映画感想 (5)



インサイド・マン ☆☆☆☆

これ、書くのが難しい…何を書いても、ネタに触れてしまうような気がする。
とにかく、面白かった、おすすめです、とだけ。

あと、これは書いても大丈夫かな?クライブ・オーウェンがよかったです。
デンゼル・ワシントン、ジョディ・フォスター、クリストファー・プラマーは、あんまり適役すぎて、楽々と演じているように見られるかもしれない。

以下ネタバレ…のような?

見終わって一番気になったのは「トイレは埋めたのか?」ということでした。猫か。(2006/6/18)


ハッピーフライト ☆☆

私、こういう類の映画は結構好きなんですよ。今時スチュワーデス(フライト・アテンダントて言わないとダメ?)が憧れの職業っていうのも珍しいけど、それでも「私はなりたいんだ!目標はパリ行きファーストクラス!」って頑張っているのは美しいし、グィネス・パルトロウもなかなかいいじゃん、と思って観ていたのですが…(以下ネタバレ)

最後に「憧れの仕事を手に入れたけど、愛する人がいなければ空しいだけ」って、イマドキ、その結論は何だよ。しかも「やっぱりスッチーじゃ不満なのよね〜」ってことなのか、ラストシーンではパイロット修行に乗換え?今までやってきたことを最後にブチコワシてどうする?(2006/6/25)


グッド・ガール ☆☆

クソつまらない映画…ではなく、クソつまらない人生を送っている人に関する、まあつまらなくもない映画。

ジェニファー・アニストンとジェイク・ギレンホールは、こんな人生を送っている人にしてはゴージャスすぎるのだけど…リアルにそういう人生を送っていそうな人たちが主演だと、そもそも見る気にならないだろうな。それにしても、二人とも上手い。特にジェニファー。

田舎のパート主婦が、勘違いと甘ったれの激しい文学青年と浮気する話。退屈な亭主(安定したクソつまらない生活)と、年下青年(波乱に満ちた、でもしばらく後にはやっぱりクソつまらなくなるであろう生活)のどちらを取るか悩む話。どちらもあまりにツマラナそうで、悩みに共感できないのがネックか。私なら、両方さっさと捨てたい…と思う。

アメリカ映画には、田舎に住んでいて「いつか、どうにかしてこの町を出て行きたい…」という人がよく出てきますが、出て行きゃいいじゃん、とか思って。そのへんの難しさが、イマイチ感覚的に分からないのだよなあ。(2006/6/25)


コニー&カーラ ☆☆☆1/2

これ、観たかったのです。ビリー・ワイルダーの傑作「お熱いのがお好き」の男女逆転版、と聞いていたので。ドラッグクイーンの化粧が異様に似合うニア・ヴァルダロスとトニ・コレットですが(笑)、やっぱり首から下を見ると女らしいのよね。でも、この二人がドラッグクイーンで通るというのは、ジャック・レモンとトニー・カーティスが女で通るというのよりは100倍リアリティあるので、まあいいか。

「ゲイ=ミュージカル好き」「ミュージカル好き=ゲイ」と言われているのは、一体どうしてなんだろう、と考えたりしてしまう昨今。

殺人を目撃して逃亡中の二人を追って、アメリカ中でミュージカル舞台を回っているギャングの手下が、すっかりミュージカルファンになってしまうとか(NYで「レント」を観て感激したりしてるの)、コニーが客に「『愛のイエントル』を見た人は?」と訊くと全員が手を上げたりするのが可笑しかった。

結構面白かったのでオススメなのですが、もし万が一「お熱いのがお好き」をまだ観ていないのなら(そんな人いるかしら?…と思いながら)、もちろんそちらを先にどうぞ。(2006/6/25)


カーズ ☆☆☆☆

私は説教臭い映画が何より嫌いです。これは宣伝から「スローライフ系の説教を食らうのではないか」と警戒していたのですが…そうでもなくて、よかった。

何より、最高の設備の映画館でピクサーの映画を観るというだけで…まさに千円贅沢(<レディースデイだったので)、目のご馳走。

「元レーサー」のポール・ニューマンがあの役っていうのもいいね。あと、「ジェイ・レノそっくりの車」に笑いました。一瞬しか映らないけど、車なのに、なんであんなに似てるの。(2006/7/20)


パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト ☆☆

うーん、これって、何て言ったらいいの…

そう、たとえて言うなら、高級だけどネタはタコばっかりの寿司を食べさせられたような…

まだお腹は一杯じゃないけど、もういいです、って感じ。(2006/7/26)


トランスアメリカ ☆☆☆☆

「性同一性障害」という障害について初めて知った時、心が今の自分のままで、身体が男になったら…と想像してみた。

想像してみると…ジェンダーがどうこうとか、社会の中で男として生きる損得とか、セックスの対象は男か女か…などということは、はっきり言ってどーでもよくて、まず何よりも気持ち悪くて、「一刻も早く女の身体に戻りたい」としか考えられないだろう−と思った。

心は女、身体はまだ男というこの役は、男優に演じさせる手もあったと思うけど(というか、その方が普通だと思うけど)、女優に演じさせたのは大正解だと思う。自分の身体が男であることへのどうしようもない違和感、嫌悪感がすごくよく伝わるからだ。もちろんそれは、フェリシティ・ハフマンのすばらしい演技があってこそだけど。

男に見えるとか、そういうレベルじゃなくて、しばらく見ているうちに女優が演じているか男優が演じているかなんて意識しなくなって、ただ素直に「身体だけまだ男である人」として受け入れられる。

それだけでも凄いと思うけど、もっと感心したのは、コメディのヒロインとしてちゃんと笑わせてくれることだ。嘲笑ではなくて。野宿する時トイレで困ったり、ひどい格好になってしまった時に鏡を見てぎょっとしたりするようなシーンでは、思わず女として共感しつつ、クスクス笑ってしまう。

現代的で、深刻にもなりうるテーマを取り上げながら、軽く楽しめるエンタテインメントに仕上げて、笑わせて、ちょっとじーんとさせて、後味よく締めて、気がついたら何かを学んでいるという…

扱うネタは新しくても、まさにアメリカ映画の伝統にのっとった映画なのでした。(2006/8/1)


ナショナル・トレジャー ☆☆☆

楽しかった。公開時に観たらいろいろ文句もあったかもしれないけれど、「でも、ダ・ヴィンチ・コードに比べれば!」という一言で、けっこう良く出来た映画に思えてきたりして(笑)。(2006/8/19)


ビフォア・サンセット ☆☆☆1/2

これも面白かったけど、前作「恋人までの距離(ビフォア・サンライズ)」に比べると、やっぱり苦い後味が残る。やっぱり、「これは運命の恋かも?」と、「あれが運命の恋だったのかも。」の差ですね…(ため息)。(2006/8/19)


ビヨンド・ザ・シー ☆☆1/2

ケビスペ旦那、実に楽しそうに歌って踊っていますが、やっぱり20代の役にはちょっと年をとりすぎでは…?(最初に自分で突っ込んでいるので、言いにくいのですが。)(2006/8/19)


