Chapter 6-3〜潜水者たち (The Urinators)


スティーブン、潜ることを申し出る。

海に沈んだガレー船を物欲しげに見つめるニオベ号の水兵たちは、スティーブンのダイビング・ベルに意味深な視線を送ったりもしていました。その日、ジャックとスティーブンとマーティン牧師は食事を共にし、その席ではこんな会話がかわされます。(以下引用)

短い沈黙の後、スティーブンは言った。「僕はユーリネーターだ。
「おいおい、スティーブン」聖職者に絶大な尊敬を抱いているジャックは叫んだ。「言葉に気をつけてくれよ。」
「僕がユーリネーターであることはよく知られている。」スティーブンは彼の顔をじっと見つめて言った。
「この数時間、僕は潜らなければならないという大きな道徳的プレッシャーを感じているんだ。」
(...and after a short silence Stephen said, 'I am an unrinator.' 'Really, Stephen,' exclaimed Jack, who had a great respect for the cloth. 'Recollect yourself.' 'It is well known that I am a urinator,' said Stephen, looking at him firmly, 'and in recent hours I have felt a great moral pressure on me to dive.')


「ユーリネーター(Urinator)」というのはラテン語のurinari(水中に潜る)からきている17世紀の古英語。つまりダイバーのことですが、この時代にもめったに使われない単語であったようです。もっと一般的な英語で「ユーリネイト(Urinate)」というのは、「排尿する」という意味。Urinaterなら「立小便をする人」。それでジャックは「何を言い出すんだ」ってあわてたんですな(笑)。スティーブンが、自分ではまったく意識せずにお下品な(みたいに聞こえる)ことを言っているのが可笑しい。

それで思い出したけど、3章でもスティーブンは、ローラにダイビング・ベルの説明していた時、ベルに小さな栓(cock)がついていることを説明して"Will I draw you my little cock?"「私の(ベルの)小さい栓の絵を描いてあげましょうか?」とか言ってました。スルーしていましたが、後で思い出すとじわじわとおかしくなってきて…(これがなぜおかしいかというと、drawには「引き出す」という意味もあり、cockには…いや、何でもないです…)

オブライアンさんのギャグって、さりげないけど時々お下品?それとも、こういうのにいちいち気づいて喜んでいる私がお下品なんだろうか…(そうです)

スティーブンとマーティン、潜る。

しかし、何しろサメがうようよしている海域。ジャックはハイラベディアンの最期を思い出し、心配して反対するのですが、スティーブンはベルから出ないから大丈夫だと言って、結局マーティンと二人で潜ることになります。

ニオベ号の全員が大きな期待と大きな心配を抱いて見守る中、軍医と牧師の乗ったベルは海中に降りてゆきました。みんなの心配をよそに、マーティン牧師はベル上部のガラスから上を通りがかったホオジロザメを眺め、サメが行ってしまうと「もっとゆっくり観察したかったのに」などと言って、まったく心配していない様子。

ベルは珊瑚礁の上に水平に沈んでいるガレー船の甲板に「着地」します。ガレーの甲板をはがすと、船倉には重そうな箱が並んでいました。海中の二人が「お宝」にロープを結びつけて合図し、ニオベ号甲板の滑車で引っ張りあげる作戦でしたが、なかなか合図がこないのでジャックは心配し、二人を潜らせたことを後悔します。

実は、海中にいる二人はなにしろ極めつけのオカモノなので、ロープを結ぶのに苦労していたのです。やっと合図がきて吊り上げたかと思うと、結び方が悪かったらしく、ロープがずるずるほどけて箱はまた海に落ちてしまいます。重い箱がベルのガラスを直撃しそうになって、ジャックはまたはらはら。

ロープの結び方は船乗りの基本のようですが、大事なんですね。私もいざという場合のために(どういう場合かよくわからないけど)いくつか覚えておいた方がいいかしら。

ジャック、スティーブンと潜り、「宝箱」を引き揚げるが…

心配でいてもたってもいられなくなったのか、それとも二人のロープ扱いのあまりの下手さに我慢できなくなったのか、ジャックはついにベルを引き揚げさせ、自分がスティーブンと一緒に潜ることにします。最初からそうしたかったのかなあ。

ジャックは簡単に箱の一つをロープで固定し、重い箱は水兵たちの喜びの声の中、ニオベの甲板に引き揚げられます。とりあえず中を確認しようとフタを外して見ると−中には金貨も銀貨もなく、鉛の固まりと、フランス語で「これを読むやつは馬鹿」(ニュアンスを汲んで訳せば「ばーか、ひっかかったな〜、やーいやーい」って感じでしょうか)と書かれた紙が入っていただけでした。

ガレー船にぎっしり積んである他の箱も、もちろん中身はこれと同じなのでしょう。

ジャックたち、事の真相を知る。

その時ちょうど魚を売りにきた漁船がいたので、スティーブンがいろいろ質問してみると…実は、ムバラにはフランスの大軍がとっくの昔に到着していて、島はすでに敵軍の強力な要塞になっていたようです。例のガレー船はのこのこやってくるイギリス艦を要塞に誘い込むため、何週間も前からムバラの沖を行ったり来たりしていた…お宝を載せたガレー船など初めから存在しなかったか、あったとしてもジャックたちがマルタを出るよりずっと前にムバラに到着していたのでした。この任務自体が、敵に誘導された罠だったのです。

「ムバラ攻撃作戦のあれほど噂が広まってしまっていたことを考えると、こうなったのも不思議はないかもしれない。」とスティーブン。「しかし、敵の掴んでいた情報がこれほど正確なのには驚いている。」

彼らに任務を与える海軍上層部の一員(アンドリュー・レイ)が敵と通じているのだから、それは当然、正確でしょうね。でも、スティーブンはまだそれを知らないし…