでもクスリともしないのがちょっと寂しかった。)同じ「自分ならどうするだろう」でも、「ソフィーの選択」みたいな映画でそれを考えるのは辛いけど。

まあでも、一番消したい記憶が「ケンカ別れした恋人のこと」で、「思い出したくない恥ずかしい記憶」が…せいぜいあの程度のことなんて、何という幸せな人生だよ、という気もする。野暮を承知で言えば、本当にこういう装置があるなら、PTSDで生きて行くのも困難な人が使うべきだよな。「ソフィーの選択」のソフィーとか…

いや、何で「ソフィーの選択」が出てくるのかというと、あの映画を観たときに「私だったらソフィーと同じ選択をしたかもしれない。そしてその記憶をかかえていたら、やはり生きてはいけないだろう。ソフィーの記憶を消してあげられれば…」と、切実に思ったからです。

そんな深刻なことではありませんが、私にも、さっぱり消したほうがすっきりするであろう記憶は多々あります。でも「幸せな時もあったが結局うまくゆかなかった恋の記憶」なんて、いくら血迷ったって絶対に絶対に消さないなあ。一時的に辛くても、2週間(あるいは半年。個人差あり)もすればいい思い出に変わるに決まってるし。それはある意味、財産だし。いい経験と教訓にもなるし。

でも、経験と教訓を溜め込み過ぎると、同じ失敗を恐れて一歩が踏み出せない、と言うことはあるよね。ネタバレ→【「結局、悪いことは忘れてやりなおす運命の恋人ってことかい」と思いながら観ていたのですが…最後にもう一ひねりあって、「自分たちが運命の恋人などではなく、ただの『お互い好みのタイプなのに相性は悪い男女』であることを悟り、結局また同じ事で苦しむことになる可能性を十分承知しつつ、もう一度やってみることにする」というラストになっていたのがよかったです。「いいよ」という一言に、そう、これを受け入れることが人生よね、と思って、ちょっとうるっときました。

とにかく、観に行って損はないです。これが気に入ったら、ビル・マーレーの「恋はデジャ・ブ」も観てね。やはりあり得ない設定で、「自分ならどうするだろう」と気楽に考えさせてくれるコメディです。「ハリウッド的」というと悪い意味で使う人が多いけど、ほんとはこういう洒落た映画こそ「ハリウッド的」の真髄なんだよな…絶対にどこかで重くなる日本映画やフランス映画にはできない芸当。

最後に、ミもフタもない一言を。記憶を消すことの是非以前に、あんなデリケートそうな施術の最中にマリファナ吸ったりいちゃついたり、抜け出してデートしたり不倫騒動したり、パンティー盗んだり…こんな社員ばっかりの会社、永久脱毛だって頼みたくないよ〜(2005/3/31)



サイドウェイ ☆☆☆☆1/2

「ワインを飲むとき、その葡萄が育った年のことを考えるのが好きなの。日光はどうだったか、雨は降ったのか…葡萄を育てて収穫した人たちのことを考えるの。古いワインなら、そのうちの何人かはもう死んでいるだろうとか。…ワインはたえず進化するから、今日ボトルを開ければ、他の日に開けたのとは違う味がする。だんだん育って、複雑さを加えて、ある時ピークを迎える−あなたの61年ものみたいに。その後は、ゆっくり、確実に、避けられない下り坂を降りてゆく−それがまた、めちゃくちゃ美味しいのよ。」

ワインを人生に喩えた(人生をワインに喩えた)言葉はよく聞きますが、これほど素敵なセリフは初めてだ。

小説を出版にこぎつけられず、仕方なく中学の英語教師をしている売れない作家(しかもネガティブ思考で、いい年して親のヘソクリを盗むようなヤツ)マイルズと、今はほぼCMの仕事が主な売れない俳優(しかも超浮気者)ジャック。一見、ダメダメ男だちですが、なぜか最初から好感をもってしまいました。私がダメ男好きなわけではなくて、彼らは本当は、根っからダメなわけじゃないからかもしれない。