ユナイテッド93 ☆☆☆☆1/2

圧倒され、感情を揺り動かされずにはいられない映画なのだけど…それはたぶん、映画自体の力だけではないのだろう。2001年9月11日の夜半から翌朝まで、一睡もできずにテレビのニュースを見ていた、あの時の感情を追体験しているという部分が大きいから。

でも…考えてみると「映画自体」と「映画が描いている事件」をすっぱり分けることなんて出来ないのかもしれない。分けて評価しようとすることは無意味なのかもしれない。

それでも途中で、「これがフィクションだったらどんなによかったか」と思ったのだけど。

ぐったり疲れるし、題材が題材だけに「楽しんだ」とはとても言えないのだけど…変な言い方だけど、見終わった時、一種の爽やかさを感じた。作り手の誠実さとストイックさを感じたからだ。うまく言えないけど、「今、この題材を映画にするには、この描き方しかない」というギリギリのところを踏み外していないと思う。

ある雑誌で評論家が、「乗客ひとりひとりが描けていない」と書いていたけど、それは逆だと思う。パニック映画によくあるように、数人を選んで背景や性格を描いて「キャラづけ」したりしたら、この映画は崩れてしまっていただろう。実際、乗客たちは、お互いに名前も知らなかったのだろうから…言わば、観客にとっても彼らは「飛行機に乗り合わせた人々」なのだ。

それに、その人がどんな背景を持っていようと、最後に家族に電話する時に言う言葉はみんな同じ「愛している」だし、それを聞いて心を動かされるのは、その人の背景を知っていても知らなくても変わらない。(2006/8/24)


スーパーマン リターンズ ☆☆☆

クリストファー・リーブの「スーパーマン」と「スーパーマン2」を高校生の時にロードショーで観た私は(「スター・ウォーズ」ほど夢中になったわけじゃないけど)、あのジョン・ウィリアムズの音楽を聞いただけで、条件反射的にワクワクするのですが…

観終わった後味は、意外にビターなものでした。「70年代は遠くなったなあ」などと、年寄り臭い感慨にふけってみたり。

スーパーマンが宇宙の彼方に「自分探しの旅」に出ている間に、世界は本当に変わってしまったし。正義と真実のためには戦っても、「もうひとつのアレ」のためには、もう戦うわけにゆかないスーパーマン。

スーパーマンが【墜落する飛行機を支える】、映画中で最も痛快なシーンで、それでもふと【あれがユナイテッド93だったら】と考えてしまうし…メトロポリス(ニューヨーク)やヨーロッパや東南アジアで犯罪と戦っているというニュースを見て「もっと他に行く所があるのでは(中東方面とか?)」などと考えてしまうし…

バットマンやスパイダーマンが一都市内の犯罪しか解決しなくても何とも思わないのですが、スーパーマンは強さのケタが違うだけに、つい余計なことを考えてしまうのでした。

まあ、そういう、映画自体の問題じゃないところを除いても…評判の割には私はイマイチ、かな?新スーパーマンと新ロイス・レインは、なかなかキュートで良かったのですが、全体に脚本のツメが甘いというか、突っ込みどころがあちこちにあるのがなあ。(進んだ文明にしては、生体認証でアクセス制限するシステムもないわけ?とか、個人の邸宅を調査に行く前に持ち主ぐらい調べろよ、とか、【人質を外に繋がっているファックスマシンのすぐ横に座らせておくなんて、いくらなんでもアリか?】とか)

78年のスーパーマンでは【地球を逆回転させて時間を戻す】なんていう無茶苦茶もわりとすんなり納得したのに、こういう細かいところには引っかかる私なのでした。(2007/9/5)


マイアミ・バイス ☆☆1/2

注:以下、ひたすら「かつてのテレビシリーズのファンとしての」感想です。

スーパーマンのキャラがどうあるべきかについては、曖昧なイメージしかない私ですが、ソニー・クロケットのキャラがどうあるべきかについては…不幸にして(?)相当に強いこだわりがあった…ということに自分で気づいてしまいました。

役者としてはコリン・ファレルは悪くないと思うし、現代に舞台を移しているのだから服装もあんなんでいいし、ヨットに住んでワニを飼っていて欲しいとまでは言わないけど…名前以外に共通点が感じられないと言うのはなあ。

テレビシリーズの第一回で登場した時、彼は中年にさしかかった、ベトナム戦争帰りの、挫折した元フットボール選手の、長年警察の仕事に熱中しすぎて家庭を顧みなかったために妻に離婚を言い出されたばかりの男でした。それに比べると、コリン・ファレルはぴかぴかに若い。実年齢が、ということではなくて。過去とか傷とか、草臥れ感とか感じられないのよね。

ドン・ジョンソンのソニーはいかにもの南部育ちで、ペットのワニの名前はエルビス、好きな音楽はカントリー、という、オシャレな服装をしてもそこはかとなく田舎臭いところもまた味だったのですが、コリンは完璧カッコイイしなあ。

でも、何よりアウト・オブ・キャラクターに感じたのは、コン・リーとの一件かなあ。テレビシリーズのソニーも女には手が早くて、またよく悪女にも引っかかる人で、ヤク中のヘレナ・ボナム・カーターに捜査資料を盗まれたり、売春組織マダムのメラニー・グリフィスに利用されたりしていましたが…麻薬組織の幹部でボスの愛人と分かっている女に、いきなり堂々と手を出すことはなかったような気が…

いや、というか、ソニーじゃなくたって、あれは「アンダーカバーの警官の行動として」変だと思う。ジェームズ・ボンドじゃないんだから。【特に、最後に逃がすというのは筋が通らない。だって幹部よ。証言させなくていいのか?】この点がなければ、「マイアミ・バイスのファンとしては不満だけど、刑事ものアクション映画としてはまあまあ」と言えたのですが。

まあね、テレビシリーズと映画のキャラが違ったって、それはそれでアリだとは思うけど。でも、違うなら違うで、映画独自のキャラクター・ディベロップメントってものがないと。それもほとんどないし。「映画は事件を語るだけで時間いっぱいだから…キャラはテレビのを憶えているでしょ?」という意図なら、もうちょっと共通点ないと、重ねようもない。

あと…あれほど似た音楽を使うぐらいなら、ヤン・ハマーにお金を払ってオリジナルを使ってほしかったなあ。日本はともかく、本国ではかつてのテレビシリーズファンをメインターゲットにしているのだろうから、もうちょっとサービスしてくれてもいいじゃん。

テレビシリーズの第一回で印象的に使われていた「In the Air Tonight」が流れたのは嬉しかったけど。でも、これもできれば、フィル・コリンズのオリジナル版がよかった…

80年代も遠くなりましたね。(2006/9/7)


