第二十九回 ミシシッピ・ジョン・ハート


 

ミシシッピ・ジョン・ハートというブルース・マンの事を知ったのは、
1968年頃に高田渡氏にヴァンガード盤のレコードを
聴かせてもらったのがきっかけである。
当時の高田氏はこのジョン・ハートにぞっこんで、
彼のギター・スタイルからメロディから、
ありとあらゆるジョン・ハート・スタイルを自分のものとして
吸収、昇華していたように思う。

この頃の僕達はまだ20歳そこそこであったが、
何故かジョン・ハートのような渋いミュージシャンが好きで、
空けても暮れても彼らのレコードばかり聴いていた。

僕の場合はP.P.M. やキングストン・トリオといったポップ・フォークから
音楽やギターという楽器に入ってきたので、多少はその反動があったのかも知れない。
だから生身の人間が唄ったり、ギターを弾いたり、
そしてそれらを普通にレコーディングするのが一番自然なんだと
言うことをジョン・ハート達が教えてくれた気がする。

確かに良い機材を使えば良い音が録れると思う。
でも耳障りの良い音に成ればなる程、大事な何かが失われて行くようにも思う。

多くのブルース・マンがそうであったようにジョン・ハートも大変な音楽人生であった。
1892年生まれの彼が初めてレコーディングしたのが1928年で、
メンフィスのスタジオで " Frankie " と " Nobody's Dirty Business "
の2曲がレコーディングされた。
そしてこの時ジョン・ハートは既に36歳であった。

同年の12月には次のレコーディング・セッションが
ニューヨークのスタジオで行われ、12曲がレコーディングされた。
このセッションでは後に彼の楽曲としてよく知られた " Louis Collins ",
" Avalon Blues ", " Stack O' Lee ", " Candy Man Blues ",
" Spike Driver Blues " といった曲が含まれている。

1996年にコロンビア・レガシイから " Mississippi John Hurt "
Avalon Blues: The Complete 1928 OKEH Recordings というアルバム・
タイトルでこれらのメンフィス、ニューヨークでのオリジナル音源がCD化された。

1929年にはピエドモント・レーベルでレコーディングし、
その後は30年近く音楽から遠ざかっていたという。
一説によると故郷で畑仕事をしていたらしい。

たまたま ' 60 年代のフォーク・リバイバルがあったので、
嘗てのブルース・マンが再び唄いだしたけど、この時ジョン・ハートは70前後になっていた。
でも各地のクラブやフォーク・フェスティバルに出演し暖かく迎えられたというし、
ジョン・ハート自身も再び唄える事を楽しんでいたという。
1966年の11月2日に永眠したジョン・ハートだが、
少しだけではあるが彼のレコード、CDが僕達には残されている。
それらは僕達にとって貴重な宝物である。


 

この" The Best of Mississippi John Hurt " という2枚組のライブ・アルバムは、
1965年にヴァンガード・レコードからリリースされ、
1987年にようやくCD化されたのである。
ライブ盤なので曲中のMCも生かされていて、ジョン・ハートのウイットに
富んだユーモア溢れるトークに彼の優しい人柄を感じる。
勿論、彼の有名な楽曲は殆ど収録されている。
その中でも僕は " Coffee Blues ", " Monday Morning Blues ",
" Richland Women Blues ", " Candy Man ". " My Creole Belle "
がお気に入りである。

Mississippi John Hurt

" The Best of Mississippi John Hurt "

Vanguard Records  VCD-19/20


 

  1. Here Am I, Oh Lord, Send Me
  2. I Shall Not Be Moved
  3. Nearea My God To Thee
  4. Baby What's Wrong With You
  5. It Ain't Nobody Business
  6. Salty Dog Blues
  7. Coffee Blues
  8. Avalon, My Home Town
  9. Make Me A Pallet On The Floor
10. Since I've Laid This Burden Down
11. Sliding Delta
12. Monday Morning Blues
13. Richland Women Blues
14. Candy Man
15. Stagolee
16. My Creole Belle
17. C.C. Rider
18. Spanish Fandango
19. Talking Casey
20. Chicken
21. You Are My Sunshine





つい最近ミシシッピ・ジョン・ハートのトリビュート・アルバムがリリースされました。
参加アーティストとしてブルース・コバーン、クリス・スマイザー、
ルシンダ・ウイリアムス、スティーヴ・アール、ピーター・ケイス、ベン・ハーパー、
ジェフ・マルダー、ベック、ヴィクトリア・ウイリアムス、タジ・マハール、
ジョン・ハイアット、他がいます。
アルバム・タイトルは" Avalon Blues " A Tribute To The Music Of Mississippi John Hurt
となっていて、このアルバムもヴァンガード・レコードからリリースされています。