たとえば、「おれは作家だ」「作家になる」とか言いながら一向に本を書き上げない人がいたら、それはダメ人間だと思うけど、マイルズはちゃんと書き上げてるし。内容が難解すぎて出版社がなかなか出してくれないだけで…本当は俳優のキャリアなんてとっくに諦めているくせに、他の仕事をマジメにやらない言い訳に「本業は俳優だから」とか言っていたら最低だけど、ジャックは本気で俳優業を諦めていないようだし。

でも、好感がもてたのは何よりも、この二人が本当に身近にいそうな人間としてしっかり描かれているからだと思う。これはマイルズとジャックの話なので、マヤとステファニーの女性陣には彼らほど力は入っていないけど、それでも「普通にそこらにいそうで、でも魅力的な女性」という難しいところをうまく描いています。

ガキ…いや、若さあふれる人々はともかく、この4人ぐらいの年齢になれば、現在のその人は過去のさまざまな経験から形作られているわけです。たぶん、それらの経験は映画になるほど面白くも感動的でもないし、そこから出来た人間も大したもんではないのかもしれないけど…それでもきっと「複雑さを加えている」。

ワインを飲んでも、葡萄を収穫した人々については知りようがないように、観客はこの4人について映画で描かれていない部分は分からないわけですが…でも、想像力を働かせれば深くなるような気がする、味のある映画でした。(2005/4/7)



アビエーター ☆☆☆1/2

面白かった。けど、私が楽しんだところは、昔のハリウッドに興味がなければ全然楽しくないかもしれないなあ。(もしくは、わけわかんないかも…)そういう人でも、飛行シーンの迫力は楽しめると思うけど。(この部分は、映画館で観てよかった!と思いました。)

ハワード・ヒューズと言えば、昔読んだ小学生向きの読み物には「なぞの大ふごう」としてよく出てきたものです。何て書いてあったか詳しくは憶えていませんが、載っていた写真がとてもハンサムだったことは憶えています。「人間嫌いで、屋敷の奥から電話で指示を与える謎の大物」というイメージだったのですが…強迫神経症だったのか。

私がこの映画を観に行ったのは80%ぐらいは「ケイト様(キャサリン・ヘプバーン)を演じるケイト様(ケイト・ブランシェット)を見るため」なんですが、いや期待以上でした。「カッコいい女って、こういう人だよな〜」という感じ。スペンサー・トレイシーと出会うシーンの表情の素晴らしいこと。

ハワード・ヒューズがエヴァ・ガードナーと恋人だったことは知っていたけど、キャサリン・ヘプバーンとも付き合っていたとは知らなんだ。エヴァ・ガードナーのケイト・ベッキンセールはちょっとイメージが違うかな。ベッキンセールはかわいいけど、もうちょっと気品があって、タカビーなタイプの方がよかった。ゼタ姐さんとか…

でも…これを言うと元も子もないのですが…最大の問題は、レオナルド・ディカプリオは適役だったのか?ということでした。いや、レオは昔から演技うまいし、この映画でも熱演しているのですが、世の中には演技力だけではどうにもならないものがある。それは…どう老けメイクを施しても坊やにしか見えないあの童顔です。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」ではぴったりはまっていたあの顔が、今度は仇になっているような…いくら美女を連れ歩いても女性の乳にこだわっても、なんかこう…スケベなオーラが出てないんだよね〜。

むしろ、エロール・フリン役でちょろっと出てきたジュード・ロウが演ったらよかったような気もします。あ、ジュード・ロウと言えば、せっかくこの役なんだから彼のタイツ姿が見たかったかな(笑)。(2004/4/24)



ウィンブルドン ☆☆☆☆

はるばる豊島園まで(まあ、ほんとはそんな遠くないんだけど)この映画を観に行ったのは、ポール・ベタニー見たさのためだということはバレバレだと思うので、ひねくれ者の私はわざと彼以外のことを書いてみたい気もしたのですが、やっぱりそれは無理でした。ファンとしての贔屓目を抜きにしても、これはピーター・コルト(ポールの役名)の映画であり、この映画の魅力を支えているのは1から10まで彼だと思うので。

この映画について、いろいろ言葉は浮かぶのですが、書きたいことは結局ひとつなのです。つまり、「私はピーター・コルトが好きだ」ってこと。なにしろ、観ながら考えていたのは「うーん、かわいいなあ、いい子だなあ」ということだけでしたから。