サンキュー・スモーキング ☆☆☆☆

久しぶりに、元気の出る映画だった!
主人公は、世界一の屁理屈男。でも憎めない。どころか、私は愛しちゃった(笑)。

「マイケル・ジョーダンはバスケをし、マンソンは人殺しをし、僕は喋る。」
得意なことを職業にして、それを誠心誠意、全力でやる。職業人としてあっぱれな男なのだ。

…たとえ、他のモラルには全て反していたとしても。

「完璧に可哀相な被害者」が、「完璧に悪者」の企業(や教師や医者)をテレビカメラの前で延々と罵るのを娯楽として提供する昨今のニュース番組に心底嫌気がさしていた私には、いっそ爽やかな世界なのでした。

この映画の主人公は、とある災難によってせっかく手に入れた「とっても有利な被害者の立場」を、「女の趣味がトム・クルーズと似ている」という欠点によって、あっさり失ってしまうのですけど(笑)。

同じBS(bullshit=でたらめ)なら、お涙頂戴より、鮮やかな屁理屈を。

主人公の上司役が「OZ」のシリンガーでした。相変わらず悪い奴です。(ま、あの顔で善人役は無理かも…)(2006/10/19)


カポーティ ☆☆☆☆

ありきたりの感想ですが、やっぱり本書くのはタイヘンなのだなあと。

こう、題材は題材、自分は自分として距離を置いて書くなんてことはできないのですね。取っ組み合い、混ざり合い、作品が完成した後も、完全に離れることはできなくて、自分の一部として一生残るし、逆に自分の一部を奪われたりとか…

それと、人間の悪とか心の闇とか、うっかり理解した気になったりすると、あとで余計怖いことになるのかなあ、とも思いました。

これもありきたりですが、フィリップ・シーモア・ホフマンをはじめ、役者がみんなよかった。主役からちょい役まで、当たり前のように超一級が揃うのよね〜。役者が良くて、奥行きを感じさせる映画は好きです。
あと…主人公に感情移入するとキビしい映画ですが、ジャックとカポーティが一緒のシーンはちょっとほっとしました。

カポーティを中心にした映画なので、犯人たちの方はイマイチ、わかりにくかったのですが、そっちは「冷血」を読まないといけないのでしょうね。うーん、今の私には「冷血」を読むエネルギーはないかも…(読むのに費やすエネルギーは、書くエネルギーの何百万分の一でしょうけど。)(2006/10/31)


ワールド・トレード・センター ☆☆1/2

序盤のたたみかけるような展開はよかったし、ビルの崩れる「音」の恐ろしさがよく出ていたし、それに終盤も…プロの人々が、緊急事態に際してきびきび仕事する描写って好きなんですよね。

でも…家族の描写はなあ。特に、回想シーンとか、cheesyとまでは言わないけど、スレスレだと思う。

こういうこと言うと、「実話なんだから、実際にいい夫婦だったのだから」とか「愛する人の無事を祈る家族は現実にもああなのよ」とか言われそうですが…「現実にどうであるか」と、「映画の描写としてどう感じるか」は、まるっきり別の話なのだ。もっとあっさり、短く描写した方が、かえって胸に迫るんじゃないかと思う。少なくとも私は。

それと、字幕について一つだけ。「海兵隊は命を救うことが仕事」みたいな字幕があったけど…海兵隊の仕事は軍艦で外国に行って敵と戦うことであって、「命を救うこと」じゃないと思うよ。(英語では「私は海兵隊だ、君たちは私の任務だ。」)なんか、ややこしい誤解を生みそう。(2006/11/23)


プラダを着た悪魔 ☆☆☆☆

なんか、ちょっと大げさに言えば、最近ときどき見てるドラマ「のだめカンタービレ」の「のだめ」ちゃんのように、観た後に夜のオフィスに駆け戻って「仕事!仕事しなきゃ!」と叫びたい衝動にかられる…ような映画でした。(いや、実際にはしませんけど。)インスパイアされる、っていうのかな。

私がインスパイアされたのは、ヒロインじゃないのですけど。彼女じゃなくてプロの人たち…ミランダ(メリル・ストリープ)と、ナイジェル(珍しくいい人役のスタンリー・トゥッチ)と、あと、イギリス人のエミリー(エミリー・ブラント)。

以下全般にネタバレ気味

ヒロインはなあ。最初の方、「私、この仕事やる気ありません」と全身で(着る服で)宣言していることを、自分で気づいてないってあたりが…「あんたは頑張ってない、愚痴ってるだけ」と言うナイジェルの一言が痛快でした。

これをちゃんと言ってくれる人は少ない。というか、現実には(特に日本には)いないかも。愚痴には、「そうなの、タイヘンね〜」と言っておくのが一番楽だしね。

でもまあ、適切なアドバイスをくれるヒトを無意識に見抜いてそこに愚痴りに行くってところが、アンディの才能の一部なのでしょう。このシーンの後は彼女も、服と心を入れ替えてがんばるし。

でも、より頑張っているのは、アンディでなくエミリーだと思う。彼女の場合、この仕事は「次へのステップ」なんかではなく、本当に夢の仕事で、100%好きでやっていることで、だからこそ何もかもに言い訳がきかない。

なのに、ここぞって時に風邪をひいたり交通事故にあったりする不運(ドジ?)っぷりの上、ミランダにはイマイチ認めてもらえないし、憧れの高い服はダイエットもしない女の方が似合ったりするし…ま、世の中は不公平なものです。

でもまあ、たまにはいいこともあるので、時々「私はこの仕事が大好き、私はこの仕事が大好き」と呪文のように自分に思い出させつつ、今日も地味にがんばるのであった。泣けるなあ。

まあ、ミランダがエミリーよりアンディを認める理由はわかるのですけどね。たしかに頭の回転は速いし、自分の崇拝者じゃないってことで新鮮な発想が望めるし、ダイエットに汲々とする子たちと比べて、見るからに風邪一つ引きそうにない健康ツヤツヤっぷり、あのオフィスの真ん中でダサい服装で堂々としていられる図太さ、利用できるものはさっさと利用するちゃっかりぶり…

「ハリー・ポッター」の一件など、あれほど仕事に関係ないことで評価が決定的になるのはおかしいし、あんなに下心ミエミエの男に大きな借りを作っていいのかなあ、と思っていたのですが…ミランダは、アンディが「利用できるもんは利用する」女かどうか見たかったのかもしれない。で、アンディは後で彼に会っても「あら、借りなんかあったかしら」としれっとしてるし。いや大したもんだ(笑)。

私は到底、ミランダにもアンディにもなれそうにもありませんが、ミランダが言ったことの中で肝に銘じなければならないと思ったのは、仕事において「仕方がない、選択の余地がない」なんてことは存在せず(クビになることは別として)、私生活を崩壊させるのも他人を蹴落とすのも、すべては自分の選択だということ。

でもミランダの場合、エミリーが風邪を引いたのも交通事故にあったのも「自分の選択」とみなしているフシがあるのが恐いけど。(…まあエミリーの場合、諸悪の根源は無理なダイエットにある気もするので、その意味では自分の選択と言えなくもないか。)

