第三十三回 ラルフ・タウナー


 

ラルフ・タウナーほどミステリアスなギタリストは他には居ないだろう。
彼についてのバイオはあまり公開されていないので、
正にレコードかCDでしか彼に接する事が出来ないのだが、
多分、年齢は60歳を越えているハズだ。

僕が彼の音楽に出会ったのは ' 60年後半にヴァンガード・レーベルからリリースされていた
" オレゴン " というグループのアルバムを初めて聴いたのがキッカケになっている。
オレゴンは今でいうエスニック・ミュージックのバンドであった訳だが、
40数年前にそう言った音楽に取り組んでいたというのは今更ながら驚いてしまう。
ラルフ・タウナーとベーシストのグレン・ムーアが初めて出逢ったのは、
1960年にオレゴンの大学で行われたコンボ・コンテストに互いに出場した時であった。
その後はニューヨークに移り住むまでの約十年間、二人で行動を共にし、
主に西海岸で演奏活動を行っていた。
ニューヨークに移り住んでからパーカッショニストのコリン・ウォルコット、
ホーン・プレイヤーのポール・マッキャンドレス達と出逢い、
オレゴンとして活動を始める。でも短期間だけ活動しただけで、
数年後には残念ながらグループは解散してしまう。

1985年にコリン・ウォルコットが交通事故で亡くなり、
彼の友人であったパーカッショニストのトゥリオク・グルトゥが加わった
新生オレゴンが再結成された。
1989年にはCBS・レコードからアルバムをリリースし、
同時にコンサート活動も再開する。
彼等の音楽は以前にも増してヨーロピアン・ミュージック、インディアン・ミュージック、
アフリカン・ミュージックなどを取り入れた独自の音楽で、
自然と調和したような素敵な、今で言うヒーリング・ミュージックである。

ラルフ・タウナーが最初に始めた楽器はトランペットとピアノだったそうだ。
22歳の時にそれまでセールスマンをやっていた彼は、
音楽の道に目覚め、初めてギターを手に入れたという。
又、1980年にドイツのECM レーベルからリリースされた " Solo Concert "
というアルバムは、当時彼の目指すギター・ミュージックが凝縮された
素晴らしいアルバムである。
それにしてもクラシック、ジャズ、ワールド・ミュージックといった幅広い音楽が
ブレンドされたラルフ・タウナーのギター・ミュージックを何と呼べば良いのだろう。
まあジャンル分けする必要はないと思うが?

この " ANA " というアルバムは1997年にドイツのECM レーベルから久しぶりに
リリースされたラルフ・タウナーのソロ・アルバムだ。
僕はたまたま翌年の1988年にドイツのオスナブルックで行われた、
オープン・ストリングス・ギター・フェスティバルで彼と一緒になり、
初めて彼のオン・ステージを観ることが出来、あまりの凄さに感動してしまった。
その時にプレイされた楽曲の多くがこの " ANA " に収められている。
このアルバムを聴いた第一印象は、今だに変化し続ける彼のアーティスト精神
みたいなものをすごく感じ、このまま行くと生涯ずっと走り続けるんだろうなと、
つい思ってしまった。

" The Reluctant Bride " はクラシカルなイメージを持った小作品だが、
とても美しい旋律で、それでいてさり気なくプレイされている。
" Green And Golden " の曲想など、どこかピェール・ベンスーザンに通じる
ものがあって、これまでのラルフ・タウナーにはなかった楽曲である。
" I Knew It Was You " でのジャズ的な要素が加わったプレイは見事だ。
" Veldt " はお得意の12弦ギターでプレイされているが、低音弦をわざとバズらせて、
面白い効果を出している。
ドイツのコンサートでこの曲を聴く事が出来たのだが、
何と1〜6弦に紙を挟んでプレイしていたので驚いてしまった。
この楽曲でのアプローチもパーカッシブなギター・プレイという意味では、
何か新しいものを感じさせてくれる。
個人的には即興性の強い " Carib Crib " が好きだ。



 
 
 

Ralph Towner

" ANA "

ECM Records  ECM 1611



 

  1. The Reluctant Bride
  2. Tale Of Saverio
  3. Joyful Departure
  4. Green And Golden
  5. I Knew It Was You
  6. Les Douzilles
  7. Veldt
      Seven Pieces for Twelve Strings
  8. Between The Clouds
  9. Child On The Porch
10. Carib Crib (1)
11. Slavic Mood
12. Carib Crib (2)
13. Toru
14. Sage Brush Rider







ECM 系のCDはジャズの盤を扱っているCDショップで入手出来ると思います。
又、上記の ' 98年のオープン・ストリングス・フェスティバルのライブ・ビデオ
も発売されていて、これはラルフ・タウナーという偉大なるギタリストの貴重な
映像なので、是非とも観て頂きたいと思います。