Chapter 7〜渇いた帰路


ジャック一行、砂漠でベドウィンに襲われる。

ジャックたち一行はニオベ号で紅海を戻り、スエズ湾を戻り、砂漠を越えてナイル河口のティナ港まで戻り、そこからドロメダリー号でマルタへ戻り…と、行きと同じ道を帰ります。でも、往きはよいよい、帰りは恐い〜…いや、一攫千金の夢に燃えていた往路でさえいい加減たいへんだったのに、夢破れてとぼとぼ帰る復路はなおさら耐えがたいものでした。

ムバラでトルコ兵たちを降ろして水を積み込む予定だったのに、水なしでトルコ兵を乗せて帰ることになったので…暑さの中、水の配給は少なく、逆風を間切ってゆくため労働量は多く、過酷な紅海の航海。(ジャックが日本人なら「紅海先に立たず」とか言って、部下をますます疲れさせただろう…あ、いやすみません)

それでもなんとかスエズに上陸し、ティナまで砂漠を横断するのですが、そこでさらに追い討ちをかけるような出来事が起こります。ベドウィンの盗賊に襲われたのです。

ところで、海にいるのは海賊、山にいるのは山賊ですが、砂漠にいるのは何と言うのかな。砂賊?…まあ、呼び方はともかく、この辺りの砂漠はそういう連中が多いのです。しかしジャックたちほどがっちり武装した、多人数の一行を襲うとも思われず、また万一襲われてもすぐ撃退できると思っていたのですが…

一行が休みをとっている時、例によって自然観察に出かけたスティーブンが、攻撃モードのベドウィンの一隊を発見します。ジャックたちは四方に隊列を組み、銃を構えるのですが、敵はさすがに砂漠の民。隊列にまともに戦いを仕掛けるのではなく、荷物を乗せたラクダたちだけを巧みに襲って暴走させ、その群れととも風のように去ってゆくのでした。

怪我人はひとりも出なかったものの、荷物をすべてなくしてしまったジャックたち。残ったのは、キリックが必死でしがみついて止めたラクダ1頭のみ。このラクダは、艦長のいい軍服を運んでいたのです。艦長の一張羅はともかく、ラクダ自体は1頭でも残っていれば役に立つので、キリックお手柄。でも、水を乗せたラクダを止めていたらもっとよかったかも…

というわけで、スティーブンのダイビング・ベルも、砂漠や紅海で集めた標本コレクションもすべて奪われてしまいました。(スティーブンのコレクションって、なぜかこういう目に遭うことが多いような。6巻では海に沈んだし…)でもそんなことより深刻なのは、砂漠のまんなかで水と食料がなくなってしまったこと。幸い、近くの井戸には水があったのですが、水を運ぶものがない。仕方なく全員はそこで飲めるだけ飲み、いざとなったらラクダを食べる覚悟でティナを目指しました。

ジャック一行、やっとのことでティナに着く。トルコ軍は消えている。

ジャックたちは昼休んで夜歩いたのですが、暑さと飢えと、何より渇きに苦しめられ、ラクダは倒れた水兵を運んでいるため食べるわけにもいかず、ヨレヨレの状態。しかしそれでもなんとか、死人を出さずにティナまで着くことができました。

ところが、往路に来たときはトルコ軍がキャンプを張っていた場所は、軍が別の場所に移動してしまったらしくもぬけのから。あたりには誰もいません。これで、もしドロメダリー号が彼らを待っていなかったら…あまりに遅くなってしまった彼らを諦めて、マルタに帰ってしまっていたら…彼らは全員、ここで渇き死にすることになってしまう。ジャックは胸がつぶれるような恐怖を感じます。

しかし、ありがたいことにドロメダリー号は待っていてくれました。

ジャック、報告書の文章に悩む。

ドロメダリー号でマルタに向うジャックたち。命拾いしてほっとしたら、彼には今度は別の心配がわいてきたようです。

ジャックは元々報告書を書くのが苦手で、勝利に終わった作戦の報告書でさえ、いつもひどく苦労します。たいてい、呻吟したあげくスティーブンに「もっと学のあるカッコイイ言葉はないかな」と相談するのですが…

特に今回は、みじめな大失敗を報告しなければならないので、書きにくさも倍増。まあ、ガレー船のことは元々罠だったわけで、何をやっても成功したわけがなく、大失敗はまったくジャックのせいではないのですが…それは彼の慰めにはならないようです。

「スティーブン、ちょっと書けたから聞いてくれ…『…命令通りティナ港に到着…可及的速やかにスエズ港まで行軍し…トルコ軍を乗艦させた後ニオベ号にてムバラへ航行…そこで、まんまとしてやられました。』いったいどうやったら、なるべく馬鹿に見えないように報告することができるのかなあ?」