ミランダについて言えば、彼女が爽やかなのは、まわりを振り回しても他人を蹴落としても、それは自分の金や権力のためにやっているんじゃないってところだ。全ては「誰が何と言おうと、この仕事はものすごく重要なことで、これをちゃんとできるのは世界中で私ひとりなのよ!」という固い固い信念に基づいているのだ。

【以下オブライアンファン向け】そういう意味で、(オーブリー8巻を読んでいる途中でこの映画を見たので)ミランダはなんとなくソーントン提督と通じるところがあると思いました。ミランダ・プリーストリー艦隊総司令官(笑)。それにしても、8巻ではソーントン提督のことで涙ぐんでしまったし、この映画ではミランダに不覚にも泣かされるし、なんか私、この手の人に弱くなったのか?冷静に考えれば二人とも、全然かわいそうなんかじゃないのに。(2006/12/2)


007 カジノ・ロワイヤル ☆☆☆☆

私は、とくに熱心な007ファンということはなくて、全部観ているのは11作目の「ムーンレイカー」までで、あとは「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」と「トゥモロー・ネバー・ダイ」しか観ていないのですが…あ、べつにショーン・コネリーのボンドに思い入れがあるとかじゃなくて、たまたまなのですが。

そんな私なので、シリーズの他作品と比べてどうかとかは、はっきり言えないのですが…とにかく感じたのは、よく走るボンドだな、と。うん、いいことです。そして、よく脱ぐボンド。うんうん、大いによろしい。

なんだか口元がほころんじゃって、シリアスなシーンでもやたらニヤニヤしながら見ていました。はたから見たら不気味な女になっていたかも。

とにかく、高所アクションありギャンブルありお酒のウンチクあり【本気の恋】あり【拷問シーン】ありで、あらゆる方面でサービスに手抜きなし。

全体の尺、またひとつのアクション・シークエンスが、ちょっと長過ぎる気もしたのですが、タイトルバックから幕切れの一言まで、ここまでキメてくれたら満足するしかない。お見事でした。(2006/12/14)


ヘンダーソン夫人の贈り物 ☆☆☆

ヘンダーソン夫人が、もっとめちゃくちゃやって、ワガママ言って、周囲を振り回してくれるのを期待していたのですが…「なんだ、意外とおとなしいじゃん」というのが正直な感想。

それに…女性が何か変わったことをして世の批判を浴びたとしても、「母としての心」というのはいつでも最強のカードなんだな、と、ひねくれたことも考えてしまいました。

でも、レビュー場面は文句なく楽しかった!日本の「額縁ショー」の元になったと聞いていたので、もっと隠微なカンジを想像していたのですが、カラっと明るく楽しい舞台でした。人魚の扮装のセミヌードなんか可愛かった。まあ、これから戦場に旅立つ若い男が、あれで満足するとも思えないけど(笑)。(2007/1/8)


リトル・ミス・サンシャイン ☆☆☆☆

うわーん、例年なら「アカデミー賞強化月間」だと言うのに、映画みにゆくヒマもないし、19巻の感想をフィニッシュするヒマもないし…(ホントすみません。)

忙しいというより、なんだか余裕がないだけなのですけれどね。どう違うのかというと…うーん、何だろう…

というわけで、だいぶん前に観た「リトル・ミス・サンシャイン」の感想。

「何でも勝ち負けで決めるのはおかしい」と言うと、「勝つことが大事なんじゃない、挑戦することと、全力を尽くすことが大事」と言う人がいる。でも…「勝たなければならない」というプレッシャーと、「勝つために全身全霊で努力しなければならない」というプレッシャーって、受ける側にしてみれば同じことであるような…

そのことの是非は、さておき、これはそういうプレッシャーに振り回されて、鬱になったり、不良じいさんになったり、沈黙の行者になったり、ウザいオヤジになったり、アイスクリームが食べられなくなったりする家族のお話。

「リトル・ミス・サンシャイン」とは、文字通りこの一家の太陽であるオリーブちゃんが出場する美少女コンテストの名前。オリーブちゃん以外の出場者は、かのジョンベネちゃんを強烈に思い出す美少女ばかり。でも、キレイにしていればしているほど、特技がすごければすごいほど…親と本人の、必死の努力のあとが見えれば見えるほど、なんだか可哀相というか、痛々しいというか、悪いけど不気味というか…これを見ていて、つくづく思う、世の中には勝つ価値のない競争もあるのだと。

こういうのは、「負け犬の遠吠え」とか「酸っぱいブドウ」とか言われるのだけど…すっぱいブドウよりアイスクリームの方がおいしい、というお話でした。

以下ネタバレ気味


ブキミ系美少女の囲まれたオリーブちゃんは、フツーで子供らしくて、本当にかわいい。不良じいさんが教えたストリップ・ティーズの振りつけも、本人は全然わかってなくて、色っぽさのカケラもなくて、かえって可愛い。

…でも、それがかえってロリコン男の絶賛を浴びてしまうあたりがヤバいんだよなあ(笑)。けっこう、一筋縄ではいかない。

アビゲイル・ブレスリンちゃんが東京映画祭で「主演女優賞」を獲ったというのも、ちょっとフクザツなのでした。(2007/2/1)


ドリームガールズ ☆☆☆1/2

楽しかった!やっぱりミュージカルというのは、テーマパークとか、ちょい豪華なレストランやリゾートホテルみたいなもので、ショボいところを見せちゃいかんのよ。これでもかってぐらいキラキラでゴージャス!貧乏なシーンでも歌の力でゴージャス!観客がふと現実に戻ってしまう隙を与えないように(<舞台と違って、映画はこれがけっこう難しい)とにかく気を抜かず、衣装も装置も音楽もゴージャスを貫かないと。

ジェニファー・ハドソンは、噂どおり相手かまわず食いまくり(<誤解を呼びそうな表現)。ルックスはいいけど歌唱力では負けてるっていう設定のビヨンセも、実際には負けてないし。(ジェニファーほど熱唱型でないだけ。)エディ・マーフィーも、こんなに歌うまかったのか!とびっくり。

でも、惜しいと思ったのは、序盤、話の焦点がちょっとバラけすぎて、一体誰が主役なんだい?状態が続くこと。あ、ビヨンセかジェニファー・ハドソンか、どっちかに絞れって言っているのじゃないの。むしろ、ビヨンセジェニファー・ハドソンに絞るべきだったと思う。ルックスも性格も対照的な二人の絆、友情、それぞれの恋、亀裂、次第につのるライバル心、決裂…

元の舞台を知らないので何とも言えないのですが、映画としては、もっと男どもをすっぱり脇に回して、女の友情に焦点を絞ってもよかったんじゃないかなー、と。なまじジェイミー・フォックスやエディ・マーフィーなんていうスターを起用したんで、立てないといけなかったのかなあ。(エディはすごく良かったのだけど。)ジェイミー・フォックスなんて、ビリングでは一位だものね〜。彼が主役の話じゃないのだけどね。

