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| 先日、帰郷した際に家族会議が開かれた。 「某"世界最大の掲示板サイト"のトップページに実家の商品(の写真)が使われている」ということで何らかの抗議をする必要があるか、という議題であった。 私の実家は伝統工芸を制作・販売していて、当該商品は他所では制作も販売もしていない。まさに「見れば一発で判る代物」である。 実は私はこの事実を以前から知っていた・・いや黙認していた。一時期は某サイトのデザインも変わり、その商品も姿を消していたのだが、最近また以前のデザインに戻っている。また某"世界最大の掲示板サイト"のロゴマークもあるのだが、そこにも当該商品の写真が使われている。よほど管理者・制作者がその商品が気に入っているのだろう。まあそう考えれば満更悪い気はしない。 ただしこの某"世界最大の掲示板サイト"はネット上で良くも悪くも様々な話題を振りまいていて、数々の裁判沙汰を起こしている。べつに当該商品や私の実家の宣伝をしてくれているわけではないので、何か起こればマイナスにこそなれプラスになることはない。実際お得意様から「あそこ(某"世界最大の掲示板サイト")に協力しているのか」と聞かれたこともあるらしい。 もっと面白い話では、私の妻は私がその某"世界最大の掲示板サイト"の管理者か制作者だと思ったらしい。確かにWebサイトの制作を頼まれることはあるのだが、とてもではないがあの様なサイトを制作・管理出来るスキルは持ち合わせていない。 さて家族会議の結論だが、「まあ堅いことは言わずに黙認しましょう」という私の意見が通ったかたちとなった。もちろん著作権を侵害しているのは明かであるが、今のところ特段の被害も被っていないし、ヘタに騒ぎ立ててマイナスイメージを被るよりも放置することを選択したのである。 ネット上ではこの程度の著作権侵害は日常茶飯事に行われている。また我が国の知的所有権に対する意識もまだまだ低いのが現状である。 こうして黙認することを選択した私だが、実は知的所有権関係の仕事をしている。 そういった事情で、美術家・音楽家や関係者から相談されることが多い。その多くは「作品内に他人の写真を使用したのだが問題はないか」とか「この作品で特許を取れるか」とか「私の作品を盗用している人間がいるがお金を要求出来るか」等々、実に都合のいい相談ばかりである。(弁理士・弁護士ではないので)相談業で生活しているワケではないので適当に答えたり専門家を紹介したりしてあしらってはいるが、中には気になる相談事もある。具体例を挙げてみよう。 (例1)「ビデオ・アートの作品中、あるクラシックの名曲を使用したのだが許可が必要か?」 :一般に音楽の著作権は美術の著作権よりも(権利そのものは変わらないが)厳しいのが現状である。たとえばライブハウスでのコピーバンドの演奏などでも、どこで聞きつけたのかJASRACの職員が来ていて、「君、著作権はクリアしている?」「してないなら許可をとりなさい!」なんて言って来たりするのである。 音楽作品(楽曲)は、文学作品、絵画、映画などと同様に著作物とみなされ、著作権法で作者、製作者の権利が保護されている。 楽曲の楽譜の作成、使用、公開には、著作権者の許諾が必要、例えば着メロデータやMIDI用データも楽譜の一種とみなされる。 ただし権利の保護は、日本国内では作者の死後50年までと定められている。それを過ぎると、自由に使用できるのである。これは一般に著作権切れ、著作権フリー、パブリック・ドメインと呼ばれている(ただし、ドイツ・オーストリアでは作者の死後70年間、著作権を保護するなど、国ごとに保護期間にはばらつきがある)。 音楽に関する著作権については、著作権を持つ人たちの著作権の管理、権利料の徴収などを代行している「JASRAC」(日本音楽著作権協会)というところがあって、海外の音楽権も含めて集中管理している。音楽を使う場合は、作った人(著作者)の権利を代行管理しているJASRACに許諾を得ることにより、使用できるようになる。 ・コンサート、お店などでの生演奏・カラオケ・ビデオ・CD再生など ・CM・ビデオ・印刷物などに使う ・CD・MDなどへ録音 ・有線音楽・CATV・テレフォンサービスで使う ・インターネットによる音楽利用 等、すべて使用料がかかってくる。これは「無料で配信している」とか「学校の行事で使っている」等の理由で手続きが不要になることはない。