長野県和田峠のザクロ石

1.初めに

日本のザクロ石の3大産地を挙げるとすると、大きさでは
福島県石川町の鉄バン柘榴石、愛らしさでは茨城県山の尾の
鉄バン柘榴石、そして美しさでは長野県和田峠の満バン柘榴石と
思っています。
石川町の採石場は閉鎖して既に時が経ち、山の尾も1cm級は
難しくなり、和田峠は、一時のマニアによる乱獲がたたり、
今では営林署により立ち入り禁止となっています。
従って、この情報は、和田峠が大勢の採集者で賑わった、昔話と
考えて下さい。

2.産地

和田峠の旧道を登り、トンネルを抜け、美ヶ原への有料道路の
手前に、右手から沢が流れ込んでいます。この沢が「鉱物採集
フィールドガイド」に掲載された満バン柘榴石の産地でした。
ザクロ石産地の沢
沢の何処でも採集できましたが、ここも一種の漂砂鉱床であり、
上流ほど大きな結晶がありました。

3.産状と採集方法
ここの柘榴石は母岩の流紋岩が風化して抜け落ちた結晶が堆積した
一種の漂砂鉱床ですので、黄白色粘土を伴う堆積層を探せば良い事になります。
従って
(1)上流ほど大きな結晶がある。
(2)昔の川床には、柘榴石が眠っている。
ザクロ石の採集ポイント
採集方法は、川底の土砂をすくってフルイに入れ、柘榴石を探し出し
ました。
自作のフルイを紹介します。フルイは大きければ大きいほど効率(?)
は良かったのですが体力との相談でした。
自作の採集用具

4.産出鉱物
(1)満バン柘榴石【Spessartine;Mn3Al2(SiO4)3】
ここの柘榴石は真っ黒で、成分的には鉄バン柘榴石と満バン柘榴石の
中間のものといわれている。偏稜24面体の完全結晶が採れた事もあり、
私は文句無しに、日本一の柘榴石の産地だったと今でも信じています。
累帯構造を示すものや結晶学的にも面白い標本を産出しました。
満バン柘榴石
(2)普通輝石【Augite;(Ca,Mg,Fe)2Si2O6】
造岩鉱物の普通輝石が母岩の風化で抜け落ちたもので、自形結晶で
採集できる。大きさは3〜5mm位で、目の細かいフルイが
良かった。
(3)黒曜石【Obsidian;(M)SixOY】
和田峠産の黒曜石は縄文時代に石器、石鏃の材料として広く使われ、
関東・中部地方の縄文遺跡から発見される。
中には、十勝石と同じ赤銅色のものもあり、装身具に加工できそうな
ものも有ります。

4.おわりに

長野県和田峠の満バン柘榴石が営林署により採集禁止となって久しく
なります。今でも、沢の手前の露頭から小さな柘榴石が拾えますが、
昔の1cmを超す完全結晶を見つけたときのあの興奮を知っている者にとって、
何の興味もありません。
この他に、採集が禁止されていない場所で母岩付きが採集できる場所も
有ります。
早く、もとの産地が復活する事を祈っています。
柘榴石が拾える露頭