「芸術」と「アート」という言葉は、同等の意味を持っているのだろうか。

私の肩書きは多くの場合「サウンド・アーティスト」と表記される。このサウンド・アーティストという言葉は、他人が名付けたものではなく、十数年前、自分で名乗りだしたものである。
「この人は一体何者であるのか?」という判断は、肩書きで決められる場合が多い。
私の場合も、取材される際に必ず「肩書きは?」と尋ねられたので、自分のやっていることを考えて「音を素材として表現している」ことから「サウンド」の「アーティスト」と名乗ることにした。そして3年間言い続けると、不思議なことに「サウンド・アート」という分野ができ上がってしまった。肩書き世界の恐ろしさである。

この「アーティスト」という言葉を日本語に訳すとどうなるのか?
「芸術家」なのか「美術家」なのか?
artを辞書で引いてみると「芸術」「美術」両方出てくる。
私達も日頃、アートという言葉を「芸術」「美術」を区別することなく使っている。
いわゆる「美術家」の人達にとっては、別に問題にすることではないかも知れないが、「音楽家」である私にとっては結構気になる問題である。
私は「芸術」を行っている意識はあるが「美術」を行っている意識は持ち合わせていない。だから、「アーティスト」ではあるが「美術家」ではない。

「芸術」と「美術」はどう違うのか?
「芸術」と「アート」は同じ意味なのか?
「美術」と「アート」は同じことなのか?

アーティストと肩書きの付いている人の日本語表記は「美術家」または「現代美術家」というのが多いように思える。「芸術家」と名乗る人はあまり見かけない。何故なのだろう?
ちなみに私の場合、「サウンド・アーティスト」の日本語表記は「音楽家」としている。






藤本 由紀夫(FUJIMOTO Yukio)


サウンド・アーティスト
1950年名古屋生まれ。大阪芸術大学音楽学科卒。70年代よりエレクトロニクスを利用したパフォーマンス、インスタレーションを行う。80年代半ばよりサウンド・オブジェの制作を行う。音を形で表現した作品を個展やグループ展にて発表。その作品をつかったパフォーマンスを行うなど、空間を利用した独自のテクノロジーアートの世界を展開している。