私の「総合技術監理部門」挑戦記

1. 受験のキッカケ

 『♪♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ〜♪♪』といわれたのは、もう30年以上も
昔の、日本の高度成長期のお話で、バブルの崩壊とその後のデフレに伴い、分社化や
年功序列の廃止、賃金カットなどサラリーマンの将来は、厳しさを加えています。
 そんな時勢を反映して、私の周りの人々にも、資格取得の動きがあり、「技術士」を
目指す人から、受験指導を頼まれるケースも増えてきた。
 技術士受験の指導をするにも、将来技術士事務所を開設するにしても、技術士の中の
技術士といわれる”総合技術監理部門”を取得しておいたほうが、何かと有利かなと
まず、考えた。
 また、技術士の資格をとったのが、平成6年で、それから十年近く、まとまった勉強を
せずに、TOEIC700点にしても、過去の遺産で食べている状況で、これはマズイと感じた
のが、第2の理由である。

2. 総合技術監理部門とは?

 平成12年に、技術士制度の改善に伴って、新設された新しい部門である。平成13年に
 第1回の試験があり、平成14年が2回目で、経過措置として、何かと優遇策があるのも
 平成14年限りと言われたのも、受験を急いだ大きな理由です。
(1)背景
   科学技術の巨大化・総合化・複雑化がますます進んでいる。科学技術は単独で
  その有効性や価値が生まれているわけではなく、企業などの組織的な活動が技術の
  有効性を発揮する基盤となっている。
   また、臨界事故などの例のように、事故や環境汚染などが発生した場合の社会的
  影響も大きなものとなっている。
   科学技術は一部の専門家が推進し、一部の人が利用するのではなく、地球規模で
  その正負両面の影響を受ける状況になっている。このような状況では、自らが携わる
  技術業務が社会全体に与える影響を把握し、社会規範や組織理論から定まる行動規範を
  自らの良心に基づいて遵守する高い倫理観を持った技術者が必要とされる。
(2)総合技術監理の範囲
   企業などの組織における業務全般を見通し、安全性や経済性など、時に相反する
  要求を、総合的な判断に基づいて監理ができる技術者であることを認定する。
   その範囲として、@経済性管理A人的資源管理B情報管理C安全管理
  D社会環境管理Eその他、倫理観や国際的な視野
   などについての、知識、実務能力を問われる。

総合技術監理の範囲【総合技術管理部門の技術体系から引用】

3. 願書出願まで

(1) 受験申込書の作成
   「技術士第二次試験受験申込書」を作成する。
   技術士に合格して、7年以上の実務経験があれば、選択科目の免除が認められる
  経過措置があるので、迷わず、免除を希望する。(丁度、8年の実務経験がある。)
   ポイントは、業務経歴欄の記入である。
   @専門とする事項(私の場合、外観検査の自動化と生産ラインの合理化)に
    従事した経験年限が充分か。
   Aしかも、目覚しい成果(表彰、社外発表、特許など)があるか。

   後の面接で分かったことですが、試験官は、業務経歴を”合否判定”の大きな
  判断材料にしています。
(2) 受験申込書の送付
   受験料 14,000円の振込み証書を添えて、書類一式を郵送したのは4月10日で
  申し込み締め切りの1日前であった。

4.受験準備

4.1 合格者へのアドバイス依頼
   私が勤務していた会社には、「社内技術士会」があり、会員名簿があり、平成13年度
  総合技術管理部門の合格者数名(顔見知り1名、残りは面識なし)に、アドバイスを
  依頼するメールを送った。
   ほとんどの方から、受験勉強のポイントと激励の返信メールをいただいた。
4.2 受験勉強の傾向と対策
  (1)日本技術士会で発行している約200ページの冊子、「技術士制度における
    総合技術管理部門の技術体系」を100%理解する。
  (2)必須問題の、5肢択一問題は、この本の中から出される。
  (3)経験論文、課題論文も2項、「総合技術監理の範囲」の@〜Eのうちの指定された
     いくつかの視点で論ずることが要求される。
  (4)リスク・マネージメントの観点での記述が必要。
4.3 「技術士制度における総合技術管理部門の技術体系」
   この本は、日本技術士会で売っているとの事だったが、問い合わせすると絶版で
発行計画もないとの事。仕方なく、総合技術管理部門の合格者にメールで貸してくれる
よう頼んで、隣の工場のSさんから、社内便で送ってもらう。
  (その後、日本技術士会から発売再開の知らせがあり、マイ・ブックを購入)
  @この本を、繰り返し読む。
  A良く理解できない項目は、市立図書館で関連する本を借りて読み、抜き書きして
   知識体系を頭の中に構築する。
4.4 経験論文の作成
   総合技術管理部門の技術士にふさわしい業務経験論文の作成
   今までの業務経験の中で、自分が開発し、国内、海外拠点に展開・定着させた
  システムのを取り上げることにして、規定の用紙(B5400字詰原稿用紙4枚または8枚)
  に収まるように模範解答作成。
   全ての管理の視点を盛り込み定量的に説明し、”総合技術管理部門の技術士に
  ふさわしい”事をアピールする。
   これをできるだけ短い時間で、読みやすい文字で書けるよう繰り返し練習。
4.5 課題論文作成
   想定されるテーマについて、@〜Eの管理の観点から論文を作成し、閑をみて
  繰り返し読みながら暗記。