ま、ミュージカルの場合、音楽がよくてゴージャスなら、ストーリーなんぞ「良ければそれに越したことはない」程度のもんですから。全般的には、文句なく楽しめました。(2007/3/2)


ディパーテッド ☆☆☆

私は原作(「インファナル・アフェア」)のファンではないのですが、良くできた面白い映画だとは思いました。で、コレ(「ディパーテッド」)は…やっぱり好みではないのですが、良くできた面白い映画だとは思いました。うーむ、我ながら、超つまんない感想。ごめんね。

映画の価値はストーリーだけじゃないから、「リメイクだから」ってだけで一段劣るような言い方をするのは不公平だと思っています。でも、これの場合、やっぱりよく出来たプロットの面白さが際立っているので、どうしてもそこにポイントが行ってしまって、そうするとやっぱり、後発の方の分が悪いかも。

でも、告白すると…私は香港版はビデオで見たのですが、出だしのところがどうも分かりにくくて、なかなか乗れなくて、最初の10分ぐらい見ては投げ出すというのを何度か繰り返したのでした。(人物関係を把握してしまえば大丈夫でしたが。)その点「ディパーテッド」はすっきりしてて分かりやすかったかな。

<以下ネタバレ(野暮な突っ込みあり)>

実は私、香港版を見たときから、面白い話だとは思いながらも、どうしても納得行かないのですよね、この設定そのものが。

トニー・レオン/レオナルド・ディカプリオの役の方は…いくらなんでも支援体制薄すぎだろ、この警察。彼が警官だと知っている人間が一人(アメリカ版では二人)しかいないなんて。その人が突然死んだらどうするかなんて、最初から考えておくでしょ普通。(こんな危険な仕事じゃなくったって、人間なんていつ心臓発作や交通事故で死ぬかわかんないのよ。)こんないい加減な体制で任務を引き受けるなんて、自殺願望としか思えない。それに、「彼の身分を証明する唯一のもの」であるファイルが、パスワードを知っただけで端末から痕跡も残さずに完全消去できるなんて、あり得るかなあ。バックアップデータはどうなってるわけ?

アンディー・ラウ/マット・デイモンの方は…警官としていい給料貰っていい生活をしているのに、なんでああ律儀に情報送るのかなーと、そこが不思議で。彼が犯罪組織のスパイだと知っているのがボス一人なら、ボスにはニセ情報を送っておいて、警察をうまく動かしてボスを殺して、あとは何食わぬ顔で普通の警官として生きてゆく…という手を、なんでもっと早く考えないのかな。(それだって上手く立ち回らないといけないけど、あんなに危ない橋を渡って情報を送り続けるぐらいなら、その方がよっぽど安全な気がする。)というより、当のボス自身が最初からそのことを疑って、それを防ぐ手を打っていないのがおかしい。

一言で言うなら「どっちも、さっさと寝返ってくれと言わんばかり」ってことなのですけどね。この状況で、元の陣営に忠誠心を保つことを人間に期待するのは、間違っている気がする。

「ディパーテッド」について、「所詮はアメリカ人には分からない世界…」と書いていた人がいたけど…私はアジア人だけど、やっぱりわかんないよ。(それとも、女にはわからないオトコの世界ってこと?)

香港映画なら「わかんないけど、香港の警察はまだまだ前近代的で、こういう滅茶苦茶もあるのかも…」とか「わかんないけど、中国人独特の家族のしがらみとかで、我々には理解できないメンタリティがあるのかも…」とか思って、まあなんとなく納得していたのですが…アメリカが舞台だと、余計に無理があるかなあ。

まあ、人間心理や警察の現状がテーマの映画じゃないのだから、そういう理屈が通らなくたって、面白ければいいのですけどね。でも、面白く見ながらも感情移入まで行かなかったのは、そのあたりかも。(2007/3/4)


今宵、フィッツジェラルド劇場で ☆☆☆

ロバート・アルトマンの遺作です。

普段は、遺作であろうと処女作であろうとあまり頓着しない私ですが、この映画、どうも本人がバリバリに意識して作っているフシがあるのでねえ…

アルトマン好みの「お迎え天使」はバージニア・マドセンだったのね。かつてのボブ・フォッシーの天使は、ジェシカ・ラングでしたが(<「オール・ザット・ジャズ」)。

アルトマンのかつての群像劇のような「鋭さ」「手際の見事さ」はなくて、ギャグもテンポもキャラ描写も、あちこちユルユル。…でもまあこの際、ユルいのもいいかなあ、なんて。うん。

メリル・ストリープとリリー・トムリンが、陽気な追悼ソングを歌いまくります。ケビン・クラインとトミー・リー・ジョーンズにも歌って欲しかったな。

アルトマンの、自分で開いた追悼集会に行ってきた、という感じかな。いろいろ、大したお人でありました。合掌。

「あの人のお葬式の、彼の弔辞は良かったわね。本人に聞かせたかったわ。」「あと数日生きていれば聞けたのにねえ。」(2007/3/15)


サン・ジャックへの道 ☆☆☆☆

サンティアゴ(※)・デ・コンポステーラへの巡礼路が出てくる映画ということで、さっそく行ってきました。(※サンティアゴ=スペイン語 サン・ジャック=フランス語 セント・ジェームス=英語 聖ヤコブ=日本語)

去年私が行ったスペイン旅行は、このサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路をたどる、というテーマだったのです。もっとも、我々はバスで行ったので巡礼とは認めてもらえないのですけど。徒歩あるいは馬で100キロ以上、自転車なら200キロ以上踏破しなければならないそうです。

私たちは巡礼ではなくてただの観光客だったので、この映画に出てきたようなスタンプ帳はもらえなかったのですが…帰りの飛行機(乗り継ぎのアムステルダムまでの)の中ですぐ前に座ってた若い男性二人組(たぶんドイツ人かオランダ人)が、顔を寄せ合ってお互いのスタンプ帳を見せ合っているのを目撃。二人で巡礼してきたのかな〜。とっても、仲むつまじそうでした。うふふ。

あ…そうだ、映画の感想も書かないと。

巡礼路を扱っているからと言って、宗教的な映画ではまったくありませんのでご安心を。「旅は道連れ、世は情け」という言葉がぴったりな、ウェルメイドな人情コメディです。フランス映画らしいイジワルな視点もありながら、全体的にはとっても爽やか。おすすめです。

いつか、今度はバスじゃなくて、歩いて行くツアーに参加してみたいな〜、という気持ちになりました。(時間的体力的に無理そうですが…)(2007/3/18)


イン・ハー・シューズ ☆☆☆☆

はぁ〜…予想以上に、良い映画でした。姉妹っていいなあ。私は兄しかいないので、姉妹ってずっと憧れがあります。特別な絆があるような気がして。

昔に観た姉妹物の傑作「ロンリー・ハート」を思い出しました。

In her shoes(彼女の立場に立って)という題名から、性格が対照的で仲の悪い姉妹がお互いの気持ちを理解する、みたいなストーリーかと思っていましたが、微妙に違いました。どこがって、この姉妹はもともと、ものすごーく深く愛し合っているんだもの。