許諾のない公開はすべて違法となってしまうのである(著作権の消滅したものを除く)。 さて、(例1)の場合はちょっと複雑である。例えば使用したクラシックの作曲者が死後70年間以上たっている場合は著作権は消滅しているものと考えられる。ただしこれは例えば楽曲の楽譜の作成、使用、公開(例えば着メロデータやMIDI用データ)に関してフリーになっているのであって、もし市販のCDを使用している場合は演奏者の「著作隣接権」が関わってくるのである。 著作隣接権制度とは「著作権法によって、著作物を公衆に伝達するために重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者および有線放送事業者を保護する」制度である(著作権と著作隣接権はそれぞれ独立した権利 )。権利の内容は ・録音権、録画権:実演を録音、録画することについての排他的な権利。録音物・録画物を増製するこ とも含まれる。 ・放送権および有線送信権:放送および有線送信することについての排他的な権利。 ・商業用レコードの二次使用料を受ける権利:実演が適法に録音されている商業用レコード(市販のレ コード、CD、テープ)が放送や有線放送で使われた場合、放送事業者から二次使用料を受け取る権 利。 ・貸与権等:商業用レコードの公衆への貸与について、最初に販売された日から1年間は貸与権(許諾 権)を有し、その期間の経過後は貸しレコード業者から報酬を受ける権利。 ・私的録音・録画補償金:私的使用を目的として、政令で定めるデジタル方式の録音または録画の機 能を有する機器に政令で定める記録媒体で録音、録画するものから補償金を受け取る権利。 等である。権利の制限については私的複製は可、デジタル機器機材を用いて行う場合は補償金を支払わなければならない。 つまり端的に言うと、 「”作曲者が死後70年間以上たっているクラシックの名曲をMIDI用データでデジタル音源を使って自身が演奏している”楽曲なら許可の必要はない」「”市販CDのクラシックを使用”なら著作隣接権者(演奏者:オーケストラとレコード会社)の許可が必要」ということである。 (例2)「3Dイラストを自分のホームページ上で公開したのだが、それをそのままコピーして使用しているサイトを発見した。抗議は出来るか?」 :ネット上の画像をダウンロードしてプリントアウトやコピーするなどの行為を経験している人は多いのではないだろうか。インターネット上のコンテンツは全てデジタル化されている。そしてデジタル化されたコンテンツを複製することは簡単である。つまり他人が創作したコンテンツのコピーが安く簡単にできてしまうのである。更にネット上では違法複製されたモノを頒布することも容易である。 著作権におけるインターネット上で特に重要な権利は「複製権」である。 「複製権」とは、著作物を有形的に再生する(著作物のコピーを作成する)権利である。「複製権」が著作権者に与えられているために、そのコンテンツを模倣したり・コピーを作ると著作権者の権利を侵害することになる。ネット上の文章、美術、音楽、写真等は著作権法上の著作物なので、これらをコピーして自分のホームページに取り込む行為は、著作権者の複製権を侵害するということになる。 もともとインターネットは不特定多数の人々にあらゆる情報を提供することを目的として始められたわけだが、一定のルールが確立されたうえで実施されたわけではない。故に全くの無知あるいは認識不足から違法であることを知らずに利用する人と違法と知りながら利用する不法行為者が混在しているのである。何気ないこのような行為が違法もしくは権利侵害になることがあることを知っておくべきであろう。 (つづく) |
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伊藤 敦(ITO Atsushi) | ||
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美術家 | ||
| ■ | 1962年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。現在コマンドN及び擬態美術協会のメンバーとして活動中。 |
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| ■ | コマンドN http://www.commandN.net/ | ||