第十五回 チェット・アトキンス


 

つい最近チェット・アトキンスが亡くなった。享年77歳であった。
この偉大なるギタリストの足跡はマール・トラビスと共に、
今後もフィンガー・スタイル・ギターの歴史に残ることだろう。

チェット・アトキンスがギターを弾き始めたのは9歳の頃で、
それは兄の影響が大きかったそうだ。
1941年に高校を卒業した彼は、テネシー州のノックスビルという町のラジオ番組
 " ビル・カーライル・ショウ " で初めてのパフォーマンスを行う。
又、その番組で知り合った " ホーマー&ジェスロ " とは以後よく共演する事になる。
1946年には、かの有名な " グランド・オール・オープリー " に初めて出演し、
同年にブレットというレーベルから初めてのレコードをリリースしている。
彼の転機は、1949年にRCA/ヴィクターでカントリー部門の
トップ・プロデューサーだった、スティーヴ・ショールズに認められた事である。
スティーヴはチエットの優れた才能を見抜き、
RCA/ヴィクターの専属スタジオ・ミュージシャンとして抜擢する。
又、当時グランド・オール・オープリーにレギュラー出演していた
 " カーター・ファミリー " のサポート・ミュージシャンとしても活動し、
少しずつナッシュビルでのギタリストとしての地位を固める。

その後1957年にスティーヴ・ショールズがナッシュビルを離れる事になり、
彼の後釜としてRCA/ヴィクターのプロデューサーに就任する事になる。
それからのチェットは、敏腕プロデューサーとして多くのアーティストを育てたり、
又、多くのヒット曲を世に送り出している。
( ブーツ・ランドルフのヒット曲 " ヤケティ・サックス " を改作した
 " ヤケティ・アックス " が全米ヒット・チャートの5位になり、
ギター・インストゥルメンタルとしては、大ヒット作になる。)
その後、彼のプロデュースで有名になったアーティストとして、
エディ・アーノルド、ドン・ギブスン、ウェイロン・ジェニングス、
フロイド・クレイマー、チャーリー・プライド、ボビー・ベア、
コニー・スミスといった多くのアーティスト達が居る。
 


 

この " Standard Brands " で共演しているレニー・ブロウという
カナダのジャズ・ギタリストは、それこそ知る人ぞ知るギタリストで、
チェット・アトキンスにも多大な影響を与えている。
レコーディングは1979〜1981年に掛けてのんびりと行われたようで、
ツイン・ギターのアルバムとしてはベスト・アルバムだと言える。
当時55〜56歳のチェットは最も油が乗っている頃で、
そのいぶし銀のようなドッシリしたプレイは、ギターとはこういう風に弾くんですよ、
とでも言っているように聞こえる。
レニー・ブロウのプレイも、随所にお得意のハーモニックス・パターンを織り込んだ、
ベスト・プレイである。
残念ながら二人とも亡くなってしまったが、アルバムは残されているので、
彼らがギター・ミュージックというものに取り組んできた時代とか、
その熱いスピリットは今も充分に感じる事が出来る。


Lenny Breau and Chet Atkins

" Standard Brands "

One Way Records OW-29316



 

  1. Batucada
  2. Tenderly
  3. Cattle Call
  4. Taking A Chance On Love
  5. Somebody's Knockin'
  6. This Can't Be Love
  7. This Nearly Was Mine
  8. Going Home
  9. Polka Dots And Moonbeams




オリジナル盤はRCA/ヴィクターからアナログ盤でリリースされていましたが、
1994年にBMG系列のワン・ウェイ・レコードというレーベルからようやく
CD化されました。現在も入手可能だと思います。