フリーランサー悲喜交々


フリーランサー:フリーランスに同じ。無所属者。自由契約者。特に、無専属の俳優・歌手など。(岩波書店『広辞苑 第四版』)

はっきり言ってしまいましょう。日本は会社員が楽なように出来てます。家を借りるんだって会社員の方が信用される。住宅ローンだって会社員の方がおりやすい。税金の計算も全部会社がやってくれる。名刺にも会社の名前が入っている方が本物っぽい。定期券の範囲なら遊びに行く交通費だってタダだ。ああ、なんていいんだ、会社員。

会社員を辞めた数ヶ月はつくづくそう思った。いや、今でもそう思っている自分がいる。特に確定申告の時期は。しかし、世間の人は言う。いいよね、自営業。何でも経費に出来て、税金少なくていいんだもんね・・・。ちょっと待ってくれ。会社員の所得からもちゃんと定められた金額が控除されてるよ。それに、会社員は必要なものは会社が金出して買ってくれるだろ? どっちがいいのかな。確定申告の書類書く時の頭痛(税理士に頼む余裕のある人は関係ないんですけどね)、皆に経験してもらいたい。そうすれば、もっと税金の使い方とか、選挙とかに興味が出てくると思うな。

それにね、何でも経費に出来るなんて、あるわけないじゃん。私みたいなワープロ打ちが仕事の人間が、ブランド物を買ってそれを経費にして認められると思う? 私はそれを申請しようとも思わない。その代わり、仕事のために取ったコピー代は、たとえ10円だって領収証をもらう。すごく嫌な顔されるけどね。会社員は節約すればするほど残るお金が増える。でも、フリーランサーは、経費を節約すればするほど、税金が高くなり、それに従って社会保険料も高くなる。それに、会社員は住民税が月割りだけど、私達のはそうじゃないから、引き落とされる月なんてそのために働いているのかって感じだし、予算を立てるのがすごく難しいんだよね。ボーナスもないんだよね。だから貯金するのも大変!

それに、会社員として給料をもらいながら、ホント、色々なことを教えてもらいました。現実! 社会はこうなっているということ! 学生時代までは真面目な女子学生が常に優位に立っていた。ちょっとした男女差別はあったけれど、本当の男女差別は就職活動を始めた時に、初めて身に染みて感じたし、会社に入ったら、もっとすごかった。「君が男だったらな」と何度上司に言われたことか・・・(誉め言葉ではありません。嫌味としてです)。“女の子”に徹することの出来ない私には、“会社”はとても居づらし場所だった。そして、そんな場所で、社会のルール、会社員としての言葉遣い、おじさん達の扱い方、電卓からコンピューターまで、あらゆる事務機器の使い方、簡単な図面の引き方・・・、なーんでも教えてもらいました。ありがとう、会社!

でもね、私は会社員に戻ろうとは思いません。まず、まったく価値観の違うおやじ達と同じ部屋にいなくていいもん。ラッシュアワーに電車にも乗らなくていい。電車代は自分で出さなくちゃいけないし、領収証なんか出ないから、記録が大変だけど。定期券がないのって、すごく不便。でもね、ラッシュアワーに1人でも乗客が減れば、他の人の役に立ってるわけだしね。それから、どうしてこんなにとろくさいヤツと私の給料が同じなんだ?!と思う相手が1人や2人はいませんか、あなたの職場にも。フリーならそんな比較対象がないから、心の平安も保てますよ。

何でも経費に出来ていいよねと言う人達には、じゃあ、どうしてあなたはフリーにならないの?と私は言いたい。事務職だって、年俸契約や出来高払い契約にしてもらえばいいんです。あなたも立派なフリーランサーですよ。誰だってなれるんですよ、フリーランサー。

でも、前もって知っておく方がいいことがいくつかあるので、それをお伝えしておこうと思います。といっても、あくまでも私の体験談ですので、役所によって対応が違うかもしれないし、私は全く知らないで過ごしていることがあるかもしれません。これを読んで何らかの行動を取られ、それによって被害を被ることがあっても、当方は一切責任を負いません。と、一応決まり文句を書いておきます。さて・・・。

