第二十八回 ローリー・ブロック


 

1960年後半にフォーク・ブルース、ラグタイム・ギターのリバイバル
がアメリカやヨーロッパで起こった。
このムーブメントの中心人物としては、当時イギリスに移住していた
ステファン・グロスマンや、彼のニューヨーク時代の友人であったデイヴ・レイブマン、
エリック・シェーンバーグといったギタリスト達がいた。

彼らは ' 60 年代にニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで起こった
フォーク・リバイバルの洗礼を受け、スリー・フィンガー・ピッキングのルーツとも言える
トラビス・ピッキングをマスターするのにそれこそ日夜没頭していたという。

僕がジョン・レンボーン、バート・ジャンシュといったイギリスのギタリスト達の
ギター・プレイを勉強していた ' 60 年後半のある日、行きつけのレコード店で
" How To Play Bluse Guitar " というタイトルのレコードが目に入った。
それはタブラチュアが付録として付いていて、
どうやらブルース、ラグタイム・ブルースの教則レコードであった。

インストラクターはステファン・グロスマンとオーロラ・ブロックとなっていて、
ステファン・グロスマンの名前だけは洋書のメソッド等で知ってはいた。
でもオーロラ・ブロックという女性ギタリストについては正体不明というか、
何処の誰なのか解らなかったのである。

彼女の事が解ったのは随分後の事で、本名はローリー・ブロック、
そして生粋のニューヨーカーで、少女時代にヴイレッジの
フォーク・リバイバルを目の当たりにし、ギターを始めたという。
当時、彼女の父親がヴィレッジでサンダル・ショップを経営していた関係で、
多くのミュージシャンが店に出入りしていたという。
( たまに店でスモール・コンサートも開かれていた。)

そんな中にステファン・グロスマンもいたようで、彼からギターを習ったり
しているうちに恋仲になり、その後二人は結婚したのである。
だからこの " How To Play Blues Guitar " という教則レコードは、
夫婦で作ったアルバムという事になる。

当初はエレクトラ・レコードからリリースされていたが、
後にイギリスのトランス・アトランティック・レコードから再発売され、
僕が手に入れたのはこのイギリス盤であった。
その後ステファンがイギリスに移住する事になり、どうやらこの頃に二人は別れてしまったようだ。
でもその後のローリーはブルースをベースにした自我の音楽に目覚め、
ブルー・グース・レコード、クリサリス・レコードその後はラウンダー・レコードから
数多くのアルバムをリリースしている。

同じ女性ブルース・ギタリストということで、よく彼女と比較されるのがボニー・レイットだが、
どちらかと言えばローリーの方がフォーク・ブルース色が強いように思う。
それにしてもローリーといいボニー・レイットといい、
この男勝りのパワフルなギター・プレイは何と言えばいいのだろう。
凄いとしか言いようがない。


 

この " High Heeled Blues " は1989年にラウンダー・レコードからリリースされていて、
ローリーと彼女の古い友人であるジョン・セバスチャンが共同でプロデュースしている。
ロバート・ジョンソン、トミー・ジョンソン、スキップ・ジェームスといった
ブルースの巨人達の作品を、彼女なりのアレンジで聴かせてくれる。
一曲目のロバート・ジョンソンの " Walkin' Blues " では、
ジョン・セバスチャンのブルース・ハープとの絶妙のインター・プレイが見事だ。
一曲だけラグタイム・インストゥルメンタルの " Hilarity Rag " がプレイされているが、
仲々素晴らしいプレイだ。


Rory Block

" High Heeled Blues "

Rounder Records  Rounder CD 3061


 

  1. Walkin' Blues
  2. Travelin' Blues
  3. Got to Have You Be My Man
  4. Devil Got My Man
  5. Down in the Dumps
  6. The Water is Wide
  7. Since You Been Gone
  8. Crossroad Blues
  9. Achin' Heart
10. Hilarity Rag
11. Kind Hearted Man
12. Uncloudy Day





2002年に入ってラウンダーから彼女の新しいアルバム
" I'm Every Woman " がリリースされました。
これはラウンダーでの通算14枚目のアルバムですが、
内容はR&Bというかゴスペルというか、彼女の弾くアコースティック・ギターが一曲だけなのが残念。
ローリー・ブロックに興味のある方は下記ウェブ・サイトへどうぞ。
http://www.roryblock.com