4. 第二次試験

4.1 受験票・試験案内の受取り
   9月の末ごろ、受験票とともに、二次筆記試験の案内が送られてきた。
   @5肢択一問題は、30問
    平成13年度は、20問だったのが増えたのは、試験の精度をアップするためか。
   A記述式は、”B4片面800字詰用紙 4枚以内に解答”とある。
    平成6年に技術士試験を受けたときに、B5400字詰用紙の両面を使い、課題に
    よって使う用紙の色まで違い、間違った用紙に記入したのではないかと
    試験が終わってからもビクビクしていたが、これだと単純明快。
4.2 傾向と対策の修正
   @5肢択一の問題数が増えたのは、知っている問題に出くわす確率が高くなると
    前向きに考えることにした。
   A用紙のフォーマットが想定と違っていたので、フォーマットを変更したものに
    書く練習をする。
   B”用紙4枚以内に解答”をどう読むか?
     受験することになっている、先輩技術士のOさんとメールでやり取りする。
     1)経験論文だけ4枚以内に書く。
     2)経験論文2枚以内、課題論文2枚以内に書く。
     Oさんは、1)ではないかと言うが、リスク・マネージメントの観点から
     いずれのケースにも対応できるよう、経験論文の模範解答を2通り作成する。
4.3 第二次試験
   第二次試験は、10月14日 13:00〜16:00まで、早大で実施。
(1)5肢択一問題
    <問題例>
    問19 コンピュータネットワークに関連して使用される次の英語の略号で
       間違っているのはどれか。
       @IT:Information Technology
       AEC:Electronic Commerce
       BFTTH:Fiber to the Home
       CADSL:Asynchronous Digital Subscriber Line
       DB2C:Branch and Bound Computing

      ”B2C”など聞いたことがない略号だったが、何となく正しそうで
     消去法でBを選ぶ。

(2)記述式問題
   記述式の問題は、経験論文2枚、課題論文2枚で予想の範囲であった。
   @経験論文の出題
    『あなたが、現在または過去に従事した業務・職務において総合技術
     管理上の課題を3つ挙げ、それぞれあるべき方向について述べよ。
     取り上げる課題のうち2つは、「経済性管理」と「社会環境管理」として
     残りの1つは、「情報管理」「人的資源管理」「安全管理」の中から選べ。』

    予想的中!! 調子に乗って一気に書き始める。
    しかし、”好事魔多し”。3/4ほど書き終わったところで、もう一度問題を
    読み直してみた。どちらか1つしか選べない、「情報管理」と「人的資源管理」の
    両方を書いているではないか!!
    慌てて、1/4ほど消して、書き直す。30分はロスしたが、途中で気付いて
    良かった、と気を取り直して、何とか原稿用紙ピッタリに書き上げる。

   A課題論文の出題
    『3つの問題項目から1つを選び、「環境アセスメント(項目(A)(B)に
     ついては社会的影響)」「ライフサイクルコスト」「工程管理」に言及し
     ながら、総合技術管理の視点から見解を述べよ。
     (@)5万人規模のサッカー競技場の建設
     (A)介護用ロボット(機器)の開発
     (B)コンピュータシステムの統合』