まず、国民年金。これはびっくり。月の最終日に社員でない人の分は会社は代理で払ってくれないから、個人で払わなくてはいけないという決まりだそうです。私の場合、1つ目の会社を辞めたのが7月下旬で2つ目の会社に入ったのが8月上旬だったから、7月分が未払いになってた! それがわかったのは2つ目の会社を辞めて完全に国民年金に切り替えるために区役所に行った時。「あ、未払いの月がありますね。」「へ?」「この月は支払われていません。」「じゃあ、今払います。」「これはもう遡って支払える期間を過ぎていますから、払うことは出来ません。」「え?!・・・じゃあ、もらう時に不利になるのでしょうか?」「いや、同じ誕生月の人より1ヶ月多く払えば大丈夫ですよ。」「(ふーん・・・つまり1ヶ月給付が遅れるっつーことじゃんか。それは“不利”とは言わないのか?)ついでに質問ですが、私が学生だった時は、学生なら20歳になっても国民年金を払わなくてもいい時代だったのですが、それはどうなりますか?」「決まった月数の払い込みがあれば支給を受ける権利は発生しますから、必要な月数分を払えば大丈夫です。」・・・払うって言っているのに断られるし、何だかわけがわからんな。1つ目の会社の総務部も2つ目の会社の総務部も、未払いになる危険については一言も言ってくれなかったな。そもそも、未払いだから払えという督促が区から来た覚えはないなあ・・・。払う人が減っていて、困っているんじゃなかったっけ・・・。取り立てしないんだあ・・・。不思議だ。1つ目の会社を辞めてすぐにフリーランスになる人には関係ない話だけど、転職する方は要注意! それから、受け取り額を増やしたい人は国民年金基金のことも調べてみてくださいね。これも自分でアンテナを張ってないと、誰も教えてくれないんですけどね。入るか入らないかは本人の判断次第だけど、そういうオプションもあります。

次に住民税。辞めた時に前年度分の未払い分をどっと払わなくちゃいけないことは、これは先輩方から代々語り継がれているので、知っている人は多い。退職金から引きますかと訊いてくれる親切な会社もあるし、勝手に払ってねという会社もある。

それから健康保険。国民健康保険に切り替えるのが最もシンプルなのだが、当時住んでいた区の役所はとても(本当に)親切で、あなたの前年度の収入から計算すると保険料はとてつもなく高いものになる上に、国保では本人負担が3割ですから、社会保険の2年延長制度を利用した方がお得だと思いますと教えてくれた。社会保険の場合、保険料の半分を本人が、残りを会社が負担しているので、退職した場合は会社負担分も本人が払うため、自分が払う額は倍になる。しかし、私が会社を辞めた時はまだ社会保険の医療保険は本人1割負担だったので、色々考えると、確かにそちらの方がお得ということに・・・。で、2年間自分で全額保険料を払う代わりに医療費は1割でいいという制度を利用することが出来ました。それを教えてくれない区役所・市役所って結構あるんですってね。新聞で読んだんだけど。でも、それは1割負担の時代の話。今はもうどっちもあまり変わらなくなったから、どれが得でどれが損なんだか、私にはわかりません。3割負担になって思ったのは、なるほど、だから市販の薬品ってのが売れるんだなってこと。1割負担の時は病院で薬もらった方が断然安かったもの。サラリーマンの負担増、薬品会社と薬局は喜んでるだろうな。

と、以上の3つは、国民全員に関係があることなのに、中学の時に習った憶えがありません。習ったかもしれないけど記憶に残ってません。何故なんでしょう。そういうことこそきちんと教えるべきなのに。会社に入った時に新入社員向け説明会がありましたが、その時も、そんな話は聞いた覚えがありませんね。取引先の銀行の人が来て、口座の開設とか(返済能力まだないのに)クレジットカードの申し込みとかの書類は書かされたけど。なんか、個人を賢くさせると扱いにくいっていう意図が見え見えですね。

そしてボーナスがないこと。これは、会社を辞めるぞと(本気で)決めた時から、可能であれば、年俸を12で割ってもらうやり方に変えてもらいましょう。そうやってボーナスがない生活に慣れておくのです。ボーナスは手つかずで貯金してるって人はどうでもいいですけどね。月々の赤字をボーナスで埋めている人は、それが出来なくなるのですから、覚悟が必要です。

フリーランサーには向かないかもしれない人・・・。スケジュール管理が苦手な人は、もしかしたら大変なことになってしまうかもしれません。事務手続きが苦手な人も。すごい収入があってプロを雇ってやってもらえるのなら問題ないんですけれどね。私は会社で“女の子”の仕事も沢山やらせてもらったお陰で事務処理はまあまあ出来ると思うし、スケジュール管理が命と思うほど好きなんです。朝も目覚まし時計は殆ど必要ありません。それから、9時から5時まで会社で座ってお茶飲んだり無駄話したりタバコ吸ったりしてるだけでお給料もらえてる人。そんな素晴らしい生活は捨ててはいけません。私は朝早く起きて、忙しい時は、寝る前までワープロを打っています。ひじの関節炎になりかかったことがありました。肩こりは慢性です。でも夜は必ず12時までには眠りにつくようにしています。フリーランサーは身体が資本ですからね。病気になっても病欠なんてありません。仕事が出来なかったら、その分、収入が減ります。仕事を引き受ける時は、季節や体調に合わせて、“不良率”を考慮に入れて引き受ける必要があります。

なーんか面倒臭そうでしょう。事実、非常に面倒なんですよ。ホント、日本って、会社員が楽なように制度が作られてるんですよね。その理由は・・・賢明なあなたにはわかっていますよね・・・。

それでもフリーランスになる気概(笑)のあるあなた。あるいは、やむを得ない事情でそうなるしかなかったあなた。適当に、頑張りましょう。そして、何かを変えてみませんか?


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