これまでベタニーが演じてきたような個性の強い役よりも、こんなふうに「普通に好感のもてる人」の方が、脚本に書くのも演じるのもずっと難しいと私は思っています。そして、こういうシチュエーション・コメディにおいては、「主人公に好感がもてるかどうか」というまさにこの一点が、映画の成否を握っているのです。

ベタニーの過去の役柄とピーターの最大の違いは、腕についた筋肉ではなくて、彼の性格の基本的な「シンプルさ」だと思います。勝ち負けのはっきりした世界で生きてきたアスリートらしい、愛すべき単純さ。でも、そこはイギリス人で32歳で挫折も知っているので、素直であってもガキっぽくはなく、素朴であっても洗練されている。その取り合わせが、私にはなんとも魅力的に思えました。

ポール・ベタニーはこの「いいやつ」を、完璧に演じています。キルスティン・ダンスト演じるスタープレーヤーが遊びのつもりでうっかり本気で恋するのも、まわりのほぼ全ての人々からナチュラルに好かれているのも、当たり前に思えて気にとめもしないほどに。いままでもいい役者だと思っていたけれど、こういう役をここまで自然にできるとは思っていませんでした。おみそれしました。(これは、ラッセルでいうと、「ターニング・ラブ」の演技を見た時みたいな感じ。キャラとしては「人生は上々だ!」のジェフ君に近いけど。)

この役は最初はヒュー・グラントを想定して書かれ、彼がテニス選手としては年を取りすぎてしまったのでベタニーにまわってきたそうですが、ベタニーが演じてよかったと思います。ヒュー・グラントは好きですが、彼がこの役をやったら「テニス選手をやっているヒュー・グラント」になるだけで、ピーター・コルトというキャラクターは印象に残らなかったでしょう。この映画のベタニーは、ヒュー・グラントっていうよりジェームズ・スチュワートを思わせます。

私は性格的にも肉体的にもアスリートとは正反対のところにある人間なので、これはやっかみと憧れをこめた勝手な想像なのですが…ウィンブルドンで優勝を争うようなトッププロともなれば、男でも女でも、獲物を狙う肉食動物みたいな性格でないとやってゆけないのだろうな、とも思います。(ピーターが今までトップへ行けなかったのは、このクオリティを若干欠いていたためなのでしょう。)

リジーはまさにそういうタイプで、だから「試合の前に発散してリラックスするためにセックスしよう」なんていう発想が出ても不思議ではないのでしょう。のんびり草を食む牛みたいな性格の私には想像もつきませんがね(笑)。それでも、遊び相手に「お仲間」のプロテニス選手ばかり選んでしまうところが、テニス一筋の彼女の限界なのでしょうか。

二人が恋に落ちて、それが一方には試合に勝つ原動力となり、一方には集中力を妨げる障害となる。男女のトーナメントが同時に行われ、ほぼ同等の注目を集める唯一のプロスポーツであるテニスならではのストーリー展開になるのですが…

この後の展開には、ピーターに比重がゆきすぎてリジーの気持ちが理解しにくいという、ラブコメとしてはかなり大きな欠点があります。それに、ピーターの家族を除いて、脇役がみんなイマイチ。特にリジーの父、スポーツエージェント、リジーの元彼の若手選手の3人の描写は類型的で、あまり可笑しくもない。(あ、みんなアメリカ男だ。このへんがワーキングタイトルらしいね。)

まあコメディとしては凄く笑えるってわけでもないし、ドラマとしてはストーリーが単純すぎるのが欠点と言えなくはないのですが…でも、なぜか私は「映画としては並だけどポール・ベタニーは素晴らしい」みたいな言い方はしたくない気分なのでした。そういう言い方をするには、私はこの映画に好感を持ちすぎているので。

結局のところ、主人公を登場早々好きになり、彼が型通りのハッピーエンドを迎えるように最後まで心から応援する…このシンプルな楽しさを与えてくれる映画に、他に何を求める必要があるでしょうか。(2005/4/29)



ベスト・フレンズ・ウェディング ☆☆

(注:ジュリア・ロバーツの悪口です。ファンの方は読んでも何もいいことありません。)