    以前は、設備開発を担当していたので、(A)介護用ロボット(機器)の開発を
    選び高齢者の介護で、介護者の負担が大きい、「入浴介護ロボット」を想定して
    論を進める。
    ・社会的影響は、介護者の肉体的な負担の軽減だけでなく、要介護者の尊厳の
     問題なども盛り込んで、格調高く(?)筆を進める。
     (本音は、単に、原稿用紙の埋め草を増やしたい一心でした。)
    ・ライフサイクルコストは、メンテナンスフリーあるいは容易さをアピール
    ・工程管理は、、使われる環境が過酷な上に安全性が求められるので
     日程管理より品質管理を重点にまとめる。
     何とか、用紙の80%ほど埋め、あとは読み返して、誤字、脱字の修正に専念する。
(3)戦い済んで、日が暮れて
   試験が終わって、自分なりに自己採点してみた。その結果は何とも厳しいもので
   あった。

試験科目予想得点判定
5肢択一70  ○
経験論文80  ◎
課題論文65  △
総  合72△〜○
(4)二次試験結果発表
   二次試験の合否結果は、12月20日(予定)に文部科学省や日本技術士会に
  掲示され、郵便で合格・不合格通知が来ることになっている。
   20日が過ぎて、毎日郵便受けを覗いても通知が来ない。年賀状の時期でもあり
  受験を公約した手前、親しい人には”結果はダメでした”と書いて、投函するのは
  ギリギリまで待った。
   日本技術士会のHPでも、合格者の受験番号が確認できるのを思出し(知っていたが
   ショックを受けるのが怖くてアクセスできなかった)、アクセスしてみた。
   恐る恐る、番号を捜すと、『あった、合格だ!!』、妻を呼び、もう一度2人で
   番号を再確認。年賀状を見え消しで書き直し、晴れ晴れした気持ちで投函。
   そうこうするうちに、合格通知と口頭試験の日時が郵便で知らされた。
   (二次試験合格者の口頭試問の日程調整が、手間取って、合格者への通知が
    遅くなったのが、真相のようです。)

5. 口頭試験

   口頭試験は、1月31日で、正月気分が抜けると3週間しかない。
5.1 傾向と対策
   二次試験でアドバイスいただいた各氏に、二次試験合格の御礼と口頭試験への
  アドバイスをお願いする。
   @会社の技術士会のHPに会員が「総合技術管理試験 口頭試験必勝法」と題する
    ページを開設していることを教えられ、早速アクセスする。
   Aそこには、53項目の想定問題があり、これらに対して自分なりの模範解答を
    作成し、繰り返し読みながら暗記する。
5.2 口頭試験
  口頭試験は、2名の試験官(1名は技術士(A氏)、1名は大学の先生(B氏)だと
  思われる)
  質問は、80%はA氏からのものであった。
  Q1:総合技術管理部門受験の動機
  Q2:業務経歴での成功・失敗事例とそこから得たもの
  Q3:日本産業の再生のためにどのような手立てがあるか。
    (妙案は、ないと思うが、と試験官が言うので、気が楽になり、学生の質の
     低下から、教育の重要性などを話すと、B氏も同調。)
    こんなやりとりで、特に答えに窮する質問はなかった。

    予定の30分より、チョット短い20分強で終わった。
5.3 口頭試験結果発表
  結果の発表は、3月13日に、新聞紙上でも発表されるとのこと。朝刊を隅から
  隅まで見たが、出ていない。
  (我が家でとっている、全国紙には出なくて、地方紙の「山梨日日新聞」には
    掲載してあった。)
   今度は、日本技術士会のHPにアクセスして、合否を確認すると、受験番号と共に
  名前を見つけ出し、ホッとする。準備から合格まで、1年がかりであった。
  追っかけるように、文部科学省の遠山 敦子大臣名の合格証書が郵送されてきた。
   早速、アドバイスいただいた皆さんにお礼のメールを送る。
合格通知
5.4 登録手続
   既に技術士の資格は持っているので、総合技術管理部門の追加登録だけで
  済みます。
   「登録の手引き」を送ってもらい、必要な書類を記入し、登録費用6,500円を
  添えて申し込む。同時に、古い登録証を返納する。

6. これから

(1)現在、技術士をめざす受験者の指導(無料・有料)を通して、自分の技術を
   役立てています。
(2)これからは、技術士事務所開設に向けて、準備を進めている昨今です。

7. 参考文献

1)日本技術士会編:技術士制度における総合技術管理部門の技術体系,同会,平成13年

連絡先;nakaga@tb3.so-net.ne.jp