愛しているからこそケンカもするし、お互いいらんコンプレックスを刺激したりもするけれど、でもお互いがいないと「私は意味をなさない(without her, I make no sense.)」(男と女のきょうだいには、こういう感覚はない…というか、あったらちょっと不健康かも。でも、姉妹なら、いいなあと思ってしまう。)

シャーリー・マクレーンのお祖母ちゃんもいい感じ。愛がないから離れてしまった心は戻らないけれど、愛するがゆえにぶつかり合って壊れてしまった心は、どんなに取り返しがつかないように見えても、かならず修復できる、と…

甘いかもしれないけどね。でも、そこを「できる」と言うお話じゃなければ、映画を作る意味もない、と私は思う。(2007/3/26)


ハッピー・フィート ☆☆

ミュージカルアニメってことで、期待していたのですよ。たしかに歌はいいし、踊るペンギンはもちろん(最初のうちは)とってもカワイイのですけれど…

自然保護の観点を出すのなら、「(動物を)可愛いから保護する」という感覚は、どーしても好きになれないのですよ。

<以下ネタバレ>

第一、この映画の後半のストーリーって、環境問題に真面目に取り組んでいる人々が見たら、かえって怒るのではないのかなあ。南極の問題は、「ペンギンが可愛いから、漁はよそでしましょう」では何の解決にもならないなんてこと、いまどき、特に環境問題に詳しくない私でも知っている。説教臭い(ナレーションが最悪)のに、まともな説教にもなっていないのだ。

環境保護の観点も人間も一切出さずに(暗示するだけで)、ただペンギンたちが歌って踊って愛し合って、厳しい自然の中で健気に生きている…というだけの話の方が、そういうテーマの面でも、よっぽど訴えるものがあったと思う。

動物と人間と自然の関係なら、「マダガスカル」のユーモラスなアプローチの方が、ずっと良かった。(あの映画の小憎らしいペンギンたちの方が、かわいく思えてきたよ。)

始めの方のペンギンの群舞は素晴らしい壮観だと思ったけど、【正直に言って、ラストのは不気味に思えた。それは、このペンギンのダンスを「人間に見せて」しまったからだ。「それを見て喜ぶ人間」を映画の中に出してしまった瞬間、このダンスは「普遍的な生きる喜びの表現」から、単なる「カワイイ動物の珍しい芸」に成り下がってしまった。】それがこの映画の、致命的な過ちだったと思います。(2007/3/29)


ラスト・キング・オブ・スコットランド ☆☆☆1/2

しばらく映画行けないとか行っていたわりには、スキを見ては行っている私でした。

フォレスト・ウィテカーが、悪名高いウガンダのアミン大統領を演じてアカデミー賞を獲った映画。彼の演技はもちろん迫力なのですが、でも…みんな思っているかもしれないけど、彼より、(タムナスさんこと)ジェームズ・マカボイ演じるスコットランド人青年医師のキャラの方が、ある意味強烈じゃなかったですか?もう何度も、「何だコイツ?何考えてるんだ?人間、ここまで呑気に無責任になれるもんだろうか?この期に及んで、よりによってそうくるか?もう、何なんだコイツは〜!」…となってしまいました、私。まあ、無知で呑気なところは、70年代の白人青年ならこんなもんかもしれませんが、彼の行動はそれを超えたところがあるな。

前半は「ホラー映画で、モンスターが近づいてくるのにも気づかず呑気にセックスしていて殺される脇役」みたいだな〜、とか思いながら見ていたのですが、後でコイツはむしろ「一昔前のホラー映画で、よせばいいのに危ない方へ、危ない方へと行って皆に迷惑をかけまくり、観客をイライラさせる馬鹿ヒロイン」に近いと思いました。

<以下ネタバレ>

しかもコイツ、ヒロインなもんだから(?)一人で最後まで生き残ったりするんですよ。しかもこの映画では(現実でも)、最近のホラー映画なみに、死屍累々を築いた挙句にモンスターも生き残るし。

現実の世界はホラー映画に似ているらしい。(2007/4/5)


ブラッド・ダイアモンド ☆☆☆☆

相変わらず、あまり映画館に行けていないのですが、ようやく観たのが久々の当たりで嬉しいです。面白かった!

一昔前、映画を観に行くと必ず上映前に例の「給料三か月分」のCMをやっていたものですが…この映画の前には絶対できないですね(笑)。

主役の3人(ダイヤ密売人、ジャーナリスト、父親)が、それぞれ明確な目的を持っていて、3人の利害が絶妙にからみ合う展開も面白いのですが…3人が3人とも、目的をあくまで追求する意志力とタフさと頭の良さを持っているのが気持ちいい。ハードボイルドなのです。キャストも絶妙で、特にレオは、「ディパーテッド」でなくてこっちでオスカーノミネートされたの分かるなあ。

家族と引き離された父親ソロモン(ジャイモン・ハンスウ)の目的はただひとつ、家族を取り戻すこと。肌の白いアフリカ人であるアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)の目的は、大金を手にしてこの「神に見捨てられた大陸」を脱出すること。

アメリカ人ジャーナリストのマディ(ジェニファー・コネリー)は、日々アフリカの悲惨な現状を報道しているけど、被害者の話をいくら報道しても、もはや何も変えられないことを知っている。被害者の悲惨な話はあまりにも、あまりにも多すぎて、読んだ人間が「何とかしなきゃ」と思う範囲をとっくに超えてしまい、行動を起こす前に無力感に襲われるレベルに達してしまっているからだ。今必要なのは、名もなき被害者でなく、名前と企業名と口座番号を持った悪役だ。というわけで、彼女はダイヤの密輸業者アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)に近づく。

私はアーチャーが悪人だとは思わない。善人だとも思わない。奥地の学校の先生が言っていたように、善も悪も行動を選択することによって生まれるので、生き残るための唯一の道をとるしかない人間は、善人にも悪人にもなれないのだ。マディにやたらにつっかかるのは、「正しい行動を選択する」という贅沢を許されている人間に対する嫉妬なのかもしれない。(ところで、主要人物のうちで唯一「運命に流されて」いないのが女性キャラだっていうのは、時代を感じますね。)

【以下ネタバレ】

それぞれの目的のためにお互いを利用していたはずの3人なのに、いつの間にかその目的がひとつになってゆく展開が感動的でした。アーチャーが初めて行動を選択できたのが、自分の命を諦めた時だというのが、なんとも切なかった…(2007/4/29)


クィーン ☆☆☆☆

爽やかな季節になってきましたが、お仕事やら体調やらイマイチ冴えない私…
女王陛下に癒してもらってきました(<間違ってる気も…)