女性観客の共感を集めるべきラブコメのヒロインを、こんなに徹底的に嫌な女に設定するなんて、どういうつもりなんだろ?親友と婚約者を別れさせようと企む陰謀のシャレにならない卑劣さを抜きにしても、27でレストランでVIP扱いされる料理評論家?味覚が命の商売のはずなのにヘビースモーカー?禁煙のところで吸って、注意されても消そうとしない女?「敵役のビッチ」みたいな設定だけど、廊下に座り込んで見ず知らずの人の同情を引いたりする嫌らしさは、敵役としても失格だわ。【最後に反省したかと思ったら、ヒトの結婚式で「自分と花婿の思い出の曲」を演奏させて、花嫁に「貸してあげるわ」なんて言う無神経さ。私が花嫁だったら式場から叩き出すね。】…前に同じような事を書いたのは「アメリカン・スイートハート」だった。どちらもジュリア・ロバーツなのは偶然か?

28歳までお互い独身だったら結婚しよう」という約束も、数が半端で気持ち悪い。普通、「30まで」か「40まで」じゃない?なんで30という設定にしなかったのか?撮影当時28のジュリアが「30の役なんて嫌」と言ったとしか考えられないよなあ。こういう妙な度量の狭さ、ズレた気取りが「エリン・ブロコビッチ」以外、これという役に恵まれない理由か。

でも、ルパート・エベレットだけはよかった。こんな女にこんな素敵なゲイの友人がいるのは(ある意味、素敵な恋人がいるよりも)納得できないよ〜ん。(2005/5/9)



ポロック 二人だけのアトリエ ☆☆

私には抽象絵画はさっぱりわからないが、たぶん、画家の内面が「迸った」ものなのだろう。しかし、この映画を観ても、ポロックの内面はさっぱり見えない。むしろ、空っぽの人間のように思えた。たしかに主役二人の演技は素晴らしいし、脚本や演出もよく出来ている映画なのだろうけど…観終わった後で、その芸術家の作品が前より空虚に感じるような伝記映画なんて、意味ないじゃん?(2005/5/9)



リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い ☆1/2

あんなに喫水の深い船がベニスの街中まで入れるのはなぜ?なんで7月にカーニバルをやってるんだ?敵がマシンガンを撃っていたはずなのに、何の説明もなくいつのまにか「殴り合い」で決着がついてるのは?あれはジキルとハイドじゃなくて「超人ハルク」じゃ?いくら版権切れてても、他人様の作ったキャラを使うのにこんなヨレヨレの手抜き脚本、失礼ってもんでしょう。「奇想天外」と「滅茶苦茶」は違う。(2005/5/9)



クレヨンしんちゃん(電撃!ブタのヒヅメ大作戦☆☆☆☆ 爆発!温泉わくわく大決戦☆☆☆1/2 嵐を呼ぶジャングル☆☆☆ 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲☆☆☆1/2 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」☆☆☆☆)

なんだなんだ、どうしてこんなに面白いんだ?「オトナ帝国」が傑作だとは聞いていたが、他のまでこんなに面白いとは聞いてなかったよ。

私は誤解していた。面白いと言っても、「怪獣映画へのオマージュ」とか「70年代へのノスタルジー」とかそういう、30〜40代男性のツボをついたオタク的面白さだと思っていたのだ。でもそうではなくて、もっと普遍的なものだった。

奇想天外な設定と、それを支えるきっちりと練られた脚本。一本筋が通ったテーマを、ことさらに下品で馬鹿馬鹿しいギャグに包むという美しい含羞。「ブタのヒヅメ」の『お色気』や「戦国大合戦」の『井尻又兵衛』のように、キーとなる脇役が登場早々こちらの心をつかんでしまう無駄のないキャラ描写。「温泉わくわく」で巨大ロボットが大暴れした後で、TVアナウンサーが「奇跡的に死者は出ていません」とちゃんと言う、細やかな心遣い。(お約束かもしれないけど、この一言があるとないでは大違い。)

たしかに私は埼玉県民だが、郷土愛から言っているんじゃないよ(笑)。(2005/5/9)



コンスタンティン ☆☆☆1/2

いや〜、楽しい映画でした。

まあ、もっと、びっくりするようなユニークなビジュアルで楽しませてくれることを期待してたので、その点ではちょっとがっかりしたのですが。映画の中でいちばん印象に残るビジュアルデザインが「役者たちの自前の顔」だというのは、いいんだか悪いんだか。

だから、序盤のつかみの良さにぐっと乗せられつつも、イメージがありきたりな地獄へ行ったり、デザインがイマイチな悪魔の下回り(<あ、「ハーフブリード」ね)が活躍したりする中盤は、ちょっと退屈だったのです。でも、終盤のブラックコメディのような皮肉な(でもちゃんと理屈の通っている)ストーリー展開が、けっこう好みでした。「神は病的なユーモアのセンスの持ち主だ。オチがまた強烈だ。」(by ジョン・コンスタンティン)

この映画の良さが特撮やアクションではなく、ストーリーとセリフと役者だと言うのは意外な感じですが、そうでした。キアヌって、ほんと、不思議な役者だよな…演技は昔からちーとも上達しないのに、もうただ立っているだけで、「ネオ」とか「コンスタンティン」とか、とにかくキャラそのものに…いや、映画そのものに見えるのですよねえ。ガブリエル役のティルダ・スウィントンも素敵。この人、「オルランド」でも中性、いや両性の役でした。(よくわからないけど、このガブリエルは「ハーフブリード」と呼ばれていたから、あの「大天使ガブリエル」とは違う人なのですよね…?)

なぜか「続編はもっと面白くなるだろうな」という気がする映画でした。(それもいいんだか悪いんだか。)(2005/5/19)



キングダム・オブ・ヘブン ☆☆☆

*まず、ホスピタル騎士団のデビッド・シューリス(役名なし)がカッコよかった〜。出番が少なかったのは残念…

*大義名分が「聖地奪還」であろうと「テロとの戦い」であろうと、結局は富と権力が目的でない戦争なんて歴史上ひとつも存在しないんだなあ、と思ったり。リドリー・スコットが今この映画を作ったのも、そのためなのでしょう。そういうことを前面に出した映画ではないけれど。

*エルサレム王がよかった。顔は仮面に隠れているのにこれほどの存在感…いや何より、カッコいいよ!「病気になる前は誰より美しかった」というのが何の抵抗もなく納得できてしまう。「中の人」がエドワード・ノートンなのは映画を観た後で知りました。さすが。

*そのエルサレム王の、「王が君に何を命令しようとも、それをやるかどうかは君の魂にかかっている、神の前では誰に命令されたという言い訳はきかない」という意味のセリフが印象的でした。命令したのが王でも上官でも、教祖様でも大統領でも、罪というのは個人と神の間だけの問題なんだと。(私は個人的に、信仰を持つというのはそういうことだと思っていますが…)まあこれも、そういうテーマを前面に出した映画ではないのですが。

*以前、「グラディエーター」のファンフィクションを訳していて「攻城搭」というのが出てきて、具体的なイメージがわかなくて困って、じゅうばこさんに絵が載っている図鑑を教えていただいたりしましたが、この映画にわさわさ出てきましたね。戦闘シーンのスペクタクルは実に素晴らしく、満足でした。まあ、そこまで行くのに時間がかかるのがちょっと難点なんですが…

*いえ、別に私は、アクションばっかり楽しみにしてドラマ部分は何でも「退屈だ」と言うようなタイプではないのです。ただ、ドラマ部分を面白く見るには、その登場人物に興味が持てないと辛い。主人公の父(リーアム・ニーソン)や前述の騎士や王はよかったけど、ドラマ部分の大部分を占めるのは主人公(オーランド・ブルーム)と姫(エヴァ・グリーン)。この主人公が、いまいちどういう人なのかつかみ所がなくて。これはオーランドがどうのというより、脚本の問題だと思いますが。

*この映画、感想がまとまらなくてこういう書き方になりました。どうも私は最近、映画を観るとき「主人公に共感できるかどうか」と「役者の魅力」ばっかりを評価の基準にしているような気がしてきました。まあそれも重要なポイントではあるけど、あまりにそればっかりに偏りすぎているかなあ…まあいいか、どうせ個人的な感想だし。(2005/6/1)


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