とにかく、女王さまファンになりました。

賢明な民だと信じていた自国民が、あまりに浅はかで理不尽で、感情に流されやすく、気まぐれで残酷なことに呆然とする女王さま。夫と母は頭が古すぎて頼りにならないし、まだ幼い孫は守ってやらなければならないし、息子はホントに自分のことしか考えてないし、侍従や貴族たちも前例のないことにはまるで対処できないし…首相になったばかりのブレアという男だけはいろいろ言ってくるけど、果たしてこの僭越な若造の言う事を聞いていいものかどうか…

結局のところ、君主である彼女がひとりで決断しなければならないことなのでした。

でも最後は、みんな女王さまのことは好き、という展開でよかったです。(チャールズだと、こうはゆかなかったのだろうなあ…)

ブレアが王室廃止論者の奥さんに「あなたがやけに女王をかばうのはマザコンだからなの?」とか言われていましたが、ああいう女性はあの世代の英国上流女性のひとつの典型なのかもしれませんね。冷たいと誤解されても感情を表に出さず、常に威厳を保ち、不平不満を一切口にせずに義務を果たす背筋の伸びた女性…

うちの母は英国人でも上流階級でもありませんが(当たり前)、なぜか母のイメージが重なったりして。私もマザコン(?)だからなあ。

あと、女王さまが自分で4WDをガンガン運転したり、フィリップ公に「キャベツちゃん」とか呼ばれているのにびっくり(笑)。畏れ多くもコミック・リリーフ役をふられているクィーン・マザーも可愛かったです。

ほんとにいいなあ、こういう映画が作れる国って…(2007/5/2)


ラブソングができるまで ☆☆☆☆

もう、最初の「POP!」のクリップから笑いっぱなしでしたよ。まあでも、こっから笑えるのは80年代に青春を送った人だけかな。

ヒュー・グラントは、いつも同じ役を演じているように見えるけど、時によって「ヒューが演じているからチャーミングに見えるけど、冷静に考えると何の取柄もない男だな」だったり、「ダメなとこもあるけど、本当にいい奴だ。ヒロインが惚れるのもわかるわ」だったりします。今回は後者。微妙な違いなんですけど。いつもよりは苦労している分、大人かな。

ドリューの方も適役。ドリューといえば、「ウェディング・シンガー」では「この女には自分の意志というものはないのか?」と腹立ったものですが…この映画でも、ちょっと意志の弱いヒロインを演じていますが、こちらの場合、彼女がしゅんとしているのも分かるからなあ。

一時は惚れていた相手に、自分の悪い点ばかり指摘されるだけでも辛いのに…それが一冊の本として出版されて、ベストセラーになって、おまけにハリウッドで映画化されたんでは…何か書こうという気が失せるのも無理はない。

恋愛にゆく前に、二人のキャリアの問題をしっかり描いてあるところにも好感がもてます。二人とも、成功のために手段を選ばない人間にコテンパンにされて挫折し…でも不運だけじゃなく、自分自身にも問題があるからなかなか復活できなくて…助け合えることに気がつくけど、もたれ合うのじゃなくて、まずはそれぞれが自分の足でしっかり立たなければならないという…

ヒーローとヒロインを好きにならせて、応援させることができれば、ラブコメは8割成功。

あとの2割ですが…重要なのは、映画に出てくるオリジナル曲が、みんな本当にいい歌だってことですね。

特に、最初と最後に登場する "Pop! Goes My Heart" なんてマジでいいですよ。あまりの「らしさ」に笑いはしたけれど、気がつくと帰り道に口ずさんでいたもの(笑)。80年代にナンバーワンなった曲だと言われればすんなり納得するし、ヒューの役が本当に才能のある作曲家だというのが、説得力あるのです。

彼が曲を提供するイマドキのセクシー系女性ミュージシャンも、からかった描き方をされているわりに、曲やダンスはきちんとしたものを作りこんである。こういうところで手を抜いてない映画はいいな。

思わずサントラが欲しくなりました。これも、80年代に青春を送ったせいかもしれないけど(笑)。(2007/5/24)


主人公は僕だった ☆☆☆

この映画、「不思議な現象が起きて主人公がジタバタするコメディ」(「恋はデジャ・ブ」みたいな)なのか、「わりとシリアス寄りの寓話」(「トゥルーマン・ショー」みたいな)なのか、どっちつかずだと思ったのですが…

でも考えてみればこれ、この映画自体が悲劇なのかコメディなのか、「観客にもわからない」ってところがミソなのかな。

その意味で、ウィル・ファレルの、笑わせようというのではない、「今回はシリアス演技してます」というのでもない、ニュートラルな演技が絶妙だと思いました。マギー・ギレンホールも可愛かった。

<以下ネタバレ>

面白かったのですが、最後がきれいに落ちていないのがちょっとマイナスかな。寓話でもコメディでも、オチは決めないと。

人間、誰かを助けるためとか、世のため人のためとか確信できるなら、進んで命を投げ出すことはあると思う。でも、自分の死が「最高に詩的」だとか、「文学史に残る傑作を生み出す」とか、そんな理由で納得して死ねるかなあ。

この主人公の場合、どっちなのか…それが、いつの間にかすりかえられてしまったようで、ちょっと釈然としないものが。

そもそも、エマ・トンプソンの書いている小説が、どこがいいんだかさっぱりわからないところが最大の敗因かなあ。これが小説になっているとしたら、主人公が言っていたように「ギターのシーン」はとても良いと思うけど…ラストで死のうと死ぬまいと、それは関係ないような。
(2007/6/1)

プレステージ ☆☆

うーん…

なんか、釈然としない。

とにかく、主役が二人ともヒトデナシ…っていうか、モノゴトの価値基準ってものがあまりにも異常な人たちなんで、入りこめないうちに終わってしまった。

<以下ネタバレ>

ヒュー・ジャックマンの方の「トリック」って、あれはクリスチャン・ベールを騙し返すために日誌に大ボラを書いてたので、要は身代わりにあのアル中の俳優を殺したのだと思って見ていたのだけど…で、死ぬ時までタネを明かさなかったのだと思ったのだけど…違うの?

これは「ザ・フライ」か「スタートレック」か「ときめきサイエンス」かっていうSFの世界なわけ?それは何だかな〜。あれが本物なら、それこそ物理法則をひっくり返す大問題で、もはやマジックがどうとか言ってる場合じゃないんでは。

あ、でも、ヒュー・ジャックマンがどんどん増やせるんだったら、一列に並ばせて腰振りダンスさせたいな、私なら。(<馬鹿)

クリスチャン・ベールの方の「トリック」は分かりやすいけど…ミもフタもないことを言えば、ここまでする価値あるのかなあ。ここまでしたわりには、あのマジックって舞台栄えは地味だしねえ。水槽脱出の方がスリルがあっていいよ。


期待していた「騙される爽快感」とは無縁の映画でした。ラストが読めたとか読めないとか、それ以前の問題。(2007/6/14)


300 ☆☆

意外と面白かった…戦いのシーンは。

私、肝心のところがスローになったりストップモーションになったりするアクションはあんまり好きじゃないのですが、ここまで徹底して「絵」を作っていると、こういうのもいいかなー、と思えてきました。

半裸のマッチョマンが、意味もなく完璧な構図で「ばーーーん」と並んで見栄をきっているとこなんか、見ると思わず口元がほころんでしまいます。いやうれしくて。

<以下ネガティブ意見>

んー、でもなあ。ときどき「自由のため」とか、いっぺんで醒めるようなお題目を叫ぶ癖があるのと…(それって、最初に言ってたことと矛盾してませんか。それに、小娘の裸踊りで政策を決める国に「神秘主義と戦う」と言われてもなあ。)

それよりなにより、戦場以外のシーンが、もう、忍耐の限界を超えて退屈なのですよ。特に王妃の出てくるところ。もう、何なのこのヒト。ひょっとして…馬鹿ですか?

緩急をつけたつもりなのかもしれないけど、はっきり言って、戦場以外のシーンは全部ぶった切っていいと思う。アドレナリンが常に出っぱなしの特異体質な人たちの戦いなのだから、見ている方も、暴力と筋肉に酔ったまんまでいいのだ。(2007/6/21)


フラガール ☆☆☆☆

全体としては思ったよりシリアスで、もうちょっとコメディタッチでもいいんじゃないかと思ったりはしたけど…なんたって、松雪泰子と蒼井優の見事なフラダンスにやられました。

これはひとつの町の再生の物語であると同時に、登場人物ひとりひとりの再生の物語でもあるのですね。女性たちの潔さや愛情、厳しい現実に打ちのめされて一度死んだ魂が蘇る瞬間…それをすべて、他ならぬフラで表現しているところがすばらしい。(2007/6/27)


若草の頃 ☆☆☆1/2

500円DVDシリーズのおかげで充実してきたレンタルショップの「名作棚」にあったので借りてみました。1941年のMGMミュージカル。

ひたすら他愛ないストーリーなのですが、ジュディ・ガーランドの歌とマーガレット・オブライエンの可愛らしさは素晴らしい!二人がデュエットする「Under the Bamboo Tree」、ジュディの「The Boy Next Door」、「The Trolley Song」…とりわけ、ジュディが切々と歌い上げる「Have Yourself a Merry Little Christmas」は、ストーリーとはまったく関係なく感涙ものです。

まあ、上記の歌はすべて「ザッツ・エンタテインメント」のどれかに入っているので、そっちでもいいわけですが。

マーガレット・オブライアンの役(5歳)が、人形のお葬式をしたり、殺人や死体や幽霊にやたら興味を示すゴスロリ少女(?)という設定が面白かった。当時の大人たちは「ま、子供の言うことだから」って感じで全然気にしていないけど、現代だったらセラピー受けさせられているでしょうね(笑)。(2007/6/27)


ゾディアック ☆☆☆1/2

まず、これが現実の未解決事件の映画化だということは、頭に入れておく必要はあるのではないかと。当然、最後にすっきり犯人が捕まったりしません。それと、デビッド・フィンチャー監督だからといって、どんでん返しや猟奇趣味もない。

そういう見当違いな期待さえしなければ、これは非常によく出来た警察/犯罪もの映画だと思います。すっきりした結果には繋がらないとわかっていても、一歩一歩証拠を集め、推理を重ねて犯人に近づいてゆく過程は面白いし、描き方も非常に手際がいい。(…いや、警察の手際はあんまりよくないのですが、手際の悪さを描く手際がいい。)

当時は全米の警察をつなぐネットワークがないので、管轄が違うと証拠の共有が全然できないとか(田舎の警察にはFAXさえないんで、写真は郵便で送るとか言ってるし…)、図書館の貸し出し記録も原本を盗まれたらおしまいとか、コンピュータがない時代ならではの困難が描かれているところも面白かった。

ピースの多くが紛失しているパズルを組み立ててゆく感じ。残ったピースを組み立て終わった時に、はたしてどの程度絵が判別できるのか…やってみないとわからない。

テンポがいい割にはちょっと長いのが難点ですが、十分に楽しめました。

余談:ロバート・ダウニー・ジュニアとジェイク・ギレンホールって、ちょっとキャラかぶってるなあ…とか思いながら観ていたら、後半にもうひとりキャラかぶりのアダム・ゴールドバークが登場したのでびっくり。三人並ぶと(並ぶシーンはないけど)「暗い目をした三兄弟」って感じ…(2007/6/28)


ダイ・ハード4.0 ☆☆☆1/2

何を隠そう、かつて私は、ジョン・マクレーンにかなり本気で惚れておりました。当然です。第1作目の彼を、誰が愛さずにおられましょうか(笑)。

あれから、20年近い年月が経ったのだなあ…信じられん。ベイビーだった娘はもう大人だし、髪の毛はついに全滅しちゃったし…「3」のラストで暗示されていた奥さんとの復縁は失敗したようだし、警察であまり出世もしていないようだし…でも、体力と根性はほとんど衰えていないし、新しい技能も身につけているようで、さすがだなあ。

今はもう、惚れているって感じじゃないのですが…「昔の友達に久しぶりに会ったら、ちょっと老けこんでいたけど、話してみたら相変わらずのヤツで嬉しかった」ってところでしょうか。

この映画でもうひとつ嬉しいのは、マクレーンがタッグを組むハッカー青年(ジャスティン・ロング)のキャラクターがいいことです。

見たとたんに「あー、どっかで見た顔だ!」と思ったのですが、スパチャン(だったかな?)でやってたドラマ「エド〜ボーリング場弁護士」に出ていた高校生ですね。プロムでラッセル・クロウのタキシード(正確に言うと、2001年のオスカーナイトでラッセルが着ていたのと同じデザインのタキシード)を着てた子です。…マイナーすぎて誰にも分からんか。あ、あと「ドッジボール」にも出てた。これもマイナー?

前にも書いたけど、私は「暴力的世界に巻き込まれるひ弱なインテリ青年と、それを助けるタフなプロの男」というコンビに弱いのですよ。ちょっとツボでした。

サイバー・テロという事件の設定は…多分、突っ込みどころはたくさんあるのでしょうけど、まあこの場合どうでもいい。要するに、マクレーン(と、このハッカー青年)が活躍できる場を与える便宜に過ぎないのですから。

その「活躍」の方は、もう、過剰なほどのサービスぶりで、そうそう、こうでなくちゃね。

関係ないつぶやき:最近、「人気映画の人気キャラクターで、たしかに魅力的なキャラのような気もするけど…考えてみれば映画の中でこれといった特徴ある行動はしていなくて、キャラづけはファンが勝手に補ってくれている」というのが多すぎるような気が。どの映画とは言いませんが。

結論:もちろん1作目には遠く及ばないけれど、2・3作目とは同等の出来ではないでしょうか。派手系アクションが嫌いでなければ、お勧めです。(2007/7/7)


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